みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

FC東京 × 川崎

2006年11月14日 | サッカー: Jリーグ
2006 J1リーグ 第30節: FC東京 5-4 川崎フロンターレ

土曜日に行われたものでしたが、あまりにもセンセーショナルな結末であったことから、気になってスカパー!の録画再放送で観てしまいました。
首位に食らいついて行きたい川崎が、ここ2戦で連勝と波に乗る東京に挑んだ試合です。

ジュニーニョらの個人技が炸裂して序盤から圧倒する川崎は、右サイドでフリーキックを得て、これをマギヌンがゴール直前へと放り込みます。キーパーの土肥、キャッチできそうなボールでしたが、目測を誤ったかこれを力なく弾いてしまい、谷口に押し込まれて先制点を献上してしまいました。悔やまれる失態です。
ここからは点の取り合いになります。東京はコーナーキックのチャンスから、こぼれ球を最終的にルーカスがヘッドで入れて1-1の同点へ。しかし、すぐさま川崎は敵陣内でのスローインから、左サイドに侵攻した谷口がグラウンダーのクロスを入れ、我那覇の得点へと結びつけます。
反撃に出た東京がペースをつかんでいきますが、つなぎにミスが出てうまくいきません。前半終了間際にはマルコンに中盤で奪われると、マギヌンに渡って、彼のクロスに飛び込んできたジュニーニョに鮮やかなダイレクトのジャンピングボレーシュートを決められてしまいます。川崎の外国人トリオによる得点で、点差は2と開きました。

後半も点を取り合う両チーム。川崎のキーパーのパントキックが、裏に抜け出たマギヌンへと直接通ってしまってゴール。1-4と、東京にとってはもう絶望的なスコアが会場の雰囲気を暗く落とします。
しかしそのすぐ3分後、左サイドのペナルティエリア前からの東京のフリーキックです。馬場が素早く蹴ったボールに川崎の選手たちは反応できません。それを戸田が直接決めて、何とか望みをつなぐ2点差と返します。大量得点による余裕だったのか川崎、非難されるべき気の緩みを見せてしまいました。

そして後半8分、川崎のジュニーニョがシミュレーションの反則で、この日2回目の警告を受けて退場処分となると、ゲームが一転します。数的優位に立った東京が圧倒的にボールを保持。川崎はディフェンスラインをずるずると下げて、そこから東京のMFたちへろくにマークにもつかず、なかば混乱状態のままの時間を過ごしてしまい、一層東京の攻撃を助長させていました。
中盤から自由に展開できる東京の攻撃陣、左から右からとクロスをとことん放り込み、大反撃を繰り広げました。シュートの数も増えて行きます。川崎はマギヌンに代えてDF佐原を投入し、これ以上戦えるコンディションでなくなった我那覇までが退くと、もう2点差を死守するために攻撃は完全に放棄していました。
そのために東京は2バックだけを残し、他の8人の選手全員で川崎サイドへの猛攻を続けることが出来ました。そして後半38分についに、今野の放り込みからのゴール前の混戦の中、途中出場していた平山が押し込んで1点差と詰め寄ることに成功しました。

さらに終了間際、ピッチ上で大きな事態が発生します。マルコンが遅延行為を行ったとして、2枚目のイエローを提示され、またも川崎は選手が退場することに。9人でこの1点のリードを守りきらねばならないことになってしまいました。
もちろん、引き続いて東京のワンサイドゲームです。追いつくことができるでしょうか。告知されたロスタイムの時間は、十分なほどにある6分間でした。

ロスタイム1分、最終ラインからゴール前へと放り込む東京、競り合いのさなか、川崎のDF森が処理を誤ります。それを途中出場の鈴木がつなぎ、さらに同じく途中出場の宮沢がヘッドで流し込み、ついについに起死回生の同点ゴール!反撃のために投入した3人が3人とも見事に同点へと追いつく活躍を見せ、倉又監督の采配はズバリと当たる結果となりました。
それで終わらないが今の東京。終了直前のロスタイム5分に、今野が長距離の位置から思い切ってロングシュート。これが川崎のDFの間をすり抜けて行く、キーパーも反応しづらい直線的なボールで、誰にも防がれることもなくゴール内へ・・・。一時は3点差もあったビハインドをひっくり返す5-4!前回のホームでG大阪を相手に演じた逆転勝利をも上回る、奇跡の大逆転劇に、まるで何かの大会に優勝したかのように喜びを爆発させる東京の選手とスタッフたち。またも今日の味の素スタジアムでは、興奮に包まれる中で、大どんでん返しの結末を迎えました。

