ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

H30年度みるみると見てみる?レポート②をお届けします(2019,1,27開催)

2019-02-24 21:05:50 | 対話型鑑賞
島根県立石見美術館「あなたはどう見る? よく見て話そう美術について」
1月27日(日)14:30~15:00  児島善三郎「椅子による」 (1925〜1928年頃 油彩、カンヴァス)
ナビゲーター:松田 淳  参加者:17名(内みるみる会員5名)

 展示室に入った時にまず写真やファッションの作品が目に入り、それらに挑戦したい気持ちもありましたが、絵画の一点を選ぶことにしました。他の会員からの提案を受け、赤と青で分けられたこの部屋の中で、選んだ作品と対照的に展示してある東郷青児の作品とシークエンスとして鑑賞することも考えましたが、じっと見ていると不思議だと思うことがたくさんある絵だと思ったため、この一点だけを時間をかけて鑑賞することにしました。

 トークが始まると、さっそくその不思議さに気づいた数名の方から次々に発言がありました。デッサンが上手くできていない、体の部分の関係がおかしい、椅子の脚に影があるのに柱の影がない、椅子や床の花瓶は上から見た感じで描かれているのに女性は真後ろから見たように描かれているなど、作者の視線の不自然さや作者の技量不足を指摘するような発言が続けられました。
 その中で、「この作者は絵として人に見せるために描いたのではなく、自分が描きたいものを描いただけなのではないかと思う。描きたいものを描いた快感が感じられ、それを見る快感みたいなものを自分は感じる」と、なぜ作者がこのような不思議に感じる絵を描くことになったのかを推測する話も出ました。
 その後も、女性の右足の大腿部の長さが不自然、足を椅子に上げた方の臀部がもち上がっていないのがおかしい、床に着いた足に違和感があるなど、この絵の不自然な部分が次々と上げられ、「いろいろと不思議な絵」ということがみなさんの発言から共通認識となりました。
 そこで、「この絵がいろいろとおかしいと感じるところがあって、不思議な絵だということでしたが、ではなぜ作者はこんな絵を描いたのでしょうか?そしてこの絵で何を表そうとしたのでしょうか?」とみなさんに投げかけてみました。
 その問いに対してしばらく沈黙があり考えたあと、「女性以外はしっかり描き込んだように見えないから、一番描きたかったのは女性で、女性の美しさを描きたかったのだと思う」と一人が答えられた。続けて、別の方が「腰周りを描きたかったのだと思う」と言われたので、「なぜ腰周りを描きたかったのだと思いますか?」と問い返しました。それには「女性の腰周りを描くことで、女性の力強さを表したかったのだと思う」と言われ、さらに「それはこの女性ですか?それとも全ての女性ですか?」と問うと、「この女性の力強さです」と答えられ、この方にとってのこの絵の主題が明らかになったように思いました。
 それに関連して、「女性のくびれが描かれていて、その他のものにもくびれが見えます。椅子の背もたれや花瓶にもくびれがあるので、女性の身体のくびれとつながりをもたせて女性の身体の美しさを表現したのだと思います」という発言もありました。

 不自然に感じられる点がいくつもありながら、不思議な魅力を感じる絵だと私自身が感じ、みんなで味わってみたいと思い、この作品を選びました。参加者からまずその不自然さが上がりましたが、やはりこの作品自体を否定するような意見はなく、どこか魅力や作者の思いを感じられる絵だということが共有できたと思います。

 鑑賞会後のみるみるメンバーでの振り返りでも肯定的な感想を多くいただきました。参加者がいろいろな意見をつぎつぎと出すのを落ち着いて受け止めながら進めることができていたこと、これまでは参加者の意見を聞いて私自身の解釈を伝えてしまうことが多かったが今回はそれがなかったこと、さまざまな見方で意見が出ることを楽しんでいる様子が感じられたことを上げてもらい、今後の参考になりました。
 この絵の主題に迫る投げかけをしたことも、参加者にとってよかったと言ってもらいました。学校の授業とは違い、美術館に来た参加者は「何かをもって帰りたい」という思いがあるから、今回の主題のように、参加者にとって考えることが明確になって「私なりにはこう考えた」と思える流れはよかったと教えてもらいました。対話を通して、自分なりにはこう見た、こう感じた、そしてそれが楽しかった、またこうやって作品を見たいと思ってもらうことが学校でも美術館でも大事だと思うので、考えた手ごたえを感じられる鑑賞会を今後も心がけていきたいと思いました。
 参加してくださったみなさま、ありがとうございました。

