今日で暑かった夏 8月が終わりました
今回は、おとぼけ童話「たぬきの初恋物語・夏」
もうひとつの Epilogueを、お届けして
夏を終わりたいと 思います
彼は 狸に言われて
春の嵐の夜
雨混じりの雪に 覆われたまま
テールランプだけは 3回点滅し去った
狸は それでも
彼が戻ってくると信じ 待っていた
桜が咲き乱れる 春が来ても
草の蒸れ薫る 夏が来ても
彼は二度と たぬきの里に来なかった
時が 止まったようだった
何度も 季節は変わったが
狸の気持ちは 変わらなかった
いや・・忘れては いけないと思った
彼がいつ戻っても 良いように・・
彼が住む 東の空ばかり見てた
どれだけの時間が 経ったのだろう
どんな多くの 人混みの中でも
たぬきは彼を 見つけれる自信があった
ー 彼の匂い -
たぬきだけは 解かるのだった
彼が乗ってた 同じ車が通るたび
運転手が違うのを 知っていながら
心ごとその車を 泣きそうな瞳で
追いかけてた
何度も 何度も
自分に 言い聞かせた
自分で「さよなら」を、言っておきながら
女として もろさと 弱さで
心が くじけそうになり
泣き崩れる夜を
1人で 迎えては
朝が来ると 子狸の為に
無理に 笑顔を作っては
何事も 無かったように
ただ ただ月日を
ぼんやり 過ごしてきた
そんな ある日
彼が 最後にくれたCDを
聴いてみた
「瞳をとじて」だった
あまり真剣に 歌詞の意味も
気にせずに 聞き流してた曲
彼を無意識に 追いかける心にも
疲れてきた たぬきは
歌詞の 一部を聴いて
長い眠りから 覚めた感じがした
ー あの日 見せた泣き顔 涙照らす夕陽 肩のぬくもり
消し去ろうと願うたびに 心が 体が 君を覚えている
記憶の中でに君を探すよ それだけでいい -
たぬきは 思った
もしかすると
もしかすると・・
彼は 私が
人間の男で 傷つき
ボロボロになった心を
癒す為だけに
私の前に現れた「人」だったのか?
そう思うと 涙が溢れて止まらず
何度も 何度も
曲を繰り返し 聴いた
彼は たぬきが1人でも
生きていけるように
また これから出逢う
人間の男性と 何も怖くなく
恋愛が 出きるように
なれば 良いと思い
自分の役目は 終わったと
感じたから 狸の元を
去ったのかもしれない
彼のお陰で たぬきは
新たな出会いも 怖がらずに
受け入れるようになり
また人を好きに なりたいと
心から 思えるようになった
すべて 彼のお陰だった
彼が なけ無しのお金で
初めて狸に プレゼントした「ピアス」
買ってくれた夜に 永久の愛を誓うため
二人で乗った観覧車
狸は 彼に言った
「買ってくれた ピアスの一つを
座席下に隠しておくね
来年の今日、また来て一緒に乗ろうよ
そして片方のピアスを 取って私に下さい
あなたからの 結婚指輪だと思い
私は貴方の元に 嫁ぎます」
うつむき 苦笑いした彼は
何も 言わなかった
それもそう・・
彼は私の 人間不信を
癒すために 現れた人なのだから
あれから 私達は
二度と観覧車に 乗る事はなかった
彼の役目に 気が付いた
たぬきは たった一言だけ
言ってない言葉が あった
ー ごめんね -
彼の思いやりに 最後まで
気が付かなかった 狸は
彼と過ごした思い出の 街を去ることにした
今度 この街に
来る時は
泣かない
それは彼が 教えてくれた
人を愛する 喜びを
無駄にしたく 無いから
彼が居たから また人を好きになれた
そう思うと 気持ちは前向きに
足取りも 軽く
この街を 後にできた
「瞳をとじて」を
口ずさみながら
ー なくしたものを 越える強さを 君がくれたから -
いつしか言った
ー 貴方なしでは 生きていけない -
本当に愛する人が 出きた時に言おう
「依存」ではなく
「信頼」だと思った
彼は
人を 信じる事と
人を 愛する事を
たぬきに 教えて
二度と 現れなかったとさ
まるで「蜃気楼」のように
こうして
たぬきの
本当の「初恋物語」は
始まるのかもしれない
いやPrologueは
もう始まったかも
おとぼけ童話「たぬきの初恋物語・夏」
読んで頂きまして ありがとうございました
「瞳をとじて」 You Tube
- 完 -
8月17日付け