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技術移民

2013-10-25 16:57:37 | その他
相方の大学時代の親友が、先月技術移民としてカナダへ渡った。

その親友は大学卒業後、上海の某有名大学の大学院へ進学し、その後上海の有名銀行にIT技術職として就職して、約10年。
地位も上がり、結婚もし、上海で住宅も買い…。一見順調そうに見えていた。
性格もとても穏やかな大人しい人で、とても海外移民なんてしそうに見えない人だったので、驚いた。
相方は彼に時折会うと、「もともと上海の人ではないし、上海での生活も仕事のストレスも大変そうだ」とは言っていたのだけど。
移民申請の準備のため、何と7年も前から色々準備していたと聞いて更にビックリ。
結婚は早かったのに子供はまだ、というのも、もしかしたらそのためだったのかも知れない。

移民熱が冷めない中国、技術移民として海外へ出た人はどういう人達で、何を求めて移民を決意したのか、そして移民後の生活はどうなのか、少し古い記事ですが訳してみました。

ご興味のある方はどうぞ。

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「北京で不動産を買うくらいなら、移民しよう!」

2010年4月、北京モーターショーの会場で1つの移民広告が人目を引いた。
「北京で不動産を買うくらいなら、移民しよう!」

この広告の背景には言わなくとも皆がわかっているこんなセリフが続くだろう。
二件目の住宅購入の敷居はかつて無いほど高く、北京の二環路以内の新築住宅価格は一平方メートルあたり3万元は下らないのに対し、金融危機から回復途上の米国では投資移民ビザ申請の敷居を下げ、各国の富裕層に移民を勧めている。
投資移民の最低額は50万ドル(人民元で342万元)で、米国のグリーンカードを申請できるのだ。
「理論上は、二環路以内に住むすべての北京市民は、アメリカへの移民条件を備えていることになりますね。」北京因私出出境仲介機構協会会長、斉立新氏は笑いながらこう話す。

カナダ移民局のデータによると:2009年、カナダ投資移民の全世界の目標人数2055名のうち、中国大陸からの人数は約1000名だった。最低投資額である40万カナダドル(約235万人民元)で計算しても、2009年の一年だけで、中国からカナダへ流れた資産は少なくとも23.5億人民元、上海万博中国館の建設費用に相当する。しかし中国から海外へ流出しているのは資産だけではない。

世界最大の移民輸出国

2001年、カナダへの技術移民を申請したAさんはかつて広州某会社の高級管理職で、当時資産は既に1000万元以上あった。
「実は投資移民の敷居はとても高くて、金が300万あればOKというような簡単な話ではない。一定人数以上の現地従業員を雇用していることや、毎年一定以上の販売額、利益額を出していることも条件になっているんです。」

敷居の高い投資移民に対し、技術移民は更に多くの人々が対象になっている。前述の斉立新氏によると、ここ10年各国の技術移民申請者数は投資移民申請者数の20倍に上る。

これは一日あたり平均60名近い高学歴高収入、かつ社会的にも尊敬される職に恵まれた中国中産階級のエリートが、カナダへ移民申請をしていることを意味する。カナダだけでなくこの10年で移民受入国の政策が開放的になるにつれ、中国のより多くの知識エリート、富裕エリートがオーストラリア、シンガポール、アメリカなどの国へ流れている。中国主要都市に住む中産階級にとっては、身近な友人のうち最低でも一人は移民していると言えるだろう。

Aさんの大学時代の専門は国際貿易で、カナダの駐香港移民官で一時間に及ぶ英語の面接を受け、申請は無事認められた。
Aさんの経歴は某有名大学卒業、30歳で広州某文化会社の高級管理職となり、豊富な国際協力の経験を持ち、その後独立して会社を経営していた、という典型的な中国中産階級エリートのものだった。
「申請に通る最低基準は恐らく修士課程卒業以上の学歴、英語に精通し、3-5年以上の職務経験があること、つまり中国における中堅層でしょう」とAさんは言う。

Aさんは中国ではよくある「中堅層」の一人に過ぎない。統計によると、2009年度、中国からカナダへの移民者数は約2.5万人;アメリカへの移民者数は約6.5万人;2008年度オーストラリアへの移民者数は約1.6万人である。

2007年、中国社会科学院の公表した報告書では、中国は世界最大の移民輸出国であると同時に、国外流出するエリート人材の数も世界一である。
1978年から、約106万人の学生が海外に留学し、そのうち帰国した人はわずか27.5万人、海外へ流出したエリート人材は78.5万人で、北京大学と清華大学の在籍学部生の約30倍に相当する。彼らは一体何を求めて移民するのだろうか?

