みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

インテルナシオナル × バルセロナ

2006年12月18日 | サッカー: 海外その他
FIFA クラブワールドカップ 2006 決勝: インテルナシオナル 1-0 FCバルセロナ
(2006/12/17)

■ 欧州王者対南米王者、世界一をめぐる決勝戦
バルセロナ、悲願の世界初制覇なるか。クラブワールドカップもいよいよ決勝戦です。
対戦相手は南米王者のインテルナシオナル。開幕前からの予想通りのカードが実現しました。

インテルナシオナルは今年8月に、南米一を決めるリベルタドーレス杯の決勝まで進出。そこで、同じブラジルのチームで国内リーグ優勝を果たしているサンパウロを撃破し、見事にその座を獲得して今大会に出場してきました。
過去にはドゥンガ、ファルカンといった世界的名選手が所属していましたが、南米王者となったのは今回初めてのことでもあり、私も含めて日本での知名度はそれほど高くはありません。南米チームというイメージからは少し外れて、北欧系のパワーと熱いファイトに溢れるしぶといスタイルを基本としており、そうしたサッカーでもって勝ち上がってきて、この大舞台への挑戦権を手にしました。日本に、そして世界に自分たちの名を知らしめるこの絶好の機会に、チームの意欲は並大抵のものではありません。
長身で頑強ながら技術も優れる、大黒柱のFWフェルナンドンが中心選手ですが、総じてはスターと呼ばれる人材に恵まれているわけではありません。しかしながら、選手たちの結束は固く、与えられた任務は着実にこなします。ここ最近は若手育成にも力を入れていて、実際に今回も17歳のアレシャンドレと19歳のルイス・アドリアーノが主力のFWとして控えているなど、真摯な姿勢でもって作り上げてきたチームと言えるでしょう。
初戦となった準決勝では、いきなりそのアレシャンドレとルイス・アドリアーノの10代コンビが揃って得点。ただ、同じ準決勝で大勝という滑り出しを見せたバルセロナとは対照的に、どうも全体的に、動きに固さの見られた辛勝であったことは事実です。それでも、バルセロナにとっては前回よりも格段に難しい相手であることに違いはありません。初の「世界一」の称号を目指すバルセロナに、最後で最大の難関が待ち受けます。

バルセロナは前の試合と変化なしの、いつもの4-3-3。インテルは要となるFWフェルナンドンを前線からやや下がり目の中央へ配し、4-4-2とも4-3-3ともとれるフォーメーションです。17歳の新星エース、FWアレシャンドレも前回に引き続き先発しています。

■ 支配するバルセロナに放たれた一発のカウンター
序盤は意外にもインテルが制圧していました。ショートパスをよくつなぎ、リズムを作っていきます。スルーパスを連発させたり、ワンタッチでの崩しもあり、いくら力と堅さが売りとは言え、そこは南米らしい技術も見せてきます。
ただ、さすがに総合力で上回るのはバルセロナ。この日も攻守に貢献する中盤のデコとイニエスタを中心として、徐々にペースを奪い返していきます。以降は、支配するバルセロナとカウンターを狙うインテルという、それぞれの特色の出る予期された展開となっていきました。

しかしながら、バルセロナは攻めきることができません。前半に決定機といえば、虚をつく素早いリスタートからグジョンセンがトラップミスをして逸したものだけでした。いつものように敵陣深くで軽快につないでいって崩しにかかる動きが見られず、単発の個人技やミドルシュートばかりに終始します。
中でも明らかに攻めに絡めない、と言うか絡ませてくれてなかったのが、左ウイングのロナウジーニョでした。インテルの右サイドバックのセアラがどこまでも徹底的にマークし、同サイドMFウェリントンとともに彼の存在を潰していたのです。ロナウジーニョはこれから逃れるために中央へと移ったりしていましたが、解決にはならず、本来発揮できるプレーにかなり制限をかけられ続けました。

