みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

マンチェスターU × ベンフィカ #2

2006年12月09日 | サッカー: 欧州CL
※この記事は「マンチェスターU × ベンフィカ #1」からの続きです。


■ 大きな価値ある同点ゴール
この日のユナイテッドが敗戦から免れた大きなポイントは2つあります。
まずは先制されることとなった、あのスーパーなゴールが、前半の早い段階でのものだったことです。守備側からしてはどうしようもないシュートによる、まさかの失点でしたが、幸いにもそこから逆襲することのできる時間が多く残されていました。もしあれが、試合終盤でのベンフィカの先制点だったら・・・。ユナイテッドにとっては当然焦りも生じるでしょうし、致命的な状況となっていたかも知れません。
そして前半のうちに、しかもあの終了間際の時間帯に同点できたことが、相当に大きかったのは間違いないでしょう。あの時間帯のユナイテッドはどうしたことか、突如として全員が牙をむいた、この試合で一番ヒートアップしていた場面でした。それで得点できなければガクッときますし、何よりも、同点に追いついたという結末でもってハーフタイム、ならびに後半を迎えられたことが、余裕と落ち着きをユナイテッドにもたらしたでしょう。あのリードを奪われたままで後半に突入していたら、色々作戦を練ってくるベンフィカがどう対応を変化させてくるかわかったものでもありませんし、ずるずると時間が経過していってしまう恐れも十分にありました。それほどユナイテッドにとっては、今シーズンのここまでの数多い得点の中でも、最も価値の高い得点であったと言い切ってしまっても過言ではないでしょう。

ユナイテッドにとって、この試合で大きな武器となっていたのは、正確無比なサイドからのラストパスでした。左から右から、守る側としては一瞬も集中力を切ることのできない、精度の高いクロスを続出させていました。この得点を感じさせるラストボールで、チームは前後半通じてリズムに乗れましたし、結果としてペナルティエリアを横切るハイボールが、全3得点を生み出しました。
また、この試合で欠かせない存在となっていたのがロナウドです。豪快な直接フリーキックのシュート、猛然と突き進むドリブル突破、スペースへ飛び出す勢いある動き。自軍を前へ前へとけん引していきます。そして上記の、抜群のクロスボールまで上げて、1アシストです。同点となるフリーキックや、3点目となるコーナーキックも彼が獲得したもので、実に全得点に絡む、素晴らしい活躍でした。その攻撃的な技術力をいかんなく発揮し、自国のポルトガルを代表するチームを沈めました。

ただ一つ、ユナイテッドは立ち上がりに、ロナウドを左において、代わりにルーニーを下がり目とか、何だか色々と妙なことをやらかしていたフォーメーションを採りましたが、あれはやめておいた方がいいと思いましたね。確かにロナウドは、これまでもよく左右のポジションにとらわれずにプレーしてきましたが、ギグスはロナウドの真下で窮屈そうに何もできていなかったし、右サイドバックのネビルのオーバーラップも単発になりがちで、総合的に何の迫力も出ていませんでした。徐々に従来までのポジションへ修正されるとバランスがよくなり、左からはギグスとエブラ、右からはロナウドとネビルという、それぞれのサイドからどっしりとした攻撃を多発させることができたのです。ロナウドへのマンマークを散らす目的でもない限り、あのようなややこしい布陣は、自らリズムを崩していくだけのようにも感じられました。

■ こらえきれなかったサイドと空中戦
残念ながら敗れたベンフィカですが、不利な条件の中で、強敵を相手に採用したアイデアは悪くありませんでした。一本のパスで相手の中盤や最終ラインをかいくぐり、FWを走らせるという、一見オーソドックスなカウンターでしたが、なかなかに効果的でした。特にMFシモンをその最前線へ配置させ、その彼を、ユナイテッドの攻撃的なサイドバックであるエブラの裏へ、再三に渡って狙わせたのは面白かったです。スピードに優れるシモンは、この戦術で存在感を見せ、結果的には先制点の立役者にもなりました。惜しむらくは、ユナイテッドの守備に精一杯であった中盤の選手たちが一緒に押し上げられず、せっかくのシモンの突破にサポートがなかったことでした。

逆転負けを喫した要因は、自陣のゴール前へ上がってくるボールへの対処でした。思わぬ先制ゴールを守りきり通したかった守備陣でしたが、空中戦において3度もしてやられる失点でした。確かに、ユナイテッドの見せた好クロスの連発を阻止し続けろというのは、かなり困難なことではあります。それでも、同点に追いつかれたときの、相手のフリーキックの場面での動きは痛恨でした。上がってきたボールに、DFのルイゾンとレオが重なり合って崩れ、これが結果的にすぐ後方のビディッチをフリーとさせることになってしまい、その彼に点を取られてしまったのです。この同点弾は試合を左右する非常に意義あるもので、この局面での守りの連携力の欠如は、ベンフィカにとって大きくのしかかりました。
その後もマークがつききれずに、ハイボールから2失点。DFリカルド・ローシャの懸命な守備のプレーを筆頭に、中央からの攻撃にはよく耐えていましたが、クロスの対応には脆さを見せた試合でした。

あと、この3失点を喫するまでに至った直接の原因は、両サイドバックにあったと考えられるのです。試合終了後に、録画を巻き戻して注意深く失点のシーンを振り返ってみたのですが、いずれの失点もこの両サイドバックが演じてしまった失態から生じていたものでした。
驚愕のゴールでヒーローとなるべきであった右サイドバックのネルソンは、前半の終盤に猛攻を見せたユナイテッドの勢いに押され、あろうことか自陣で相手にパスを出してしまうというエラーを犯してしまいます。これを拾ったユナイテッドへ、あわててファールで阻止したベンフィカは、そこからのフリーキックで悔やみきれない同点のゴールを浴びることとなったのです。
また、後半15分。今度はベンフィカ陣内の左側で、左サイドバックのレオが、容易に相手にボールを渡してしまいました。その流れからキープされたユナイテッドのロナウドに対し、このミスを取り返すという意思も感じさせないマークの甘さであったレオは、そこからやすやすと得点のアシストとなるクロスをロナウドに上げられてしまったのです。
3失点目も、このレオが発端です。レオはロナウドの突破に追いついていけずに振り切られ、センターバックによるかろうじてのカバーリングでコーナーキックとなりましたが、このコーナーキックが駄目押しの失点へとつながってしまいました。しかも、そのゴールしたサハのマーク役で、これにつききれなかったのは右サイドバックのネルソンでした。
このゲーム、ユナイテッドのサイドアタックはかなり重厚なもので、そこから招いたピンチを全てこの2人の責任にするのは酷かもしれません。しかしそれでも、ユナイテッドは両サイドが起点となっていて、2人とも失点に直接関係したというのが事実であり、このサイドでの攻防に表れた優劣が、逆転負けへ多大に影響した要素であったことは確かでしょう。

今節、セルティックはすでに通過を決めていたこともあり、モチベーションを落としてコペンハーゲンに敗戦していました。よって勝利したユナイテッドが1位に返り咲いて、グループFは結末をつけました。