<参加者アンケートより>
・視覚的な快感を求めた絵だろうと思っていた。ちぐはぐな部分の解釈が見る人によって違うことに刺激を受けた。素通りできない魅力は、そのちぐはぐさなのだろう。
・テーマとなった女性像の絵は、本来なら素通りする絵でした。しかし、色々な御意見を聞き、面白かったです。たくさんの意見に耳を傾けることは、自分を振り返り、意識を高めるのに非常に有意義だと思いました。


<みるみるの会からのお知らせ>

3月は島根県東部で対話型鑑賞会を行います。いろいろな意見に耳を傾けながら、じっくりと作品を味わってみませんか?

旧村松邸(松江市新雑賀町)
 3月21日(木・春分の日)14:00~
 3月24日(日)14:00~

加納美術館(安来市広瀬町)企画展「愛しき島根」にて
 3月31日(日)13:30~

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H30年度みるみると見てみる?レポート①をお届けします(2019,1,27開催)

2019-02-18 23:52:29 | 対話型鑑賞
日時:平成31年1月27日 14:00~14:30
場所:島根県立石見美術館
   コレクション展「あなたはどう見る?よく見て話そう美術について」
作品名:展示ナンバー4:大下藤治郎「静物 林檎」1909 水彩・紙
     展示ナンバー5:山本鼎「旬」1938 油彩・カンヴァス
     展示ナンバー6:永瀬義郎「祭壇の処女」1975年 リトグラフ
ナビゲーター:津室   
参加者:14名(内みるみる会員4名)

<作品選択の理由>
 自分自身が惹かれるものをと考えたとき,「祭壇の処女」を中心にしようと思った。
抽象化されているので多様な捉えが可能であり,トークに広がりが出そうだと思ったからである。
リトグラフで版を重ねていることよる色の重なりや透け感が右に並ぶ2作と大きく違う特徴だと思った。
ただし,展示室入って右側の壁に展示されている10点の並びで見ると,大きく3つのグループに分けられる印象だった。
この3点は,食べ物がモチーフという共通点があるので,まとめて提案することにした。

(画像左より 6「祭壇の処女」,5「筍」)

(4「静物 林檎」)

