走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

割引証

2016年06月02日 | 仕事
酒量の多い彼女の飲酒の理由は暇だから。暇だと飲むのだ。C型肝炎の末期に近いのに飲酒を止められない。

昔みたいに飲めなくなったのよ、年のせいね、と何度説明してもわかっていない。

暇つぶしに診療所に何度も電話を入れる。予約を入れてはキャンセルをして受付嬢を困らせる。

そんな彼女が珍しく診察に来た。

家を追い出されるのに新しい家が見つからない。最近の賃貸料は高すぎる!息子が一緒に暮らそうって言ってくれるけど、別れた彼女の穴埋めね(息子も1人では賃貸料が払えない)。遠いし迷ってるわ、どうしよう決められないーと言いながら持参した書類の山をペラペラ一枚ずつめくりながら近況を話す。

How may I help you?

の声を全く無視している。予約に遅れてきたくせに、その上ゆっくりと話し動作も遅く、からかいに来たのかー!!!と私のイライラは頂点に。

そしてようやく「ここにサインして」と二通の書類を手渡す。
古い紙切れで長いあいだ持ち歩いていたのがうかがえる。

一通目は障がい者交通機関割引証の申込書。
二通目は映画館や娯楽施設の割引証 (障がい者専用)の申込書。

障害者(一生) に認定された彼女。もちろん適正者だ。しかしこういう申し込み証を持ち込んだのは私の患者の中で彼女が第一号だ。

こういう場合、個人経営の医師たちは書類作成という名目で料金を請求できる。この手のものは一通$10ー40だ。しかし私はサラリーをもらっているので請求できない。だから面倒くさく思えたし、映画を見に行く余裕があるなら真剣に家探しをしなさい!と思い一通にしかサインしませんよ、と伝えた。ごねる彼女。

ふんん、もしかしたら映画に行けるようになったら、暇が潰れて酒量が減るかな?なんて思いもあり、結局はサインしたけれど。

しかし、そんな密かな想いはすぐ消えました。最近の酒量をビール4本が限度ねーなんて言っていましたが、診療所を去る時カバンがひっくり返って出てきたのはウイスキーの空瓶でした。あらー公の場でも飲んでたのね、、、重症です彼女(自宅や酒のライセンスを持つ場所(レストラン)以外の場所での飲酒は違法なのです)、ハイ。



雨に濡れるホスタス。大好きです。

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1 コメント

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こんばんは (のびた)
2016-06-02 21:55:39
いろいろの精神障害者などを見ていると どこまで真剣に護れるか 治療できるか苦悩もあるでしょうね
自らか゛治そうと言う意思が無い方は困難が付きまとうと思います
私の仕事で比較的 そばに居た方は 無類の酒好きでした ただ その顔は赤黒く如何にも肝臓が悪そうでした
二人居ましたが 60歳前と65歳くらいで亡くなりました
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