相方、下山。

このところ相方ネタを書いてなかったので、「新婚生活はどないなっとるんじゃ」と言われそうだが、別に相方の存在を忘れていたワケではない
実は相方は長期出張で、ず～っと山に登っていた。
場所は同じ省内の温州（の山奥）。

8月8日に行って、今日帰ってきたので、約一ヵ月半か。
途中で2回、現場をコッソリ抜け出して帰ってきたのだが、同じ省内と言っても片道5時間、往復10時間くらいかかるので、そう気軽にも帰れず、帰っても数時間いるだけでトンボ返りだった。

相方の仕事は、電線の設計。
簡単に言えば、Ａ発電所からＢ開発区まで新しく電線を通すとして、どこをどう通って、どんな工事方法で、どんな種類の電線を使って通すか、というのを測量隊と一緒に行って調査して決める仕事である。
決まったら現地の市町村の担当部署や住民代表と、土地の確保や立ち退きのための保障なども含めて交渉するのも大事な仕事である。

中国はここ数年電力需要がピークに達し、毎年あちこちにどんどん発電所を新設し、鉄塔をバンバン建てて電線を通しているので、相方の仕事も忙しそうに見えるのだが。
不幸なことに浙江省は山だらけなので、電線もほとんどが山越え。
つまり相方の仕事は、ほとんど山登りなのである。
まあ、日本のように数千メートルの山ってワケじゃないのが（高くても2～300ｍがほとんど）救いだが。

大学を出て今の会社に入ったばかりの頃は、「若いモンは登れ！」と言われ、一年のうち300日近くが出張で山登りだった（つまりほとんど家に帰れなかった）そうである。
入社するまでまさかこんなキツイ仕事と思ってなかったので、その頃はもう真剣やめたかったらしい（実際耐えられなくて辞めた人もいるらしい…）
それが今では自分より若い後輩が何人か入社してくれたお陰で、出張、いや山登りもだんだん少なくなり、最近はそんなに遠くへ行くことも少なくなっていたのだが。

今回の出張は8月、しかも最高気温40度の一番暑い時期だったので、
行く前から「行きたくない～、行きたくない～！」と死ぬほどブルー入っていた。

行って一週間もしないうちに、一緒に行った職場の先輩（40代）は熱中症にかかってダウン。入院のため杭州へ強制送還された…
他にも暑気あたりや熱中症でダウンする人が続出
おまけに8月後半からは雨続きで、何日も足止めをくって旅館でマージャン＆トランプ漬けになっていた。

「なんでまたこのクソ暑い時期に山登りなん？しかも夕立やら雨も多いし、せっかく行っても仕事にならへんし、効率悪いやん。そんなに急ぐ仕事なの？」と聞いたら、
「それもこれも、みんなウチの上司が悪いんじゃ～～～！！」と怒りまくっている…。

相方の話では、電力局では今、発電部をはじめどこの部署でも忙しいので、相方のいる送電部だけヒマ、というワケにいかない。
大切なのは「仕事が効率的にはかどっている」コトではなくて、
「8月のこの猛暑の中でも、暑さをモノともせず山に登って奮闘努力している（らしい）送電部一同」という姿を会社のエライさんに見せるコトなんだそうである…。

急ぐ仕事であろうがなかろうが、とりあえず送電部の社員が全員オフィスにいたらマズかろう、ということで、上司がまとめて出張に送り出したらしい。

…まあ、ウチの会社も似たりよったりなんだけど、中国の会社って、やっぱり精神論が最優先なのね、ということを再確認。

行く前に美白効果のある洗顔フォーム＆美白化粧水＆海水浴にも使える強力な日焼け止めクリームを3点セットで持たせたのに
帰ってきたらやっぱり真っ黒だった…。
この一ヶ月で40近くの山を登ったんだから、ムリもないが...

途中から頻繁に「もう中華料理はイヤ～！！油っこいよ～～！！胃がおかしくなりそうよ～！！」と訴えていた。

「…オマエは一体、ナニ人やねんっ！？」とツッコミを入れまくってしまったが、
杭州にいたら、中華、和食、韓国料理、東南アジア料理、洋食、も好みによっては選べたのが（和食と洋食は私の担当なので貧弱なレパートリー、かつナンチャッテ料理だが）、出張に行ったらもう毎日三食中華、っつーか田舎なので旅館のおばちゃんの賄い、しかないのである。

でも、私と付き合う前は杭州にいても、その他大多数の中国人と同じく毎日毎日中華、中華で当たり前だったのに…。

トンボ返りで帰ってきたときも、「和風ハンバーグが食べたい…」とのたまい、
私が引き出しにストックしておいたレトルト味噌汁を、すべて持ち去っていたことが発覚…

まあ、山で道に迷って遭難しかかったりしながらも、何とかダウンすることもなく無事下山してシャバへ帰ってきたので、良しとするべきか…。
山登りの成果、と言えば、普段超がつくほど運動キライな相方のハラまわりが、ちょっとだけ細くなったことくらい

この一ヵ月半、静かな一人暮らしに慣れていたので、一人増えると急に家の空気が薄くなったよ～な気分である…