■ 決定!トーナメント進出の16チーム
さあ、チャンピオンズリーグも、この最終節でもって、いよいよ決勝トーナメントに出場する16チームが決定しました。この勝ち上がってきたチームを、現況とともに軽くおさらいしていみましょう。

・A組 1位: チェルシー(イングランド)
ご存知、イングランドの王者です。国内リーグでは連覇を果たしており、今シーズンはこのチャンピオンズリーグにおいて悲願の制覇を果たすべく、その意欲は並大抵のものではありません。潤沢な資金力から、選手の質・量ともに圧倒的で、紛れもなく優勝候補です。先制すればまず負けることのない、勝負強さが最大の売りです。

・A組 2位: バルセロナ(スペイン)
苦戦を強いられながらも、結局は勝ち上がってきた、言わずと知れた昨年度のチャンピオンです。基本的に広い展開を見せますが、ロナウジーニョを筆頭に、狭い局面からも巧みな技術で崩せてしまう、ゲームの制圧率と攻撃力が魅力です。前線で故障者が続出していますが、残された3トップが一体となってまとまりある好調さを見せ始めています。

・B組 1位: バイエルン(ドイツ)
ドイツの覇者であるバイエルンも、2試合を残して早々と16強入りを決めてしまいました。大黒柱のMFバラックが抜けた穴を、バルセロナから獲得したファン・ボメルがなかなかの健闘見せて埋めています。しかしながら、現在リーグ戦では勝ちきれない日々を送っている状況ではあります。突破力あるFWマカーイに、どれだけボールを集められるかがキーポイントでしょう。長期離脱していた貴重なチャンスメイカー、MFダイスラーの完全復帰も間近です。

・B組 2位: インテル(イタリア)
チャンピオンズリーグでは2連敗での発進という、まさかのスタートでしたが、その後は一転して安定してきました。大型補強による豪華な顔ぶれとは裏腹に、堅実で沈着にリードを守りきるという、これまでに見られなかった特長で、国内外において勝利を重ねています。10月以降は、公式戦において一度も黒星がない好調さを維持しています。

・C組 1位: リバプール(イングランド)
このチャンピオンズリーグにおいては順調でしたが、現在国内リーグにおいては調子の波が大きく、全く優勝争いへ絡んでいくことができていません。要因の一つとして、いまだに軸となる布陣が固まっていないことが挙げられます。この影響から、中心選手のMFジェラードも、あちこちのポジションを任され、その能力を存分に発揮できているとは言い難い現状です。

・C組 2位: PSV (オランダ)
国内で連覇を成し遂げている、オランダの王者です。持ち味は何と言っても守備力です。ブラジル代表のDFアレックス・ロドリゴを要として、中盤ではベテランのコクーがチームを指揮し、崩れることがありません。ここからの勝負強さを発揮し、現在もリーグ戦で首位を走っています。

・D組 1位: バレンシア(スペイン)
優秀な選手を豊富に抱えるこのチームは、チャンピオンズリーグを含め、快調な滑り出しを見せるシーズンとしました。しかしながら、その主戦力となる選手たちの故障が続発。それにともなって、一気に失速し始めている現状です。序盤の貯金で1位通過は決めましたが、今後の先行きはかなり不透明なものとなっています。

・D組 2位: ローマ(イタリア)
ご承知の通り、FWトッティが王様として君臨するチームです。そのトッティの調子が上向きになるにつれて、それに比例するように得点力が爆発してきました。しかしながら、先発メンバー以外の選手の層は必ずしも厚いとは言いきれず、トッティの出来不出来によってかなり試合内容が左右される不安定さもあるでしょう。また、現在このトッティが軽傷を負っていることも心配材料です。

・E組 1位: リヨン(フランス)
フランスリーグで5連覇中。今季もそのリーグにおいて首位をダントツで突き進み、国内では敵なしのリヨン。中盤で大きな存在だったMFディアラをレアルに放出したシーズンの幕開けでしたが、その穴を感じさせない、攻守がしっかりと噛み合う充実した内容を続けています。そのレアルにも、チャンピオンズリーグで1勝1分け。世界的名手であるジュニーニョのフリーキックという武器もあり、決してあなどることのできない存在です。

・E組 2位: レアル・マドリード(スペイン)
「銀河系軍団」レアルも、早々とグループステージを決定させました。例年のごとく、分厚い選手層を誇ります。今季はカペッロ監督の新体制の下、DFカンナバーロを始めとして守備的な補強にも成功し、これまでの破壊力あるサッカーに、「堅守速攻」というスタイルも併用されています。リヨンに屈して2位となったため、他の1位通過のチームにとっては、このレアルと初戦であたるのは避けたいところでしょう。

・F組 1位: マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
チャンピオンズリーグでは紆余曲折がありましたが、結局は1位通過を果たしました。今シーズンは久々に「強い」ユナイテッドが蘇っており、各選手の優れた個人技術が炸裂して、攻守にわたって絶好調です。この調子を維持するならば、優勝候補から外すことができません。唯一の懸念材料は、故障などによるFWの駒不足でしょうか。1月より、元スウェーデン代表のFWラーションの、期限付き移籍による加入が決定されています。

・F組 2位: セルティック(スコットランド)
最大の驚きは、ベンフィカを抑え、Fグループで一番にトーナメント出場を決めた、このスコットランドの王者でした。国内リーグで連覇に向けて、現在2位以下をぶっちぎって首位を独走しているチーム力は、欧州でも通用しました。セルティックにとって、そして中村俊輔にとって、ここから大いなる挑戦が始まります。

・G組 1位: アーセナル(イングランド)
昨年度はチャンピオンズリーグ準優勝。イングランドの強豪であることに変わりはありませんが、チームは現在若手中心の陣容で、過渡期にいると言っていいでしょう。実際に格下を相手に取りこぼしが多く、国内リーグでは3位ながらも、すでに優勝は絶望視されています。絶対的なエースとして攻撃を一身に任されるFWのアンリが、故障により約1ヶ月の離脱というのも心配な要素です。

・G組 2位: FCポルト(ポルトガル)
シーズン開幕直前にすったもんだがあって、監督が交代するという事件がありましたが、結局は国内リーグでも連覇に向けて順調に首位を走っています。チャンピオンズリーグでも、CSKAモスクワという好チームを退けて2位で通過しました。ポルトガル勢では唯一の16強入りとなり、同国を代表する立場となります。ポルトガルにおける新エース、本格的なストライカーのFWポスティガの得点力に注目です。

・H組 1位: ACミラン(イタリア)
1強3弱という、正直に言って恵まれすぎた感のあるグループの組み合わせで、1位通過は必然のものでありました。今シーズンは、今日に至るまで蔓延し続けている決定力不足に加え、堅守であるはずのディフェンスゾーンにも綻びが見られてきて、試合を重ねるごとに勢いは下降線をたどっています。1位のチームの中では、現在一番重い雰囲気に包まれているのではないでしょうか。楽勝と見られていたこのHグループでも、結局はたったの勝ち点10で終わりました。立て直しが急務です。

