2006 J1リーグ 第32節: FC東京 1-2 横浜F・マリノス
唐突ですが、私の家族を簡単に紹介します。父、母、私、そして弟という4人構成の一家です。そして、私を除いたこの3人が3人とも、東京都民でありながら、Jリーグ創設以来から横浜マリノスの大ファンなのですね。3人ともサッカー観戦を趣味として、家庭内で共通の話題にできるのは大変に幸せなことですが、当然のことながら国内では横浜にしか興味がなく、Jリーグ中継でのチャンネル権をめぐっては、私の頭を悩ませる存在でもあります。
J1の第32節、その横浜がFC東京とのアウェー戦のため、東京に乗り込んでくるというカードが組まれていました。祝日のこの日、たまたま家族全員の予定が空いていたことから、弟が「みんなで横浜を観に、これに行こう!」と企画します。横浜3人組はこれに乗り気。私にとってはあまり関心のないこの対戦だったのですが、一家4人で観戦しに行くのも久々であったこともありますし、私もしぶしぶついていくことにしました。
4人仲良くでの生観戦です。
そして母が後日になって、この試合も私のブログ内でレポートすることを厳命。国内外で重要な試合が続いている真っ只中なのですが、合間を見てこの記事を書いています。
というわけで、11月23日のお話です。同じ勝ち点39で、ともに低迷にあえぐ、14位東京と12位横浜との一戦でした。
実は今のJ1、熾烈な優勝争いや残留争いの陰に隠れて目立ちませんが、中位の付近もかなりの大接戦でひしめきあっているのです。8位新潟から14位東京までの勝ち点差は、わずかに4。連勝しようものなら一気に順位を上げられるわけで、意外と白熱する試合が観られるかも知れないという期待感も持てます。
会場となる味の素スタジアムですが、いい競技場ですよね。アクセスは便利だし、ここの2階席は程よい距離感で快適に全体を見渡すことができますし、総合的に私にとっては満足な観戦環境です。気になるのは売店の少なさくらいのものでしょうか。東京のサポーターだったら、通ってしまいますね。
時間が経つにつれ寒くなる気候の中での、優勝争いなどには全く無縁だった試合でしたが、2万3千人以上もの観客が詰め掛けていました。両チームの人気度がうかがえます。お互いのチームカラーである、ブルー一色に染まる観客席。試合開始直前にホームサイドのゴール裏で始まった、リバプールを模倣したFC東京の儀式である、タオルマフラーを掲げての「You'll never walk alone」もきちんと鑑賞しました。しかしながら、あの真っ最中にスタジアム側が大音量を響かせての企画を進めていくのは、いかがなものかと思いましたね。せっかくの東京サポーターによる熱心な大合唱がかき消されて、台無しです。
中盤戦以降は守備が崩壊して、ここ2試合でも連続4失点という東京は、DFにジャーンが戻ってきました。そして日本代表でも最終ラインを務めた、今野をセンターバックに起用して、立て直しを試みます。
一方の横浜も、要のDF中澤が腰痛で離脱し、守備に不安を抱えます。その代役は那須。9月に入ってから今日までの公式戦12試合連続失点を、いい加減に止めたいところです。
いよいよ試合開始。序盤は東京のペースで進んでいきました。
前半19分、東京は宮沢がロングボールをルーカスに合わせ、横浜DF那須と競らせます。ペナルティエリア内で両者もつれこみ、那須はバランスを崩しながらも食らいついていきましたが、そこからの接触でルーカスを倒してしまったとの判断で、東京にPKが与えられました。那須にとっては少々かわいそうな判定でしたが、結局このPKをルーカスが着実に決めて、東京に先制を許すことになってしまいました。
その後は、徐々に反撃に出る横浜が支配してきましたが、スコアは変わらず。1-0のまま前半が終了しました。
