走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

医療の主体とは その5

2023年03月20日 | 仕事

シリーズはどんどん長くなるので忘れないように各回のサマリーを書いておきましょう。

1日目 真の患者中心のケアとは心がけているでは不十分

2日目 医療職は全知全能でも神でもない

3日目 人間は誰しも主体性を持っている

4日目 患者の理解力を高める因子1-患者家族がリラックスできる環境づくり


さあ、まだまだ続きます。今回は治療者である医師に注目しましょう。


何故白衣を着ているのですか?院長先生は革張りの特別な椅子に座るのですか?


医師ですから、難関を超えて医学部に入学し、猛勉強をして、医師国家試験に合格して、合法的に人間を切ったり、できるから?貴方が素晴らしい功績を積み上げてきたこともわかります。しかし何故権威を示すものを纏ったり自分の周りに集めないといけないのですか?


私は貴方より賢いんだぞ、偉いんだぞ、とその位置を保ちたいなら、貴方がどんなに時間をかけても患者の理解力は上がらないでしょう。お偉い先生に診てもらうことに安心を覚える人もいるでしょう。その反対にお偉い人はとっつきにくい、そばにいたくない、緊張してしまう、話していることが頭に入ってこない、と思う人もいることをご存知ですか?前者の人々は今回話しません。後者の難しい人々をどう対処するか?について今回シリーズで書いています。


ヒエラルキーをご存知でしょう。人間は集まると常に自分の階級がどこになるのか確認したくなります。下の方なら黙っていよう。意見を求められないよう、隠れたい心境。上なら安心。何を言っても大丈夫。


診察室と言う小さな空間でも同じです。これは男性患者の医療受診率などの文献に出てくる内容です。男女平等が謳われて長いですが、世界中一般的に男性は強く、伴侶や家族を守るイメージを持つ人が多い。男性自身もそのように育てられ、それぞれの男感を持っている場合が多い。人を頼ってはならない、助けを求めてはならない。自分でなんとかしなければならない。英語では masculinity と呼ばれるものです。それによって体調の悪さも、体調が悪くても医療施設にかからない。受診の遅れに繋がる一因と言われているものです。


診断がついて診察室では自分より偉そうな人が何かを喋っている。今まで家長であり、強い男として生きてきた生き様が否定される瞬間です。男を萎縮させられる環境に身をおかなければならない。それが診療室。 


わかりますか?同じ目線になる大切さを。上から目線や誰がボス猿なのか、言わなくてもわかるヒエラルキーを作ると、患者は自動的にふてたり、理解できない、無能な自分を見せるわけにはいかない、その解決策が「先生にお任せします」。自分のメンツも守り、ボスザルを立てるために都合の良い言葉です。


考えてみてください。先生にお任せする、と言う人々の多くが男性でありませんか?特に会社という組織社会で働いたことのない人に多くありませんか?


学がないから、と括っていませんか?ヒエラルキーを作り出さない。自分の立ち位置を示すために白衣を着ているのなら、それはコスプレと同じレベルですよ。貴方と同じ目線で話していますよ、と言う医療者側の態度が患者の耳を傾けます。


続く


冒頭写真二つの州を行き来しながら滑れる場所。どこまでも両州の山並みが見渡せます。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。