走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

国民もしなければならない事

2020年10月06日 | 仕事
シリーズ3日目。

インシデントリポートの意義
業務上過失致死の拡大解釈

1日目の中にリンクを貼っておいたのはこちらのブログ。医療ミスを減らす為に。この中で書いたのが医療ミスにより死亡か重度の障害を負う確率は14人に1人と言われ、先進国は軒並み同じ率だそうです。驚きますか? 私は初めて知った時とても驚きました。医療者のくせにです。一般人の方は尚更だと思います。

さて、「お医者様が言うことは全てです。お任せします」これも日本でよく耳にする言葉ではないでしょうか?これがどれだけ危険な事か今までのブログの流れから理解していただけたでしょうか?どんなに名医でも不運が重なり患者に死亡や重度の障害を起こしてしまう。そのような可能性はどこにも潜んでいるんです。貴方はラッキーな13人の内の1人患者なのか?アンラッキーな1人なのか?医療を受けるとはそれぐらいのリスクがあるものだと言う事を国民は知る必要があるのです。全知全能でない人間である医師を神と崇めるのはとんでもない事なのです。

だから手術や治療について説明された時には間違っでも、「お任せします」と言わず、沢山質問をしてください。手術の成功率。手術後の身体への影響、回復時間。手術をしない場合の生存率。最低でもこの4つぐらいは理解したうえで同意書にサインする必要があると思います。そしてこれは手術に限らず、化学療法、放射線療法、高血圧の治療薬や糖尿病の薬でも同様です。治療費を聞くことだって恥ずかしいことではありません。大腸スコープで穿孔する可能性は低いです。しかし私の患者の中にはその低い確率の穿孔を起こしてしまった人が2人いました。どんな小さな検査や治療もリスクはゼロではない、を忘れないでください。

残念ながら航空産業と医療を比べると事故の発生率は医療の方がかなり高いのです。その理由は先のブログの中にも書きましたが、パイロットに自分はミスをすると思いますか?と質問すると全員がハイと答えるのに対し医師は40%、看護師は72%に留まります。つまりパイロットに比べ医療者は自分が絶対ミスをしないと信じているのです。「医療者は完全である」この神話を崩し医療者もミスをすると言う新しい文化を医療者も国民も認識する必要があるのです。

最後に14人に1人の医療過誤の確率を改善したいのなら、ニアミスから安全策を強固にしていく真のインシデントリポートの活用です。そして医療過誤に対する刑事責任追及は医療過誤の発生率改善の視点ではマイナス作用がある事を国民も理解する事が重要です。

シリーズ終わり。

冒頭写真:週末は4輪駆動旅を久しぶりに。こんな秋深まった時期にするのは初めてでした。アメリカ西部の森林火災の影響で煙っていますが山の秋を楽しみました。


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