後半にインテルは、本調子でなかったアレシャンドレに代えて、こちらも若いFWルイス・アドリアーノを投入します。彼と、いよいよトップギアに入ってきたFWイアルレイが主軸となり始めると、インテルはさらにカウンターの切れ味を鋭くさせてきました。選手たちがよく動き、ポストプレーなども駆使して最終的にシュートにまで至る、可能性を感じさせる速攻へと強化されだしたのです。
ただしタレント軍団のバルセロナは、最後の関門も強力なものです。センターバックのプジョルとマルケスは、前半からもそうでしたが、このような事態となっても最後の局面においてラストプレーを許しません。マルケスは体を張ってシュートをブロックし、プジョルは相手の突破に即座の反応で身を投げ出して阻止し、2人とも闘志をむき出しにする守備で何度もこれらを防いでいました。

これに応えたいバルセロナの攻撃陣。相変わらずキープするものの「らしい」サッカーが出来ずじまいでありましたが、途中出場のシャビがアクセントになると、得点機までこぎつけられるようになってきます。

しかし!運動量の落ちなかったインテルはこれを耐えしのぎ、そして例の2人のFWの続けてきたカウンターがついに実を結ぶことになったのです。後半37分、インテルの自陣最奥からのロングボールが事の始まりでした。空中で長い距離を伝わってきたボールに対し、中央のルイス・ファビアーノが競り合いながらもヘッドで前方へパス。これを託されたイアルレイは、単騎で突っ込んでいきます。怠りなく激しくマークへついてきたDFプジョルに屈することなく彼を振り切り、前線でフリーの体勢を自ら作ると、そこから左方へ絶妙のスルーパスを通したのです。これに飛び込んできたのは、エースのフェルナンドンの負傷退場による代役で投入されていた、カルロス・アドリアーノ!彼はペナルティエリア内に進入し、そして確実にゴールへ押し込んだのです。何とインテルナシオナルが先制!この得点を決めた、ラッキーボーイに群がるインテルの選手たち。電撃的な速攻でした。

とうとうカウンターの一発を浴び、よもやのリードを奪われたバルセロナに残された時間は多くはありません。怒涛の反撃を見せたいところですが、やはり外側からしかチャンスを作れませんでした。デコの強烈なミドルシュート、唯一自由にプレーができることになるロナウジーニョの直接フリーキック、放り込みからのイニエスタの突撃・・・。いずれもさすがと言うべき質の高いプレーでしたが、決め手に欠きます。
後方ではなおもインテルのイアルレイが暴れており、効率的に時間をどんどん奪われていました。

ロスタイムには、もうほぼ全員が総立ちとなっていたインテル側のベンチサイド。そして試合終了となった瞬間、その彼らが一斉にグラウンド内に入り乱れて歓喜を爆発させました。
インテルナシオナルがバルセロナを退けて、栄えあるクラブ世界一へ輝いたのです。

■ バルセロナの攻撃不全の理由とは
この試合における最大の疑問は、「なぜ支配していたバルセロナは攻め崩すことができなかったの?」という一点に絞られると思います。今季のバルセロナが完封された相手とは、チェルシーとレアルという堅守かつ世界的なクラブのこの2チームだけで、無得点に終わったということは極めて異例な事態です。いくら守備的なインテルの最終ラインが屈強だとしても、それだけで片付けられる問題ではないでしょう。

真っ先に思い浮かぶのが、試合前の宣言どおりにインテルがロナウジーニョを完全に封殺させようとしてきたことです。実際に、いざ始まってみるとサイドバックのセアラがしつこいほどに密着してきて、結局、ロナウジーニョは準決勝のときのような華やかさをかけらも発揮することができていませんでした。
しかしバルセロナにとって、彼が徹底マークに遭うことなど決して珍しいものではありません。これまでも、残された他の選手だけで崩して得点機をつかめましたし、ロナウジーニョ自身もマークを外すスキルを備えています。何が問題となったのでしょうか。