<トークの大まかな流れ>
 (参)・・・参加者の発言 (ナ)・・・ナビの発言 
 (☆)・・・ナビの見解やみるみるメンバーの振り返りを踏まえての解説

(参)指定の3点は食べるものがかいてあることから,食欲を感じる。
   右にある展示ナンバー1~3の女性の赤い唇も「熟れている」すなわちおいしそうということで4~6につながり,
   さらに左の7~10の赤い色までずっと熟れているイメージがある。赤系の色が並んでいて,食欲をそそる。
(参)3点とも共通するモチーフは食べ物。4,5は静物的だが,6はテーマ的には深いもの。
   エロティックな感じ。右の2作にはないものがある。
(ナ)先は女性の唇が熟れているということがあったが,エロティックとは人の形があることからか。
   6のみ雰囲気が違うという意見だが,他の皆さんはどうか。
     (☆)ここから,6の中程にある白い人型とそれを包むような暗い部分についての発言が続く。
(参)外枠の木のようなものが殻で,女性の形をしたものが中身
(参)牡蠣殻みたい
(参)女陰 女そのものをシンボリックにかいている
(参)柿の種を半分に割ると白い芽が見えるのと同じ。生命みたいな印象
     (☆)女性もしくは,生命そのものを感じさせるという意見だが,
      手前にある果物や魚のようなモチーフとイメージがつながっている様子だった。
      ここから,さらに解釈が広がった。
(参)人体が一番問題。人体ではなく空間に見える。
   それらしくかいてあるが,空間。普通は人体を真ん中にもってはこない。そこがおもしろさ。
(参)心象的にかかれているものがいくつかある。
   果物と魚がそう。日没と月が描かれている。時間の流れによる変化を表している。
     (☆)6についての話が主流にはなってきたが,時折,4,5についての発言が出る。
      メンバー振り返りでは,このあたりで6に絞って発言を求めるとよかったという意見がでた。
      そのためには,「6を皆さんで見ていきましょう。」のように明言すべきだったのかもしれない。
      ただ,4の林檎に動的なものを感じたり,5の野菜を擬人化したりした発言があった(後述)ので,
      3点について何らかの関連性をもって見ている空気も依然としてあったように思う。
(参)3つ比べたときにテーマが違う。4は,形の連鎖をとるための習作。
   5は自然の恵みを収穫したときの喜びとか季節のものを表現。
   6は抽象度が高くなって,ものの形とかモチーフにすべていろんな意味がある。
   だから4から番号順に,テーマ性があり作者の表現したい思いがより濃密に描かれている並びになっている。
(参)(少し前の発言を踏まえ)日没ではなく日の出に見える。光り輝いて上がっていくよう。
   女の人の胸の部分がえぐれているのか,あそこ自体が果物なのか。ほかの方にも聞いてみたい。
(ナ)提案いただいたが,どうか?
     (☆)ナビは,前の発言に基づいて6についての意見を求めたが,5についての意見が出た。
(参)5は,精神的なものを感じようと思えば感じられる。窓を描いているから。
   窓をかいていることによって,ここの収穫物は,外の世界から無理矢理ここに取り込まれたということが表されているかもしれない。
(ナ)擬人化されているというか,野菜なんだけれども気持ちを感じさせる。窓がなかったら,全然違って見えるということか?
(参)窓がなかったら単なる静物。窓をかくことによって関係性を描いている。
(参)(5と同様に)6も,やっぱり殻なのか外と中との関係性だなと思った。
   胸の部分は桃が二つおいてあるように見えて,不思議だなと思って見ていた。似たような感じで。
(ナ)似たようなとは,下にあるちょっとはっきりした桃のようなものと,ということか。なぜ似ていると思うのか?
(参)色が似ているというところと,果物って栄養があって,ものを育てる。人は食べることで元気になる。
   胸もやっぱりおっぱいを与えるということで,子供を育てるとか育むイメージもある。

(ナ)外と中との関係性と言っていたが,どこが中でどこが外か?
(参)やっぱり白っぽいのが女の人みたいで,その周りの茶色いところが洞窟みたいに見えて,洞窟の奥というか中に人がいる。
(ナ)洞窟の中の世界と外の世界がある。
(参)日が沈んだり月が上がったりしているように見えてきた。外の世界でのできごと。
(参)賛成。水平線か地平線にも見えるが,その上に大きくモチーフ,
   魚と桃が置いてあるということは,もしかしたら台,部屋の中にあるテーブルみたいにも見える。
   象徴的に魚の上に波形の線が入っているので,海のものと陸のものの象徴である桃が,
   太陽が昇って月が沈むみたいにずっと長い年月この世にあったんだというようなメッセージ。
(ナ)先ほど時間の流れという意見があったが,それと恵みとか実りとか,最初の熟すということともつながると思う。
   生き物の営みとか命とか,そのようなものも全体的にみなさんは感じ取っているのか。
(参)日没か日の出かという意見交換から,時間の経過というのがものすごく本当だなと思った。
   桃とかで女性の象徴みたいな胸にしろ,女性の象徴と時間がたって熟れて腐っていくという
   命の循環みたいなものを時の流れと共に感じる。
(参)よく見ると桃と胸は同じ色で,女性性とかをテーマにしてるのかもしれないと思ったのがひとつ。
   もう一つは,月とか海とか魚とか桃とか,男性というより女性の方に親和性が近いものばかりかかれている。
   女性性を補強する。
(ナ)女性の形があること以外にも,女性を連想させるようなモチーフが使われているということ。
(参)この絵を見ていると,絵画的なというよりも理論というかいろいろなことが入っている。
   ただ,我々が絵を描くときに,マチエールとか形・色とか本当に簡単なもので結構複雑なものが表せる。
   6は,こんなにたくさん意見が出るというのは,どうなのかなと思って。鑑賞者それぞれの物語があっていいとはよくいうけれど。
   それよりもうちょっと単純にものをかいて(4,5のように),マチエールとかね。
   絵の本質的なことでお話をするのがおもしろいと思う。
   どっちがいいのかなと思う。
(ナ)見る人によって受け止めが違う。なかなか一致するものではない。そこがおもしろいのではないか。
     (☆)6は,形や色やマチエールから単純な造形要素を元には,話しにくいという意見だが,
       6にもリトグラフ独特の刷り重ねによる重色や透け感や独特のマチエールがあるという切り返しをすればよかったと反省している。
     (☆)ここでまた,右の4,5についての意見があった。一人が発言すると,その発言を踏まえてつなごうとする人もいる。
       そこで,3作トータルでの異同について見ていく方向でナビを進めた。
(ナ)さっき,左に行くほど抽象化されているというご意見がありましたが,意味を考えるときにもとらえ方が広くなってくる。
   4,5は,具体的な,誰にもわかるモチーフによって,みんなが考えていけるような絵ではないかということでしょうか。
(ナ)みなさんの意見をまとめると,この3点は,左にいくほどより抽象的になっていく。そこで各人の意味づけは,多様に出てくる。
   3点を通してみると,時間の流れとか命とか恵みとか実りを感じることができる。
   熟すという見方は,やがては滅んでしまうことも含んでいるように感じられる。
 