・H組 2位: リール(フランス)
ちょっとこのチームに関してはよく存じていません(笑)。ごめんなさい。最終節ではミランを破って、逆転でAEKアテネをかわし、突破を決めました。国内リーグでもリヨンに負けてからは9戦負けなしと、これらの勢いでもって、決勝トーナメントの1回戦勝利が大目標となります。

1位のチームと2位のチームが対戦することになる、トーナメント1回戦。注目のその組み合わせは、今月の15日に決定されます。果たして、どのようなカードが実現されるのでしょうか。2位通過のバルセロナ、インテル、レアルがどことぶつかるのか。そして中村俊輔の対戦相手はどのチームとなるのか。楽しみですね。
結果としては、セルティック以外は、波乱もなく進出の予想されたチームが出揃い、ハイレベルなトーナメント戦となることが大いに期待されます。その初戦となるのは、来年の2月20日。組み合わせの決定を受けて、それぞれのチームが対戦相手を研究しながら、自分たちの修正、さらなる強化、あるいは巻き返しのための再編成を、この長い期間を利用して図ることでしょう。ぜひベストなパフォーマンスでもってこれに臨み、白熱する好ゲームとしてくれることを願っています。

この「欧州CL」のカテゴリも、この記事を最後にしばらくお休みとなりますね。次回、決勝トーナメント1回戦、素晴らしい内容での試合を記載できたらいいなと思っています。

マンチェスターU × ベンフィカ #1

2006年12月09日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第6節: マンチェスター・ユナイテッド 3-1 ベンフィカ

■ 3連勝から足踏みのユナイテッド
このチャンピオンズリーグの最終節、バルセロナに続いて、もう一つ大きな話題となっているのがマンチェスター・ユナイテッドです。国内外での覇権奪回を並々ならぬ意欲で狙うユナイテッドは、今シーズン攻守にわたって絶好調を維持し、プレミアリーグはもちろん、チャンピオンズリーグにおいても優勝候補の一角からその名を外せない存在となっています。そしてそのユナイテッドが、最終節になってまだ、グループステージ突破を決めることができていないのです。

発表されたF組の組み合わせからは、当初、ユナイテッドの勝ち抜けは大本命として確実視されたものでした。1位通過はほぼ間違いなくユナイテッド、続く2位にベンフィカ、これが大方の予想だったでしょう。実際に始まってみても、ユナイテッドは第1節の開幕から3連勝と、前半の折り返し地点で早々と通過に王手をかけてしまったのです。
しかし、ここからがよくありませんでした。あとわずかに勝ち点1を得られれば突破が確定するという状況となったため、ユナイテッドはチェルシーと接戦で首位争いをしている、国内リーグの方をより重視し始めたのです。すると、主力を落として臨んだ第4節では、格下も格下であるコペンハーゲンにまさかの金星を献上する黒星。さらに続く第5節の対セルティック戦では、中村俊輔の一発に沈んで、連敗となる敗北を喫してしまいました。明らかにペースを落とし、そこから足元をすくわれた格好となったユナイテッドは、そのあと勝ち点1が取れないまま、ここまで来てしまいました。
その彼らを差し置いて、何とこのグループでは、伏兵のセルティックがグループ通過一番乗りを確定。ユナイテッドとベンフィカが、残りの1つを争うこととなったのです。そしてこの最終節に、その両者による直接対決で決着がつきます。いやがうえにも注目が集まるカードとなりました。

成績を確認しておくと、2位のユナイテッドの勝ち点は9。3位のベンフィカは7です。再三申し上げているとおりに、ユナイテッドはあと勝ち点1、すなわち引き分け以上の結果で2位以上を確保し、通過を決定させます。しかし万が一、ベンフィカに敗れて勝ち点3を献上すると、ユナイテッドは順位を逆転されてグループ敗退が決まってしまいます。ユナイテッドにとっては、ホームの試合で引き分けでも可という有利な条件ですが、絶対に落とすことのできない、最重要の一戦です。

■ MFシモンの活用術
ユナイテッドのスターティングオーダーは、当然これまで築き上げてきたベストメンバーです。
ベンフィカは、通常はオフェンシブハーフであるシモンをFWに持ってくる奇策に出ます。そしてこれは、試合におけるキーポイントとなりました。

さすがに自力で上回るユナイテッドが開始からキープをし続け、ベンフィカがどのような様子なのかを探るように、静かに寄せていって行きました。
ボールの出し所もなさそうで、個人能力の差から、まともに中盤で対抗しても困難であろう、そのベンフィカ。それでも勝利するほかにないベンフィカが採用した作戦とは、ユナイテッドの高い位置取りのディフェンスラインを逆手にとって、一発のパスから、前線の選手の速い突破でその裏を狙うというものでした。
これで成功したのが、シモンのFW起用でした。彼の俊足は、この作戦において存分に活きました。圧倒的にユナイテッドのペースでしたが、時折繰り出すことの出来たベンフィカのこの攻めは、シモンに渡ったときが一番可能性がありました。これが発端となり、ユナイテッドは悪夢を見せられることになります。

後方からのパスを受けたシモンは、そのまま右サイドへドリブルで侵入していきます。ここから深くサイドをえぐるキープで、相手の選手を3人まで引き付けたのです。そして十分タイミングを見計らってから、斜め後ろに折り返しのパス。そこにはオーバーラップしてきた、サイドバックのネルソンがいました。そしてこれをネルソンが、ゴール左上へ突き刺さる豪快なミドルシュート!!!!とてつもない一撃で、ユナイテッドから得点を取ったのです。ユナイテッドはシモンに気をとられて、彼へのマークが少々甘かったかもしれませんが、あの位置から、あのようなファインシュートを放たれては、これはもう単純にネルソンを褒め称えるしかありません。防ぎようのない、素晴らしい一振りでの単発攻撃によるゴールだったのですが、結果として何度も敢行していたシモンの飛び出しが起点となった格好です。

■ 高性能のクロスによる逆転勝利
またもベンフィカに敗れて、16強入りが阻まれるのか。2年連続のグループステージ敗退が現実的なものとして迫ってきて、否応なしに会場は緊張感に包まれます。
依然としてユナイテッドは主導権を握り続けますが、ベンフィカのセンターバックのリカルド・ローシャの体を張ったプレーに、ことごとく競り際で阻害されてしまいます。彼のファインプレーによる守備も含めて、ユナイテッドはギリギリのところで得点にまで至ることができません。その間にも、ベンフィカの裏を突くスピードアタックはなおも効果的に発生していて、攻撃への集中が断たれがちです。

このままでは絶対にいけない!そのような意識が芽生えたのでしょうか、ユナイテッドは前半40分あたりから、突然何かのスイッチが入ったように、猛攻を開始します。前半も残り5分というところでしたが、その5分間だけ、守備もかなぐり捨ててまさに全員攻撃という迫力で、ベンフィカへ凄まじい勢いで寄せました。そしてこの戦闘意欲が、わずかの時間帯ながら実を結ぶことになります。
その流れの中でつかんだ、ゴールに向かって左やや後方からのフリーキック。ここからギグスの放ったクロスは、ビディッチの頭上へピンポイントに飛んでいき、そのビディッチがヘッドで同点ゴール!崩しきれなかったユナイテッドは、ついにセットプレーで追いつくことに成功したのです。前半終了直前のことでした。この時間帯のこの1点の価値というものは非常に大きく、ユナイテッドが再び優位な立場となって、後半を迎えます。

