ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

美術館でのイベントのお知らせ(2018年5~7月)

2018-05-20 08:38:16 | 対話型鑑賞
安来市と浜田市にある美術館の特別展等関連イベントとして、対話型鑑賞会を行います。

安来市加納美術館では、特別展「名品と出会う」にて
鑑賞ワークショップ「みるみると見てみる?」
5月27日(日) 13:30~15:00



浜田市世界こども美術館では、企画展「はまだの風景画展」にて
関連イベント「みるみるとみて話そう」
6月9日(土) 14:00~15:00
7月7日(土) 14:00~15:00
(5・4階 企画展示室にて)


どちらの美術館も事前申し込みの必要はなく、当日どなたでもご参加いただけます(展覧会の観覧料は必要です)。

対話型鑑賞会に参加するのは初めてという方や、お子さまの参加も大歓迎です!
(話せるか心配な方も、参加されている方々のお話をきくだけでも楽しいですよ。
また、子どもたちのするどい発見や素朴な問いに、大人たちがうなる場面もしばしばです)

みるみるの会メンバーと一緒に、対話をしながら楽しく作品を味わってみませんか?

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安来市加納美術館での「みるみると見てみる?」③レポートをお届けします!(2018,4,22開催)

2018-05-13 19:46:31 | 対話型鑑賞

4月22日の「みるみると見てみる?」、3作品目のレポートをお届けします。ナビゲーターは、房野さんです。

2018.4.22(日)安来市立加納美術館 特別展 「名品と出会う」
鑑賞作品:「小春日」油彩 松田 文雄(1946年)作 公益財団糖業協会蔵
ナビゲーター:房野  
鑑賞者:16名(内みるみる会員2名、美術館スタッフ2名)

 今回の展覧会は「日本近代洋画展」ということもあって、第2次世界大戦の前後を生きた画家の作品を鑑賞することができました。ポスターの「美術の教科書に出てくる画家が勢ぞろい」のコピー通り、小作品ながらも見ごたえのある作品ばかりです。
 三人のみるみる会員でそれぞれナビをする作品を選んだところ、ちょうど展示室が3か所に分かれていたので制作年の古い順に鑑賞することになりました。わたしが選んだのは、戦後すぐに、子どもが3人描かれた油絵です。とてもかわいらしい姉妹と思われる絵で、一番上の姉はまだ乳飲み子であろう赤ちゃんをおぶいひもで背中に背負っています。姉もその下の妹もまだあどけなく、綿の入った着物で着ぶくれしている姿は寒い季節だということを物語っています。
 今回、鑑賞者の中には3人の小学生くらいのお子さんも参加していました。2番目の作品「上海」の鑑賞から加わっていて、金谷ナビも何度かこの子たちに意見を求めましたが、途中からだったためか、大人の中で気後れしたのか、その時は意見を言うことができませんでした。対話型鑑賞は年齢に関係なく、一緒に対話できるのがいいところです。ぜひ、異年齢の意見をシェアしてもらおうと、私は第一声を子どもたちに委ねました。まず始めに見えているものから語るほうが発言しやすいということもあります。なんだか言いたげな様子が見られる一番下の妹さんに「何が見えますか?」と尋ねると「子どもが立ってる。女の子。姉妹だと思う。顔が似てるから。髪型も一緒。」と答えてくれ、続いて上のお兄ちゃんたちも今度は臆することなくどんどん手を挙げて意見を言ってくれました。「太陽の光がこの子たちの前から当たっている。影が後ろにあるから。」と真ん中の男の子が言うと、一番上のお兄ちゃんが「影が少し斜めに傾いているから、真正面じゃなくて、左斜め上からだと思う。」などなど、とても細やかな観察眼です。子どもたちは前作の大人たちの鑑賞の様子を見て、本当はいろいろと気づいたことがあったのでしょう。前回言えなかった分、今度は言おう!というモチベーションにつながっているのがわかりました。沈黙しているから何も感じていないわけではないのです。きっと、じ~っくり「みて」「聴いて」「考えて」いたのですね。今回は「話す」ことで、周りの大人たちを「おお~」「なるほど!」と感心させることができました。大人から子どもまで、ひとつの作品をじっくり眺め、味わう・・・これは美術作品との出会いとしてはきっと幸せな経験だったことでしょう。大人は子どもたちの素朴ながらも鋭い感性に感動し、子どもたちは(本当は子どもに限らず誰しも)鑑賞には色々な視点や、時代などと絡めた見方があることを学ぶことができます。そのダイナミズムと言ったら!対話型鑑賞をやっていて毎回嬉しくなる瞬間です。

