みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

C大阪 × 川崎

2006年12月04日 | サッカー: Jリーグ
2006 J1リーグ 第34節: セレッソ大阪 1-3 川崎フロンターレ

■ C大阪、J1残留への最終決戦
去年、最終節の後半44分まで優勝をその手につかんでいたというチームが、今年は一転して最後までJ1の残留争いを繰り広げることになるなど、誰が予想していたでしょうか。
C大阪はこの最終節、何とか残留へ望みをつなぐために、川崎との対戦で現在の16位を死守しなければなりません。

今週末は、海外において目立ったカードがないため、このJ1残留争いにスポットを当ててみました。

■ 京都、福岡、C大阪の苦悩
当初は甲府、広島などもひしめきあっていた今年のJ1の下位グループ。しかし9月に入ってくると、16位、17位、最下位のボトム3のチームと、それ以上のチームとの差は、試合を重ねるごとに開いていきます。事実上、J2への降格の可能性があるのは、この3チームだけに絞られるようになりました。
その3チームとは、京都、福岡、そしてC大阪です。
J1残留が自動的に決まる15位以上はもう望めそうにないため、J2の3位との入れ替え戦に回ることになる16位。これをどうにかして確保し、17位以下の自動降格だけは避けたいところです。
ですが、この3チームは終盤になってもなかなか白星に恵まれず、勝ち点差がつかないままの大接戦を最終局面まで繰り広げていました。

最初に力尽きたのは京都です。最終節を前にした33節、優勝争いをしていたG大阪に逆転負けを喫し、最下位が決定してしまいました。
京都は在籍する戦力が、J1で戦えるレベルには達していませんでした。それにもかかわらず、満足な選手補強もしないままに突入した今年のJリーグ。開幕戦で4失点、続く2節で7失点という、衝撃的な連敗でのスタートでした。これに象徴されるように、何よりも今年の京都は脆弱な守備力に泣かされ続けました。身体能力で劣り、まともな守備組織も準備できていませんでした。そこへ、攻撃陣も機能しなかったことにより、一方的に攻めを浴び続けるものですから、結果としてリーグワーストの失点数を記録してしまいます。今季公式戦での無失点は、たったの1試合でした。
監督交代も遅すぎた感もありますね。美濃部監督による新体制も、これまでの不振が根深く引きずられていて、結局1勝もできませんでした。
Jリーグ史上最多の、3度目の降格となります。

17位の福岡も、あまり選手層には恵まれていません。しかしながら、出場した選手たちは粘り強く戦っていました。
ここまで低迷した原因はただ一つ、攻撃力の不足です。絶対的なストライカーがいませんでした。長らくトップを務めていた飯尾や薮田は、どちらかと言えば周りを活かすタイプ。途中からFWとして起用された布部も、MFからコンバートされた選手でした。そのためか、せっかく敵陣に入っても前線の選手たちは横パスばかりを繰り返し、一向にフィニッシュへ持ち込む姿勢が見られません。得点はおろか、シュートさえ打つ気配がないのです。多少強引でもシュートを敢行するというような個性の強い選手は少なく、このシュートの絶対数の少なさが、今年の福岡の得点力の乏しさに直結しているでしょう。緊急獲得したFWバロンも不発で、完全に失敗の補強でした。主導権を握りながら勝ちきれない試合が少なくありません。
このままでは降格してしまうという中、中盤で主力として活躍し続けた、U-21日本代表の中村北斗が全治6ヶ月の重症という、非常に暗いニュースがチームに追い討ちをかけます。この限りなく重い雰囲気を払拭して、逆転の生き残りを果たせるのでしょうか。

現在16位をどうにか保っているのがC大阪です。他の2チームと比べては、タレントを揃えている陣容です。そして、去年はあとわずかのところで優勝を逃していたこともあり、当初の目標はもちろんJリーグの初制覇でした。
ところが始まってみると、開幕から何と4連敗、しかも全て3失点以上という最悪のスタートです。このスタートダッシュの失敗が、今年のC大阪が沈んだ決定的な要素だったでしょう。早々に監督を交代させ、6月にはFW大久保を復帰させますが、その中期では今度は7連敗という、立ち直れないほどのショッキングな時期を送り、最下位が定位置となってしまいました。
要因の一つには、集中力の持続性に欠けていることが挙げられるでしょう。リーグワースト2位の失点数も問題なのですが、注目なのがこの計70失点中、実にちょうど3分の2にもあたる47失点を後半に喫しているということです。それも、試合終了まで残り15分からという時間帯での失点が目立ちました。これで、自慢の攻撃陣が先制しても勝ちきれない、あるいは逆転されてしまうケースが多々あったのです。
残留のために、緊急的に磐田から切り札として、元日本代表MF名波まで連れてきました。彼の精神力が影響したのかどうか、チームは依然として不安定ながらも、徐々に改善の兆しが見られている現状です。