ハーフタイムには売店付近の通路を散策。そこでも、サポーターたちの活気が溢れています。夕食を予定していたことから、新しくできたタコス屋さんのタコスは今回食べてみませんでしたが、寒かったために購入したコーンスープがヒット!300円と高値でしたが、暖をとるには十分で、とても良い味でした。
後半は、追いつきたい横浜が主体となる展開が繰り広げられます。その中でも攻めきれない横浜でしたが、奥、マルケスを途中出場させた交代が結果的に当たりました。
後半31分、ドゥトラのクロスに大島がヘディングシュート。キーパーがこれを弾きますが、詰めていたその奥が押し込んで、ついに横浜が同点としたのです。
その後も、左サイドの極限に張るマルケスがよく起点になっていたことから、横浜は攻めのリズムを続けることができていました。
そしてその横浜、後半のロスタイムでコーナーキックのチャンスを得ます。これを蹴ったマルケスの放り込みはふんわりとしたもので、決して可能性を感じさせるものではありませんでしたが、ファーサイドにいた那須がこれをヘッドで合わせました。このヘディングシュート自体も力なく、緩いスピードでの山なりの軌道だったのですが、何とこれが東京のキーパー、およびDF陣の誰もが触れることのできない、うまい具合のコースとなってゴールの中へと吸い込まれていったのです。試合終了を直前にしての、劇的な逆転弾!アウェー横浜側の席にいたこともあって、これにはつい私も大声で叫んでしまいました。我が家族を含む、周囲の横浜サポーターも、大歓声で喜びを爆発させています。これに包まれた殊勲の那須は、チームメイトたちから引きずり倒されるほどに祝福を受けていました。先発に抜擢されながらPK献上という、悔しさを晴らす一撃でした。
直後にタイムアップ。2-1で横浜が勝利しました。
歓喜に沸く横浜側のゴール裏ではトリコロールのパラソルが咲き乱れていて、家族3人も驚きの逆転勝利に満面の笑みです。
さて、その横浜。サポーターでもない私ですが、この試合ではたくさん申し上げたいことがありました。その中でも厳選して、2つを挙げたいと思います。
まず、リーグ戦では約4ヶ月ぶりの先発で、左MFにて攻撃を任せてみた、狩野という期待の若手選手です。
現セルティックの中村俊輔以来という、高いキックの精度が売りの狩野。実際、この試合でも精密なラストパスを連発し、決定的なゴールチャンスとなるクロスも通していました。このパスの能力は、十分トップチームへも通用する大きな武器でしょう。
しかし問題なのは、チームが守備に回ったときの対応です。自身の持ち場でもチェイシングは甘く、1対1の局面も当たりが弱くて競り負け、他にもあっさりと抜かれるなどの、守備力の弱さを露呈していました。結果としてこのサイドでは、左サイドバックのドゥトラ一人だけで踏ん張らざるを得ず、前半の東京にこのエリアからの攻撃を多発させる一因となっていました。
典型的なファンタジスタタイプの選手と言えますが、攻撃的な選手でも中盤では献身的なプレッシングが求められるのが、現在の国内外におけるサッカーです。まだまだこれからの選手ですし、今後は逞しさと運動量もうまく兼ね備えて、中盤におけるチャンスメイカーとして、不動の中心人物へと成長してほしいところですね。
続いては、山瀬という、横浜にとっては宝である人材の起用法です。
新体制のチームが様々な布陣を試している流れから、最近は中盤のサイドやダブルボランチの一角を担当しての出場となっています。ですが、私が声を大きくして申し上げたいのは、これらの位置では、彼の持ち味を十分に発揮させてあげられないと思っていることです。この日もそうでしたが、そのようなポジションで用いられてからは、残念ながら山瀬は思うような活躍がなかなかできていません。
