走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

一か八か

2022年10月14日 | 仕事
手術記録を興味深く読んだ。

とても難しいケース。病棟全体が術前プランを立てて計画は始まった。

何度も腹部の手術を受けているため、これ以上できない、とあちこちで断られた末のこと。この手術ができないのなら自分は死んだ方がまし。術中に死んでも構わない、術後の創が治らなくても良いから、一か八かでやってほしい、と患者の懇願だった。

きっと今までも似たような状況だったと予測する。モグラ叩きのような状態。一つを直せば二つの問題が顔を出す。昨日も書いたように切ってお終いとはならない。

一度切った創は完全には元には戻らない。くっついても小さなストレスで引き剥がれてしまう。何度も書くが人間の皮膚は最高のバンドエイドで鎧みたいなもの。そこを切るかどうかで大きな差が出てくる。外の皮膚だけではない、筋膜や筋肉や臓器を守るために、体を動かすため、何層もの層と細胞がうごめいているのが人間の体。

散り散りになったメッシュを拾い出し、新しいメッシュを固定させるのも難儀な状態。穿孔していた小腸を切除縫合、と彼はまた消化器官の一部を失った。

いつ退院できるのだろう?彼の回復を願いたい。


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