はと@杭州便り

中国杭州で仕事&子育てしているはとぽっぽのページです。

買分(maifen)

2012-02-20 17:08:13 | その他
買分(maifen)=点数を金で買うこと

中日辞書には載っているかもしれないが、日中辞書には絶対載っていないであろう単語。
ちなみに、この点数は入試の点数である。

元旦、紹興で会った親戚の中に、中学3年生の女の子がいた。相方従姉の娘にあたる。
その子は皆で飲み食いしている間、一人離れたところに座って冬休みの宿題をしていた。
皆の話の輪に入れない私は偶然彼女の側に座ってユキと遊んでいたのだが、
よく見ると彼女は1時間以上かけて数学の問題集の回答を、エンエンとそのままノートに写していた。

後で他の人から聞いた話では、彼女は成績が悪くて中学二年で一度落第し(中国語では留級という)、それがもとで不登校になり、その後両親があちこち探して何とか別の中学に編入し、今3年生だと言う。

3年生になってからいよいよ周囲は受験モード。
6月の高校入試(中国語では中考という)に向けて、模擬試験なども始まったそうなのだが、相方が彼女の母親に聞いた話によると、早々と進学先を決めているらしい。
推薦入試か何か?それにしても早すぎるのでは??と思っていたら、
ナント高校入試の点数を金で買うと言うのだ。

信じられない話だが、「買分」は中国では政府も公認の合法的な?入試制度である。
相方の故郷、紹興県の場合。
県内の高校は公立私立あわせて6校。入試は県内統一試験だが、学校によって足切り点(分数線)に差がある。
最も難関とされるK高校(公立)の足切り点は679点。学費は年間3000元(日本円で4万円ほど)。
ところがこの点数を取れなくてもこの学校に入学できる方法がある。
637点以上の成績なら、年間10000元(日本円で12万円ほど)の学費を払えばこの高校へ入学できると入試要項に書いてあるのだ。
前者は「并軌生」、後者は「択校生」と呼ばれる。
新入生の中で前者と後者の比率はどの程度なのかわからないが、学校側としては経営上、前者の3倍以上の学費を納めてくれる後者の方を一定比率以上入学させたいのが本音だろう。
その結果。
「并軌生」の足切り点が679点で、ギリギリその点数が取れていたとしてもそれだけではまず不合格になるらしい。
637点以上の「択校生」となる権利を持つ学生は、ほぼ全員入学を希望すると思われるからだ。満点が700点なので637点でも結構優秀だとは思うが、これではほぼ満点でもない限り安心して(?)「并軌生」としての入学が保証されると言えないのでは、と思う。
紹興県は比較的豊かだと言われるが、しかし家庭の事情で経済的に苦しい場合は点数が足りていてもこの「択校生」の学費が払えないために入学をあきらめなければいけない人たちがいるのである。

中学もそうなのだけど、そもそも高校の数が少なすぎる。
イーファンの中学校では一学年500人余のうち、上位50位以内に入らないと重点高校と呼ばれる県内の進学校(公立)に行けず、
上位100位以内に入らないと全日制の普通公立高校にすら入学できないのだそうだ。
日本の公立中学から公立高校普通科の進学率がどの程度なのか、地域によっても違うと思うが調べてみると高いところでは70%、低いところでは40%くらいらしいので、この数字がいかに厳しい数字なのかわかると思う。
では公立の普通科に進学できなかった約400人はどうなるのか、と聞くと、大多数の子が日本で言う工業高校や商業高校(職業高中)のほか、私立高校へ進学しているらしい
(しかし私立高校の学費は公立の「択校生」よりも高い)。

相方の親戚の子は成績が悪いので、両親が早々と公立高校への進学をあきらめて、コネを使って私立高校に入学の打診をしたらしい。
すると学校側は入学時に一括で4万元(日本円で約50万円)を払えば入学できる、と事もなげに言ってきたらしいのである。
その私立高校も足切り点は公称605点。
しかし実際には500点でもお金を積めば入れたというウラ情報もあり…。
ちなみに中国では大学入試でも堂々と「買分」が認められている。