私はインテルの、ハーフラインやや後方における2人の守備的MF、ウェリントンとエジーニョの働きが、これの最大の功労者だと考えています。
この日のバルセロナの布陣で言えば、攻守の心臓部となるのは間違いなくデコとイニエスタでした。そのデコには主にウェリントンが、イニエスタには主にエジーニョが、それぞれ相互にカバーもし合いながら、攻め寄られたら大抵は即座にマークを仕掛けていっていたのです。自らプレスに行って奪おうとする行為はしません。ただし、持ち場に来られたら絶対に自由にはさせまいとする、確実性を重視する構えです。これを、試合を通じて集中力を切らさずに続けた成果が生まれてきたのだと思います。
デコとイニエスタの、守備時における活動と能力は相変わらずでしたが、いざボール保持時にはこれらの厳しいチェックを前にして、段々と目に見えてその位置取りは下がっていました。下がり目ならばプレスは襲い掛かってきません。よってこのハーフライン近辺から組み立てるのですが、さほど脅威にはなり得ませんでした。バルセロナの対戦相手にとって、最も抑えるのが困難な攻撃の一つは、自陣のペナルティエリア前でやられてしまう波状的なパスワークでしょう。ここでバルセロナの複数の選手がワンタッチ、スルーパス、あるいはサイドチェンジと、左右や前方へ流れるようにつないでくるのが危機的状況へとさせるのです。その連動あるパスに絡むべきデコ、イニエスタの両者が、自分たちにとっての得意なエリアへと入って行けません。
ウェリントンとエジーニョが息を切らさずに、最後まで彼らと対抗しているのを何度も見ました。そして彼らをペナルティエリア前から追い払い、受け手となるグジョンセンやジュリとの距離を間延びさせたのは、相当に効果があったと感じられたのです。
特にウェリントンはこれをこなしながら、ロナウジーニョのマークのフォローにも度々入っています。もう、いかんともしがたくなったロナウジーニョは、最前線の中央へとポジションチェンジもしていましたが、そこで埋没してしまいました。とうとうデコ、イニエスタ、ロナウジーニョといったチャンスメイカーたちの関係はバラバラになりっ放しで、それぞれが単独での技術で打開しようと試みるにとどまってしまったのです。

さらにザンブロッタの損失も大きな痛手ではなかったでしょうか。右サイドバックで先発した彼は、前半の45分間、守備も完璧にこなしながら再三オーバーラップをしていました。同サイドのインテルのMFアレックス、ならびにサイドバックのカルドーゾは攻撃的な選手であったため、彼を抑えきれていない雰囲気ではありました。ジュリとの連係も良く、この右サイドアタックは結構可能性を感じさせたものです。
しかしながら前半終了間際にザンブロッタは負傷が判明。ベレッチとの交代を余儀なくされます。インテルもこのサイドのMFをより堅実なバルガスへと代えた影響があったかもわかりませんが、ベレッチの攻め上がりは残念ながら、ザンブロッタのそれとは比して迫力に欠けます。しかも、中央寄りに進んでいって単独で完結する攻撃が多く、中盤前方が機能不全だったことも合わさって、右ウイングのジュリが孤立していくことになりました。後半のジュリはほとんど存在が消えていて、バルセロナの攻撃力低下に影響していたでしょう。
さらにベレッチを追い詰めるようなことを追記させていただくと、失点シーンにおいて最後にシュートをされたカルロス・アドリアーノへ、軽いマークでついてバランスを失って倒れてしまったのはベレッチです。ザンブロッタの強靭な1対1の阻止能力なら、あるいはこれをブロックできていたかも知れません。

■ 個人的には健闘を称えたいウェリントン
こうして、粘る守備からカウンターを通す、自らのスタイルでもってバルセロナをも倒すという、会心の試合としたインテルの選手たち。
中でも、そのカウンター時におけるFWイアルレイの活発な動きは派手で目立ちましたね。序盤からスペースへ流れる勢いを見せていて、後半の途中からはより存在感が際立っていました。後半の反撃時にはほとんど関与しており、自身でも反応よくシュートを放っています。体力的に厳しい時間帯であろう終盤ながら、プジョルを巧みにかわしてアシストとなるスルーパスを送る、一連のプレーは見事と言うほかないですね。パスなどのミスが多かったのなどはご愛嬌です。
データを見るともう32歳。そんな年齢も感じさせない、試合終了直前まで衰えなかった躍動感でした。トヨタカップの経験もあり、その蓄積された勝負勘によって、勝利の立役者となったベテラン選手です。