■ 16位の座を争う最後の戦い
京都が脱落し、16位をめぐる争いは、C大阪と福岡の一騎打ちとなりました。この日の最終節直前の勝ち点差は、両者の間でわずかに1点差。得失点差も同点という、非常に拮抗した状況です。わずかにリードして16位にいるC大阪ですが、この最終戦の試合結果によっては十分に逆転されてしまう可能性があり、決して軽々しい意気で臨むわけにはいきません。

そのC大阪の今日の相手が川崎です。今季は、良い意味で期待を裏切る大躍進を遂げて、優勝争いの一角として存在したチームです。すでに優勝の可能性は潰えていますが、この最終節の結果次第では、来年のアジアチャンピオンズリーグの出場権を得ることになる2位へと浮上することができるため、その士気は衰えていないとみていいでしょう。この強敵が、C大阪に立ちはだかります。

C大阪は名波が久々の先発出場。一方の川崎はFW我那覇が故障、MFでも森と谷口が出場停止など、ベストメンバーが組めませんでした。

試合はC大阪のペースで進みました。ぎこちなさは見られましたが、こぼれ球をよく拾え、キープできていた展開です。
しかし前半8分、川崎のこの日初めてのチャンスが点へと結びついてしまいました。左サイドから、FWジュニーニョのボワンとしたクロスに、伏兵のMF飛騨が見事なボレーシュートでゴールに叩き込んだのです。鮮やかなシュートでした。これは、純粋に飛騨が褒められる場面で、防ぎようのない得点だったでしょう。川崎が先制です。

1点を取ってあまり無理をしない川崎に、キープレイヤーの名波を徹底マークされるC大阪。加えてミスも多く、決定機は、放り込みから西澤と大久保が生んだ一度きりでした。
そしてカウンターから再三ピンチを招くようになった中、さらに追加の失点をしてしまいました。
川崎は左サイドのマルコンから、中央のジュニーニョへ。ジュニーニョはこれをアウトサイドキックで、フワッとしたループシュートにします。これがきれいにゴールへと吸い込まれて、川崎に2点目をもたらしました。またも素晴らしいフィニッシュ。川崎は巧みなシュート技術で、C大阪を突き放します。

C大阪も黙ってはいません。その直後の前半終了間際、やっと続けてきた放り込みのサッカーが成功して、前方に突進していたMF古橋にボールが渡ります。それを古橋、難しい体勢からも完璧と言えるワントラップシュートを突き刺し、ゴールとしたのです。これもまた見事な技術の得点でしたね。
C大阪にとっては前半に1点差へと追いつく、大きなゴールでした。

そして運命の残り45分です。
後半は一方的とも言えるほどに、C大阪がゲームを支配し続けていました。しかしながら、大久保のヘッドがバーに当たった以外、チャンスらしいチャンスをなかなか作れません。あと1点が追いつかないC大阪。その間にも、どんどん時間は消化されていってしまいます。

ここで、同時刻に行われていたライバルの福岡の試合に動きがありました。先制されていた福岡が、後半23分に同点に追いついたのです。さらに対戦相手の甲府は、退場者が出て1人少ないという戦況です。
C大阪と福岡の両者、仮にこのままの結果で終わると、勝ち点が並ぶことになります。ですが、得失点差でわずか1点だけ福岡が上回ることになり、逆転で福岡が16位となってしまうのです。
数的優位に立っていることもあり、ここから負けるとは考えにくい福岡。C大阪にとっては、もはや同点以上とせねばならない切羽詰った状態になりました。

どうにかして追いすがりたいC大阪。しかし、無情にも川崎のジュニーニョが、またしてもその個人技を炸裂してしまいました。
カウンターから、ジュニーニョは単騎で駆け上がり、ドリブルで一人でC大阪陣内まで持っていってしまいます。そこから丁寧に、FW黒津へラストパス。黒津、これを難なく決めて、再びC大阪を2点差へと追いやりました。
試合終了残り5分のところでした。事実上、これで勝敗は決しました。