抜群のキープ力や技術力を持ち、体の寄せ方も上手で、前線の切羽詰る中でも巧みなゲームコントロールができる山瀬は、間違いなくトップ下の中央でこそ輝ける人物です。事実この試合でも、リードされた後にボランチを河合のみにして、山瀬がやや前に配置されると、彼の下へボールが落ち着いてからの好いリズムがいくつか生まれ始めていました。逆転へ至ったコーナーキックも、前方で控えていた彼のシュートが発端です。また、今季横浜にとって最高の試合内容であった、監督交代直後の京都戦。ここでもトップ下に配置されていた山瀬が、1.5列目の選手として求められる能力を全て発揮しての、独壇場の活躍で圧勝劇をもたらしていましたね。
水沼監督はこの攻撃センスを忘れずに、彼の個性を的確にとらえて、チームの骨格へと組み込んでほしいと思っています。
一方の敗れた東京は、センターバックを改造しても2失点という結果でした。しかしながら、今野は本職でないそのセンターバックに置かれても、粘り強く相手を食い止めていました。むしろ、思わぬかたちで先制してからの、チーム全体の姿勢ですね。リード後は、前半も半ばというところから一斉に引き気味となり、以降はずっと横浜に攻勢を許し続けてしまいました。
また、右ウイングの石川の交代もやや不可解に思われました。もし疲労が出ていたというなら、仕方のないことですが・・・。東京は石川の軽快な動きを軸に幾度か起点を作り、その右サイド側は終始押し込めていたのです。それが彼が退くや否や、途端にこのサイドの制圧率は横浜に逆転され始めてしまいます。目前の脅威がなくなった、横浜の左サイドバックのドゥトラがようやく上がれるようになると、彼のクロスから横浜の同点弾が発生。終盤でも、何度も横浜のマルケスにこのサイドをえぐられ続けていました。
逆転を喫したあのシュートは、少し不運と言っていいコースでうまく沈められてしまいましたが、とにかく追加点を取りに行くという力強さを失わないで、終始相手をけん制しながら、残り時間を上手に使うということができなかったのが、敗因の一つのような気がしますね。
試合終了後、よもやの逆転負けで沈黙を続ける東京サポーターとは対照的に、我々のいた横浜サイドの観客席からは声援が途絶えません。選手たちが引き上げるのを見届けた後、興奮冷めやらぬ雰囲気の中、席を立ちました。
通路では設置されたモニターを前にして、逆転シーンの流れるハイライトを見ては拍手喝采をする、横浜サポーターたちの人だかりが。喜びと落胆の入り混じる人ごみの中、味の素スタジアムに別れを告げて、飛田給駅へと歩みを進めました。
会場を後にして、私たち一同は渋谷へと移動。サッカー観戦後にふさわしく、シュラスコ(簡単に言うとお肉食べ放題)というブラジル料理のお店で祝杯をあげました。
あのジーコや、Jリーグの選手なども来店している「TUCANO'S(トゥッカーノ)」というレストランなのですが、ここはお勧めですよ!塩味だけというシンプルな味付けで、お肉本来の味が楽しめます。またお肉や料理が美味しいことはもちろん、店員さんの気配りや対応が気持ちよく、とても雰囲気のいいお店です。お肉好きという方でしたら、ぜひ一度試してみてください。場所は渋谷東急本店前です。
ここで試合を振り返りながら、皆で感想や戦評を語り合って、本日の企画は終了となりました。
大好きなサッカーを生で観戦し、美味しいものもたらふく食べられて、大満足の一日でした。何だかんだ言っても、結局は観に行ってよかったです。何より、この横浜好きの3人が、勝利を目の当たりにして歓喜できていたことが嬉しかったですね。
連敗を3で止めて一気に8位へと上がった横浜は次節、大分と対戦。そして東京は、優勝に王手をかけているあの浦和と、この味の素スタジアムにて対戦します。
浦和が勝利すれば文句なく、彼らが初優勝の栄冠に輝く舞台となってしまいます。この試合の終了後には、14年に渡る現役生活の引退を発表した、東京のMF三浦文丈へのセレモニーも予定されています。地元での胴上げを阻止するためにも、そのセレモニーに水をささないためにも、東京は全力でぶつからねばなりません。