優れた教育、健康な環境、安全な食品、法律が遵守される社会

Aさんは90年代初めの移民ブームの時、既に社会人だった。彼は決して移民ブームに煽られた訳ではない。仕事の関係でしょっちゅう海外出張していたAさんは、海外へ密航し不法滞在者、肉体労働者として社会の下層で生きている中国人同胞が今なお圧倒的多数を占めることを知っていた。90年代初期にヨーロッパへ渡った友人も、大学院で工科博士号まで取得していながら、海外で小さな雑貨屋を営んでいた。

Aさんも始めは会社の高級管理職に満足していた。数年後独立して起業して間もなく、順調だった商売は突然訳のわからない訴訟に巻き込まれたのだ。2001年、彼はカナダへの技術移民申請をした。

安全感のある落ち着いた生活がしたい、子供に優れた教育を受けさせたい、この2つが取材したすべての移民に共通する理由だった。
移民した人々の大多数は中国国内での「成功者」の冠を投げ捨て、普通で平淡な生活に落ち着いている。しかし彼らがより重視しているのは子供の将来だ。

技術移民達はまず生計の道を探す苦労と、社会的地位の落差に適応しなければならない。各国は技術移民政策を制定する時、その国に今必要とされている人材を優先的に考慮する。オーストラリアやカナダではIT技術者や会計士が人気が有る。
しかしカナダでもオーストラリアでも、大企業では本国か北米での職歴しか認められず、中国からの技術移民は大多数が元の職業と関係の無い職業にしかつけない。

Aさんはカナダに来たばかりの頃、「最初は部長クラスでも、まあ仕方ない」と思っていた。中国では高級管理職だったことを考えれば、「どう考えてもそのくらいが最低ライン。要求が高すぎるとは言えないだろう」と思っていた。

しかし中国ではIT技術者として働いていた友人が、カナダで見つけた最初の仕事はレストランのサービス係だった。しかも3日後、仕事ぶりが良くないことを理由にクビにされたと聞いて、Aさんは「心底ぞっとした」と言う。

三ヶ月余の後、Aさんはついにある通信会社で国際長距離電話を販売する仕事につくことができた。もうすぐ40歳になるAさんが新入社員として、毎日若い社員と一緒に業績を競わなければならない。一人勧誘に成功すると2カナダドルを加算され、しっかり勤勉に働けば1ヶ月800カナダドル(人民元5191.28元)を手にすることができる。

彼がかつて資産額1000万元以上の会社を経営していたことを知る人はいないし、知ったとしても同じだ。
Aさんは面接に行く度に面接官から礼儀正しく、しかしきっぱりと「貴方の中国での職歴はとても魅力的ですが、申し訳ないのですがこれは職歴のうちに入らないのです。」と言われた。

高等教育を受け、中国で5年以上の職歴を持ち、良好な教養と収入、一定以上の社会的地位を持っている。これが中国の技術移民に共通する特徴である。
20歳前後でアメリカへ留学し、修士、博士号を取得して卒業後アメリカに留まって就職する留学型移民と比べると、彼らの移民時の年齢は30~40歳で、職業選択の余地も競争力もより小さいのが現実である。

それでも、移民を後悔しない理由

Aさんの周辺の移民仲間の中には、かつて大学の先生だった人、会社の管理職だった人、技術マネージャーだった人もいるが、カナダに来てからはトラック運転手、スーパーのレジ係、商品係になっている。親友の一人はある会社で技術職として働いていて仕事ぶりも評価されているが、10年働いても地位は上がらない。もう一人の親友は40歳の時もう一度大学に入り直し、現在大学一年生である。

一般大衆の想像とは程遠く、多くの技術移民の海外での生活は、平穏だが中国にいた時ほど華やかではない。遥か遠い異国の地で、彼らの大多数は中国での「成功者」の 冠を捨てて、普通で平淡な生活に落ち着かなければならない。
しかし彼らがより重視しているのは子供の教育だ。自分の次世代には、異国で自分がかつて中国で味わったような成功を収めてもらいたいと願っている。
「私が犠牲になって、子孫が幸福になればそれでいい」カナダに移民して10年になる技術移民の総括だ。

勿論、すべての中国の技術移民がこのように達観できる訳ではない。2005年、カナダの移民達を震撼させた2つの事件があった。かつて湖北省大学入試首位だった学生が、博士課程を終了後、工場の肉体労働者の仕事しか見つからなかったことを苦にして飛び降り自殺した事件。そして同じく博士の学歴を持つ中国人が会社をクビになったことを苦にして橋から身を投げた事件である。

Aさんは、これはすべて中国の教育に問題があると言う。「中国では職業の貴賎意識があまりに深い」「人間は生まれながらにして平等だという価値観は欧米人の間に浸透している。」
Aさんの印象では、レストランでサービス係に対して大声で怒鳴っているのはいつも中国人だ。「カナダ人には到底理解できないことです。」

移民後の就職が厳しくとも、この数年各国が移民の数を制限し始めても、移民を申請する中国人は増える一方だ。

Aさんが大切に保存している新聞がある。2001年初のカナダの新聞で、一面トップに当時のカナダの総督(中国の公安委員会委員長に相当する)の写真が掲載され、予算より15000カナダドル(約10万人民元)オーバーして事務室の内装工事をしたことがメディアに露見し、謝罪も効果なく引責辞職したという記事である。

一度はブルーカラーの仕事に従事したものの、Aさんも友達もそのために尊厳を傷つけられたと感じたことは一度もないそうだ。
不動産価格も合理的だ。トロントでは以前、中国人投資家によって不動産価格が値上がりしたことに対する抗議デモがあった。再び大学生となった友人はカナダ政府の毎月2000カナダドルの教育補助を受け、授業料と三人家族の生活費を十分に賄うことができている。

Aさんは最後に記者に対して「私が移民を後悔していないと言う理由がわかったでしょう?」と言った。

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出典:『南方週末』多少精英正在移民海外 他们尋求什麼 より抄訳
http://www.infzm.com/content/45945

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