もう一人、個人的にはこの試合で見過ごしてはならないと思う活躍であった選手がいます。それは、主に右サイドでMFを担当したウェリントンです。
前述したとおり、デコに立ちふさがり、ロナウジーニョへのケアも行い、時折イニエスタをも阻んだ、守備での貢献が多大だった選手です。それだけでもかなり存在価値が高かったのですが、彼は、チームのカウンターアタック以外でのキープ時や遅攻といった場面で、司令塔という役割も果たしていました。よくフリーのスペースに顔を出しては起点となり、ボールを受ければ離すことなく保持し続けます。時にはスルーパスを出してシュートまで導いたり、大きなサイドチェンジで局面を変えるなどの好機ももたらしていました。何より冷静な判断で捌いて組み立て役となり、チームに落ち着きを与えていたことを評価したいのです。
確かに、ここぞという決定的な仕事をした印象はありません。それでも地味に、上記までの完封につながる守備、および拠点となる働きを90分ずっと続けていました。私はそんな彼を、この決勝戦での最大の殊勲の選手とさせてあげたいと思っているのです。

■ 執念が見事に実ったインテルナシオナル
バルセロナは決して調子が悪かったり、ましてや油断などをしたわけではありませんでした。また、今回の世界初制覇に向けて、クラブ側も一丸となって本気で狙っていたことも存じています。
ただし、インテルもまた、その思いは大変に強いものだったのです。インテルは南米らしからぬ、あえて受け身となって守備重視からのカウンターという、欧州のような手堅く「負けない」サッカーで戦っていることについて、国内外から批判され続けてきました。インテルが「南米代表」となるのに快く思っていない人たちもいます。ですが、彼らは長きに渡るこのスタイルに信念と誇りを持っていて、ブラジル人主体の編成でもこの戦い方が通用し、結果を出せるのだと強く主張したいのです。自分たちを応援するサポーターからさえも戦術転換を迫られてしまう圧力の中、くじけることはなく、より一層この戦法を磨き上げてきました。そして、クラブ創設から約100年にして、初の世界一へと挑むという、またとない今回のビッグチャンスです。どうしても彼らはこれをつかみ、自分たちを認めさせたかったのでしょう。初戦で格下相手に勝利したときから、激しく喜びを表現させていたことからも、その熱意が見受けられます。
優勝するためには必ずや避けられないであろうバルセロナとの対戦にも、相当な準備でもって臨みました。徹底的にバルセロナの攻撃パターンを研究し、その対策のためだけの練習も繰り返し行ってきました。守備位置の試行錯誤、マーク役の確認、カバーリングの対処・・・。全てはこの一戦のためだけに行われてきたことでした。あの世界最強クラスのバルセロナを破って王者となれば、世界中に名を轟かせることができるだけでなく、進んできた道が間違っていなかったことを文句なく証明できるからこそです。そして、その執念とも言える取り組みが、見事に実るかたちとなったのです。
確かに、主要国の代表選手を勢揃いさせるバルセロナに勝利したこと自体は番狂わせかも知れません。ただ、タイトル獲得に真剣であったバルセロナをさらに上回る意気込みで、ひたむきにこの日のために努力してきた彼らに、勝利の女神が微笑んでもおかしくはなかったと思います。

