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ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

9月の鑑賞会レポート「コドクナオトシモノ」です!(2017,9,9開催)

2017-09-24 11:07:15 | 対話型鑑賞

浜田市世界こども美術館で行われた、月例鑑賞会のレポートが届きました。



日 時:2017年9月9日(土) 14:40〜15:00
場 所:浜田市世界こども美術館コレクション室
作 品:『コドクナオトシモノ』大谷千恵 染色画 制作年不明
参加者:7名(内みるみる会員4名)
ナ ビ:松田 淳

 今回のコレクション展に並ぶ作品を見渡した時に、人それぞれにいろいろな感じ方や考え方ができそうな作品だと思い、この作品を選びました。初めて対話型鑑賞に参加される方もおられたので、自分で見て感じたことを言葉にし、人の話も聞きながらまたさらに見方を深め、この鑑賞の楽しさを味わってほしいと思い、鑑賞会を始めました。

 はじめにみるみるの鑑賞会のリピーターである男性が「波や貝があり、海に関係するものが描かれている。でも、この絵はシュルレアリスムの表現であって、おそらく描かれているものや、それぞれの関係に深い意味はないと思う」と発言されました。ナビの私は、「シュルレアリスムという、超現実的な表現だから描いているものに意味はないということでした」と単純に発言を繰り返したつもりで全体に返しました。このことについては、あとの振り返りのミーティングで、シュルレアリスムとは超現実的な絵であり、描かれているものに意味はないという解説にも聞こえ、誤解が生じる可能性のあると指摘を受けました。シュルレアリスムの解釈について、発言された方に聞き返してみるなどして、みなさんと共有できるとよかったかもしれないというご意見もいただきました。

 続けて、初参加の男性が発言されました。小学校の教員で、少し前にみるみる会員が、その男性の担任する学級で対話型鑑賞の出前授業をしたところ、関心が高くなり今回参加してくださいました。「右下の溜まって垂れている水が涙に見える。色からも全体に悲しい感じがして、左上の方は過去の良かった頃の自分で、手前が今の悲しい自分の状態を表していると思う」とこの絵に込められた思いの部分を想像して話されました。

 このあとに、一緒に参加してくれた同じく初参加の女性が、「ほとんどが貝なのに、ひとつだけ鍵のような人工物が見えるが、何の意味があるのかなあと思った」と発言してくれました。これを何ととらえ、貝などとの関係性を想像することで、さらにトークが盛り上がるかもと期待できるような発言でした。
「このものについて皆様はいかがでしょうか?」と聞いたところ、リピーターの男性が「やはりこれにも深い意味はないと思う」と一貫した考え方で答えられました。そのあと別の方からこれについての発言はなく、結果的に深めていくことにはつなげられませんでした。このことも、もしかすると私がはじめに「シュルレアリスムとは意味のないものが組み合わされて描いてある絵」という誤解を与えるようなナビをしたからなのかもしれないと今は思います。

 今回は30分以内で終わろうと考えていて、さらに自分はパラフレーズに課題があり、話した人の解釈とズレが生じることもあるため、今回はパラフレーズを極端に短くして時間短縮を図りました。このことは、テンポよく進んで、軽やかな進行がここちよくて新鮮だったという肯定的な意見と、やはり共通認識を図るためにパラフレーズは有効で、ある意味ファシリテートの放棄にも捉えられるという否定的な意見のどちらもが振り返りであげられました。

 そのあとに、みるみる会員が「今、お二人が、描かれているものから想像してお話されたり、描かれているものに意味を考えなくてよいとおっしゃったりしましたが、この絵はそんなふうにそのときそのときで見え方が違う絵だと思いました。体調によっても違う見え方をするのだと思います」と、どちらの見方も肯定されるような発言をしてくれました。その方が振り返りで、この絵のタイトルが『コドクナオトシモノ』であることを途中で示してもよかった(今回は最後までキャプションは隠していた)と思ったと言われました。タイトルを知ると、シュルレアリスムではなく、心象表現としての絵であることが明らかとなり、描かれているものと描かれ方などからもっと話ができたのではとアドバイスをもらい、なるほどと思いました。

 後半に入り、手前のブロックの囲いや、真ん中の立方体の枠など、やはり描かれているものの“意味”について想像する発言が続いたところで、シュルレアリスムだから深い意味はないとされていた方が、「波だとみなさんが考えていた連続する曲線が、女性の体に見えてきた。そう思うと貝などの意味も違って考えられてきた」と発言されました。他の人たちの話をじっくり聞きながら考え、ご自分の新しい見方に気付いたのではないかと思います。

