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ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

2017年度 第1回目の鑑賞会レポートです!(2017年5月13日開催)

2017-05-25 00:22:32 | 対話型鑑賞

みるみる会員の房野さんから、今年度初の鑑賞会レポートが届きました!


日時:2017.5.13(土)14:00~
場所:浜田世界子ども美術館  1F 図書室
作品:ゴッホ作「アルルのゴッホの椅子」 1888年   ナビゲーター:房野   参加者:3名

今年度1回目、みるみるの会の鑑賞会のレポートです。

鑑賞の終盤、「始めてから30分経ちました」と声をかけた時に「ええ~!!もうそんなに時間が経ちました?!」「楽しかったあ~!!」という声が上がりました。鑑賞会を楽しみ、満足感を得られたという何よりの嬉しい声でした。
今回はたまたま参加者が少なく、会員は房野、正田の二人。一般の参加者は、この二人がそれぞれ声をかけて初めて参加されたお二人でした。鑑賞教育について勉強をしたいと参加された女性と、もう一人は、房野の対話型鑑賞のプレゼンに興味を持たれた吉賀町教育委員会の方でした。お二人とも、このような鑑賞会に参加されたのは初めてとのこと。そこで、「授業で取り組みたい」という講師の方の参考になれば、と、今回は展示室の作品ではなく、プロジェクターの画像でゴッホの「椅子」を鑑賞することにしました。

この作品はみるみる会員が授業で何度も実践し、初心者に見せることの多いものです。ナビである私も「初心」に戻って、以下を目標に進めることにしました。
★パラフレーズ(伝え返し)を短い言葉で的確に。
★初めて体験される方もおられるので、根拠を丁寧に尋ねる。
★必ず「そこからどう思う?」と、後半は鑑賞を深める流れを作る。
極めてスタンダードな目標ですが、これから実践をしようという方に示すためでもあり、自分の研鑽のためにも基本に忠実に進めてみようと思ったのでした。

たった3人の対話でしたが、その内容には興味深い意見がたくさんありました。これまでの授業にはなかった読み取りも聞くことができ、ナビ自身もとても楽しむことができた鑑賞会でした。
以下は、みるみる会員の正田さんからの振り返りのコメントです。正田さん、ありがとうございます!

○鑑賞者の意見の根拠を良い意味で丁寧に確認できていた。
例)どこに、椅子がありますか?
発言をした鑑賞者は、作品の位置を言葉で説明するとともに、椅子の材料や作品が描かれた年代についての意見も付け加わった。より詳細なファクト(事実)となったので、発言者もその意見を聞いている人達も、より描かれている椅子への理解が深まった。

○鑑賞者の意見の小まとめも、鑑賞者の思考の流れの節目でおさえられていた。
例)作品に描かれている物について大まかに出たころ、椅子の置かれている状況や椅子の上にあるものとの関係について意見が出たところなど。

◎椅子の置かれている状況について一通り意見が出たころに、「こういう状況にある椅子とは、どのような椅子なのでしょうか?」と「そこからどう思う。」というトゥルース(真実)を考えることを促されていた。そこから思考が促され、「(今までの意見)この椅子を使っていた人の人柄など」プラス「この椅子を使っていた人はもういないのでは。その人との思い出を作者が描いている。」といった作画の意図のような意見が出ることがあった。

○言い換えについても、適宜、端的に表されていた。
例)タマネギの芽が出ていて長い時間が経って・・・→「時間の経過を表している」
補足説明として、農家でタマネギがそのままに置かれていて食べられずにあった・・・
と説明があり、なぜタマネギの芽がでることが時間の経過を表すのかイメージがしやすかった。

◎「Vincent」のサインについても、アルファベットが書かれているから英語圏の生活空間が描かれているのかと尋ねたところも、根拠を客観的で確かなものにするためにとても良かった。

○ドアの前に椅子が描かれている不自然さから、「たずねてきて欲しくない、または、誰も訪れる可能性がない」という二通りの意見を考える方がいて、鑑賞者自身が客観的な根拠から複数の見方を考えられているところが素晴らしいと思った。最終的にその人は、自分の見方を深められる人だと思われた。

○まだまだ、話は尽きないという終わり方で、鑑賞者自身が見ながら考え、他者と関わることを楽しんでいらっしゃったことが伝わってきた。 房野さん、有難うございました。

<鑑賞者の感想>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・美術の講師をすることになって鑑賞をどのように進めていいのかわからなかったので、勉強しに来ました。新しい作家さんや今まだ生きておられる方の作品は作家自ら作品の意味等を語ることもあると思いますが、古い作品や本などで有名な作品などはこの絵がどういう意味を持って描かれたのかなど、わからないことも多いです。みんなで見て、考えて、話すことでたくさんの発見があり、気づきがあって、素晴らしいなと思いました。これからもたくさんの作品に触れていきたいと思います。

・人の意見を聞くことによる気づきが楽しい。(自分では発見できなかったことがわかる)学習は自分で発見していくのも楽しいと思うけれど、一緒に発見できるのはもっと楽しいのかもしれないと思いました。ファシリテーターをうまくできたらいいなぁと思いました。これからの参考にしていきたいです。ありがとうございました。美術館の企画展も楽しかったです。美術はいろいろな発見をさせてくれるものだと、この会からも、この美術館からも感じました。
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「鑑賞者の意をくみ取る」「的確にパラフレーズするための語彙力を身に着ける」というスキルをもっともっと私自身、向上させたいものです。こうしたスキルは鑑賞教育のみならず、コミュニケーションの力そのものでもありますから。そのためには自身のナビ経験や客観的なアドバイスが必要です。それらを得ようと仲間が集まってできたのがこの「みるみるの会」。月に一回、経験を積み、仲間とイロイロ語り合えることが何よりのスキルアップにつながります。
対話型鑑賞や美術教育などに興味を持たれたら、鑑賞会へどうぞ!もちろんみるみるの仲間としても、いつでも門戸は開いていますよ(^^)/



次回の鑑賞会は、6月10日(土)14:00~15:00 浜田市世界こども美術館 企画展示室にて
こども美術館の企画展「山﨑修二と山﨑に学んだ女流画家展」とのコラボイベント「対話型鑑賞のつどい」です。
事前申し込みなく、当日どなたでもご参加いただけます。
☆展覧会「山﨑修二と山﨑に学んだ女流画家展」の観覧料が必要です。


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