みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

サンプドリア × インテル

2007年02月03日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第21節: サンプドリア 0-2 インテル・ミラノ
(2007/1/28)

■ マテラッツィへの頭突き再び・・・
引き続きインテルの試合です。格下相手との対戦ですが、何と言ってもインテルは次節、今季のセリエAにとってはもう最後の大一番になるかも知れない2位ローマとの直接対決が控えており、その直前予習は欠かせません。連勝記録の行方にも注目です。
対するサンプドリアは、高い充実度の戦力の刷新でもって変貌を遂げ、昨季の低迷からの脱出が大いに期待されていましたが、結局は何とか中位に踏みとどまっているという悲しい現状。イージーな失点が絶えない守備陣に批判が集中しているそうです。唯一の光明は、華麗なプレーとゴールを数多く披露するFWクアリアレッラの輝きだけとなっています。

ちなみにこの試合の前後にコッパ・イタリアの準決勝があり、偶然にもインテル対サンプドリアの組み合わせとなっていました。すなわち、一週間で両者は3回も戦うわけです。準決勝第1戦は、この日と同じくアウェーだったインテルが3-0と快勝しています。

サンプドリアは、ノベッリーノ監督が誰に何と言われようとも頑なまでに通す4-4-2のシステム。
GKはルカ・カステラッツィ。DFは左からバストリーニ、ファルコーネ、サーラ、ゼノーニ。MFは左からフランチェスキーニ、デルベッキオ、バロンボ、マッジョ。FWはフラーキとクアリアレッラのツートップです。
12月頃から重用され続けてきたDFアッカルディが出場停止で出られません。他では、本職はサイドバックのマッジョがサイドハーフとして起用されています。

インテルはもう完成の域に達している4-3-1-2。
GKはジュリオ・セーザル。DFは左からマクスウェル、マテラッツィ、ブルディッソ、マイコン。MFは左にサネッティ、中央にカンビアッソ、右にビエラ、トップ下にスタンコビッチ。FWはアドリアーノとイブラヒモビッチ。
キーパー以外はフィオレンティーナ戦と変わりがありません。ミッドウィークのコッパ・イタリアで途中交代による復帰出場を果たしたFWクルスが、この日も控えに入りました。

開始からわずか5分ほどで、いきなり試合に波乱が生じます。
サンプドリアの血気盛んなデルベッキオが、ジュリオ・セーザルとの接触の直後に蹴りを入れるような乱暴な仕草を見せます。これに対して頭に来たマテラッツィが猛然とデルベッキオに詰め寄り、マテラッツィが何か二言三言叫んだ瞬間、デルベッキオのヘディングがマテラッツィの口元を直撃していました。よもやの暴力行為で倒れ込むマテラッツィ。血の滲むそのマテラッツィの唇。騒然とする会場。そして当然のごとく提示されるデルベッキオへのレッドカード(マテラッツィにはイエロー)。しばらく大きな話題として続いた、ワールドカップでのジダンの「頭突き退場」を彷彿とさせます。
デルベッキオには全く言い訳の余地のない退場処分ですが、よほどマテラッツィの罵声は人を怒り狂わせるほどのものがあるのでしょうね・・・。このお騒がせ男の異質な存在感には陰りが見えません。

結構サンプドリアが押し気味で面白い展開だったのに、これで試合がぶち壊しになったかなと思っていたら、意外にも10人になった後もサンプドリアが引き続き主導権を握っていました。効率的に攻めているのは圧倒的にサンプドリアの方です。序盤のインテルはサンプドリアのカステラッツィのファンブルから、アドリアーノがオフサイドの判定とされたゴールシーンしか見どころがありませんでした。

ようやくインテルがペースを掴んだのは前半30分あたりから。好調なFWにボールが集うようになってきました。以降、サンプドリアは防戦を強いられ続けます。
ビエラのラストパスを受けたアドリアーノが、ペナルティエリア内でDFと競り合いながらも力強いキープから強引にフィニッシュ。直後には勢いの良いシュートも吹っ飛ばしています。
前半38分には、今度はイブラヒモビッチが躍動。左サイドで二人をかわしたサネッティのクロスに、ダイビングボレーで合わせにいきました。これは空振りで流れましたが、こぼれ球を拾った右のマイコンのアーリークロスは確実にヘディングでゴールへと沈めました。インテルが先制。左右に思いっきり大きく振られるかたちとなったサンプドリアはなすすべがありませんでした。イブラヒモビッチは2試合連続のヘッドによる得点です。