またも1点を取りに行かねばならないベンフィカでしたが、ボールをキープしても、ユナイテッドを相手にしては、中盤でつなぐことはままなりません。シモンの突破力だけは健在でしたが、攻勢を緩めないユナイテッドを前に中盤以下の選手たちは押され気味で、シモンは後方からの攻撃参加の支援を受けることができず、孤立しがちでした。

なおも攻めるユナイテッドの内容といえば、徹底してサイドからの放り込みです。左から右から、高性能のクロスを連発させていきます。
そしてその中の一つ、右サイドのロナウドの的確なクロスが、フリーで駆け込めたギグスにヒットして、追加点を奪うことになりました。ユナイテッド、逆転です。
このサイドアタックが止まらないユナイテッドは、ロナウドが右サイドを深く侵入してコーナーキックとします。これで得たチャンスから、サハが体をねじりながらも頭でゴールへ押し込んで、再びセットプレーが得点に結びつきました。ベンフィカを3-1と突き放します。後半も残り15分のところで、ユナイテッドにグループ突破を確定させるゴールでした。

こうなると、もうMFの選手たちも総動員で反撃に出ざるを得ないベンフィカですが、これまでのように、パスをつないでいって攻め入ることは容易ではありません。さすがにユナイテッドの守備陣も深く構え始めて、唯一の起点であった、FWの裏への飛び出しも影を潜めていました。ベンフィカは手詰まりのまま残り時間を過ごしていき、そのままタイムアップを迎えることになりました。

ユナイテッドは、昨年の敗北の雪辱を果たす、見事な逆転勝利。これで晴れて、グループリーグ通過を決めることが出来ました。


「マンチェスターU × ベンフィカ #2」に続きます。

バルセロナ × ブレーメン

2006年12月07日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第6節: FCバルセロナ 2-0 ヴェルダー・ブレーメン

■ 崖っぷちの昨年度覇者
チャンピオンズリーグのグループステージもいよいよ最終節です。そして、ここで何といっても注目なのが、昨年度覇者のバルセロナが窮地に立っていることでしょう。故障者が出続ける中でも、リーグ戦での敗戦は「クラシコ」で喫したわずかに1回と、国内では現在首位に立って相変わらずの強さを誇るバルセロナ。そのバルセロナが、このチャンピオンズリーグでは最後になってまで、現状ではグループステージで敗退してしまう3位という、危機的な状況なのです。
無理もありません。バルセロナの所属するグループAは、最大の激戦区なのです。プレミアリーグ連覇を果たし、このチャンピオンズリーグに全力を傾ける最大の強敵チェルシー。ドイツの雄、昨シーズンにブンデスリーガで準優勝のブレーメン。この2チームが名を連ねるという組み合わせでした。そして、この強豪2チームとの対戦においては、バルセロナはここまで1勝もすることができなかったのです。
上位2チームが決勝トーナメント突破というステージで、このグループAでは、前節にチェルシーが一番乗りでその突破を確定させました。残る1枠の行方は、2位のブレーメンと3位のバルセロナが直接対決する、この試合によって決定されるのです。現在2位のブレーメンは勝ち点10。そしてバルセロナは勝ち点8。バルセロナにとっては明確です。このホームで、勝利をして勝ち点3を加える以外には道がありません。ディフェンディングチャンピオンのチームが、翌年にグループリーグで敗退するということなど過去に前例がない、現行になってからのチャンピオンズリーグ。引き分けすら許されない王者バルセロナには、今季これまでで最も大きなプレッシャーがかけられています。

つい3日前のリーグ戦では、ロナウジーニョなどの主力選手を温存。格下相手のレバンテにドローも辞さないという戦いぶりで、全てをこの日に備えたバルセロナは、現在組めるベストメンバーを揃えてきました。
ブレーメンも、好調であり続けた布陣をほとんど変えることなく臨みます。4-4-2のシステムで、FWクローゼのパートナーには、序盤に好調であったハントではなく、今日も長身のアルメイダを起用しています。

■ 驚愕!ロナウジーニョ
試合の立ち上がりに目立ったのは、バルセロナの両サイドウイング、ロナウジーニョの技術力とジュリの突破力でした。
開始早々からロナウジーニョのロングサイドチェンジが決まり、ボールは右サイドに駆け込んだジュリへ。そしてトップ中央のグジョンセンに合わせるという、お手本のような3トップによる崩しがありました。
卓越した個人技を誇るロナウジーニョにボールは自然と集まり、彼の独特のリズムでチームは引っ張られていきます。ジュリも再三に渡って右のサイドに突っ込み、左右からバルセロナは攻め立てました。

なかなか抑えられないこのロナウジーニョを、ブレーメンはペナルティエリア前で、ファールで倒して止めてしまいます。この自身が得たフリーキックを、もちろん直接蹴りに行くロナウジーニョ。彼の最近のフリーキックの精度は絶大な高さを保っていて、大きな得点機として注目が集まります。果たして、今回はどのような軌道を描くキックが繰り出されるのか。皆が見つめる中で彼の放ったシュートは何と!並んだブレーメンの壁となる選手たちの足元へと一直線に!見事に裏をかかれてジャンプしてしまった壁の選手たちの真下をちょうどすりぬけて、ボールはゴールに吸い込まれていったのです。キーパーやその壁の選手たちはもちろん、観ている者の誰もが虚を突かれた彼の直接フリーキックで、バルセロナは必須となる得点を前半の早い段階で挙げたのです。大きな先制点でした。アイデアの溢れる奇抜な才能を、今日もプレーで見せてくれたロナウジーニョ。何より、この切羽詰った重要な試合で、これを実行する度胸に度肝を抜かれました。

ロナウジーニョはこれだけに終わりません。続く5分後の前半18分、左サイドから申し分のないサイドチェンジのロングボールを、またも走り抜ける右サイドのジュリの足元へとピンポイントで通します。ここからジュリが、中央でフリーのグジョンセンへと難なくラストパスを送り、グジョンセンが決めて追加点です。試合開始直後にもあったこの攻撃を、今度は見事に成功させました。勝利が絶対条件のバルセロナにとっては、序盤から2-0という理想的な流れになります。

その後もバルセロナは、MFデコが、超絶のドリブル突破からグジョンセンへ渡すというチャンスメイクをし、そのグジョンセンもDF2人をかわして、シュートをポストへ当てるまでに至る攻撃がありました。その弾き返りをただ押し込むだけでよかったジュリは、これを何とあらぬ方向へと外してしまい、この大きな得点機は逃してしまいましたが、前半ではこのような決定的チャンスを圧倒的に作り続けていたのはバルセロナ側でした。