 20分という短い時間ではありましたが、参加者のみなさんの積極的な発言や、他の方の発言を尊重しての意見によって、充実した鑑賞会になりました。せっかくなので、最後に初参加の男性に感想を言ってもらいました。こんなにひとつの絵をじっくり見たのは初めてで、感じたことをある意味自由に話し合えるので、自分の担任する学級の子どもたちにもできそうだと話されました。リピーターの男性に、この会に続けて参加してくださる理由について聞くと、やはり絵をじっくり鑑賞することがよい、美術館にいったりすると鑑賞時間がすごく長くなってしまうようになったと笑って話されました。とてもうれしい言葉でした。
 参加してくださったみなさま、ありがとうございました。
 

 次回の鑑賞会は10月14日(土)14:00~浜田市世界こども美術館にて。
秋のひと時、一つの作品をじっくりとみて、感じたことを話し合ってみませんか?
ご来館をお待ちしております。

出雲文化伝承館での鑑賞会レポートその③「胎動」(2017,8,20)

2017-09-17 09:27:33 | 対話型鑑賞
 
出雲文化伝承館の企画展「郷土の洋画家展」にあわせて開催した、対話型鑑賞会のレポートが届きました!


日時:2017.8.20(日)11:00~
場所:出雲文化伝承館  展示室
作品:春日裕次 作「胎動」 2016年  油彩  
ナビゲーター:房野伸枝   参加者:20名

 第3回目の鑑賞に選んだのは、人物とバイクが描かれた一見とても写実的な作品。ですが、よく見ると身体の一部が透けてバイクとオーバーラップしていたり、青年も上半身が裸で、意味ありげなポーズをしていたり、題名も「胎動」という、様々な想像をかき立てる油彩画です。「よく見るといろいろな疑問や発見がある」というのが、この鑑賞法にとても重要です。「こんなふうに表現したのはなぜだろう??」という疑問が自然に沸き上がり、それをみんなで考え、対話しながら答えを探っていくのはスリリングでワクワクする体験になるはず。この作品なら対話がとても盛り上がりそう!と直感して、私が一番気になった「何かを持っているような手のポーズ」を、鑑賞者はどう解釈するのか聞いてみたいとも思い、ナビを開始しました。

 出雲伝承館では1・2回目の対話型鑑賞を体験して、リピーターになっている方も若干おられるとのことでしたが、初心者の方も多数と聞いたので、一番の目標は、「この鑑賞法を通して、作品をみる楽しみ方を知っていただく」ということに重点を置きました。そのために私が強調したのは
①どんな些細な発見でも「こんなこと言っていいのかしら」と思わず、発言してOK!
②答えは一つではありません。それぞれが感じたことが全て大切な意見です。
③みんなで対話しながら見ていくと、一人で見たはじめの印象がどんどん変わって、いろんなことに気付いていきます。
ということでした。鑑賞中に「なんだかいいな」「なんとなく楽しいな」と、様々に変わっていく漠然とした感情や思いを、ナビが③のように「解説」することで「認識」として定着してもらいたいと思ったのです。

~鑑賞会の流れ~ 「   」は鑑賞者の意見
 前半は「バイクがある」「バイクの前に青年が立っていて、バイクから湯気のようなものが出ていることから、バイクを走らせた後、降りたところ」「ところどころに青い空間が見えるから、向こうに青空が広がっている」のように、発見したモチーフについての発言でした。その後、「体が透けて背景が見えているところがある」という発見から「これは本当に人?ヘルメットもかぶっていないし、服も着ていないから乗っていたとは限らない。」「バイク事故で亡くなった人の霊魂では。」「バイクも人も色調が渋めで調和していていい」「人物の右側と左側の色調が微妙に違う。(向かって左に描かれている)右手は暗いが、左手は明るい。左右が相反しているのはどうしてでしょう?」と、モチーフからイメージをしたことや疑問が出てきました。それを聞いた鑑賞者は、自分なりにその答えを探ろうと、さらにじっくりと作品を見つめるのでした。
 中盤、「タイトルが『胎動』とある。赤ちゃんの鼓動とバイクのエンジンをかける振動が共通しているので、バイクが青年で、青年がバイクでもある、青年とバイクは一体なのでは。バイクを人に表現するとこのような青年になるということを表現している。左右の違いは、バイクの心臓部であるエンジンのある右側が駆動する「動」を表現するため明るめにくっきりした色調で、その反対側は「静」を表現するために暗く描き分けたのでは」という、それまで出た発言からさらに解釈へ移った瞬間が来ました。「ところどころある朱色の線は何だろう?」という鑑賞者からの問いには「バイクは本来金属で冷たいものだが、先ほど青年とバイクが一体であるということから、血の通った肉体的なイメージ、バイクが動くときに熱を帯びる、熱いものがあるというのをあの朱色に感じる」となど、ナビが投げかけなくても、鑑賞者同士で作品の中に疑問や根拠を見つけて、さらに解釈へとシフトチェンジしていくのを感じました。
 この会場の鑑賞会3回目の参加の方が、「初めて見た時に感じたものと、今はずいぶん見方が変わった。皆さんの意見を聞いているうちに、最初、何かわからず疑問に思っていたところが、バイクのマフラーが透けていたんだと自分で気づきました。」と発言してくださいました。これこそまさに、今回鑑賞者に私が感じてほしかったことです!