唐突ですが、私の家族を簡単に紹介します。父、母、私、そして弟という4人構成の一家です。そして、私を除いたこの3人が3人とも、東京都民でありながら、Jリーグ創設以来から横浜マリノスの大ファンなのですね。3人ともサッカー観戦を趣味として、家庭内で共通の話題にできるのは大変に幸せなことですが、当然のことながら国内では横浜にしか興味がなく、Jリーグ中継でのチャンネル権をめぐっては、私の頭を悩ませる存在でもあります。
J1の第32節、その横浜がFC東京とのアウェー戦のため、東京に乗り込んでくるというカードが組まれていました。祝日のこの日、たまたま家族全員の予定が空いていたことから、弟が「みんなで横浜を観に、これに行こう!」と企画します。横浜3人組はこれに乗り気。私にとってはあまり関心のないこの対戦だったのですが、一家4人で観戦しに行くのも久々であったこともありますし、私もしぶしぶついていくことにしました。
4人仲良くでの生観戦です。
そして母が後日になって、この試合も私のブログ内でレポートすることを厳命。国内外で重要な試合が続いている真っ只中なのですが、合間を見てこの記事を書いています。
というわけで、11月23日のお話です。同じ勝ち点39で、ともに低迷にあえぐ、14位東京と12位横浜との一戦でした。
実は今のJ1、熾烈な優勝争いや残留争いの陰に隠れて目立ちませんが、中位の付近もかなりの大接戦でひしめきあっているのです。8位新潟から14位東京までの勝ち点差は、わずかに4。連勝しようものなら一気に順位を上げられるわけで、意外と白熱する試合が観られるかも知れないという期待感も持てます。
会場となる味の素スタジアムですが、いい競技場ですよね。アクセスは便利だし、ここの2階席は程よい距離感で快適に全体を見渡すことができますし、総合的に私にとっては満足な観戦環境です。気になるのは売店の少なさくらいのものでしょうか。東京のサポーターだったら、通ってしまいますね。
時間が経つにつれ寒くなる気候の中での、優勝争いなどには全く無縁だった試合でしたが、2万3千人以上もの観客が詰め掛けていました。両チームの人気度がうかがえます。お互いのチームカラーである、ブルー一色に染まる観客席。試合開始直前にホームサイドのゴール裏で始まった、リバプールを模倣したFC東京の儀式である、タオルマフラーを掲げての「You'll never walk alone」もきちんと鑑賞しました。しかしながら、あの真っ最中にスタジアム側が大音量を響かせての企画を進めていくのは、いかがなものかと思いましたね。せっかくの東京サポーターによる熱心な大合唱がかき消されて、台無しです。
中盤戦以降は守備が崩壊して、ここ2試合でも連続4失点という東京は、DFにジャーンが戻ってきました。そして日本代表でも最終ラインを務めた、今野をセンターバックに起用して、立て直しを試みます。
一方の横浜も、要のDF中澤が腰痛で離脱し、守備に不安を抱えます。その代役は那須。9月に入ってから今日までの公式戦12試合連続失点を、いい加減に止めたいところです。
いよいよ試合開始。序盤は東京のペースで進んでいきました。
前半19分、東京は宮沢がロングボールをルーカスに合わせ、横浜DF那須と競らせます。ペナルティエリア内で両者もつれこみ、那須はバランスを崩しながらも食らいついていきましたが、そこからの接触でルーカスを倒してしまったとの判断で、東京にPKが与えられました。那須にとっては少々かわいそうな判定でしたが、結局このPKをルーカスが着実に決めて、東京に先制を許すことになってしまいました。
その後は、徐々に反撃に出る横浜が支配してきましたが、スコアは変わらず。1-0のまま前半が終了しました。
