走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

看護師の功績

2020年05月17日 | 仕事
昨日の続き。

研究と研究費と医療の発達。お金は政府からの予算、基金団体、そして一般企業と個人。医療機器会社や医薬品製造会社は勿論研究費を出資する会社です。研究結果が会社の収入に直接繋がるからです。これらの分野にドップリと研究費が集まる理由がわかるでしょう。

しかし医師が行う医行為のみが近代医療の発展を支えたのではありません。看護師や作業療法士や理学療法士などの医師以外の医療者の研究結果も現代医療発展へ貢献しています。私のバックグラウンドは看護師なので、看護師について書きます。

先々日に書いた刑務所で医療を提供するフォレンジックナース。囚人の健康について疑問持ち、その答えを求め進学する。これが以前にも書いたように大学院へ進学する理由となります。在学中にその疑問を解読するべく、事象を看護のレンズで吟味し、疑問を明確化し、介入を考えて、論文化する事が在学中の過程です。授業授業毎に書く論文が卒論の土台となり、修士論文が研究費獲得をするための申請書類のベースとなり、獲得後博士課程で研究に取り組む。その結果が世へ出てくる。世に出ればポリシーメイカー(基準や法を作る人。行政とか政治家とか)が注目し、システム改革に繋がり、結果囚人の健康度が向上する。大学院へ進んだフォレンジックナースの長い道のりです。しかし長い時間と過程を踏んだだけの成果があり、未来の看護の形成に一躍を担うのです。

花形研究とは少し違う地道な作業です。しかし誰かがしなければ日の当たらない分野はそのままなのです。そこを動かすのが上手なのが看護師。だって医療職の中で最も患者の側で時間を費やす職業だから。患者の生の声や、治療に対する反応を看ているからこそ疑問は湧くのです。派手な一般企業の研究費ではなく政府や基金からの研究費を使い長年行ってきた。

昔、昔精神科医療は患者を閉じ込め、刺激性のない白い部屋で薬物を投与することなどが当たり前でした。しかし今は(日本は例外ですが)症状を押さえ込むより、症状と日常生活のバランスを重視するようになりました。アートセラピーの位置づけも変わり、白い病室も変わりました。このような変革には多くのスカラーと呼ばれる看護師達のEBP(証拠重視の研究と実践)の積み重ねで可能になったのです。精神科看護のみならず、いろいろな分野の看護師がそれぞれの疑問を抱きスカラーとして知の功績を続ける。海外の看護はこのように発展しているんです。これもまた国民に信頼されるプロフェッショナルと認識される理由の一つです。

海外でできている事なんです。日本でもできるはずです。目の前にある事を当たり前と思わず、常に疑問を持つ事。そして患者や国民の声に耳を傾ける。そしてその疑問を大学院に持ち込む。そしてEBPの一部となる。これが学問というものです。資格や肩書のための職業訓練校的な大学院では到底できない事です。何をしたいのか、何を目指しているのか深く考えては如何ですか?

EBPについても沢山書いています。是非サーチ欄に「EBP」とか「エビデンス」と入れてそれぞれを閲覧してくださいませ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。