先週から今週にかけて、上海TV紀実(ドキュメンタリー)チャンネルで六夜連続放映されたドキュメンタリー、「教育能改変吗」(教育は変えられるのか?)。
杭州では上海のTVは視聴できないので、ネットで見ているのだが、
見ごたえがあって目が離せず、一気に見てしまった。
第五夜の内容「大学危機」を少しピックアップしてご紹介したいと思います。
中国の教育や大学の現状について、興味のある方はどうぞ…。
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●山東省の某市環境保護局に今年就職した、新卒の女の子。
毎日町のスラム街のようなところで、天秤棒とバケツを使って一日50kgもの便所の汲取り(糞便処理)をするのが彼女の仕事。
環境保護局の新人は最低でも3年はこの仕事をしなければいけない決まりになっていて、彼女のほかにも4人の新卒が採用されている。
中国の大卒の就職難は既に社会問題になっているが、汲取り、肉の解体処理、靴磨きなど以前では考えられない職業に就く大卒生の姿は大きな反響を呼んでいる。
●上海の某有名大学を今年卒業予定の女子学生。
大手外資系企業への就職を希望し、80社以上に応募したが、面接まで進めたのはわずか数社。それも皆落ちてしまい、卒業まであと一ヶ月を切ってもまだ就職が決まらない。
結局唯一もらえた内定は中小合資会社の総務部の仕事。月給は2000元余。就職先にも待遇にも決して満足していないが、現実は本当に厳しかったと言う。この中小企業でもわずか1~2人の新卒募集に対し、70~80人の応募があった。
就職活動を始めたときは周囲のクラスメートも皆大企業を目指していたが、結局大企業の内定がもらえた人は一人もいなかったそうだ。
●中国では今「大学不要論」も叫ばれている。
ある兄弟。兄は大学へ進学し、弟は建設現場の出稼ぎの仕事に。
今では弟は月給2500元の安定した収入、兄は卒業後一年経った今も就職先が見つからない。弟は「大学に行かなくて心から良かったと思う」
●アンケートでは大学生の34%が大学入学を後悔していると答え、51%が大学で学んだことは無用なことだったと答えている。
中国ではこの10年余りで急激に大学の増加が進み、立派な「大学城」(立派なキャンパス)が次々と建設され、学費はこの20年で20倍に跳ね上がった。大学大衆化のもと、もはや都市部では大学全入時代を迎えたとも言われ、新卒者の数は2004年の280万人から2010年には630万人に増えた。
しかし中身が追いつかず、大学にとっては少ない投資で大量の学生を集められる「パソコン」「英語」「管理」などの専攻ばかりが増え、結果これらの専攻を卒業した学生の多くが就職できない状態にある。
理系も深刻。アメリカの著名雑誌の調査では、中国の理工系の大卒生は毎年アメリカの4倍の人数に上るが、その大多数がレベルが低く、実際の仕事では役に立たないとしている。
●2010年全国大卒の就職率は42%。中には大学が就職率を捏造している事例も多いため、実際には30%を切るという説もある。
就職難を背景に、公務員試験の人気はうなぎ上り。
2010年には実に146万人もの学生が公務員試験を受験したが、合格率はわずか1.75%という超難関である。
●中国の大学教育のモデルは小中学生とほとんど同じ、暗記式教育である。必修科目が多く、選択科目は少ない。学生の40%が授業がつまらないと答え、サボりや居眠りも多い。
去年、ある大学の選択科目の教師がテストに出した問題は、
「この授業の先生は誰でしょう?下の4つの写真から選びなさい」だった。
●専門家は小中学校と同じように知識の詰め込みしかしない中国の大学は、世界でも最低レベルの大学であると指摘している。
番組ではこの現状に一石を投じる大学として、中山大学博雅学院と寧波諾丁漢(ノッティンガム)大学の2校を紹介している。
前者は日本で言う一般教養を重視し、少人数(約30人)による古典の素読と幅広い外国語学習を必須にしている。学長いわく、「自分の意見や見識を持つ力は、授業で先生から教えてもらう受身の学習では決して身につかない。」
後者はイギリスと中国の私立大学が共同で開設した大学。
教師はすべてイギリスから招き、授業はすべて英語。1クラス15人の少人数制で科目は多くないが、討論と事前の自主学習を重視するため、生徒は朝から晩まで勉強に追われているが、満足度は非常に高い。
小学校から高校までテスト漬けだった学生達は、この大学に来て初めて「答えが一つではない」問題がたくさんあることを知り、「知らないことは恥ではなく、質問することも恥ではない」ことを知る。卒業後さらに海外の有名大学院へ進学する生徒が半数。
学費は相当高く、中国の中でも「貴族大学」と呼ばれる大学で金持ちの子女しか行けない。
●国もこの現状を変えるべく、数年後深せんに開学予定の「南方科技大学」は、改革のモデル大学として少人数による学術研究、自由な校風を目指している。
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中国国内のTV局が作ったドキュメンタリーなので、問題提起の部分は上手くいっていると思うが、解決策の提起についてはどうしても政府や政策の内部に踏み込んでしまう→政府批判につながりかねないためか曖昧に終わってしまっている。
それでも制約された条件の中、1年以上の時間をかけて、これだけのドキュメンタリーを作った番組スタッフの努力はすばらしいと思う。
興味のある方は全編中国語ですが、ぜひネットで視聴してみてください。
●上海電視台 紀実頻道
http://www.smgbb.cn/2010/tv/live.html?215-0