ハーフタイムには売店付近の通路を散策。そこでも、サポーターたちの活気が溢れています。夕食を予定していたことから、新しくできたタコス屋さんのタコスは今回食べてみませんでしたが、寒かったために購入したコーンスープがヒット!300円と高値でしたが、暖をとるには十分で、とても良い味でした。
後半は、追いつきたい横浜が主体となる展開が繰り広げられます。その中でも攻めきれない横浜でしたが、奥、マルケスを途中出場させた交代が結果的に当たりました。
後半31分、ドゥトラのクロスに大島がヘディングシュート。キーパーがこれを弾きますが、詰めていたその奥が押し込んで、ついに横浜が同点としたのです。
その後も、左サイドの極限に張るマルケスがよく起点になっていたことから、横浜は攻めのリズムを続けることができていました。
そしてその横浜、後半のロスタイムでコーナーキックのチャンスを得ます。これを蹴ったマルケスの放り込みはふんわりとしたもので、決して可能性を感じさせるものではありませんでしたが、ファーサイドにいた那須がこれをヘッドで合わせました。このヘディングシュート自体も力なく、緩いスピードでの山なりの軌道だったのですが、何とこれが東京のキーパー、およびDF陣の誰もが触れることのできない、うまい具合のコースとなってゴールの中へと吸い込まれていったのです。試合終了を直前にしての、劇的な逆転弾!アウェー横浜側の席にいたこともあって、これにはつい私も大声で叫んでしまいました。我が家族を含む、周囲の横浜サポーターも、大歓声で喜びを爆発させています。これに包まれた殊勲の那須は、チームメイトたちから引きずり倒されるほどに祝福を受けていました。先発に抜擢されながらPK献上という、悔しさを晴らす一撃でした。
直後にタイムアップ。2-1で横浜が勝利しました。
歓喜に沸く横浜側のゴール裏ではトリコロールのパラソルが咲き乱れていて、家族3人も驚きの逆転勝利に満面の笑みです。
さて、その横浜。サポーターでもない私ですが、この試合ではたくさん申し上げたいことがありました。その中でも厳選して、2つを挙げたいと思います。
まず、リーグ戦では約4ヶ月ぶりの先発で、左MFにて攻撃を任せてみた、狩野という期待の若手選手です。
現セルティックの中村俊輔以来という、高いキックの精度が売りの狩野。実際、この試合でも精密なラストパスを連発し、決定的なゴールチャンスとなるクロスも通していました。このパスの能力は、十分トップチームへも通用する大きな武器でしょう。
しかし問題なのは、チームが守備に回ったときの対応です。自身の持ち場でもチェイシングは甘く、1対1の局面も当たりが弱くて競り負け、他にもあっさりと抜かれるなどの、守備力の弱さを露呈していました。結果としてこのサイドでは、左サイドバックのドゥトラ一人だけで踏ん張らざるを得ず、前半の東京にこのエリアからの攻撃を多発させる一因となっていました。
典型的なファンタジスタタイプの選手と言えますが、攻撃的な選手でも中盤では献身的なプレッシングが求められるのが、現在の国内外におけるサッカーです。まだまだこれからの選手ですし、今後は逞しさと運動量もうまく兼ね備えて、中盤におけるチャンスメイカーとして、不動の中心人物へと成長してほしいところですね。
続いては、山瀬という、横浜にとっては宝である人材の起用法です。
新体制のチームが様々な布陣を試している流れから、最近は中盤のサイドやダブルボランチの一角を担当しての出場となっています。ですが、私が声を大きくして申し上げたいのは、これらの位置では、彼の持ち味を十分に発揮させてあげられないと思っていることです。この日もそうでしたが、そのようなポジションで用いられてからは、残念ながら山瀬は思うような活躍がなかなかできていません。