後半からインテルはスタンコビッチに代わってフィーゴが出場。スタンコビッチのそれとはまた性質の異なる、抜群のキープ力からのチャンスメイクを度々見せてくれました。
後半23分にはアドリアーノとクレスポが交代。アドリアーノはこの日も献身的で、味方へパスを出すための働きが目立ち、決して悪い出来ではありませんでした。ローマ戦でも間違いなく先発で用いられることでしょう。

クレスポがセンターフォワードとなると、それまでその役割だったイブラヒモビッチが得点の演出係として精力的に奔走し始めました。左右どちらにでもワイドに開き、最前線の起点となります。
その彼の動きの一つが見事にゴールへつながりました。後半30分、マイコンがオーバーラップから中央へ切れ込むようなドリブル走破できっかけを作ります。そこから大きく右に開いていたイブラヒモビッチにボールが預けられ、イブラヒモビッチはバストリーニのタックルを問題なくかわしてフリーに。そして中に折り返した際には、もうサンプドリアの守備陣は総崩れの状態でした。そのまま駆け上がったマイコンが難なく決めて、インテルは追加点を獲得。この時点で勝敗がほぼ決まりました。

サンプドリアに追いすがる余力は残されておらず、2-0でインテルの順当勝ちという結果に終わりました。インテルは驚異の14連勝達成です。

■ 要の中盤がまるで冴えなかったインテル
インテルの方は、この日もFW二人に文句をつけることができません。中でもイブラヒモビッチが光っていました。センターフォワードとしてポストプレーに得点にと要求されることを高いレベルでこなしてみせて、クレスポ登場後は切れることのないスタミナでウイング的に走って攻撃を促します。万能型ストライカーとしての本領を存分に発揮しました。そして1ゴール1アシストという見た目にも明らかな結果で、満点の内容だったと言えることでしょう。

右サイドバックのマイコンも忘れてはならない存在です。この試合、こちらのサイドは彼のものでした。再三攻め上がってはサンプドリアの脅威となり、結果として彼もまた1ゴール1アシストの殊勲者となりました。

さて、このインテルの敵なしといった感じの連勝街道。これには様々な要因が取り上げられていますが、私は個人的に中盤のパフォーマンスこそが最も評価されるべきだと思っています。今のインテルの強さを一言で表現するならば、何よりも良い意味でインテルらしからぬ「安定感」でしょう。マンチェスター・ユナイテッドやバルセロナのようなド迫力もなければ、ローマやアーセナルのようなスペクタクルもありません。しかし地味ながらも淡々とした危険度の少ない内容で、着実に勝利を得る能力はトップクラスです。これを根底から支え、その象徴となっているのがインテルの中盤の選手たちだと申し上げたいのです。
そもそも攻撃を司るトップ下のスタンコビッチからして、ボランチもこなせるという守備力の所有者です。前線にいようが守備で手抜きをすることはありません。サネッティの安定度は今さら言及するまでもないことでしょう。新加入のビエラも一年目から問題なくフィットして攻守で高い身体能力を発揮。ダクールとカンビアッソも巧みな守備やフィードを持ち、絶大な中央でのバランサーとして君臨します。
その彼らのプレーが精密で、実にエラーが少ないのです。保持しては容易に相手に渡さず、保持されては最終ラインへ及ばないように中盤の時点で吸収してしまいます。オーバーラップが顕著なサイドバックにも高い評価が与えられていますが、私はこの鉄壁な中盤の存在があるからこそ思い切った行動を続けられているのだと思うのです。
全員が中盤なら複数のポジションを担当できるほどの攻撃能力と守備能力を併せ持っていて、穴がありません。その上、バランスよく共存しています。誰よりもレアルのカペッロ監督が羨んでいそうな欧州一の堅実さが、インテルの中盤にはあります。そしてそれの積み重ねが、文字通り「負けない」サッカーに大きく影響しているのだと主張したいのです。

ですが、その要の中盤の出来が、どうしたことかこの試合ではサッパリといった感じでした。
終始安定していたのはサネッティただ一人。そのサネッティにしても、自身のサイドをいいようにやられていた責任は間違いなくあったと思います。
カンビアッソも褒められたものではありません。してはいけないポジションながら軽率なパスミスを犯し、好守と呼べた活動も一度もありませんでした。
日によってパフォーマンスの波が一番大きいビエラは、90分の試合の中だけでも波の激しい選手でした。絶妙なパスや守備を繰り返せば、その一方ではとんでもないパスミスやキープミスを連発し、「安定」には程遠いプレーぶりです。
そして特にひどかったのがスタンコビッチです。結構攻撃を任されてはいましたが、そこから何をやっても全然うまくいきませんでした。ミスと言うか集中力が大幅に欠如していた感じで、何度もチームの流れを止めては期待を相当に裏切りました。累積警告や休養のためなどとの解説が入りましたが、あの後半開始からの途中交代は単に全く機能していなかったからだと思います(※追記: 公式サイトによると、実際にはこの交代は当初からの予定通りだったそうです)。
結局、攻撃の切り札となったのはサネッティとマイコンによる何回かのサイドアタックのみ。これでは攻めに厚みがもたらされようもありません。守備時にも中盤でドリブルやパスを、自由に幾度も通させてしまいました。完勝してしかるべき一人少ない格下のサンプドリアを、なかなか決定的に引き離せなかったのは間違いなく中盤の停滞です。スタンコビッチを中心として、次のローマ戦までには奮起して高次元の中盤を蘇らせてくれることを強く願っています。