 後半は「青年が港までバイクできて、海を見つめている」「はじめ後ろの青は空だと思ったが、下の青は海に見えてきて、後ろの白いモノが夏の雲に見える。夏という季節から若者が持っている若々しさ、秘めたエネルギーを一緒に描こうとしたのではないか。」「バイクが置いてあるにしては影がない、浮いている??と思ったが、皆さんの意見から、心象を描いているというのを聞いて納得した。」「バイクが2台ある?」「2台じゃなくて、上のバイクの一部が下にも構成してあるのでは」「バイクの力強さ、若者の強さ、若さ、エネルギーがリンクしていて、象徴し合っている。」「若々しさを派手な色で表現するのではなく、ダークな色調で抑えることで心情に訴えている。」
 ――ここまでで、30分経ちましたが、まだまだ言い足りなさそうな皆さんの様子をみて、もうしばらく続けることに。
 「この青年は顔を見ると若く見えるが、実は20代の青年ではなく、肉体をみれば、鍛えた50代くらいに見える。」「このバイクの型は、割と昔のものでは。」「背景も左右で違うものを描いているし、この作品が写実的なものを描いたのではなく、心象風景を再構成したもの。」「若いころからバイクが好きで、バイクに乗る男の人のロマンや憧れ、を何年経っても持ち続けている」「遠くを見ているような表情。顔の右側がぼんやりしているのは昔の自分を懐かしんでいるように見える。」のように、作品から物語性や心情に訴えるものがあることをみんなで共有することができました。
 「表面がキラキラしているのは?」という疑問に館長さんから<技法>や<光るが故のライトの当て方の苦労>などの情報も頂けました。「色は地味で落ち着いた感じだけど、キラキラしているのは、若さを表現している、渋いけど光っているという表現では」などなど、トークは尽きず、40分間があっという間に過ぎたのでした。

~ふりかえりより~
 鑑賞者の皆さんは、湧き上がるたくさんの疑問に対して、自分なりに作品から根拠を探して答えを見つけようとしておられました。対話の中で、他の方の意見から、または自ら見つけて「そうか!なるほど!」という瞬間を味わうことができたのではないでしょうか。
 反省点としては、ナビが根拠を聞くことが少なく、パラフレーズにナビの思いを乗せすぎたこと。ナビも一(いち)鑑賞者として意見をいうことはあっても、それを鑑賞者の言葉に加えすぎると鑑賞者の思いと乖離することがあります。パラフレーズではあくまでも発表者の意見を尊重し、時にはパラフレーズがきちんと発表者の意をくんでいるか、確認をすることも必要。先読みしすぎて、発表者が言っていないことまでナビが補足するのことは避けるべきだという指摘を受けました。時にはわからないふり(・・)をして「もっと詳しく言ってもらえませんか?」と返すテクニックも取り入れては、というアドバイスをもらいました。