鑑賞の対話の中で
「冬枯れたバックの風景や『小春日』というタイトルからも秋から初冬にかけての季節であり、そんな中で日差しが温かく感じられる晴れた日」「妹たちはピンクの柄のかわいらしい華やかな着物を着ているが、一番上の姉の着物はぶかぶかした地味な着物で、大人のおさがりを着せられている感じ。妹たちの着ているものも、きっと、姉のおさがりなのであろう。」「中の妹の足袋の親指に穴が開いている。決して豊かではないが、物を大事にしながら堅実に生きている様子がうかがえる。」「戦後でも着物や草履姿なので田舎に住んでいる子ども」「子どもの頬がふっくらとしているので、戦中でも割と食料があった田舎と言えるのでは」「姉は妹たちの世話を任せられて少し疲れている表情。姉の健気さが伝わる。」など、作品のモチーフから様々な読み取りをしていきました。そんな中、神学芸員さんから「これは1946年の12月に描かれた作品。戦争が終わった冬の様子です。」という情報を得ました。そこから「春でも夏でもない、冬に温かい日差しを感じる日が描かれているということは、暗い戦争の時代を経て、もう怖い思いをしなくてもいい、明るい未来を見つめていけるという人々の心情に通じるのでは」と、戦中・戦後の人々の思いとこの作品がつながるような意見がありました。「かわいらしい柄の着物も、戦中に都会から田舎に着物と農家の食料とを交換したときに得られたものかもしれない。そうであれば戦争が終わって、やっと華やかな着物を着ることができるようになったのだろう。」これらは様々なモチーフから読み取ったことを総合して「そこからどう考えられるか」という一段と深い読み取りになる瞬間でした!
 こうなるとこの作品が <田舎の三姉妹のかわいらしさを描いただけの絵> には見えなくなってきました。初見から、「子どもたちが印象的だな」と心に引っかかる作品でしたが、皆さんの意見を聞くにつけ、「そうか、そういうことか!」とその引っかかりの正体が見えてきたように感じました。ナビをしながら私自身が皆さんに教えていただき、発見することができた鑑賞会となりました。ありがとうございました。

以下はみるみる会員からの意見です。
<春日より>
 作品が子どもを引き付けたと思う。子どもの発言に触発されて、大人もより一層作品をよくみようとしていたと思う。3作品目だったので、鑑賞者も話すことに慣れ、話しやすい空気も醸成されていた。
 くどくないパラフレーズがもっと出来るようになるとよいのか?次々に手が挙がるときのパラフレーズが端的だと、会話がもっと小気味よくつながっていくのではないかと感じる場面が何度かあった。
 また、途切れなく発言があると、一つの解釈に向かうというより、散漫になりがちな気がするので、サマライズしながら解釈に向かうとよいのではないか?作品から受け取るメッセージについて語ってもらう時間がもっとあってもよかったのではないか?
 解釈について語っている人もいれば、みつけたものについて語る人もいて、それなら、みつけたものについてしっかり語ってもらって、それを確認して、では、そこからどう思う?に明確にシフトチェンジ出来たらよかったのではないか?

<金谷より>
 トークの要所要所でポインティングをされていて、どこの話をしているのか(参加者が多かったこともあり)少し遠くからでもわかりやすかったです。
 金谷が「題名は初冬の頃を表しているけれども、姉の顔のそばにつぼみのような花のようなものも見える」という内容の発言をしたときに、それらを画面左上にのぞく青空とつなげて返されました。その言葉をきいたとき、自分は青空を意識していなかったことに気がつきました。ナビの言葉によって、自分の言いたかったことが整理されるだけではなく、視界も拡げてもらいました。自分の中から出た言葉を、ナビに返してもらうことで改めて腑に落ちたり、自分が考えていたことに自分で納得したりするという体験をしたように思います。
 また、参加していた子どもたちの手の挙げ方をみていて、脳内がスパークしているような感じを受けました。興味があるものに対する子どもたちの素直な反応が、まぶしかったです。

 毎回ナビをする度に多くの反省点がありますが、それに勝る喜びがナビへのモチベーションになっています。鑑賞者の皆さんにも「楽しかったな、また行こう!」と思っていただけるようなひと時を提供すべく、精進したいと思います。

 ぜひ、次回、5月27日(日)13:30に、安来市加納美術館へお越しください。「みるみると見てみる?」やっています!