日刊スポーツ誌からの引用によると、Jリーグでの3点差からの逆転勝利は、これを含めて過去たった6回の珍事ということでした。
ピッチ上で呆然とした表情で立ち尽くす川崎の選手たち。試合終了後には、関塚監督を筆頭として、選手たちも異口同音に、今日の試合を裁いた奥谷主審への批判を猛然と繰り返しました。長すぎるロスタイム、そして2人の退場処分。確かにマルコンへの遅延行為と発表された警告は少し不可解で、主審自身もこの激動する試合をコントロールしきれていたとは言い難いところがあります。しかしながら川崎には、それを補って余りある非が、自分たちの中にあったのではないでしょうか。
退場したジュニーニョは自チームの攻め上がりのチャンスの中で、相手選手のユニフォームを引っ張る、警告に十分相当するファールをしていました。同じく退場のマルコンやマギヌンも、後方からのアフタータックルという危険なプレーでの警告に値するイエローを受けています。リードしている展開という中での、まるで不必要なラフプレーの連続が、後に数的不利へとつながり、自分たちの首を絞める引き金となっていたのではないでしょうか。
劣勢に立たされてからの試合運びもまずいものでした。ゴール前を固めるのは良いのですが、自陣営で自由にボールを回されていたその出所へと、猛然とプレッシャーをかけていくべきでした。そしていざ奪い返すことができたら、何よりキープ!そこから落ち着きを保ち、1人少ないながらも淡々と時間を進められれば良かったのですが、それらがまるで出来ていませんでした。
精神的な支柱と呼べる選手の不在も影響するのか、ピッチ内外からの指示や確認の声もなし。冷静さを失いながら、なかば状況を放置させ続けます。東京の中盤を全くのフリーにさせ、カウンターの意思をかけらも見せなかったため、サンドバッグのように攻撃を浴び続けました。それをゴール直前で弾き返すだけというサッカーでは、いくら2点リードしてたとはいえ、あんまりだったような感じがしますね。
2失点目は守備陣の気の緩みから、4失点目は森の中途半端な処置からと、失点もミスから招いていました。東京の守備が拙かったとはいえ、4得点。それらを挙げながら、このような内容で敗戦を喫してしまったことには猛省が必要でしょう。主審へ責任転嫁をする前に、自分たちがひどいゲームをしたことを認め、今日東京へ駆けつけた人たちを筆頭に、まだ逆転優勝をかたくなに信じ続けて応援してくれていたサポーターに謝罪せねばならない試合だったと思います。

今日も攻守に活躍し、3戦連続ゴールと勝利の立役者になり続けている東京MFの今野は、終了後に「東京は乗ったときは本当に強い。乗らせたら、相手は終わりですね」と力強く語り、G大阪戦に続く逆転勝利に自信を深めていました。
しかしそのG大阪戦もそうでしたが、今日も東京の守備はところどころでお粗末なものでした。1失点目の土肥のパンチングミスは言うに及ばず、攻め上がられてきたときには選手同士が重なり合って倒れこみ、結果ピンチを迎えて連携の悪さを見せる始末。相手のスローインからは谷口の突破に最初気づかず、結局マークにつききれなくて2失点目のアシストをされてしまいます。3失点目はピッチ中央で簡単に奪われてからのカウンター。川崎キーパーのロングキックの到達点を見誤っては、ヘッドによるクリアを空振りしてしまい、そのまま4失点目へとつながるなど、失点は全てミスが絡んでいたものでした。その他にも細かい失策が出続けます。後半からは川崎の自滅もあって、そこからは全く守備陣が出番となるようなケースは出てきませんでしたが、4失点からの劇的な大逆転という展開に、悪い意味で貢献してしまったと言えそうです。
それでも結果として、際どい勝負を競り勝ちながらの3連勝。これで今後、どこまで順位を上げていけるのでしょうか。

9点も入った得点シーンの大半には守備側のミスが含まれていて、ピッチ上でもやや錯乱した展開が見受けられ、ラフプレーも応酬されるなど、衝撃的な結末の割には、残念なことに試合内容自体は決して誉められたものではありませんでした。ですが、今年のシーズンにおける「事件」の一つとして、深く記憶に刻まれるゲームでした。


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