■ 攻めきれなかったC大阪の後半戦
このC大阪の1-3での敗戦を振り返ってみましょう。
前半の2失点は、守備が緩いと言うよりも、いずれも相手のシュートが見事すぎたという点で、正直なところ致し方ない感じがあります。
むしろ前半のうちに1点差に追いつき、これからさあやるぞ!という雰囲気になるべきだった後半戦に焦点を当てたいと思います。問題なのはなぜ、名波も存分に絡めるようになってこれて、あれほどグラウンドを支配したにもかかわらず、まるで相手ゴールを脅かすことができなかったのかということです。

まず、前半からも目立っていて、引き続き多発させていたパスのミスです。相当頻繁にあったように見受けられました。これはことごとくC大阪の攻撃を寸断させ、川崎にとっては決定的なカウンターとなる起点になり、皮肉ではありますが、この日の川崎の大きな武器だったでしょう。
中央攻撃のみで、基本は放り込みという、バリエーションの少ない戦術も迫力さに欠けていましたね。大型の川崎守備陣には、まるで通用しませんでした。川崎の今年の課題であった守備ですが、その失点の内訳は、カウンターや空いた両サイドから、スピードに乗った攻撃で取られるというケースが目立っていたのです。川崎のDF陣は屈強ながらも、速さや臨機応変な柔軟性には少し欠けているところがあります。これを突きたかったところです。後半の唯一の決定機は、左サイドのゼ・カルロスからの速いクロスに大久保が合わせたものでした。川崎の両サイドの選手は攻撃的だったのですが、それにひるむことなく、そのサイドの裏を、この一度だけではなく何度も有効活用してほしかったですね。そして左右、ときには中央から、低く速いラストパスで川崎を揺さぶれば効果的だったと思われるのです。
あと、個々の選手でいえば、古橋ですね。彼は今日のC大阪の中では一番勢いがよく、ポジションにとらわれずに前へ中へと切れ込んで、最も可能性を感じさせていましたが、後半からはバタッと運動量が落ちてしまいました。この迫力ある存在が消えてしまったことは、C大阪の攻めに少なくない影響を与えました。また、C大阪にとっては痛い、FW西澤の負傷退場もありました。代役として入った柿本は、懸命さは見られましたが、残念ながら西澤とは比して存在感が劣っていたことは否めません。最前線へ放り込むサッカーという中で、ターゲットにも起点にもなれず、敵を引き付けるような動きにも乏しい印象でした。

そして何よりも申し上げたいのが、降格するかもしれないという危機的な状況なのに、選手たちにその危機感らしきものがどうも感じられなかったことです。ただ一人、名波を除いて、「負けたらどう転ぶかわからないんだ」というような気迫さがまるで伝わってきませんでした。福岡に対して勝ち点差1だけでも上回っているという、優位な感情が試合前からあったのでしょうか。そんなもの、前半早々に失点した時点から吹き飛ばし、後半で終盤にもなって追いつけていないような局面ならばなおのこと、猛然とした姿勢でもって勝ち点を狙いに行かねばならなかったはずです。福岡が同点に追いついたという情勢は、各選手には伝わってはいなかったとのことでした。それでも、この試合に敗れたならば、その失点数がどれほど多くとも順位の変動には影響しないわけで、リスクを犯してでも最低限引き分けには追いつくんだという、全員攻撃も辞さないような意思で戦わなければならなかったのではないでしょうか。「負ければ終わり」くらいの覚悟での積極性を見せてほしかったです。
このようなときに精神的支柱となる森島が不在だったり、不振を引きずって消沈していたことなども、関係があったかも知れません。ですが、この重要な試合の切迫した展開において、必死さや覇気を感じさせてくれなかったことは非常に残念です。厳しいことを言うようですが、この点においてだけは、J2降格も止む無しという評価を下さざるを得ません。

■ J1もJ2もついに決着
最終節の結果、C大阪は敗北。福岡はドロー。従いまして、申し上げましたとおりに、同勝ち点ながらも得失点差で福岡が上回り、福岡は土壇場で16位へ浮上しました。C大阪は17位に下がり、降格が決定です。