 それにしても、皆さんの発表が絶え間なく続いたものですから、ついつい、その流れに乗ってしまいました。当初、聞きたいと思っていた「手のポーズの意味」に話を持っていきそびれてしまったのが残念!と私が言うと「手について意見が出た時に、『この手の形についてはどう考えますか?』と聴くチャンスがあったのに…((+_+))」と指摘され、「しまった!あの時だったか!」と後悔。私なりの解釈としては、「胎動」というタイトルからも、描かれたモチーフからも、バイクの心臓部であるエンジンの振動を、青年が生きている証、として表現しているように感じました。直に手に感じる鼓動(エンジンの振動)を味わっているかのようなポーズは、まるで見えない心臓を手にしているようにも見えたのです。他の方はどう感じるのか聞いてみたかったなあ…。と、まだまだ話は尽きない作品でした。
 この機会を下さった出雲文化伝承館の皆様、集まってくださった皆様、楽しいひと時をありがとうございました。


次回のみるみるの会の月例鑑賞会は10月14日(土)14:00~浜田市世界こども美術館にて。
みるみるメンバーとともに作品について語り合い、楽しいひと時を過ごしてみませんか。




出雲文化伝承館での鑑賞会レポートその②「Piazza」(2017.8.12開催)

2017-09-10 08:24:07 | 対話型鑑賞

出雲文化伝承館の企画展「郷土の洋画家展」にあわせて開催した、対話型鑑賞会のレポートが届きました!


出雲文化伝承館の企画展「郷土の洋画家展」
2017.8.12(土)11:00~
鑑賞作品 Piazza (広場) 北本雅己
鑑賞者 15名(うち学生3名)
ナビゲーター 春日美由紀

 お盆前の土曜日の開催であった。知人や知人の友人に声をかけてもらうように依頼していたため、たくさんの参加者(鑑賞者)であった。
 制作者が作品について語るギャラリートークなどは一般的になっており、参加して話しを「聞いた」ことはある方もおられた。しかし、作品をみて、自分が思ったり感じたりしたことを「話す」ことはハードルが高いようで、「参加するけど、話さなくてもいいでしょ。」とわざわざ確認される方もいたくらいだ。このような方に「話す」ことをしていただくためには「話したくなる」ようにナビしていく必要がある。「すごいこと」を話すのではなく、些細なことでも「発見したこと」を話せばいいのだと分かれば「話す」だろうし「話したくなる」のではないかと思い、鑑賞会を始めた。
 この作品は130号の大作でかなり大きい。参加者には全体がみえるように少し後ろ目に椅子を配置したので、開始後、近づいてよくみてもらうように声をかけた。結構時間をかけてみていた。み終ると三々五々着席されたので全員が座ってから始めた。

 「誰からでも、この作品をみて、感じたことや考えたことを話してください。」なかなか手が挙がらない・・・。ので、前の方に座っていた男子中学生に「どうですか?」と促すと、「真ん中に男の人がいる。何かパフォーマンスを始めようとしている。」「始めようとしている。」と思ったのは「どこから?」「近くにハトがいるけど、動きが始まると飛び立っていないと思うので、まだいるから、始まったばかり・・・。」「すごいね。そこまで考えていたんだ。ハトが飛び立たず、まだ、ここ(ハトの場所を指さしながら)にいるから、始まったばかりだと思ったのね。ありがとう。」「他には?」近くの女子中学生にも訊く。「私も始まったばかりだと思う。まだ、お金が入ってないから。」「お金?お金って、どういうことかな?」「ここで、芸をやってお金をもらうのだと思う。でも、お金を入れる帽子にお金が入っていないから、まだ、始まったばかりだと思う。」と自説を展開した。この中学生の発言に後押しされて、大人も話し始める。「後ろの人は、芸をみている人もいるけど、通り過ぎている人もいる。」「どれだけの芸をやるのか品定めしている。」「お年寄りと孫がいる。お年寄りが(芸を)みるのを促しているけど、孫は興味がなさそう。」「お年寄りはお祖母さんだと思う。スカートをはいているから。」「冬だと思う。みんな厚着で、防寒着のようなものを着ているから。」「外国の街。ヨーロッパかどこか。建物の様子から。」「あまり大きな街ではないと思う。広場の様子から。ちょっと田舎?」
「季節は寒い頃。冬?という意見が出ていますが、時刻はどうでしょう?」と訊ねると「夕方。左端の女の人が大きなバッグを抱えているので買い物に行く途中。」と小学生かなと思われる男の子が発言。他の意見は出ない。新たに「ここは少し小高いところにある広場だと思う。向こうの建物が下にあるように見えるから。」と広場の位置についての見解も出る。しかし、発言者の意見がなかなかつながらない。ナビが意図的に発言についてどう思うかの問いかけを繰り返し行っててみるが各人がそれぞれに自分の考えを話すばかりである。会話はつながっていかないが、作品の隅から隅まで参加者はよく「みて」「発見し」「考えて」いる様子はうかがえる。手も挙がらないが、当てると「話す」ので、「聴きながら考え、自分の見つけたことについて話す」ことはできるようになっていた。参加者に一通り発言をしてもらったところで開始から45分が経過していた。まだまだ話すことはありそうだったが、40分程度を予告していたので終わらせることにした。皆さん、45分も一つの作品について語っていたことに驚き、45分があっという間に過ぎていたように感じていたのか「皆さんと一つの作品について語り合ってきましたが、すでに45分が経過していています。」と話した時には「ええ~~~。」と驚きの声が上がるなか2回目の鑑賞会を終了した。
 