<考察>
 最後まで揺れ続けたのが,3点の扱いだった。参加者の反応によって,絞り込んでいくつもりだったが,終始,発言は散らばった。
ナビとして,6「祭壇の処女」にまとめようという腹づもりだったので,たとえば「3点の中で,異質に感じるのはどれですか。」
というような問いかけで6に絞っていくのも一つの方法だとミーティングではアドバイスをもらった。
 それにしても,ナビの予想以上に,4,5との関連で見る人が多かった。
作品の展示間隔(ピッチ)が狭く,隣の作品が自然に視界に入ってくることも関係しているかもしれない。
そして,食べ物という3作共通のモチーフは,みる人に,生命力や人生・時間の経過や老いなど
さまざまな事柄を象徴的に感じさせるということが再認識できた。
「人は,パンのみにて生きるにあらず」とも言うが,絵の中にあっても食べることは,人にとって根源的で重要なものなのだと思わされ,興味深かった。

 最後に,参加者のアンケートから,4,5,6それぞれに触れられたものを紹介する。
4 「静物 林檎」:りんごにも光沢があるなと思っていましたが,習作を集めたようだという感想を聞いて,なるほどと思いました。
5 「旬」 : タケノコの絵は,窓に注目していなかったので,窓を意識してみかたが広がったなと思った。
6 「祭壇の処女」:抽象的になっていくほど,意見は千差万別になっていく。普段何を知り,考え,見るのか,片鱗をみせるように感じました。
         中心の女性は,時間の流れでかわらない部分,周りの茶色のところは,変わっていくところなのかもしれないと思いました。
         体重や体積がふえていくのもありますが,ただ女性であることができるのも若いうちで,大抵はいろんな役割がふえていくものですし・・・。



<みるみるの会からのお知らせ>

島根県立石見美術館でのコレクション展関連イベント「みるみると見てみる?」第4回目は、2月24日(日)(最終回)となります。
みるみるの会メンバーと一緒に、意見を交えながらじっくりと作品を味わってみませんか?

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安来市立加納美術館で「みるみるとみてみる?!」開催

2019-02-16 12:21:56 | 対話型鑑賞


2019.2.9(Sat.)13:30~ 安来市立加納美術館「愛しき島根」展
鑑賞作品「ふるさと参り」細田和子 1995年 出雲市蔵
ナビゲーター 春日美由紀
鑑賞者 スタート時大人5名 途中から大人1名子ども2名参加
 
 加納美術館での鑑賞会は今年度に入って展覧会で言えば3回目です。しかし、今回の展覧会の鑑賞会の参加者は「対話型鑑賞」が初めての方がほとんどだったので、鑑賞法について最初に軽く説明してから始めました。細かいところまで表現されている作品だったので最初に近づいてみてもらったりして、しっかりとまず作品をみてもらいました。