後半からは、ようやくブレーメンも反撃ができるようになってきました。バルセロナは早くも逃げ切ろうという意識が働いたのか、守備陣が引き気味となり、空くことになった中盤で、前半に見せていたプレスが追いつかなくなってきます。これでブレーメンのMF陣が粘れるようになってきたのです。中央のジエゴとフリンクスがよく絡めるようになってこれて、最前線ではクローゼが目立ち始めます。そしてついに一方的にゲームを支配し、シュートも多発させることができたのですが、この日のバルセロナの最終ラインが余りにも厚い壁として彼らに立ちふさがりました。最後の場面ではことごとくそのDF陣に競り負けてしまい、結局一度も崩しきることはできないまま。かえって、ロナウジーニョの驚嘆に値するラストパス一本によるカウンターを2度も受け、結果として後半も決定機の数と言えばバルセロナの方に軍配が上がりました。バルセロナの倍近い、20本以上も打ったシュートは全て空砲となり、ブレーメンは無念にも力の差を見せ付けられる敗北となってしまいました。

■ 勝利にこだわったバルセロナ
今日、最低でも1点は取らねばならないというバルセロナの気迫は、前半に凝縮されていたでしょう。
まずは、前半20分までの働きでMVPとなったロナウジーニョです。ブレーメンとしては、あのフリーキックを筆頭に、彼の奇才と言える能力に序盤は翻弄されてしまいました。ここのところ好調を持続させる彼に、チームは信頼を寄せてボールを託し、そしてロナウジーニョはその期待に応じるように、鮮やかなスキルを存分に発揮してみせました。2点リードしてからは早々に活動量を落として消えましたが、それまでは全力を尽くして創造力豊かなプレーを連発し、2得点をもたらす勝利の立役者として輝きました。
最初から全開だったジュリの勢いも見逃せません。ブレーメンの攻撃的な左サイドバックのウォメの裏へ幾度となく飛び出し、ブレーメンにとって起点にしたかったであろう、こちら側のサイドを完全に乱しました。得点すべき決定的シーンを2度もらい、いずれもこれを逸してしまったのは減点ですが、バルセロナのチャンスのときにはいつも顔を出していました。グジョンセンも切れ味が完全に戻ってきていて、前半は及第点以上の出来と言えそうです。
この3トップに劣らず凄かったのが、その下で彼らを支えたMFのデコとイニエスタです。守備では絶えず駆けずり回って相手を自由にさせず、ボールを保持すれば抜群のキープ力で渡しません。絶対に点を獲るぞという迫力での、この2人を筆頭とした前線からの激しいプレスが、大いにブレーメンを苦しめていました。バルセロナサイドが一方的に過熱して、激闘となった中盤。逆転突破へ並々ならぬ意気込みであったことを証明したバルセロナが、その覇気でもってブレーメンを上回り、これを制した前半戦でありました。

こうして得た2点のリードを死守する展開となったのが、後半の45分間です。少し過剰気味だった前半から落ち着いて、プレッシャーが緩くなったこともありますが、ブレーメンの底力を前にして防戦一方となってきました。
ずるずるとディフェンスラインも下がっていき、ピンチも招きかねないという印象でしたが、迫ってくる相手を最終ラインの選手たちがものの見事に跳ね返し続けていました。前半から一転して、主役は彼らたちです。
2人のセンターバックは、ブレーメンの2トップにそれぞれついて担当せねばならない役割でしたが、襲い掛かってくるMF陣にはここぞとばかりに臨機応変に対応して潰していきます。特にプジョルは、自陣深くまでに来るブレーメンのMFジエゴと幾度も敵対し、このマッチアップでの競り合いに負けることがありませんでした。
また、右サイドバックのザンブロッタの強靭さが尋常でありません。このサイドを有効活用してクロスを上げたいブレーメンに対して、それをほとんど許しませんでした。1対1の局面では、屈強なボディバランスをもとに、崩れることなくぶつかって突破を阻みます。90分を通して運動量も落ちず、そのタフな存在感は際立っていました。
この試合のバルセロナで唯一、ファールを多発させるなどの守備で、不安定な選手だったのは中央MFのモッタです。これを退けて、DFのテュラムを投入すると、さらにチームは鉄壁な様相を呈してきます。センターバックであったマルケスをそのモッタの場所へ上げ、テュラムとプジョルで最後尾を組ませたこの構成は、より一層安定性が増した感じでありました。この頃からのブレーメンの攻撃は単発なものへと衰えていき、テュラム自身も素早い秀逸なカバーリングを見せ続けたことからも、この守備固めの交代は確実に成功していたと言えそうです。
シュートは外側から多く打たれはしましたが、最終的にほぼ決定機を与えることのなかったディフェンスの各選手たち。強固な守備能力と冷静さで、攻撃陣が奪ってくれたリードを死守し、完封勝利へとつなげる活躍を果たしました。

この試合のバルセロナは、ホームであるにもかかわらず、ゲーム支配率でもシュート数でも相手を上回ることのない、バルセロナとしては珍しいゲーム内容でした。
ペースを握っていた前半の攻撃も、普段のつなぎまくって圧倒的に迫って行くという、厚みのある遅攻ではなかったためです。ジュリを始めとして、前線の選手たちに猛進する勢いがあったこと。相手DF陣が屈強であるため、サイドを崩してもクロスからの得点が期待できそうになかったこと。何よりもブレーメンが完全に守りきる体制に入る前に、早く点が欲しかったこと。色々な要素がバルセロナに、いつものようなパスワークのサッカーではなく、前線で奪ってからタッチ数の少ない、速く鋭い攻撃を選択させたのかも知れません。そして後半からは徐々に、なりふり構わずにリードを守るべく守備的に進め、相手にボールを持たせるだけ持たせながらも、決定的な仕事はさせないという試合運びでした。チームのスタイルには遠く及ばなかったものの、それらはこの一戦の勝利のためだけに強くこだわった結果によるものだったのではないでしょうか。そしてこれを、前方も後方も全選手が高い集中力でもって遂行し、必要とされた勝ち点3の奪取に成功したのです。

■ 勝ち点10での敗退・・・健闘のブレーメン
ブレーメンは引き分けでもよくて、さらにバルセロナのホームということからも、序盤から完全に引き固めてカウンターを狙うものと十中八九は予想していましたが、そうでもなかった模様でしたね。今シーズンは得点力が爆発して絶好調。この攻撃的なチームの体質が、そうはさせなかったのでしょうか。果敢に中盤からつなげて攻め入ろうとしましたが、逆に、それをはるかに上回るバルセロナの怒涛の波に飲み込まれて砕け散ったという感想の前半戦です。
中央でうまくいかなかった場合、クロスの技術が高いMFボロウスキや、積極性ある左サイドバックのウォメが存在する、左サイドからの攻略をどうにか試みようとしてはいましたが、このサイドにおいてはバルセロナに完敗と言っていい内容でしたね。攻めきれなかった要因の一つでしょう。バルセロナのジュリには、そのウォメの裏に何度も飛び出され、力ずくで押し込まれました。同じくこのサイドのMFイニエスタが、果てしない献身的な活動量で妨害してきます。ようやく後半になって深く入り込んでも、サイドバックのザンブロッタという最後の関門を突破することはできませんでした。とうとう、左サイドからのクロスが入ったのは、前半にウォメがグラウンダーで通した、たった一度きりだけでした。
そもそも、守備的に構えて中盤を省略する放り込みという、パワープレーの戦術を取らないのであれば、FWアルメイダの存在は疑問視されるものでした。その長身をもてあまし、ハイボールのターゲットとされない彼は、この日ほとんどゲームに関わることができていませんでした。中盤でしっかり流動的に動いて組み立てるのならば、アシストもゴールもできるクラスニッチ、あるいは突進力に優れるハントの方がより適したFWの人選だったのではないでしょうか。実際に2人とも途中から投入されましたが、これは遅すぎた感もあります。どちらかを、中盤がつながり始めた後半早々から、もしくは(結果論ではありますが)先発から出場させてもよかったのでは、とも思われました。