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安来市加納美術館での「みるみると見てみる?」レポート②をお届けします!

2018-05-06 13:48:12 | 対話型鑑賞
みるみるの会の金谷です。4月22日に安来市加納美術館にて、特別展「名品と出会う」の鑑賞ワークショップ「みるみると見てみる?」のナビゲーター(ナビ)をしました。その様子をレポートします。

日時:平成30年4月22日(日) 14:05~14:25
場所:安来市加納美術館
作品名:「上海」野口弥太郎 1941年(昭和16年) 公益社団法人糖業協会蔵
ナビゲーター:金谷直美  参加者:12名(内みるみる会員2名)

<はじめに>
 実は安来市加納美術館には、今回初めておじゃましました。「安来駅から車で30分かかりますよ」と聞いていたのですが、新緑が美しい山々を見ながらのドライブで美術館まであっという間でした。
 美術館に着くと、年代順に構成された展示室を2階から順にみていき、「あっこれは、あのポスターの作品だ!」「これ、かわいいなぁ」など、わくわくしながらナビをする作品を考えていたとき、「上海」の前でふと足が止まりました。風景を描いた作品なのですが、人々のにぎわいや街の活気が伝わってくるような感じがして心惹かれました。展示場所や作品の大きさも含めて、人数が少し多くてもみやすく、楽しく対話をすることができそうだな、そう思って「上海」のナビに挑戦しました。

<鑑賞会から>
 「海が白い」という発言から、対話がスタートしました。確かに、言われてみると画面向かって右側の船や波が描かれているところは白っぽいのです(私自身、発言を聴いて気が付きました)。その発言を受けて、「海などの水辺は、青や緑などで描かれるという既成概念に気が付いた」という発言がありました。確かに「みていた」けれども、言語化する(される)ことで「意識してみる」ことができるんだということを改めて感じました。
 その後も、船に国旗らしいものがあるところから、海外との交流が考えられたり、筆でさっと描いたような線なのだけど人というのがわかる等々、描かれているものやお互いの話から発見や想像が広がっていきました。作品が描かれたのが1941年(昭和16年)ということから、この作品の前にみた「朝」でも話題にあがった戦争の影響についても語られました。はじめは、まだ街に行きかう人も多く戦争の影響はあまりないという感じだったのですが、よくみると軍艦らしきものが描かれていたり、画面中ほどにある木が強い風に吹かれているようみえたり、その木のようなものが怪獣にもみえたりすることなどから、戦争という時代の強い風や得体のしれない不気味なものが、この街にも忍び寄ってきているのではという解釈もうまれました。この作品は、高い場所から街を俯瞰するような構図で描かれているのですが、もしかすると作者は時代の流れも俯瞰していたのかもしれないと対話を重ねる中で考えることができました。実際に目で見える世界(風景)と、目には見えないけれどもその時の時代の流れが、重なり合い溶け合ってこの「上海」という作品を作り上げているように思いました。

<ナビへのコメント① みるみるの会 春日さん>
 和やかな雰囲気で話しやすさを感じた。
 のっけから、絵画に関する専門的な発言だったが、次の人が話しやすいように、パラフレーズしていた。人の描き方についての発言で、生き生きとした躍動感のある街の様子が語られて、一気に作品の核心に迫っていったように思う。
 手前の大きな船の旗(細かいが)から国籍を発見し、時代と重ねて、自国に戦禍を逃れるために帰国しようとしているという読み取りができたのも秀逸だった。1作品目より、より詳細にみようとしていたように思う。
 戦争に差し掛かっている時期であることの手掛かりを作品の中に探そうとする意欲もあり、軍艦のような灰色の鉄?船を見つけることもできた。
 タイトルや描かれた年代、そういう情報も手掛かりにしながら作品を多角的にみようとする意識が鑑賞者の中に芽生えていたと思う。
 何度も子どもの鑑賞者に発言を促していたが、かなわなかった。しかし、それは次作の、発言につながる働きかけだったと思う。子どもたちも、「何か話そう。」という意識を持っていたと思う。
 最後に切り上げ時についてどうだったかについて助言を求めていたが、確かに終わるタイミングはあったと思う。そこで、切り上げるとしたら、どんな風に締めくくったのか?が、イメージできているか?切り上げなかったのは、時間がまだ来ていないという理由だけだったのか?もっと話したいと思う仕掛けができたか?そのあたりを整理してみるとよいのでは?

