みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

浦和 × 甲府

2006年11月24日 | サッカー: Jリーグ
2006 J1リーグ 第32節: 浦和レッズ 3-0 ヴァンフォーレ甲府

残り3試合、優勝へ向けて単独首位に立つ浦和は、甲府との対戦です。舞台は、今日も大観衆が詰め掛けたホームの埼玉スタジアム。Jリーグ年間総入場者数の最多記録をこの日に塗り替えたレッズサポーターの熱心さは、間違いなく今年の浦和を支えていて、賞賛されるべきものでしょう。事実、浦和は今季ホームでの公式戦は無敗です。地の利に後押しされ、頂点への第一歩となるこの試合に臨みました。

圧倒する浦和、自陣で固まる甲府、そんな展開が予想されました。ですが、J1残留もすでに決めていて自由な心持ちだったのでしょうか、のびのびとした雰囲気が甲府の選手たちから感じ取れます。実際に、今日も浦和は攻勢を見せ続け、そこから点につながりかねない危険なシーンも出ていましたが、甲府はそれにひるみません。各選手がグラウンド全体に広がり、ピッチ全面を使ったサッカーでアグレッシブに対抗していたのです。
中でも、トップのポジションからやや下がり気味に位置取るFW茂原に加え、藤田、鶴見、石原といった中盤の選手は、激動する試合展開と騒然な雰囲気の会場の中でも、冷静さを失わずに落ち着いた振る舞いです。そして彼らの正確に着実につなげていたパス回しが、その甲府の戦法を支えていました。
こうしたことから、お互いが敵陣に詰め寄り、シュートを打ち合うという意外な序盤戦でした。

その白熱する試合に、前半36分、大きなポイントが訪れました。甲府のDF秋本が、ペナルティエリア内でポンテを倒してしまい、浦和にPKを献上してしまったのです。自身もこのプレーで2枚目のイエローカードを受け、退場処分に。甲府にとって最悪極まりない事態となりましたが、そのPKを蹴ったワシントンのシュートコースは甘く、キーパーの阿部ががっちりセーブ。何とか失点することだけは免れました。

ですが、そのすぐ後の前半40分です。裏へ飛び出た浦和の山田を、今度はDFアライールが同じくペナルティエリア内で倒したとして、またも浦和にPKが与えられたのです。そしてペナルティスポットに立ったのは、ついさっきこれを失敗したばかりのワシントン。再びキーパー阿部との対決です。試合後に、「気の強い南米人の選手だから、自分を曲げずに同じコースへ蹴るだろうと思った」と語った阿部。その言葉どおりに向かってきたシュートを、今回も難なくキャッチングしました。予測を見事に的中させての、連続となるファインセーブでした。

2度も同じ選手がPKを失敗するという珍事を見せてくれたワシントン。ブッフバルト監督の「今度は三都主に蹴らせろ」という指示を振り切って無視し、再挑戦したPKだったのですが、またしても甘いコースで、阻まれても仕方のないキックでありました。チームの作ったチャンスを得点にすることが出来ません。
今日の前半の浦和、他にも決定的ともいえる機会が何回かあり、それに加えてのこの2度のPK失敗です。前節敗北した名古屋戦に引き続いて蔓延する、決定力不足。嫌なムードが漂っています。

しかし、浦和はハーフタイムに、チーム全体で喝を入れたのでしょうか。後半は開始直後から怒涛の攻撃で迫り、早々に山田の放り込みからワシントンのヘディングゴールで、ついに先制点を獲得。続いて、山田が3人をかわすドリブルで、そこから鮮やかなミドルシュートを直接決めるという、素晴らしい単独技術での追加点。さらにコーナーキックからワシントンがまた頭で、PK連続失敗の汚名を返上する2得点目を挙げ、3-0。ようやくチャンスが得点へとつながっていく、立て続けの爆発で、勝利を決定付けました。

前半から何度も決定機をつかみ、数的優位となった後半からは波状攻撃の連続だったという、浦和の攻めの中心は、やはり今日も山田とワシントンでした。
敵方の裏への飛び込みが顕著で、攻撃時には思い切りの良い動き出しがとにかく光る山田。いざ自分にボールが回ってきても、そこから正確なラストパスを連発し、さらには自ら切れ込んで得点までマークしてしまうという個人技です。1.5列目の選手としては、本日は完璧と言っていい内容でした。試合を重ねるごとに好調さを増してきて、ついには攻撃における中心選手として君臨し、チームをけん引する山田は、もはや浦和にとってかけがえのない存在となっています。
2回のPKをどちらも決めていれば4得点だったというド派手な演出で、良くも悪くもこの試合を沸かせたのがワシントンです。逸した2点を帳消しにできて、よかったですね。直接の結果としては、明暗が分かれた前半と後半でしたが、実際には90分を通して、前線では迫力のある存在感がありました。屈強なフィジカルで当たり負けることはなく、入ってきたボールに何度も絡んで、起点となっていました。巧みなヘディングでの先制点を含む2得点と、ゴールのセンスも相変わらず抜群です。ただ、今後もPKを蹴りたいのならば、十分な練習を積んでおく必要があるでしょうね・・・。