 参加者全員が全くの初対話型鑑賞者なので各自の「発見」をつなげて「そこからどう思う?」と問うのはハードルが高いのかもしれない。「みえているものについて考えたこと」を「どこからそう思った?」のか考えて「話す」だけでも貴重で楽しい体験になるのだろう。会を閉じた後に親しい参加者の何人かが「中央の人物について、もっと話したかった。」とか「後ろの見物人は15人と数えたけど、足だけ見えている人がもう一人いた。」など話し足りない様子の発言があった。終わった後にも作品について「話したい」と思うのは、作品に興味がわいた証拠であり、「作品をみて話すことは楽しい」と感じてくれたのなら、リピーターになってくれるだろうし、作品のひとつの鑑賞のあり方を身をもって感じてくれたことになるだけでも今回の取組は価値のあることになる。と思った。

 鑑賞中に「Piazza (広場)というタイトルだが、この絵がどうして広場なのか、広場らしい絵に見えない。」と発言された方がいた。その方に、最後に「やっぱり広場というタイトルにふさわしい作品だった。」と言わしめることができなかったのが心残りである。『「広場」というタイトルにふさわしい広がりはないが、大道芸者が画面の中央におり、それを取り巻くように人々が集い、思い思いの様相で居るところこそ広場なのではないか』というのは私なりのこの絵のざっくりした解釈であるが、このようなざっくりしたものでもよいので解釈を鑑賞者と共有することができればよかったというのが一番の反省である。
 ただ始まる前に「何も話さなくていいでしょ。」と言っていた知人が我慢できなくなって発言したことは私のお手柄ですかね?

 終わりになりましたが、お盆直前の貴重な土曜日に貴重なお時間をいただき楽しいひと時を過ごすことができました。ありがとうございました。


 次回のみるみるの会の月例鑑賞会は10月14日(土)14:00~浜田市世界こども美術館にて。
みるみるメンバーとともに作品について語り合い、楽しいひと時を過ごしてみませんか。

隠岐研修会「『三葉虫の化石』にさわって みよう・考えよう・話そう・きこう」のレポートです!(2017,8,3開催)

2017-09-02 07:27:10 | 対話型鑑賞
みるみる会員の正田さんから、隠岐研修会での「三葉虫」ワークショップのレポートが届きました。

≪隠岐研修会について≫
来年(平成30年)は、隠岐の島町で島根造形教育研究大会隠岐大会が開催されます。
この研究大会に向けて、隠岐郡の先生方や小中学生、保護者、地域の方々の造形教育に対する啓発研修とすることを目的に、
昨年度に引き続き隠岐にて夏季研修を開催しました。

「夏季研修会 IN 隠岐」
主催:隠岐郡教育研究会造形部会、後援:島根県造形教育研究会
協力:ART COMMUNICATION IN SHIMANEみるみるの会

8月3日(木) 島前・島後の2会場で開催
<海士町中央公民館>14:00~16:30
(1) ワークショップ(子ども対象)「『三葉虫の化石』にさわって みよう・考えよう・話そう・きこう」
講師:三重県総合博物館 館長 大野照文
 


<隠岐島文化会館>13:20~17:00
(1) 講義 「みる」ことから始まる「発見」そして「コミュニケーション」
講師:京都造形芸術大学 教授 福のり子
(2) ワークショップ(教員対象)「アートカードで鑑賞授業!」
担当:みるみるの会 金谷直美

8月4日(金)10:00~12:00、13:30~16:00
<海士町中央公民館>
(1)講義 「-生き延びるために-」
講師:京都造形芸術大学 教授 福のり子
(2)ワークショップ(子ども対象)「アートカードであそぼう!」
担当:みるみるの会 金谷直美 (※(1)講義と平行して開催)
(3) ワークショップ(子ども対象)「夏休み宿題お助け大作戦!」
担当:みるみるの会 春日美由紀



