走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

エビデンスに基づいた医療

2016年02月28日 | 仕事
バンクーバーの美しさは山、海、街の融合にあると思う。高速が通らない都市としても有名。大好きです。日中は沢山の人で賑やかな所も週末の早朝は静かで景色を独り占めしているような気分でした。



学会3日目。終わってヘトヘトです。

今日のランチトークはなかったので、エビデンスに基づいた医療について。

エビデンスとは証拠。つまり治療を行うにあたり、その根拠になるものがあるかどうか。

昔、昔は医療者の経験が一番だった。次は研究という概念が定着してきた。
研究と言ってもいろいろある。理論研究 (すでに証明されている理論から新しい理論を生み出す。紙の上だけのもの)、動物実験、臨床実験。臨床実験の中にも色々ある。

薬とプラセボ(効果のない砂糖)を比べたもの、薬と薬を比べたもの。
被験者は無作為なのか、作為なのか、被験者の規模は?期間は短期か長期か。

また、すでに行われた臨床実験の結果を束ねて行われるメタアナリシス。

研究の信憑性は厳しく評価される。研究のやり方。特に作為があるかどうか?

研究結果の言葉の使い方も明確に

例えば、薬の効果を効果的と評価する。何に対して効果的なのか?血糖値を下げる?入院日数が短くなる?再発率が低い?死亡率が低い?

どれぐらいの効果?効果があるのは10人に1人なのか?100人に1人なのか?

研究対象は誰かも重要だ。例えば白人だけが参加者で黄色人種の被験者はいない。その結果は私に当てはまるのだろうか?

研究結果と一言に言っても奥はとっても深いのだ。

で、本題。更年期障害に処方される薬たち。長い間更年期障害に苦しむ女性たちに処方されてきた。現在のエビデンスは??なし。

発表されている研究のどれをみても効果的である証拠がみつからないのだ。それに研究自体に偏りがあり信憑性が低いのだ。

しかし、これは効くと服用を続けてきた女性たちの事実はどうなるのか?プラセボ(効くと信じることで症状が回復する)でしょうという結論が出た。

このようなエビデンスは更年期障害の薬だけではない。今までの概念を覆すように沢山出てきている。もちろん製薬会社が黙っているわけではない。しかし証拠を突きつけられたら、新しい証拠を生み出すまで反論の余地はない。

そしてどんどん生まれるエビデンスに多いのが薬以外の治療法。体重を落とし(肥満から抜け出す)、定期的な運動、禁煙などなど、これらが高血圧、糖尿病、高脂血症、更年期障害、関節痛、鬱、不安症、喘息、などなどに最も効果的と結果が出ています。

薬漬けの医療から生活習慣を改善する医療へ。アンテナを高くしておかなければならない時代になりました。




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