鑑賞会の流れ(○鑑賞者 ☆ナビゲーター)※「文字起こし」ほぼ対話を忠実に再現
○あの大きな白いのはしめ縄だと思う。で、出雲大社かなと思って、でも、向かって右下の白い階段のようなものが何なのかわからない?
☆これは、出雲大社のしめ縄ではないか?出雲大社に行かれたことはありますよね?で、それとリンクする。でも、この白い階段状のものが何か分からない。疑問のものが何なのかが鑑賞を終えるころに分かっているとよいと思います。そんな風に、みたことから考えたことや感じたことを。
○とても色がたくさん使ってある。たぶんしめ縄の後方の大きな赤い丸は銅鏡だと思う。様々なところに配置されている黒い円、大小あるが、それが何かちょっと怪しげだなあと気になる。
☆大きな丸は銅鏡。黒い丸は6つありますね。何なんだろうと思う疑問がふたつ。階段状のものと黒い丸のものは何を表しているのでしょうか?分かっていくといいと思います。他にいかがでしょう?
○月みたいなものが二つある。三日月が二つあることから、黒い丸が皆既月食?何年か何百年に1回来ることから時間とか歴史の流れ・・・。
☆月と思われるようなものから、この丸いものは月で、真っ黒になっているところは月食。丸いものの謎をひとつ彼女なりに解いてくださった説をご披露してくださいました。他に?
○階段の直線ありますよね。上のしめ縄の曲線あり、力強さ、下の噴水らしきもの。この噴水の意味はまだちょっと分からないですけど、出雲大社の社であろう屋根の上の紫の曲線。あれをみると、安心する。竜のようにも見えるし、人間がもがいているようなシルエットにもみえるし、その紫が非常に清純なきちっとした絵の中に込められたほっとするような人間的な温かみ、暗いんだけど温かみがある、清純な直線もあれば、なんか温かみ、月なんかは自然界だけど、人間奥底の本当の姿。あれをみて和むというか、そういう気持ちにあの紫の部分をみて、全体を和ませる。いろんなことがあるんだけど、人間の奥底にある楽しさというか温かみを感じさせるから、この作品にとってこの紫の部分は大事。という気持ちでみさせてもらっている。
☆そんな風に自分の考えや感じたことをなんでも(発言を促す)
○皆さんがおっしゃられることは、本当にそうだと思って、でも、これ、噴水のやつって何なんだろう?と。(左下の白い部分。)
☆なんかこれ謎?出雲大社にまつわるものかな?何にみえてます
○自分は樹だと思う。
☆どこから?
○樹の本体。幹。
☆リアルな樹じゃなくて、シンボライズしている?
○枯れた樹?節じゃないけど、模様。なんでここに樹があるのかな?と思う。
☆噴水にもみえる?
○噴水にもみえるけど、長い階段の支えの木なのかな?大社だというと、長い階段にみえてくるので、支えてきた樹じゃないか?
☆出雲大社はかつて45Mもの高さがあったと言われていますから、その高さを支えた柱ではないか?ということですか?
○植物的に、今日が寒いからかもしれないけれど、樹氷かな?冬は寒いじゃないですか?この辺は。歴史的なものがたくさんある。時が凍る。時の冷凍食品。凍結して今に至る。記憶の中で凍結されている。そういう色合い白だったりするので、幽霊じゃないけど、実態は無いけど、記憶だけが凍結されている。時の流れを感じさせる。ような印象。
☆白いところから、氷で、凍るで、凍らされたものは時間で、時間が閉じ込められている、すごい長い歴史があるけど、閉じ込められて今もある。表されているものは、柱だったり、そのころの階段だったり、樹だったり、時間と共に太くなったり、伸びていくようだったり上昇するような・・・。
○閉じ込められて、今もある。実態は無いかもしれないけれど、幻、
☆幻ではない、もう少し、幻と言うとはかない感じがするけど、もう少し強い存在。
○氷っぽく
☆色から、時間がもしかしたら、閉じ込められている。いかがでしょう?よろしかったでしょうか?他に?
○社のところにある水平線は、海、水平線、夕焼け、大社の浜のイメージ、表したんじゃないかと思う。大社の浜と大社は切っても切れない関係にある。
☆ほかにいかがでしょうか?
○下から上に、下から上に湧き上がっている、炎のメラメラって感じも、水の蒸気が湧き上がっているように思える。出雲は雲、雲が特徴の気候。水蒸気、炎みたいな、下から湧き上がっていくイメージを閉じ込めた。
☆水蒸気も炎も下から上に湧き上がっていく、樹もそうですね。雲も湧くって言いますしね。出雲はほんと稲佐の浜の方から雲が湧き上がってくるのを見たことがある方も多いと思います。そういう気候風土というのも込められているんじゃないかと。みなさん、下方の方ばかりに注目されているのですが、このあたり(上方)しめ縄がバン!!とあるのですが、この辺りにも注目していただいて、このもくもくとしたものは何でしょうか?
