走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

アート

2014年12月08日 | 仕事
ジョイスには地元に主治医がいる。偏頭痛で処方薬をもらっていたが高くて買えなくなった。他に安い薬はないのかと私を訪れる。

問診をすると典型的な偏頭痛の症状ではない。疲れが取れない、集中出来ない、眠れない、恋人にいびきがひどいと言われる。起きた時の口の渇きがひどい。
首が短くかなり太めのジョイス睡眠時無呼吸かと思い検査に送る。もちろん他の可能性がある診断も視野に入れて問診、身体初見をしてから検査に送った。

ビンゴ!かなりひどい閉塞性睡眠時無呼吸の結果が戻ってき、他の診断の可能性は非常に低い。CPAP(持続性加圧した空気を鼻か口に付けるマスクから送り込むことによって気道閉塞を防ぐ機械)をつけて症状改善。偏頭痛ではありませんでした。

では主治医は誤診をしたのか?

NPになるまでは誤診だと考えていたと思うし、ヤブ医者と呼んだかもしれない。今はそう思わない。何故なら診断という作業はとても奥深いことだと知ったからだ。

以前医療はサイエンスと思っていた。しかし診断に関してはアートだと思う。アルゴリズム(AかBの選択肢で結論を導く)で診断ができたら簡単だ。しかし人間は二択ではない。年齢、性別、職業、居住地、食事、収入、他の疾患などなど条件が多くそれを全て鹹味していかなければならない。問診中に可能性のある診断名を上げ過ぎると、問診が浅く広くなってしい見失ってしまう。診断名が少なすぎると視野が狭まって外れることが多くなる。思い込みが激しいと必要な情報なしに診断してしまう。診断が絞れない時は疫学の知識で一番可能性の高いものを選ぶ時もある。例えば単核球症が流行っている寮に住んでいる子が倦怠感主訴できたら、肝炎や甲状腺低下症よりも単核球症が疑われ診断になる。一番検査や治療しやすいのはどれかと、安くて侵襲の少ない検査、治療から始めてみてそれが当たればビンゴ!なんてやり方もある。そうです、絶対的な診断はないのです。

大切なのは(90%ぐらいの確信でこれだと思うからこういう)治療を始めるけど、もし状態が改善されないのなら(他の診断の可能性があるので、)必ず再診してくださいと、カッコ内は言わず(言うと不安をあたえる ので), 正確な診断、症状改善まではフォローさせてもらいますと言う姿勢が大事なのだ。そして患者さんに対する説明!説明!何日ぐらいで回復する見込みか、どんな症状が残るかもしれないとか、専門医に紹介する可能性もあるとか、、、こういう対応が信頼関係を作り、より良い予後につながるというもの。

医療者も人間。完璧ではないし、診断は本当に奥深い。マスターすることは一生できないと、とある医師と話し合ったこともある。マスターするとか完璧にできるとかは目標でなくよりスムーズに診断のプロセスが進めれるプライマリーケアになることが最も大切なことではないのかと。こういういろんなことを考慮して診断するだからアートなのだ。




今日の収穫。結構お茶目な外観。スマイリーフェイスが見れるかな?窓の間に書いてあるよ。

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