このようにして最後の最後で、さすがのバルセロナの前に力尽き、逆転でグループ敗退となったブレーメンですが、正直に言って彼らには運がなさすぎました。だって、バルセロナとチェルシーが同居する組なのですものね。それでも、この組み合わせにも前向きに捉えて、非常によく健闘してきたと思います。あのチェルシーには勝利し、このグループにおいて通常なら突破圏内の勝ち点10という成績で終えたのです。堂々と胸を張っていいと思います。ここでの奮闘ぶりがリーグの好調さにも少なからず影響していると思われますし、そのリーグにおいて現在首位という立場の名に恥じない存在感でありました。こうなったらもう、UEFAカップにおいては突っ走ってくれることを期待してしまいますね。リーグでは今のところ得点王ながら、無得点に終わってしまったクローゼも、今度こそはそちらで存分に炸裂することを願っています。絶対に、これにめげる必要などはありません。頑張れ!ブレーメン。

今日の結果、この日も順当勝ちを収めたチェルシーは1位のままで、ブレーメンに直接勝利したバルセロナが2位に浮上し、結局はこの両王者が決勝トーナメントへ進出するという結末を迎えて、グループAは全日程を終了しました。今夜に残る、他グループの最終節の試合の結果によって、ついにチャンピオンズリーグはグループステージ突破の16チームが決定します。

レフスキ・ソフィア × バルセロナ

2006年11月24日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第5節: レフスキ・ソフィア 0-2 FCバルセロナ

リーグ戦も、今節を含めて残り2試合となりました。現在グループ3位のバルセロナは、仮にこの試合を引き分け以下としてしまい、同時刻で戦う2位のブレーメンがチェルシーに勝利という結果になると、ブレーメンとの勝ち点差は4以上となってしまいます。すなわち最終節を待たずして、2位以内に与えられる決勝トーナメント進出権を、この日で逃してしまう可能性もある昨年度覇者のバルセロナ。アウェーとは言え、勝利が絶対条件となります。

そのバルセロナ、幸先良く先制に成功します。右サイドのザンブロッタのクロスを、グジョンセンが潰れ役となって落とし、フリーで駆け込んだジュリが右足で豪快に決めました。この調子で一気に畳み掛けていきたいところです。

しかし、ここまで4連敗で、すでにステージ敗退の決まっているレフスキ・ソフィアは、意外にもモチベーションが高く、立ち上がりからバルセロナという王者に対して全く臆することがありません。攻撃力で勝る相手に引き下がることなく、1トップながら積極的な姿勢で攻撃にチャレンジしていきました。
特徴的だったのは、1.5列目に位置するヨボフ、バルドン、アンゲロフという3選手が流動的に動き、それぞれポジションを幾たびも変えながら攻め立てていたことです。その変則的な流れで、左から右からバルセロナ陣内に侵入し、最終的にはシュートにまで至ります。そして手薄となりがちな自軍を、ボランチに入るエロモイグベが懸命にカバー。ナイジェリア出身という身体能力を活かし、タフなマーキングを続けて、チームのその積極性を後方から支えていました。
バルセロナの豪華な前線を恐れることなく、多くのサポーターが見守るホームで、現在ブルガリアリーグ首位という意地を見せるレフスキ・ソフィア。好印象な勢いの良さを披露してくれました。

それでも、結局はバルセロナの個人技の前に屈してしまいました。
後半20分です。バルセロナMFのデコが、マークをものともしない、巧みなボディバランスでのドリブル突破を果たします。そこから、自ら強烈なミドルシュート。キーパーは何とか弾きますが、そのこぼれ球をイニエスタが押し込んで、大きな追加点がバルセロナに入りました。
この失点には、さすがにレフスキ・ソフィアも大きく響いた模様で、これ以降は大きくトーンダウンしてしまいます。シュートまで全く持っていけなくなり、事実上、ここで決着はついていました。

2-0で順当勝ちを収め、何とか望みをつなげたバルセロナ。ここ最近の明るいニュースは、現在の3トップでしょう。ロナウジーニョに好調さが戻ってきて、サラゴサ戦では全3得点に絡む大活躍でした。グジョンセンも最近になって、チャンスの際には機敏な立ち回りを見せ続け、可能性を感じさせていたところに、3日前のマヨルカ戦で2得点という結果もついてきました。そしてこの日もジュリが1ゴール。エトーに続いて、メッシ、サビオラと、FW陣の離脱続出というショックを薄めさせています。
ただ今日のゲーム、特に前半戦ですが、レフスキ・ソフィアが予想に反して試合を支配することができた要因の一つとして、自分たちの集中力に欠如があったことを振り返らねばならないでしょう。早々にリードして気が緩んだのか、余りにも不注意なパスが続発していました。特に中央のモッタなど、中盤で奪われるケースが相次ぎましたが、それは必ずしも奪われた本人の責任だけではありません。出し手であった選手たちのパスが粗雑で、そこからズレが生じ、そして失敗につながっていたというのが実際のところだと思います。追加点を決めて相手が失速してからは安定してきましたが、それまではいつ同点にされて、引き分けになるという最悪な事態にも及びかねない、そんな雰囲気のある不用意な展開でありました。反省点と言っていいでしょう。

このグループAの情勢ですが、同じく第5節、2位のブレーメンは、ホームであのチェルシーを見事1-0で撃破しました。チェルシーは敗北したものの、トーナメント進出が決定。注目は、残り1枠の争いです。
勝ち点を10に伸ばし、依然として2位を維持するブレーメンと、勝ち点8で3位のままのバルセロナ。最終節、この両者の直接対決をもって、決着がつきます。バルセロナにとっては、勝利して勝ち点3を得る以外に道のない状況ですが、幸いにもホームで戦えるというアドバンテージがあります。
この最終決戦の行方を握る鍵の一つには、セットプレーがあると思われます。おそらく引き分け狙いで、崩すのが困難なほど守備をハードに固めてくるであろう相手に対し、もしフリーキックというチャンスが得られれば、バルセロナにとっては好調なロナウジーニョの一撃は大きな武器となります。またブレーメンの選手たちも、その恵まれた体格で、コーナーキックなどから今日のような一発を沈める可能性は十分にあるでしょう。

果たして、どういう結末が待っているのでしょうか。激戦が必至となるこの一戦は、12月5日に行われます。

セルティック × マンチェスターU

2006年11月22日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第5節: セルティック 1-0 マンチェスター・ユナイテッド