<ナビへのコメント② みるみるの会 房野さん>
 にぎやかな湾岸都市の風景画が、じっくり見るにつけ、だんだん戦争の足跡が忍び寄っているような、不穏な空気を感じる作品だと感じるようになったのは鑑賞していて刺激的でした。人物がはっきり描かれていない風景画を選択することは、鑑賞者が初心者の場合にはハードルが高いように感じますが、こんなにも深く、世界情勢や、その当時の空気感などを感じることができたことにワクワクしました。金谷さんの選択眼に感心です!金谷さんの笑顔や明るい語り口が鑑賞者の気持ちをほぐして、語りやすい雰囲気を醸していたと思います。金谷ナビの素敵なところだと思います。素朴な意見から、専門的な意見、歴史を踏まえた意見、突拍子もない意見、様々でバラエティー豊かな鑑賞会でした。それを交通整理するのは大変だったと思いますが、脱線しすぎることなく一気に短時間で深まったという印象でした。
 偶然ではありましたが、春日さんに続き、「上海」でリンクしていたのも当時の日本とアジアの関係も感じることができて、より鑑賞に役立ったのでは??今回は近代の絵画ばかりなので、どうしても戦争が影響しているということがいやおうなしに感じられ、それが私にとって発見となりました。時代から先入観を持って鑑賞したわけではなかったのですが、年代という情報と、作品中のモチーフや描かれ方からは、よく見れば見るほど、戦争の影を感じてしまいました。画家が生きた時代の空気は、作品に多かれ少なかれ影響するものなのですね。

<自身のふり返りから>
 「えっ!まだ、15分!?」この作品をみなさんと対話を重ねながら鑑賞する中で、自分の想像を超える作品の面白さや深さにたいへん驚きながらも、そろそろ終了かなと、時計をちらっと見たときのこころの声が、冒頭の言葉です。「今回は、3作品で90分だからナビ一人当たり30分!短すぎるんじゃないかい!?」と、瞬間的に慌てました。後で、冷静になって考えれば、短時間でも対話が充実し作品について語り合えたので、思い切ってそこで終わればよかったように思えます。ふり返ると、作品の部分部分をもう少し丁寧にみていけばよかったところもありました。しかし、いくつもの支流が集まりひとつの大きな流れができたところで、また支流をさかのぼろうとすることは、今回の対話の流れに合っていないように思いました。時間を意識しすぎたため、鑑賞の終わりの見極めがぶれてしまいました。
 今までの(他美術館等での)自分のナビを振り返ったとき、あっという間に30分が経っていたということはあったのですが、短時間で一気に話が深まったということはなかったように思います。だからこそ、慌ててしまったのですが、ほんとうに貴重な経験をさせていただきました。今更ですが、一緒に鑑賞してくださったみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。「みなさんが、積極的に作品をよくみて、考え、お互いの話を聴きながら、たくさん発言してくださったので、この作品について一緒に深く考えることができました。でも、実は始めてから、たった15分しか経っていないのです!対話の力、みなさんがもっておられる力って素晴らしいですね!」と、その場で言えるようにチャレンジを続け、経験値をあげていきたいです。
 すてきな作品と出会えたこと、そして美術館に来てくださったみなさんとの一期一会の出会いに感謝します。まさに「名品(人)と出会う」でした。ありがとうございました。


安来市加納美術館 特別展「名品と出会う」鑑賞ワークショップ「みるみると見てみる?」
日時:5月27日(日)13:30~15:00
すてきな作品が、あなたとの出会いを待っています。安来市加納美術館へ、会いにきてみませんか?
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