みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

神戸 × 福岡

2006年12月07日 | サッカー: Jリーグ
2006 J1J2 入れ替え戦 第1戦: ヴィッセル神戸 0-0 アビスパ福岡

■ 妥当なスコアレスドロー
今年度のJリーグは、まだまだ終わったわけではありません。J1で16位の福岡と、J2で3位の神戸が、来年にJ1として参加できる最後の1枠の座をめぐって争う、入れ替え戦が残っているのです。
ホームアンドアウェーの2試合での結果で決まるこの戦い。まず初戦は、神戸がホームで福岡を迎えます。
その神戸は、チームの大黒柱である三浦が出場停止で欠場というのが、何よりも痛手となるスタートです。

立ち上がりから神戸は、右ウイングである朴が突破力を発揮。大きなサイドチェンジからその朴を経由して、中央の近藤、あるいは左ウイングの茂木へと渡っていきます。今季の象徴であった、このワイドに開く3トップによる展開力で、神戸が先手を取っていくかとも感じられました。

しかし、徐々に福岡の方に主導権が渡っていくゲームになってきます。中盤の選手に、勢いと粘りの差が出ていました。
この日、中央のMFとして起用された神戸のガブリエルは、カウンターの場面などでの強引とも言える勢いだけは良かったのですが、これらは単発に過ぎず、うまくチームの流れに入ってこれません。守備時の動きも緩慢な印象でした。
対する福岡のMF陣は、そつなく仕事をこなしていました。ボランチのホベルトは本当に地味な働きでしたが、攻め上がる中盤やサイドバックの選手たちの穴を着実に埋め、カバーリングを主として、チームの土台の安定に貢献していました。また、左右に開く古賀と久藤の、散開する活動量です。威勢良く駆け込み続けて、自軍へペースを引き寄せます。特に久藤は、右サイドへの侵攻を何度も成功させていました。
これに、神戸の両サイドのMFである田中と遠藤は、その対応に追われるばかりです。神戸は中盤が全く機能不全となって、ここから長い時間に渡って福岡に支配されることになります。

こうして得たペースに、福岡は前線から、FWの飯尾がよく絡んできます。そしてその飯尾が、十分に中央で相手の守備網をかき回して、やや混乱気味にさせていくのです。そこで、手薄となった両サイド。ここからラストボールを入れていくというのが、この優位な流れの中で確立させた福岡の攻撃パターンでした。中盤での連携力がよかったこともあり、このかたちを幾度も神戸に向けて押し寄せることができていました。

しかし残念なことに、福岡は肝心のフィニッシュのボールのコントロールがなかなか定まりません。連発させたクロスの精度もほとんどは褒められたものでなく、フリーでの体勢からのシュートも力なく転がっていきます。健闘してペースを握ることができても、ゴールに至るまでのプレーで精彩を欠くという、これまでどおりの福岡を今日も見せてしまいました。J1ワーストの得点数である、攻撃力不足が健在です。何とかして、この多大にあった自分たちの時間帯の中で、1点だけでも取りたかったところでしたね。

後半も引き続き押し込められていた神戸は、不本意にもカウンターでしか攻撃することができませんでした。しかしそれすらも、トップの近藤はボール離れが遅くて機を逸するし、全体の押し上げにも恵まれないため、朴一人だけが奮闘する、まるで迫力に欠けていたものでした。

ところが、ある選手がこの煮え切らない流れをひっくり返すきっかけとなります。その選手とは、三浦欠場の代役として入った茂木でした。彼は慣れない左ウイングを任されてとまどいもあったのか、前半はまるでこのポジションでの働きが出来ずに消えていた存在でありました。ですが、後半からは一変して、突破力ある個人技を炸裂するようになってきます。左サイドに突進する動きで敵を引き寄せ、ドリブルで相手2人をかわすこともあれば、単独による切れ味あるシュートまで放ちます。この突然の変貌ぶりに、対峙する福岡の右サイドバックの吉村は、それまで完封できていたのが嘘のように彼に崩されまくっていました。

唐突に出現した茂木という猛然とした力により、福岡はそれに対応せざるを得なくなり、彼の後方にいた神戸のMF田中も、それに乗じるかたちでアグレッシブに前を向けることになっていきます。この田中の支援も受けて、右からは朴が、そして左からは茂木が。それぞれ突破口となり、ついに得意とする攻撃的なサッカーを見せ始めた神戸が、シュートを乱発させる終盤となりました。
しかしながら、福岡のキーパーである水谷の好セーブにも遭い、この制圧権を奪取できた時間自体も短かったことから、結局は得点に至るまでにはなりませんでした。

長く試合を支配したものの、決定的な攻撃力に欠ける福岡。持ち味である乱打戦にようやく持ち込めた展開の時間帯が、余りにも少なかった神戸。0-0というスコアレスドローは、妥当な結果であった試合でした。

■ 最後に笑うのはどちらか
神戸にとって最大の収穫だったのは、アウェーである福岡に対して無失点で抑えきったことでしょう。これで福岡に乗り込む第2戦、ここで1点でも決めようものなら、アウェーゴール数の差が決着に関連することから、福岡には2点以上が必要となってきます。こうなると、攻撃力の乏しい福岡にとっては、致命的な事態になりかねないことでしょう。
また、もちろんのこと、神戸をけん引する主将の三浦もカムバックしてきます。さらなる攻撃陣の活性化、ならびにセットプレーという大きな武器に期待をすることができます。
これに、唯一の懸念であるセンターハーフに、今季バランサーとして君臨し続けた栗原が復帰できれば、申し分ないでしょうね。彼が存在していれば、この試合でも、あそこまでは中盤で差をつけられることはなかったと思われるのです。
果たして、これまでの広く畳み掛ける攻勢を、次回の最終戦でこそ見せることができるのでしょうか。

福岡は無得点にこそ終わりましたが、決してその戦い方は間違ってはいなかったはずです。中盤で献身的に、あるいは活発的に動いて、連動性を見せたあの試合運びは、十分に可能性を感じさせるものでした。これを次戦でも、ぜひ再現したいところです。そうすれば、ホームであることもありますし、その後押しを受けて、きっとこの日に足りなかったフィニッシュの過程にも磨きがかかることでしょう!(多分ですけど・・・)
ただ一つ、心配材料なのが両サイドバックです。右サイドバックの吉村は、後半に茂木とのマッチアップで、1対1での突破についていけない、守備能力に脆さがあることを露呈してしまいました。さらに難しい扱いとなるのが、左サイドバックのアレックスです。彼のオーバーラップは、彼自身の強烈な個性から発揮されるパワーを持っており、福岡の攻撃陣にはない貴重な積極性であることは確かです。しかし攻め上がった際に、その裏を狙われるのは当然ですし、アレックス自身の守備力も、正直に言って甘いものであることもまた確かなのです。次の試合でも、ホベルトのカバーリングによる援助なしでは、神戸の右ウイングの朴に存分に暴れられるのが今から目に見えます。神戸の得意とする、両サイドからのウイングの選手による突破力。これをどう抑えきれるかが、鍵となってくるでしょう。

泣いても笑っても、あとたった1試合。J1の舞台へとかける両者の意気込みの全てが、ここで激しくぶつかり合います。


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