魅力的な攻撃でいつも私たちを楽しませてくれるバルセロナの優勝する姿を見れずに、バルセロニスタはもちろんのこと、残念な気持ちであるサッカーファンの方も大勢いるのだと思います。つまらないサッカーをするチームが勝ったものだと、UEFAの面々もきっと愚痴をたれているのでしょう。でも私は、好きか嫌いかは別として、面白味のないとされる「堅守速攻」というスタイルも、勝つための戦術であるならば支持します。それで結果を出せたのならなおのことです。勝利でも引き分けでも結果を出すために、考え抜いた末に編み出した正当な戦い方で、失敗しているのならともかくそれで成功したのならば、どのような内容でもそれは非難されるべきではないと思うのです。
とにかく、インテルの選手たちは自分たちの能力の範囲内で何が出来るのかを見出し、それをもとに着々と準備し、そして精一杯に実行した上で頂点に立ちました。実に立派な優勝だったと思います。おめでとうと申し上げたいです。
大の親日家でいてくれているフェルナンドンも、好きなこの日本でビッグタイトルを獲れて、喜びの声を上げているのだとか。よかったですね。

試合終了後にインテルの若い選手たちが、彼らにとって英雄であるロナウジーニョにこぞって握手などを求めたところ、ロナウジーニョは敗戦の落胆のそぶりも見せずに気丈に全員に応じたという記事を目にしました。こちらも立派なことですよね。
この悔しさをばねに、まずは来年2月にリバプールを制し、勝ち上がり、そして欧州連覇を成し遂げ、再びこれに挑戦してきてほしいと思っています。

クラブ・アメリカ × バルセロナ

2006年12月17日 | サッカー: 海外その他
FIFA クラブワールドカップ 2006 準決勝: クラブ・アメリカ 0-4 FCバルセロナ

■ ついにバルセロナが登場
いやー、あまりに「なでしこジャパン」の試合に感銘を受けてしまったものですから、こちらの記載が大幅に遅れてしまいました。
日本で開催されていますね、クラブ世界一決定戦。もちろん私も観ていますよ。ついに日本のサッカーファンにとっての主人公、バルセロナが登場です。

数々の国内タイトル、および国際タイトルを手にしてきたバルセロナ。しかし、今大会の前身であるインターコンチネンタルカップ、トヨタカップ時代を含めて、彼らはこの「クラブ世界一」という栄冠にはまだ輝いていません。現在スペイン、そして欧州の王者に君臨するチームが、このタイトル獲得を真剣に狙っているのです。よってバルセロナは、もちろん油断なく、初戦から常勝のベストメンバーを組んできました。この本気のバルセロナのスペクタクルなサッカーを直接観戦すべく、雨天にもかかわらず横浜国際競技場には62,000人もの観客が詰め掛けたのです。

対するクラブ・アメリカは、私自身も初めて目にするメキシコのチームです。海外はもとより、国内でも他チームから主力選手を強奪できるほど豊富な資金力を有しており、ワールドカップ経験者も中心選手として数人所属しています。こうして多くの有能なタレントを抱える、メキシコにおけるビッグクラブなのだそうです。スペインリーグのバレンシアで大活躍した元アルゼンチン代表のクラウディオ・ロペス、「かにバサミ」で有名なブランコなど、ユニークな人材も揃えています。バルセロナと同じようなスタイルと言える、テクニックある個人技からのつなぐサッカーで、見事に北中米カリブ海の頂点に立ちました。今年の8月には、親善試合ながらこのバルセロナと対戦していて、一時は3点もリードを奪っていた、4-4という結果も残しています。
今大会では1回戦から登場し、アジア代表の全北現代を破って勝ち上がってきました。ただ、確かによくパスが回って支配率は高かったのですが、多数放ったシュートはことごとく雑で、後半には息切れしてしまうという、あまり破壊力が感じられない雰囲気ではありました。最後にはクロスに体ごと押し込んで決勝点。およそ「華麗」とは言い切れない辛勝でしたが、あのバルセロナが相手ということで全選手のモチベーションは高いらしく、今度こそは洗練された内容を見せてくれることを期待していました。

■ 「バルセロナ劇場」
そのクラブ・アメリカは、チームの顔とも言える前線のブランコを先発から落とすなど、全北現代戦からメンバーと布陣を変えてきました。多分、バルセロナが相手ということで守備的な構えとしたのでしょう。前方の陣形は、FWクラウディオ・ロペスは流動的に動くし、FWクエバスも上がったり下がったり中に入ったりで、中央のFWカバニャスの1トップなのかどうなのか、ごちゃごちゃで私にはよく把握できませんでした。