8月3日(木)
島前会場<海士町中央公民館>14:00~16:30
(1) ワークショップ(子ども対象)
「『三葉虫の化石』にさわって みよう・考えよう・話そう・きこう」
講師:三重県総合博物館 館長 大野照文 氏
参加者:海士町の各小学校放課後児童クラブの児童 16人 兄弟1人 保護者1名
    放課後児童クラブの指導員2名

 中央公民館に到着した子どもたちから大きな声で「こんにちは!」と挨拶の声が聞こえました。参加者がそろったところで、講師の大野先生の紹介をし、ワークショップを始めました。大野先生も、簡単な自己紹介ともに「今日の謎をみんなで解いてほしい。」とミッション開始です。

1.配られた化石をスケッチして、気づいたことをメモしてみよう!
 
 「今日はみんなと一緒に考えながら、ある生き物について謎を解き明かしていくぞぉ。みんなは、三葉虫という生き物を知っているかな。」大野先生の呼びかけに対して、「恐竜の時代に生きとったやつ。」「大昔の生き物~。」と一部の子どもが反応を返します。参加している子どもの中には興味津々で目を輝かす子もいれば、4月に小学校に入学したばかりの子もいて、これから何が始まるのか少しばかり不安そうな子もいるといった様子。
 そこで、大野先生が「これから三葉虫の化石を配るから、よぉ~くみてスケッチしてごらん。スケッチして気づいたことは、メモに残そう。」と子どもたちに近づきながら気さくに話しかけると、子どもたちと大野先生との心の距離も近づくようでした。順番に化石が配られると、子どもたちはスケッチにとりかかったり、友だちに配られた化石までのぞき込んだりと、徐々にリラックスモードになってきました。
 大野先生ワールドに引き込まれつつ、子どもたちは本来もっている好奇心がスイッチオン!

2.三葉虫の体のつくりを確認しよう!
 三葉虫のスケッチをおおむね終えると、1つのグループが前に出てきて、大野先生と三葉虫の体のつくりについて話しながら前のホワイトボードにスケッチを描いていきました。大野先生は子どもたちの意見を丁寧に聞きとり、その意見がみんなに届くようにホワイトボードの前で解説しながら大きく三葉虫のスケッチを描いていきました。
 「足の数はね27本だったよ。」「僕は25本だったよ。」「ここがふくらんでたよ。」と前に出てきた子どもたちは、化石から発見したことを話したくて、話したくて、うずうず…。だけど、友だちが話し始めたら自分とは違う意見にもしっかり耳を傾けられる子どもたち。
 すばらしい!!
 

3.謎解き1「三葉虫はどんな生き物の仲間かな?」
 三葉虫の化石から体の特徴を確かめ終えると、次は、三葉虫は何の生き物に似ているのか、グループで話合いをしました。「ワラジムシ」「ザリガニ」「ダンゴムシ」「トンボ」などなど、海や陸の生きる生きものの名前がたくさん出ました。「うんうん。」「あっ、そうかぁ。」「○○にも似とるよ。」一人一人が意見を発表し、それがきっかけでさらに意見が飛び交います。海士町の子どもたちは、友だちの意見をどんどん吸収していきながら自分の経験や考えとつなげている様子でした。
 子どもたちの頭の中では、化石の三葉虫がぐるぐると走り回ったりしているのでしょうか。

4.謎解き2「三葉虫の目にはどんな特徴があったのかな?」
 さぁ、次の謎解きです。三葉虫がどんな生き物の仲間か分かったところで、三葉虫の目はどんな特徴をもっていたのか考えることになりました。引率している児童クラブの指導員も子どもたちと一緒に話合いです。三葉虫を現代の生き物と比べて考えていた子どもたちは、硬い殻や足をもつ節足動物や昆虫の目に近い特徴をもつだろう、という予想をたてる子が多くいました。昆虫博士が何人もいて、「トンボのようにたくさん目がある。」「六角形の目がいくつもつながっているよ。」と発表が続きます。
 「どれくらい見えるのかな?」という大野先生の質問に「体の後ろまで見えると思うよ。」という返事がありました。
 普段見られない友だちの様子から、指導員やまわりの子どもたちも、改めて一人一人のよさを互いに発見した様子でした。
   