中村俊輔が、セルティック史上にその名を刻む大仕事を成し遂げました!!!!
チャンピオンズリーグのグループステージ、突破がかかる終盤のこの重要な試合で、両チームの中で唯一となる得点を、直接フリーキックから挙げたのです。
相手はあのマンチェスター・ユナイテッドです。これを沈めての、チームとして初となる決勝トーナメント進出を決めたこの日は、セルティックにとって忘れられない記憶として残されることでしょう。

セルティックは今季国内で、スコットランドリーグを盛り下げているほどの、圧倒的な絶好調です。2位に対して勝ち点差を15もつけるという、単独での首位を突っ走っています。私は、中村が所属するというチームでありながら、ほとんどこのセルティックの試合は観ておらず、実のところ、その好調な戦いぶりに関する全貌はよくわかっていません。しかし、好守にバランスよく、それぞれの選手が安定していると伝え聞いています。中村も正確なキックから日増しに精彩を放ち、攻撃に貢献して好影響になっているみたいですね。3番手と言われていた、このチャンピオンズリーグのグループFでも、その評価を覆す奮闘を続けてきています。現在グループ2位とし、悲願のステージ突破が見えてくる状況となっています。

対するグループFで大本命のユナイテッドも、リーグでは好守に渡って好調で、首位を走ります。チャンピオンズリーグにおいても3連勝と好発進しましたが、前節はコペンハーゲン相手にまさかの黒星。その日でのステージ通過は逃しましたが、気持ちの切り替えは素早くて、その後のリーグ戦ではきっちりと3連勝しました。特にFWのルーニーが、ここのところの好調さに加え、代表戦でもゴールするなど得点力も復活してきて、注目となっています。

その両者が対戦したこの試合なのですが、グループ1位と2位の直接対決にしては、まるで見どころのない、低調な内容の展開となっていました。
セルティックは強豪が相手ということで、立ち上がりからFWのズラフスキまでもが下がってきて、中盤から最終ラインにかけて相当に引く体勢でユナイテッドを迎えました。当然、ユナイテッドにボールを保持し続けられることになり、DFのファーディナンドも再三オーバーラップしてくるという始末です。その自分たちから与えていた相手の支配率によるプレッシャーを受けて、どこか対処にあわててしまう感じで不安定なセルティックの選手たち。守備やボール回しにもミスが出てきます。いざ攻撃をしのいだ後でも、横パスを繰り返すだけで、まるで攻撃への意欲は感じられません。今季は全て白星というホームで、これぞセルティックというサッカーを、残念ながら私に見せてくれることはありませんでした。

乏しい内容となった責任は、ユナイテッド側にもあります。この日のユナイテッドはベストメンバーであったものの、完封負けをしたコペンハーゲン戦以上に、全く迫力がありません。おそらく今シーズンの中では、最もパフォーマンスを落としていた試合だったのではないでしょうか。試合全般を通して、サポートのための走りこみなどはなく、足元へのパスばかり繰り返しています。ほとんどの選手が各ポジションで突っ立っているだけで、積極的な仕掛けもなく、ロナウドのドリブルが何度か行われただけでした。

さすがにこのユナイテッドの出来では、いくら強大な敵とはいえ、セルティックのストラカン監督も、極端な守備は必要ないと前半から悟ったのでしょう。普段は後半の途中にする選手交代を、後半開始から2人も行ってチームを変えにいきます。攻撃的なマロニーを、中盤のやや前方にはヤロシクを投入し、中村を本来の右サイドへと配置させて、反撃体勢を整えます。これは満足とまではいかないものの、効果は十分にありました。前向きとなったチームは、パスワークが出始めてきて、こぼれ球も拾えるようになり、ようやく敵陣まで押しかけることが度々出来るようになってきたのです。投入されたマロニーやヤロシクもよく絡んできて、実際にこの交代自体も成功していたと言えそうです。特にヤロシクは屈強そうな存在感で、ボールの納まりどころとなっていました。

それでも、両チームの間には決定機が生まれそうもなく、依然として盛り上がりに欠ける雰囲気のまま、ゲームは残り10分という時間まで過ぎていってしまいました。
ここで、そのヤロシクが倒されて獲得した、セルティックのフリーキックです。位置は、向かってやや右寄りの、ゴールから30メートル弱という場所です。そう、あのアウェーでのユナイテッド戦で、中村が直接決めたところと同じような地点です。蹴るのは、もちろん中村俊輔。ホームの大観衆が見つめる中、中村が放った渾身のシュートは、壁を超えて、申し分のないスピードで曲がり、ゴールの右上枠内へ!GKのファン・デル・サールの懸命な横っ飛びも及ばない、この鮮やかな直接ゴールが決まった瞬間、会場は大歓声で揺れました。ほとんどシュートチャンスまで持っていけなかったセルティック、中村のプレースキックという武器が炸裂して、この重要な試合で得点をもぎ取りました。

残り時間が少なく、あわててようやくエンジンをかける、リードを奪われたユナイテッド。停滞していた試合のムードが、一変してあわただしいものとなってきました。
そしてユナイテッドにも最大のチャンスがやってきます。ロナウドが蹴ったフリーキックのシュートを、壁から飛び出したセルティックの選手が、ペナルティエリア内にて手で防ぐかたちとなり、ハンドの反則。PKが与えられたのです。土壇場で同点への権利を得たユナイテッド、キッカーはサハでした。しかし!サハのシュートは、セルティックのGKボルツによる素晴らしい反応でのセービングに遭い、阻止されてしまいました。
この痛恨の失敗は大きく、この試合まるで攻め崩すことの出来なかったユナイテッドは結局、何と2節連続無得点という結果で、相手に金星を与える連敗になってしまいました。

本日は、ベンフィカがコペンハーゲンを相手に順当に勝ちました。
次節の対戦、仮にセルティックが敗北し、その3位のベンフィカがユナイテッドに勝利して1位になったとします。この場合、2位以下でユナイテッドとセルティックは勝ち点9で並ぶこととなります。しかし、当該対戦チーム間の成績が、アウェーゴール数の差で、わずかにセルティックがユナイテッドを上回ることから、セルティックが2位に。すなわちこの日は、その次回の最終節を待たずしてセルティックを2位以上へと確定させ、念願の決勝トーナメントへの進出権を獲得する勝利となったのです。MVPは間違いなく、中村でしょう。よかったね、俊輔!