まだ2月なのに6月の入試を待たずして早々と進学先を決めた親戚の子は、宿題もそこそこに家で毎日ゲームをしているそうで…。
そういえば去年大学に進学した別の親戚の子も受験勉強もろくにせずに、やっぱり「買分」で入学していたっけ…。

この国では小学生の頃からはっきりと少数の勝ち組と大多数の負け組を決められてしまうので、
勝ち組(?)は厳しい入試レースをかいくぐるべく必死で勉強をこなし、早々とこのレースから脱落した負け組(?)もコネと金で何とか足りない分を挽回しようと必死になっている、ということがだんだん分かってきた。
はてさて、都会はともかく中国全体で見れば前者よりも後者のほうが圧倒的に多いのは間違いなさそうである。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (二姐)
2012-02-20 22:07:15
息子の中考の頃、浦東新区の択校生は1校につき10名未満だったような。
それもすべての学校にあるわけではなく、
ごくごく一部の重点校でした。
彼の受験した年から上海市の択校費が値下げになり、
かなり良心的(という言い方もおかしいのですが)な
金額に変化していた記憶があります。
今はどうでしょうね。

当時子どもたちの間では、
択校生の卒業証書は一般のそれとは違うという噂がありましたが、
真実はどうなのか、わからないままでした。

ただ、学校に入ってしまえば履修内容と合格条件は他の子たちと
同じになるわけですから、努力しなければ明るい未来は無いですね。
どこまでもどこまでも裏から手を回してもらうようなら、
その面倒をみてくれる人がいなくなった時どうなることやら。
返信する
Unknown (はとぽっぽ)
2012-02-21 18:22:59
>二姐さま

コメント有難うございます。
択校生の割合、上海はわかりませんが北京では平均18%、杭州では平均15%らしいです。紹興県の資料ではほぼすべての学校が択校生の募集を行っていました。

北京の新聞ではこの18%の択校生を目標15%まで下げ、最高25万元まではねあがった択校費を上限3万までに制限すると書いてありましたが、実際どこまで実現するのかどうか…。

杭州では先週、有名公立小学校の現在15%の択校生の割合を来年5%まで下げ、しかもその5%はくじ引きで決めると教育局が発表したため、ネットは炎上、大混乱になっています。

択校生とは違うかも知れませんが大学の場合、一次募集(合格点が高く学費が安い)で入っても三次募集(合格点が低く学費が高い)で入っても同じ卒業証書だそうです。

確かに学校に入れば同じ条件とはいえ、入学者の一割以上が択校生だと、入試成績順にクラス分けされて択校生だけのクラスとかできてて、特別扱いされてそうな気がします。

若い人たちほど進学も就職も結婚も、全部親や親戚のコネと金に頼らなければいけないということが逆に当たり前になりつつあるのでは、と心配しています。
返信する
Unknown (二姐)
2012-02-25 10:51:08
ちょっと気になって調べてみたところ、
上海市はここ数年移行期間になっていたらしいですが、
2012年から上海全市にある公立の「普通高中」において
択校志制が廃止になるそうです。

上海の場合は学校がたくさんあって、
中考参加者が年々減少しているという報道もあり、
制度の廃止に踏み切ったようです。
返信する
Unknown (はとぽっぽ)
2012-02-28 19:22:12
>二姐さま

上海の公立高校では廃止になるんですね。将来的には他の都市でも廃止の方向で動くのではと思います。

高校は学力考査で決められるから、ある意味公平にもっていきやすいですね。その点一番大変なのは小学校で、公立だと入学試験もないし、択校制が廃止されてその学区に戸籍も不動産も持っている人しか入れないとなると、結局その学区内に不動産を購入しようとする人が増えて、また不動産価格が上がると予想されています。不動産の購入費は択校費の比ではないので、ネットでは親たちが大騒ぎしています。

そもそも同じ市内の公立小学校の間で、設備や教師の質の差が大きいのが一番問題だと思います…。
返信する

コメントを投稿