5.謎解き3「三葉虫はどうやって天敵から身を守っていたのかな?」
 いよいよ、三葉虫の生態に迫る質問です。グループでさらに話し合うこと10分。
「丸まって固まるよ。」「敵を早く見つけて逃げる。」「土の中にもぐるよ。」「腰アタック(攻撃)するよ。」「においを出して、敵が嫌がっている間に逃げるんだ。」などなど。
 そこで、大野先生が最初の三葉虫とは違う三葉虫の化石を取り出し、みんなで確かめ合うことになりました。
 
 多くの子が言っていた「体を丸めて身を守る三葉虫」は実際にいるのでしょうか。子どもたちはこれから何が出てくるのかドキドキで、大野先生の手元から目が離せません。
 その後、大野先生の手からはたくさんの「巨大ダンゴムシのような三葉虫の化石」が出てきました。予測が当たり、みんな大興奮です!!
何度も化石を触って丸まっている様子を確かめる子。紙の上で転がして逃げる様子を想像している子。丸まり具合をじっと見つめる子。自分の予測をそれぞれの感じ方で確かめていました。
 さらに「目をのばしている三葉虫」や「とげをいっぱいもっている三葉虫」の化石も見て、三葉虫もそれぞれのタイプで天敵からの逃げ方が違っていたということを学びました。天敵アノマロカリスにふんする大野先生から「三葉虫になって逃げてみよう!」と言われると、子どもたちは目を伸ばしてすばやく逃げようとし、その姿は古代の三葉虫さながらでした。
 最後に「三葉虫はどうやって成長していくのかな?」という問いに、昆虫のさなぎが成虫に変わる時の脱皮の様子を思い起こしながら、三葉虫になりきって脱皮ダンスを楽しみました。最初は、なかなか出にくそうに手を動かしている子どもたちも、最後は大きく腕を伸ばして、からを脱ぎきった三葉虫のようでした。
 大野先生ふんするアノマロカリスから何度も逃げたがる子や脱皮ダンスを繰り返しリクエストする子どもたちの様子は、今まで自ら考え、友だちとの学び合いで得た「生きた知識」を体で表現しているようでした。

 このように「生きた知識」は、新学習指導要領がめざす「主体的・対話的で深い学び」から生まれるものであり、子どもたちにとってこれからの学びの中でも科学的な思考の基礎となることでしょう。食い入るように化石を見つめ、真剣に友だちの意見を聴く海士町の子どもたちと出会い、すばらしい時間を参加者のみなさんとともに過ごさせていただきました。自然いっぱいの中で、多くの大人たちと関わりながら育っている海士町の子どもたちが、「みて・考えて・話して・聴く」という学びの過程を体験する中で、未来を力強く生きていってくれるのではないかと思いました。
 海士町教育委員会平木教育長様をはじめ海士町教育委員会の皆様のご協力のおかげで、たくさんの子どもたちの笑顔に出会うことができ、素晴らしい研修会となりました。また大野先生には大変多忙なスケジュールの中、出雲市教育研究会の研修講師に引き続き、隠岐研修会にも携わっていただき多くを学ばせていただきました。関係者の皆様に心よりお礼申しあげます。

☆参加した子どもたちの感想☆
・さんようちゅうのからだをさわってみて、でこぼこしていた。
・かせきをみてびっくりしました。
・かせきをみたりさわったりしました。わたしは、さわって上がぼこぼこになっていてびっくりしました。
・いろいろのかせきがみられてうれしかったです。いろいろなだっぴとかいろいろおぼえてたのしかったです。
・またいってみて、つぎは三ようちゅうのちがうかせきをさわったりみたりしてみたいです。
・だっぴやすなのなかから目をだしたり、いっぱいとげがあることとかわかってうれしかったです。
・もんだいがぜんぶできてうれしかった。
・またかせきのことをしりたいです。
・かせきがかめのこうらみたいにかたかったから、たてのようでした。
・三葉虫という動物になかまがいたとはしらなかった。
・今日おしえてもらった生き物の名前ととくちょうを教えてもらうとき、とてもわかりやすくて、よくわかりました。たのしかったです。また行きたいです。よくわかってうれしかったです。




≪お知らせ≫みるみるの会の月例鑑賞会について
9月9日(土)14:00~ 浜田市世界こども美術館にて
楽しくおしゃべりをしながら、作品を深く味わうことができますよ。
みなさんのご参加をおまちしております!