8/15~20日夜8時~9時 六夜連続
杭州では上海のTVは視聴できないので、ネットで見ているのだが、
見ごたえがあって目が離せず、一気に見てしまった。
第五夜の内容「大学危機」を少しピックアップしてご紹介したいと思います。
中国の教育や大学の現状について、興味のある方はどうぞ…。
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●山東省の某市環境保護局に今年就職した、新卒の女の子。
毎日町のスラム街のようなところで、天秤棒とバケツを使って一日50kgもの便所の汲取り(糞便処理)をするのが彼女の仕事。
環境保護局の新人は最低でも3年はこの仕事をしなければいけない決まりになっていて、彼女のほかにも4人の新卒が採用されている。
中国の大卒の就職難は既に社会問題になっているが、汲取り、肉の解体処理、靴磨きなど以前では考えられない職業に就く大卒生の姿は大きな反響を呼んでいる。
●上海の某有名大学を今年卒業予定の女子学生。
大手外資系企業への就職を希望し、80社以上に応募したが、面接まで進めたのはわずか数社。それも皆落ちてしまい、卒業まであと一ヶ月を切ってもまだ就職が決まらない。
結局唯一もらえた内定は中小合資会社の総務部の仕事。月給は2000元余。就職先にも待遇にも決して満足していないが、現実は本当に厳しかったと言う。この中小企業でもわずか1~2人の新卒募集に対し、70~80人の応募があった。
就職活動を始めたときは周囲のクラスメートも皆大企業を目指していたが、結局大企業の内定がもらえた人は一人もいなかったそうだ。
●中国では今「大学不要論」も叫ばれている。
ある兄弟。兄は大学へ進学し、弟は建設現場の出稼ぎの仕事に。
今では弟は月給2500元の安定した収入、兄は卒業後一年経った今も就職先が見つからない。弟は「大学に行かなくて心から良かったと思う」
●アンケートでは大学生の34%が大学入学を後悔していると答え、51%が大学で学んだことは無用なことだったと答えている。
中国ではこの10年余りで急激に大学の増加が進み、立派な「大学城」(立派なキャンパス)が次々と建設され、学費はこの20年で20倍に跳ね上がった。大学大衆化のもと、もはや都市部では大学全入時代を迎えたとも言われ、新卒者の数は2004年の280万人から2010年には630万人に増えた。
しかし中身が追いつかず、大学にとっては少ない投資で大量の学生を集められる「パソコン」「英語」「管理」などの専攻ばかりが増え、結果これらの専攻を卒業した学生の多くが就職できない状態にある。
理系も深刻。アメリカの著名雑誌の調査では、中国の理工系の大卒生は毎年アメリカの4倍の人数に上るが、その大多数がレベルが低く、実際の仕事では役に立たないとしている。
●2010年全国大卒の就職率は42%。中には大学が就職率を捏造している事例も多いため、実際には30%を切るという説もある。
就職難を背景に、公務員試験の人気はうなぎ上り。
2010年には実に146万人もの学生が公務員試験を受験したが、合格率はわずか1.75%という超難関である。
●中国の大学教育のモデルは小中学生とほとんど同じ、暗記式教育である。必修科目が多く、選択科目は少ない。学生の40%が授業がつまらないと答え、サボりや居眠りも多い。
去年、ある大学の選択科目の教師がテストに出した問題は、
「この授業の先生は誰でしょう?下の4つの写真から選びなさい」だった。
●専門家は小中学校と同じように知識の詰め込みしかしない中国の大学は、世界でも最低レベルの大学であると指摘している。
番組ではこの現状に一石を投じる大学として、中山大学博雅学院と寧波諾丁漢(ノッティンガム)大学の2校を紹介している。
前者は日本で言う一般教養を重視し、少人数(約30人)による古典の素読と幅広い外国語学習を必須にしている。学長いわく、「自分の意見や見識を持つ力は、授業で先生から教えてもらう受身の学習では決して身につかない。」
後者はイギリスと中国の私立大学が共同で開設した大学。
教師はすべてイギリスから招き、授業はすべて英語。1クラス15人の少人数制で科目は多くないが、討論と事前の自主学習を重視するため、生徒は朝から晩まで勉強に追われているが、満足度は非常に高い。
小学校から高校までテスト漬けだった学生達は、この大学に来て初めて「答えが一つではない」問題がたくさんあることを知り、「知らないことは恥ではなく、質問することも恥ではない」ことを知る。卒業後さらに海外の有名大学院へ進学する生徒が半数。
学費は相当高く、中国の中でも「貴族大学」と呼ばれる大学で金持ちの子女しか行けない。
●国もこの現状を変えるべく、数年後深せんに開学予定の「南方科技大学」は、改革のモデル大学として少人数による学術研究、自由な校風を目指している。
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中国国内のTV局が作ったドキュメンタリーなので、問題提起の部分は上手くいっていると思うが、解決策の提起についてはどうしても政府や政策の内部に踏み込んでしまう→政府批判につながりかねないためか曖昧に終わってしまっている。
それでも制約された条件の中、1年以上の時間をかけて、これだけのドキュメンタリーを作った番組スタッフの努力はすばらしいと思う。
興味のある方は全編中国語ですが、ぜひネットで視聴してみてください。
●上海電視台 紀実頻道
http://www.smgbb.cn/2010/tv/live.html?215-0
8/15~20日夜8時~9時 六夜連続
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