抜群のキープ力や技術力を持ち、体の寄せ方も上手で、前線の切羽詰る中でも巧みなゲームコントロールができる山瀬は、間違いなくトップ下の中央でこそ輝ける人物です。事実この試合でも、リードされた後にボランチを河合のみにして、山瀬がやや前に配置されると、彼の下へボールが落ち着いてからの好いリズムがいくつか生まれ始めていました。逆転へ至ったコーナーキックも、前方で控えていた彼のシュートが発端です。また、今季横浜にとって最高の試合内容であった、監督交代直後の京都戦。ここでもトップ下に配置されていた山瀬が、1.5列目の選手として求められる能力を全て発揮しての、独壇場の活躍で圧勝劇をもたらしていましたね。
水沼監督はこの攻撃センスを忘れずに、彼の個性を的確にとらえて、チームの骨格へと組み込んでほしいと思っています。
一方の敗れた東京は、センターバックを改造しても2失点という結果でした。しかしながら、今野は本職でないそのセンターバックに置かれても、粘り強く相手を食い止めていました。むしろ、思わぬかたちで先制してからの、チーム全体の姿勢ですね。リード後は、前半も半ばというところから一斉に引き気味となり、以降はずっと横浜に攻勢を許し続けてしまいました。
また、右ウイングの石川の交代もやや不可解に思われました。もし疲労が出ていたというなら、仕方のないことですが・・・。東京は石川の軽快な動きを軸に幾度か起点を作り、その右サイド側は終始押し込めていたのです。それが彼が退くや否や、途端にこのサイドの制圧率は横浜に逆転され始めてしまいます。目前の脅威がなくなった、横浜の左サイドバックのドゥトラがようやく上がれるようになると、彼のクロスから横浜の同点弾が発生。終盤でも、何度も横浜のマルケスにこのサイドをえぐられ続けていました。
逆転を喫したあのシュートは、少し不運と言っていいコースでうまく沈められてしまいましたが、とにかく追加点を取りに行くという力強さを失わないで、終始相手をけん制しながら、残り時間を上手に使うということができなかったのが、敗因の一つのような気がしますね。
試合終了後、よもやの逆転負けで沈黙を続ける東京サポーターとは対照的に、我々のいた横浜サイドの観客席からは声援が途絶えません。選手たちが引き上げるのを見届けた後、興奮冷めやらぬ雰囲気の中、席を立ちました。
通路では設置されたモニターを前にして、逆転シーンの流れるハイライトを見ては拍手喝采をする、横浜サポーターたちの人だかりが。喜びと落胆の入り混じる人ごみの中、味の素スタジアムに別れを告げて、飛田給駅へと歩みを進めました。
会場を後にして、私たち一同は渋谷へと移動。サッカー観戦後にふさわしく、シュラスコ(簡単に言うとお肉食べ放題)というブラジル料理のお店で祝杯をあげました。
あのジーコや、Jリーグの選手なども来店している「TUCANO'S(トゥッカーノ)」というレストランなのですが、ここはお勧めですよ!塩味だけというシンプルな味付けで、お肉本来の味が楽しめます。またお肉や料理が美味しいことはもちろん、店員さんの気配りや対応が気持ちよく、とても雰囲気のいいお店です。お肉好きという方でしたら、ぜひ一度試してみてください。場所は渋谷東急本店前です。
ここで試合を振り返りながら、皆で感想や戦評を語り合って、本日の企画は終了となりました。
大好きなサッカーを生で観戦し、美味しいものもたらふく食べられて、大満足の一日でした。何だかんだ言っても、結局は観に行ってよかったです。何より、この横浜好きの3人が、勝利を目の当たりにして歓喜できていたことが嬉しかったですね。
連敗を3で止めて一気に8位へと上がった横浜は次節、大分と対戦。そして東京は、優勝に王手をかけているあの浦和と、この味の素スタジアムにて対戦します。
浦和が勝利すれば文句なく、彼らが初優勝の栄冠に輝く舞台となってしまいます。この試合の終了後には、14年に渡る現役生活の引退を発表した、東京のMF三浦文丈へのセレモニーも予定されています。地元での胴上げを阻止するためにも、そのセレモニーに水をささないためにも、東京は全力でぶつからねばなりません。