C大阪は塚田監督が辞任となりましたが、西澤、森島、大久保といった主戦力の選手たちが、次々に降格後もチームに残留することを早々と明言。さらにクラブ側から新戦力の補強が示唆され、名波までもが留まる可能性のあることをほのめかしています。昨年の優勝争いを知る選手も、いまだ在籍していますから、潜在的な能力はまだ十分に保有しているはずです。それにプラスアルファが加わり、これからどのような進化を見せてくれるのでしょうか。昨年に見せた、抜群の速さの攻守の切り替えによる躍動感を取り戻し、集中力と精神的な逞しさを鍛え上げながら、来年のJ2を戦い抜いてほしいと思っています。ぜひ、1年でJ1に戻ってくれることを期待しています。

J2でも最終節、逆転の結末がありました。3位の柏が勝利して、敗戦した神戸の2位の座を奪い返したのです。昇格争いも降格争いも、最後までもつれていた混戦でしたが、ようやく決着がつきました。
来季J1昇格は、横浜FCと柏。J2降格は、京都とC大阪です。
そして福岡と神戸が、J1の座を争う入れ替え戦へ臨むことになりました。この入れ替え戦は、今月6日と9日にホームアンドアウェー形式で行われます。

■ 川崎はアジアの舞台へ!
そして最後に追記したいことがあります。この試合で勝利した川崎ですが、G大阪が敗れたために、彼らを振り切って、今年はJ1準優勝という見事な成績を勝ち取ったのです。
これで川崎は、来年のアジアチャンピオンズリーグへの出場が決定しました。なぜ2位なのに出場できるのかと言いますと、この出場権はJ1優勝チームと、昨年度の天皇杯優勝チームの2チームに与えられるのですね。ところが、昨年の天皇杯の優勝が浦和で、今年のJ1の優勝もまた浦和であったことから、規定によりJ1の2位のチームが繰り上げで参戦となるからなのです。
今年の川崎の目覚しい躍進ぶりについては何度か記述してきたので詳細は省略いたしますが、素晴らしい快進撃で鮮烈な印象を私たちに与えてくれました。この大きな飛躍には、惜しみない賞賛を送りたいと思います。おめでとうございました。
その爆発的な攻撃力をベースとして、今後さらにどのような強化がされていくのでしょうか。そしてそれが、アジアという舞台でどこまで通用するのでしょうか。大きく注目していきたいと思っています。


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2 コメント

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セレッソ降格と川崎の大躍進 (けいいち)
2006-12-04 12:34:50
TBありがとうございました。
セレッソは主力が残留するんですね。昨年の柏のようになるかと思いましたけど、セレッソはもともと潜在能力の高いチームだとは思いますが、ムラがあるというかツボにはまればなんでしょうけど、イマイチ掴みどころのないチームですね。
ただ、J1に1年で復帰するのは相当至難の業だとは思うので(今年のヴェルディが沈んだように)、主力が残留するとは言えども、それで油断すると…、なんですけどね。
川崎は今年、最も輝きを放ったチームでしょうね!中盤から前線にタレントが豊富ですが、最終ラインの3人が安定していたことも見逃せないとは思います。けれども、今年の川崎は出来すぎた印象もあり、来年はマークされる側になるので、クラブトータルとして試される1年になりますね。
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Re: セレッソ降格と川崎の大躍進 (みのる)
2006-12-04 18:54:52
毎度どうもどうも。

C大阪は大久保と名波の残留がほぼ確定したみたいですね。MF古橋やGK吉田など、主力の引き留めにもクラブ側は全力で臨むみたいです。
ちゃんとこれほどのメンバーを集められて、安定した戦いが出来れば、順当に勝ちあがれるとも思いますが・・・。おっしゃるとおり、J2の長丁場は困難があってどうなるものかわかりませんものねー。
あと特筆すべきは、苔口、森島康仁、そして柿谷といった優秀な若手を揃えていることですね。移籍してしまわなければよいのですが、順調に成長するとなると、将来には明るい兆しが見えてきます。

川崎はあっぱれでしたね!そして確かに、来年はアジア出場など、総合力が問われる立場となります。正直、レギュラー以外では層が厚いとは言い切れない現状ですしね。質・量の両面でさらなる強化を図って、ぜひ頂点を狙っていってほしいですね。
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