■ 数的不利が悔やまれるサンプドリアの健闘
サンプドリアの実情はよく知らないのですが、負けたとはいえ印象に残る選手が数多くいました。振り回されてつききれなかった先制の場面だけは悔やまれましたが、ファルコーネはかなり判断のいい守備を見せ続けました。これまで非難されることが少なくなかったそうなのですが、この日はそれに全然至らない貢献量です。若手のバストリーニも10代とは感じさせない落ち着きぶりで、マイコンの侵入を許さずに左サイドの奥底を固めました。右サイドのマッジョとゼノーニも印象的です。両者の活発な躍進がそのまま表面化され、サンプドリアはほとんど右サイドを起点にして攻めていました。

またMFを一枚欠いた後も、FWを削ることなくツートップのまま4-3-2で、攻撃的な姿勢を崩さずに戦い抜いたことも好印象でした。これが出来たのも、わざわざ大きく下がってまで中盤とのリンクを断ち切らなかったフラーキとクアリアレッラの両FWの豊富な活動量があったからこそです。二人とも単なる懸命さだけではなく、質の高いドリブルやキープなどのスキルも披露してくれました。どうにか1点だけでも取らせてあげたいとさえ思わされる活躍でした。

ただし、そんなサンプドリアも後半の半ばからは運動量が激減。まずは、あれほどあった右サイドアタックが復活することなく沈黙し、とうとうツートップが孤立してしまいました。
また、先に挙げた選手たちも直接失点に関わってしまいます。インテルの2点目は、実はオフサイドトラップのミスというサンプドリア自身の致命的なエラーが崩された最大の要因だったのですが、それの元凶は反応悪く一人だけ後方に残っていたゼノーニの存在でした。さらに左サイドへ展開された際に、かなり甘い対応で軽くイブラヒモビッチに振り切られてアシストを許したのはバストリーニでした。それぞれ、それまでが嘘であったかのような集中力の欠如です。
しかしながら、これには同情の余地があります。一人少ない状況の中、たった三人となった中盤の選手たちの負担の大きさは語るまでもありません。両サイドバックも、時として一人で二人を相手にせねばなりませんでした。疲労困憊はやむなしでしょう。全体的に考えれば、インテルという強大なチームを相手に、サンプドリアはよく頑張った方だと私は思いました。
やはりデルベッキオ、あなたの退場がとてつもない痛手として確実にサンプドリアを蝕むことになっていました。この日のサンプドリアが予想以上の健闘だったが故に、余計に悔やまれるところです。大げさでなく、インテルの連勝記録を止める引き分けは十分に可能なことでした。どこかで聞いたようなフレーズですが、それこそ「10人の勇者と1人の愚か者」です。デルベッキオは疲れ果てるまでに戦った全選手に深く詫びるべきだと思います。なお後日、デルベッキオには3試合出場停止の裁定が下されました。

今節、2位のローマはシエナに1-0で勝利し、広がっていたインテルとの勝ち点差を何とか11のままで食い止めました。そして冒頭でも記述したとおり、次節はいよいよインテル対ローマの最終決戦です。好調を維持するインテルが制して優勝を決定づけるのか、あるいはローマが見事にインテルへ初黒星を与えて大逆転の契機とするのか。非常に楽しみな一戦です。


※追記: この試合の後に行われたコッパ・イタリアの準決勝第2戦、インテル対サンプドリアは0-0の引き分けに終わりました。2戦合計の結果でインテルが決勝進出。決勝は3年連続でインテル対ローマとなりました。

※追記2: 2月2日に行われたカターニャ対パレルモ戦で、パレルモサポーターが騒ぎだして暴動に発展。警官1人が死亡、警官1人が重傷、その他にも100人以上の負傷者を出す痛ましい事件にまでなってしまいました。イタリアサッカー協会は事態を重く見て、国内で開催されるサッカーの試合の全面的休止を示唆。まずは今週末のセリエAの中止を発表しました。残念なことにインテル対ローマの大一番もお流れです。


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