試合が開始されて間もなく、そんなクラブ・アメリカがいきなりビッグチャンスを掴みました。スルーパスに、オフサイドギリギリで飛び出すことのできたクラウディオ・ロペスが、バルセロナのキーパーのバルデスと1対1に!でしたが、あわやPKかというバルデスとの接触で倒され、得点とすることはできませんでした。
その後もクラウディオ・ロペスは、至るところから裏への飛び出しを何度も試みていてます。どうやらクラブ・アメリカは中盤を増強させてバルセロナと張り合いながら、このクラウディオ・ロペスの突破による一発というのを、大きな狙いの一つにしている模様です。そしてそれを、開幕からいきなり成功させました。

ただ、残念ながらバルセロナは動じませんでした。右ザンブロッタから中央デコへ、ラストに左ロナウジーニョと、軽々と決定機を作り上げると、もう以降は「バルセロナ劇場」という試合へなっていってしまいます。

ロナウジーニョ、イニエスタ、グジョンセンと中央からあっさり渡っていき、ラストのグジョンセンが倒れこみながらのキックでもって、まず先制点です。後方からワンタッチ、ツータッチで迫る、軽やかなつなぎでした。特にロナウジーニョに至っては、ダイレクトヒールキックでのパスという絡み方です。
これで攻めに転じざるを得なくなったクラブ・アメリカは、放り込みをやめて本来のパスサッカーに転じ、カバニャスがファインシュートとした直接フリーキックのチャンスなども得るようになってきます。しかしながら、4、5人でもって密集した中盤において、バルセロナのMFデコとイニエスタのたった2人にかないませんでした。彼らのキープと守備力に歯が立たず、つないでいく組み立ては散発なものとされてしまいます。
ペースはもちろんバルセロナのもののまま。その中の前半30分、デコとロナウジーニョのゴールデンコンビからコーナーキックを得ると、このセットプレーから、DFマルケスが横方向へすらすヘディングシュートでゴールゲットしました。バルセロナが着実に追加点を獲得していきます。

2点を追うクラブ・アメリカは、後半からとうとうブランコを投入して反撃に出ますが実らず、この45分間はもはやバルセロナのやりたい放題となっていました。
ジュリの突破、デコのヒールパス。速いショートコーナーからは、最後にロナウジーニョがダイレクトアウトサイドキックでのシュートです。ワンタッチパスを3度通して、崩しきってしまった末のシュートもありました。
またも、デコがダイレクトによるヒールキックでラストパスを通すと、ジュリもこれをダイレクトでシュート。そしてキーパーがはじいたこぼれ球を、ロナウジーニョが完璧なワントラップシュートで爽快にゴールに決めてみせて、バルセロナは3点差とします。高度な技術力のオンパレードによってクラブ・アメリカは叩きのめされてしまい、以降は完全に戦意を喪失してしまいました。
そんなクラブ・アメリカに対し、デコが非情とも言える強烈なミドルシュートで駄目押し点。容赦なく相手を寄せ付けなかったバルセロナが4-0で圧勝しました。

■ 監督も認めた完敗・・・クラブ・アメリカ
やはり夏で戦ったときに比べては、バルセロナの本気度は段違いでした。クラブ・アメリカは、クラウディオ・ロペスの果敢な突撃以外、まるで良いところを見せることなく終わってしまいました。

個人的に一つ、クラブ・アメリカへ同情するのは、日本のギャラリーだけでなく審判も味方にできなかったことですね。試合序盤でクラウディオ・ロペスがキーパーに妨害されたシーンは、PKとされてもおかしくはなかったと思います(後にバルセロナの方も、ロナウジーニョが倒された場面でPKを与えられなかったわけではありますが)。さらに後半の序盤、またも飛び出してキーパーと1対1になったクラウディオ・ロペスへオフサイドの判定が下されましたが、これは明らかに誤審です。いずれも得点に結びついていたら・・・。番狂わせの可能性が少しでも上がっていたことでしょうね。

