走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

富が膨らむ陰で

2016年10月14日 | 仕事
昨日の記事に補足。日本に住んでいる人にとってはちょっとわかりにくいかもしれないので。

日本ではあまり話題になりませんが、北米では土地や住宅物件は投資目的に使われるもの。なぜかと言うと土地、住宅物件の価格は確実に上昇するからです。銀行に預金をするより利率が良いと言う理由が人気のわけです。

この上昇率はいろいろなものが関係してきますが、ここ15〜20年は異常な上昇率で急騰を招いたわけです。自分の例で言うと2002年に購入したタウンハウスが3年の間に$100.000も上昇しました。3年で$100.000も利子が付く投資がありますか?これが投資家を喜ばす実情。そして今の上昇率は尋常でなく今住んでいる一軒家はここ10年で購入時の価格の2倍以上になりました。今、この家を売り払えば銀行にある住宅ローンを差し引いても1ミリオンの現金が手に入るという事です。凄〜いと思われるかもしれませんが、意味は何もないのです。なぜならマーケット全体が上がっているので田舎に移住するとか家のサイズを小さくしようと思っている人以外は得をしないのです。大学院の友人二人はまさにこれにより、持ち家を売り払った後に次の物件が購入できずレンターとなってしまいました。私のように早くから持ち家があった人はエレベーターに乗ったようなもので、そうでない人は物件購入がまさに高嶺の花と化しました。高級トリであっても手が出ない状態です。そんな中、税務署も政策として乗り出し、調査の結果明らかになったのは昨年一年間で転売により15ミリオン以上の年収を得た無職(専業主婦と学生が)がなんと10数名いたという事です。信じがたい事実です。

普通の仕事をしている人たちは高値がついた家を売り、ある程度の現金を懐に入れて田舎に移り少しでも安い住宅を購入という形をとっています。日本で言うドーナツ化現象が起こっています。それだけではなく地方の土地価格も急騰させているのです。有り余るお金がある海外投資家は銀行も通さず現金で取り引きをしてお金を作り出す。ひどい話では家族の間で売買をして$500.000ずつ儲けたとか。まさに日本のバブルの時のように濡れてに粟の状態です。古い家は押し潰し新しい家を建てる。その費用の3〜5倍の値段をつけても売る事ができる。ゾーニングを変えて一軒家だった敷地に5軒家を建てる。5倍の収入が見込めます。タウンハスや高層マンションなどはもっとお金になります。売りに出せば3日以内に売れる。それも予想以上の価格で売れる。完全な売りのマーケットにここ数年なってしまいました。

住宅の価格が上昇すれば住民税も上がります。バンクーバーに昔から住んでいた人は住宅ローンはないかもしれないけど住民税は支払わなければなりません。老人控除もありますがそれでもしがない年金暮らしのお年寄りは支払えなくなり、家を手放す事になった人も大勢います。

賃貸住宅に関して賃貸者を守る法律もあります。賃貸料の引き上げは年間これぐらい、と決まっています。しかし新入者に対してはそれが当てはまらずオーナーが好きな値段をつける事ができる。そして最近増えたのがレノビクション。オーナーがリノベーションをするために入居者に一旦出て行ってもらい、リノベーションが済んだ後に高額な賃貸料にするなど。最低賃金で働いている人が住めるぐらいの賃貸料の物件は全体の0.1% しかない現状が数日前に発表されました。

これが最近のホームレスの原因です。どんなに一生懸命働いてもギリギリの生活。病気になったり出産や乳児のケアなどが加わると途端に生活できなくなる。恐ろしい世の中です。

カナダの1〜3番目に高い住宅が全てこのメトロバンクーバーに存在します。豪華な家と言えばそうですが同じ値段でフランスのお城や小さな国さえも買い取る事ができる。おかしいと思いませんか?たかだか家ですよ。家の値段の話をしているのです。



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