走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

どっちが大事?

2020年12月14日 | 仕事

公共の場でマスクが義務づけされて久しい。私の患者の中には不安症やパニック障害でマスクの装着ができない患者もいる。州の義務づけは病的理由がある場合免除される。なのでその証明のために一筆書いて欲しいと言われる事がある。それ自体は一文で済むのだが、このコロナ禍の中でそのような証明を発行する時には細心の注意を払うように指導されている。マスクをつけないことによる社会のへの打撃の大きさだ。

なので証明書を出すだけではなく、
まず、社会への影響(感染を拡大させる恐れがある)事への認識を高め、オンラインショッピングや混雑時を避け、換気の悪い公共の屋内を避ける事などを患者と話し合い、そのような話合いと指導をしたといつもの一文の後に書かなければならない。

で、彼女はレントゲン撮影へ行きたいがマスク着用でなければ駄目と断られたから証明書を依頼してきた。趣味のダンスの練習中に着地に失敗してからの痛み。しかし今もダンスを続けているし、歩くこともできている。骨折の可能性は非常に低い。いつもなら理学療法へ行ってもらう程度なのだがなんせマスクなしで診てくれる理学療法クリニックが見つからない。痛みが続くことに苛つきを覚える彼女はレントゲンを迫る。

これが生き死にを分ける重要な検査だったら私も納得する。しかし骨折の可能性が低い、ただ確認のための検査のために病院側のスタッフを危険に晒したり、彼女が去った後の清掃にかかる手間など考えると私は納得できない。そしてなによりも例え疲労骨折が見つかったとしても理学療法など治療はあまり変わらない。なのでレントゲンはやはりやめましょう、と言うと大泣きを始める彼女。

社会、社会、って私も社会の1人よ。私は重要でないの?!どうして私が我慢しなければいけないの!と。

「あなたが」重要でないとは言っていない。「骨折の可能性の成り行き」が感染拡大と天秤にかけた時の傾きの話をしているのに、、、

証明書は書いた。レントゲンの重要性についての話し合いまで細かく書いた。こんな時私の心が痛まないわけではない。しかしこれも自分の免許をかけて書いている事。州民を守るのは私の使命。彼女も州民だ。しかし骨折で彼女は命を落とさない。反対に既にコロナで大勢の人が亡くなっている今だから、、、冷静になったらわかってくれるかなと。そしてこういう時に頭をよぎるのが自分の免許の大切さ。情に流されて免許を失いたくはない。筋は通しておかなければ、、、と。

冒頭写真: 今シーズンはじめてのローカルでのスキーへ行ってきました。晴れに恵まれラッキー(天気予報が外れた)。


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