またも完封勝利と、とにかく失点をしない浦和ですが、どうも今日の最終ラインは満点とまでは言えない模様です。3トップ気味に浦和ゴール前で張る甲府のFW陣に対し、3バックの浦和の守備陣は、個々にマークがつききれていない感じでした。自由に流れる動きで侵入してくるバレーを始めとして、ペナルティエリア内で甲府の選手を再三フリーにさせてしまいます。結果的には無失点でしたが、いつ失点を喫してもおかしくないようなシーンが続いていたのは事実です。ネネと内舘は、どうも終始バタバタしていたような印象でしたね。大勝の裏で、見過ごしてはならない課題です。

3点差にもなる敗戦だったのですが、甲府は心に残る戦いぶりでした。前半の思い切りの良さは前述したとおりですが、10人となり、後半ついにリードを許し、さらに猛攻を浴び続けるという中でも、下を向くことはありませんでした。圧倒的な劣勢からも、FWを再び3枚に戻すという逆転を狙う采配。選手たちもこの不利な状況下での後半戦を、MF藤田の目覚しい奮闘を筆頭として、あきらめることのない姿勢で最後まで戦い抜きました。そして終盤にはフィニッシュにまで至ることができるようになり、浦和との乱打戦を繰り広げます。結局この試合甲府は、浦和とほぼ互角となるシュート総数の数字を残したのでした。

惜しむらくは、決定力が不足していたことですね。バレーに、途中出場の須藤にと、決定的なチャンスが度々訪れましたが、いずれも決めきることができませんでした。試合終了まで不屈だった前向きさを評価し、一矢を報いさせてあげたかったのですが・・・。前半戦においても、浦和が同様に決定力を欠いていたため、ここでその中から一発でも決めて先制してしまえば、また違う展開の試合になっていたことでしょう。

あと、甲府はディフェンスラインにも大失敗がありましたね。チーム全体の思わぬ(?)勢いにつられて、自らも積極的に出てしまいました。浦和の攻撃のスピードについていけるわけでもないのに、ゴール前をガランと空けては幾度も浦和の選手たちに裏をとられて、失点も止む無しというピンチを招き続けていました。与えた2度のPKも、これが発端です。
さらに、前の試合で久々に戦列へ復帰してきたセンターバックの秋本です。フィジカルの強さが売りで、今日は主にワシントンのマークを担当しましたが、ことごとく彼には競り負けてしまい、任務は成し遂げられていませんでした。そしてチームに直接多大な影響を及ぼすPK献上、ならびに退場です。秋本が退いてからは、甲府の守備陣は誰がこのワシントンにつくかのがあやふやとなってしまい、結局そのワシントンを2度もフリーの状態にさせ、そこから彼に2失点を喫してしまう結果となっています。残念ながら、紛れもなく本日の戦犯の第一候補でしょう。

さて、これでホーム21戦連続無敗という新記録を達成した浦和の、優勝の行方です。

この第32節、2位で追いかけるG大阪は福岡と対戦しました。前半3分に先制するという好スタートでしたが、その後は「どうしてそれが決められないの!?」というような、大きな決定機を逸し続けてしまうお粗末さでした。キーパーまでをもかわしてからのシュートをポストに当てたり、フリーの体勢から無人のゴールへ押し込むだけのヘッドを外したり・・・。これらが大きく響く結果となり、実力の下回る相手に痛恨のドローとしてしまいました。今日勝利した浦和の背中が遠くなる、実に厳しい状況へと追い込まれた一日となりました。

また、今年驚きの快進撃で優勝争いに生き残る3位の川崎は、同じく予想のできなかった躍進を遂げた4位清水との、好カードと言える上位直接対決で戦っていました。そこで、今季川崎の急成長の象徴であった、MFの中村と谷口の爆発があって、川崎は自慢の攻撃力を今日も披露。しかしながら、前節に引き続いて潜在する技術力をいかんなく発揮した、清水の藤本のハットトリックの前に沈み、川崎は競り負けてしまいます。そしてこの敗北の結果として、川崎の優勝の可能性は、完全にゼロになってしまいました。
中盤では中村・谷口が、ゴールにアシストにと大車輪の活躍で日本を代表する選手へと成長し、その支援を受けて、我那覇・ジュニーニョの看板ツートップが次々と得点を重ねていった川崎。彼らを軸として、圧倒的な攻撃力で開幕からリーグを席巻し、波がありながらも、上位争いに見事参戦しては盛り上げてくれました。無念にもこの日力尽き、終戦となったわけですが、若さ溢れる勢いで急成長を遂げたこのチームは今年、国内のサッカーファンに強くその印象を残すシーズンとしたでしょう。伸びしろはこれからも十分にあると思いますし、課題の守備を克服して、ぜひ優勝争いの常連へとなってほしいですね。

残り2試合で、優勝の権利を得られるチームは、浦和とG大阪の2つに絞られました。しかしながら、その両者の勝ち点差は5。G大阪としては奇跡を信じて、自らは2試合を連勝するほかにありません。そして浦和は、悲願の初優勝まで、ついにあとわずか1勝です。果たして念願叶うのか。運命のアウェーでのFC東京戦は、わずか3日後の日曜日と目前に迫っています。


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