○桜かな?ぼんやり見た時に思っている。でも、桜だとして、何でそこに桜があるのかな?
☆自分の考えに自分なりに疑問を感じている。考えてみてもらっていいですか。
○樹ですよね?
☆樹だと思われたのはどこから?
○そこに枝があるように見える。何か出雲大社にゆかりの樹があるのか?それを表したのか?でも、それが桜かどうかはわからない。
☆ここに枝が分かれたように見える線がありますね。ゆかりの樹を象徴している。確かに。ほかに?
○下のはギザギザしてみえるので、上のは、丸っこくて、曲線にみえるので、蛇のうろこのようにも見えるのでヤマタノオロチ?
☆こちらのエッジはギザギザしているけど、こちらのは丸っこい。から、うろこのように見えるから、出雲大社に引き付けて、ヤマタノオロチではないか。と、なるほど。スサノオの尊も祭られていますし。という意見も出てきました。どうでしょう?
☆子どもに向かって、「何かみえたら言ってね。」と発言を促す声掛けをする。
☆いま、下半分しっかりみていただいて、いま、上の方もみていただいています。最初の疑問はこの辺りで、階段ということで納得された方が多いかなあと思っているのですが、この黒い丸は、月食という意見も出たのですが、何かこのものの見え方色々あると思うんですけど、どうですかね?・・・しばし沈黙・・・1.2.3.4.5.6つありますね。どうでしょう?月なら月だとして、なぜ月があるのか?という風なことも考えられるといいかなと思うのですけど?
○月とは違う解釈なんですけど、人魂みたいな、だまし絵的みたいな、または、目、見つめる瞳、ここに描かれているものは植物だったり建物だったりしめ縄だったり、人以外、こっちを見返している目。魂的なものが浮遊している感じ。しめ縄、明らかにしめ縄、しめ縄って結界?力強い。
☆見てるのは?誰ですか?
○昔からの人、いにしえ人?
☆神ですか?
○神ではない。出雲神話の神は人間臭いから、神様的な扱いだけど昔の有力者だったりして、時間も凍っているから、こちらの方から、さあ、あなたは出雲の人でしょ?さあどうする?て言われている。
☆しめ縄は?いにしえ人と現代人がみている、結界ですか?
○いや、しめ縄は鎮めている。向こうの荒ぶる力を閉じ込めている。で、お前はどうなの?と問いかけている。または、覗くと向こうの世界が見えるタイムトンネルの入り口?
☆という意見も出ました?どうでしょう?
☆あなたはどう見えますか?黒い丸?(子どもに問いかける)
○幽霊、魂?
☆あっちの世から、こっちの世に来ている魂のようにみえる。
☆盛り上がってきているところですが、そろそろ時間になります。最後に、まだ、何もお話しされていませんが(と、沈黙の鑑賞者に発言を促すが)
○遠慮しときます。(と、固辞される。)
☆みなさんのお話を聞いて、いろんなことがいっぱいいっぱいになっていますか?
☆では、ナビも鑑賞者の一人ということで、最後に私も気が付いたことをお話しさせていただきたいと思います。
 みなさんのお話を聞いていて、一人でみていたのとは違って、何か広がったなあというか、私もホントこの黒い丸は何なんだろうって不思議だなあと思って見てたんですけど、月のお話を聞いて、そもそも夜の国、黄泉の国を司どれって言われたわけじゃないですか、で、やっぱり月なのかなあとか、そう思うとこれは月ではなくて、太陽を月が隠しているのかなあ、月食じゃなくて日食?かな?とか思って、お日様の国じゃなくて月の国、闇の国だから、それで、そこが象徴されているのかなとか思って、六も何かを象徴しているのかな?ああ、出雲大社の家紋は六角形だって思いながら、だから六個あるのかなあとか思いながら皆さんのお話を聞かせていただいていました。で、あと一つ、この会を始めるにあたりまじまじみて気付いたことが一つあって、しめ縄、このしめ縄の線って粗密があるじゃないですか、この密なところの陰の付け方がが鳥にみえて、鳥が羽ばたいているようにも見えて、このしめ縄もしめ縄なんだけど、さっき時間の話をしたんですけど、脈々と受け継がれる歴史のある場所で、時の止まったような部分もあるけれど、未来に向かって羽ばたいていく、飛翔していくということも一緒に描かれているのかな?と皆さんのお話を聞きながら考えていました。短い時間ではありましたが、楽しいひと時を過ごすことが出来ました。ありがとうございました。