先制点を取られてからは、通常における戦術であろう、中央でのショートパス重視のサッカーを展開してみてくれました。パスワーク対パスワークという似た者同士による構図を見ることができたのですが、その質は、さすがのバルセロナの方が圧倒的に高いものでした。試合後にテナ監督も認める、大差のあった個人技能力の優劣による完敗です。
おそらく、このポゼッションサッカーを軸に、クラウディオ・ロペス単体の突進力がアクセントとなる攻撃で、メキシコや北中米を制覇してきたのでしょうね。これがバルセロナという欧州の覇者を前にして色あせてしまうのは、もちろん仕方のないことです。3位決定戦では、ぜひ存分にそれらを発揮してくれることを願っています。

■ 「何でもあり」であったデコ
来日したばかりで、時差や調整で苦しんでいるとコメントしていたバルセロナですが、結局はそのような心配も杞憂に過ぎない順当な勝利でした。個々の実力の高さを大いに見せ付けて、私たちを楽しませてくれました。無事決勝進出という結果を得ただけでなく、エンターテイメントを期待している日本人のファンに対して、自分たちのショーとも言うべき内容でそれに応える試合としたでしょう。

特に攻撃面で魅了したのは、前評判どおりのロナウジーニョでした。ボールが渡るたびに大歓声を受けた彼は、気分が良さそうに、楽しそうに自分の技術をいかんなく披露し続けます。
トリッキーな動きで蹴ったフリーキック、ルーレットターンによる突破の試み、ノールックによるサイドパス、ヒールキックによるループパス、4人に囲まれながらゴールバーに当てる惜しいループシュート、そして鮮やかなワントラップシュートでの得点・・・。数々の芸術的なプレーでした。

こうして当然のごとく、試合前と同様に、翌日はどこも「ロナウジーニョ」一色の報道でした。ただし、紛れもなくこの試合で独壇場となっていた存在なのは、デコだったと思うのです。
ロナウジーニョに負けじと放つ、ヒールパスのような魅せるプレーもありましたが、中盤にて攻撃と守備の両面を司っていたのが圧巻でした。
とにかくよく動き、プレスやボールの奪取が何回あったことでしょうか。こぼれ球も実によく拾い上げていましたね。キープは安定していますし、判断も冷静でボールの捌きが着実です。状況を的確に把握してゲームをコントロールし、たった一人で相当にバルセロナの支配率の向上へ貢献していました。
それだけにとどまらず、デコは決定的な場面まで導くチャンスメイカーでもありました。幾度も攻撃の起点となり、アシストと記録されるべきラストパスも数本繰り出しています。さらに言えば、この日の4得点は全てデコが絡んでいたものでした。先制点はデコからスタートさせた一連の流れからのものであり、2点目、3点目へと至るきっかけには、ともに彼の重要なプレーが含まれています。ラストには、ほとんどのキーパーも防ぐことのできなさそうな、素晴らしいミドルシュートまで見せてゴールしてしまいました。
まさに「何でもあり」といった強大な存在感。彼のための試合であったと言ってしまってもいいのではないでしょうか。

実力差が離れていて、それがまともに出てしまった展開であったために、課題を見つけるのはちょっと困難です。無理やり挙げてみるなら、十分に注意していたはずのクラウディオ・ロペスに結局は2、3度突破を許したこと(うち1回は誤審に助けられました)、DFマルケスが自陣内で軽率なパスミスを犯していたこと、途中出場のFWエスケーロがことごとくデコと合わずに逆にリズムを崩す存在となってしまっていたこと。それくらいでしょうか。まあ、いずれもそれほど深刻に捉える必要はなさそうに思えますね。要は、油断は禁物にしてほしいということです。

さあ、バルセロナは念願の優勝まであと一つです。インテルナシオナルとの決勝戦は、いよいよ17日に行われます(今日ですね・・・)。