参加者の感想
 和子先生の作品については、たくさんの感想が聞けて、世界が広がってよかったなと思います。
 実はわたしは研究対象がオディロン・ルドンで、「眼球」「瞳」「目」がモチーフになっている作品が多く、どうしても気になってしまうのでした。
 和子先生の作品は、ちょっとファンタジックで、シンボリズム的なものが多いなあと思いました。作家さんご自身にもお話をききたいなと思いました。

房野さんの気付き
○スタート時、初めての方ばかりの鑑賞者にわかりやすく「対話型鑑賞」とはどんなものか、端的に説明した。
○はじめに疑問を伝えたコメントについて、ナビが解答するのではなく、「この鑑賞を通じてその疑問の答えを自分なりに見つけられるといいですね。」と返したのが、オープンで、考え続ける姿勢を貫いていてよかった。
○長くなりがちのコメントやわかりにくい発言に対してのパラフレーズで「〜ということでしょうか?」と確認していたので、「いえ、そうじゃなくて…」という発表者の声を拾って、より思いに添えるようにしていた。
○話題が下半分のモチーフに集中しがちだったので、「上にも注目してみましょう」と視点の広がりを促した。
○最後に一鑑賞者としてのナビの捉えも伝えたが、全体の流れを損なわずに、鑑賞者の解釈を否定しないような内容だったので、参加者は終始楽しみながら作品を解釈できたのではないか。
春日の振り返り
○みる要素が多かったが、解釈はしやすかったのではないかと思う。しかし、イメージが広がる作品で、謎もあり、30分があっという間に過ぎていた。
○2作品目に続けて参加される方が少なかったので、楽しめなかったのか?と幾分反省。一人の男性は「長尺で作品を鑑賞するのは慣れてない。」と言われて帰られた。
○染色作品であったのだが、そこに触れられなかった。
○久々に「文字起こし」をしてみた。「しめ縄」の「結界」の解釈や黒い円を「目」「魂」と捉えた時の解釈の受け止めが曖昧だった。鑑賞者の発言を十分に理解できていなかったのではないかと思う。
○楽しかった。男性の参加者が多くて、それも珍しく、皆さん、各々の感じ方や考え方を発表してくださって、鑑賞会は盛り上がったと思う。本当に楽しいひと時だった。


ありがとうございました。

さて、17日土曜日は、益田の石見美術館で鑑賞会を開催します。ご多数の参加をお待ちしています!!
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石見美術館で2回目の「みるみると見てみる」を開催しました

2019-02-05 22:12:16 | 対話型鑑賞


2月3日(日)14:00~
石見美術館で2回目の「みるみると見てみる」を開催しました。

今回のナビゲーターは前回に続いて津室会員が1回目を担当しました。
2回目は房野会員です。

津室会員は展示室入口1番から3番までの作品で対話しました。
房野会員は展示室正面のファッション作品(森英恵作)4点でした。

詳細はレポートを待ちたいと思います。

さて、2月9日は安来市の加納美術館で出張対話型鑑賞会を開催します。
13:30~開始です。
作品は島根出身の夫婦作家、細田氏の木工芸と染色です。どうぞお楽しみに!!
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