見事完封勝利という結果で突破を決めたセルティックですが、相手のユナイテッドが意図的とも取れるほどにペースを落としての拙攻だったため、それに救われた面もあったことを銘じておかなければならないでしょう。前節に完敗を喫した、これ以上後がない状況だったベンフィカというチーム以上に、実力も本気度も増す相手が、トーナメント本戦では待ち構えています。今日のユナイテッドを破ったからといって、決して自らを過剰評価して、緩んだ気持ちで臨んではならないと思います。
また、試合の入り方でも誤算がありましたね。結果的に脅威はなかった相手に、極端な守備姿勢を取るスタートです。初戦でオールド・トラフォードへ乗り込んだ、同じ対ユナイテッド戦のときは、自分たちは挑戦者なんだというような意気込みで、思い切りの良さを前半から見せていました。惜しくも敗れはしたものの、鮮烈な印象を与えてくれました。それが、今回はグループ2位にいるという立場から、それを守ろうという意識が働き、チーム全体に固さを生じさせてしまっていたのかも知れませんね。
私は前述したとおり、今シーズンのセルティックの試合内容はほとんど知りません。しかしながら、リーグで15試合13勝という自身のサッカーは、今日の展開の中では十分通用したのではないでしょうか。また、それで挑戦してほしかったし、90分を通してならば、流れの中からでも一発得点出来ていたかも知れません。ホームですし、力強くいってほしかったですね。

3連勝という危なげのない前半戦から一転、格下相手にアウェーで2連敗となったユナイテッド。メンバーはベストを揃えましたが、これまでの輝きはかけらも見られることがありませんでした。最悪の出来というより、自ら調子を抑えての低パフォーマンスだった、というのが正しい表現の模様です。引き分けでもグループ通過が決まったこと、そして何より、今週末にリーグ戦でチェルシーとの直接対決という大一番を控えていることが、その明確な理由でしょう。厳しい日程の中、全てをハイパフォーマンスで戦い抜くことなどできないのも事実ですが、そこから足元をすくわれる結果につながってしまっています。
楽観視されていたこのグループFで、ノルマの決勝トーナメント進出が、最終節を迎えるまでに決めることができていません。その最終節のベンフィカ戦です。昨年でも最終節で対戦し、敗れて16強入りへの道が阻まれた因縁の相手です。ホームの試合で、引き分けでも可という有利な条件ですが、万が一今回も敗れることにもなると、2年連続してグループステージ敗退が決定するという悪夢が待っています。

バルセロナ × チェルシー

2006年11月01日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第4節: FCバルセロナ 2-2 チェルシー

試合は開始早々に動きます。前半3分、デコは中盤でボールを奪うと、ロナウジーニョとともにサイドを駆け上がり、守備に入ったマケレレとブラルーズを左サイドへ釘付けにします。そこから一転して、デコはキープをしつつ中央へ。マークが手薄になったところを見逃さず、華麗なミドルシュートを決めて、どうしても勝利の欲しいバルセロナへ待望の先取点をもたらします。
そのデコは、ヒールパスなどのトリッキーな動きで相手をかく乱してリズムを作ろうとしますが、他の選手がなかなかトップフォームに入ってこれません。中央に起用されたモッタは攻守に不安定な働きを見せて、後半早々に交代させられる残念な結果。ロナウジーニョはチェルシーの右サイドバックであるブラルーズに、前回の対戦に続いて執拗なマークにあい、動きを封じられています。トップを張るグジョンセンにもボールが渡って来ず、起点となれません。中央からのチームプレーで、唯一の決定機となったのは、シャビがロナウジーニョとのワンツーによる突破を果たしたものだけでした。
そんな中で1人だけ輝いていたのはメッシでした。右サイドを深くえぐってロナウジーニョへの決定的なラストパスを繰り出せば、その後も自身で中央へと流れるような切れ込みで存在感を放ちます。波があるのか、後半はやや消えていましたが、応対させられたアシュリー・コールは相当に手を焼いたのではないでしょうか。

リードされたチェルシーですが、ここまで3連勝の余裕からか、あまり攻め急ぐこともありません。エッシェンの活発な前後への動きを軸に、静かに逆襲を狙います。

後半に入ると突如、チェルシーにチャンスが続発します。ロッベンのもとへ、立て続けに決定機が生まれました。
後半4分、右サイドのエッシェンからのクロスに、ねじった体勢からのヘディングシュートはキーパーに防がれます。その1分後には、今度は左からのランパードによる、見事なグラウンダーのロングクロスをフリーで受けましたが、キーパーの飛び出しのプレッシャーに負け、これをふかしてしまいました。ロッベン、今日も決定力を見せられません。シェフチェンコ不在のためFWとして登録されたロッベンは、得意であるサイドに張ってチャンスメイクをする立場から逆に、今日はフィニッシャーとしてのポジションとなった訳ですが、残念ながら結果を残すことはできませんでした。

続く2分後、驚きのゴールが入ります。チェルシーの中盤からの放り込みにオフサイドギリギリで抜けたランパードは、ゴールラインの間際までボールを保持します。そして、全く角度のないところでしたが、そこから反転と同時に放ったループキックは、キーパーの頭上をあざ笑うかのように微妙な回転で弧を描き、ゴールネットへと吸い込まれていきました。あれは狙ったのでしょうかね・・・。狙ったとしたら凄い技術と集中力ですね。とにもかくにも、チェルシーは自分たちの時間帯のなかで、同点となる得点へ結びつけることができました。

ですが後半13分、バルセロナはロナウジーニョが一瞬のスキをつきます。マッチアップするブラルーズがボール奪取へ飛び込んできたところに、ロナウジーニョはそれをワンタッチで抜き去って、この日初めて左サイドの侵入に成功しました。そして中央に突進してきたグジョンセンへ、アウトサイドのキックによる、これ以上ないラストパスを通します。これをグジョンセンが蹴りこんで、勝ち越し弾。再び1点リードとするアシストを綺麗に決めてみせました。
この試合、ロナウジーニョを徹底マークし、前を向かせずにほぼ完封させる働きを見せていたブラルーズでしたが、このワンプレーのチャレンジだけは結果的に軽率な守備となってしまいました。本人も、とても悔しかったのではないでしょうか。

今日の試合は両軍、決定的なシュートを外したり、パスなどにもミスが出ていたのは確かです。しかし、それ以上に不必要なファールの続発が、このせっかくのカードという注目度に比べては迫力のない試合とさせてしまい、水を差していたというのが一番印象に残りました。
発端はランパードへと出された警告でした。この場面、アシュリー・コールが近くにいて、どちらの選手に警告が出されていたのかがやや不明瞭な感じでした。そして10分後、そのコールが警告を受けるファールを犯します。これでコールは2回目の警告、すなわち退場ではないかと思い込んでいたバルセロナの選手たちが、大挙して審判に問い詰める事態となり、ピッチはやや混乱気味の状況に。これが引き金となったのか、負けられないチーム事情のせいで、どこかナーバスな感じであったバルセロナ側のプレーが一層荒れてきます。それに対してチェルシーサイドも、しなくてもいいような際どいプレーが見え始めてきます。
イエローカードも乱発されました。大量のカードが出された前日のセリエAのミラノ・ダービーに引き続いて、この試合を裁いたのはイタリアのファリーナ主審です。今日も計10枚のカードを出すというジャッジング。少し試合のコントロールは難しかったでしょうか。
退場者が出るという最悪の事態には至りませんでしたが、ラフプレーの応酬でことごとく流れが寸断されて、見ごたえに欠けるゲームとなってしまいました。期待を持って観戦した対決だったために、少し残念な気がしますね。

後半ロスタイム、チェルシーのカウンターは、攻め上がったエッシェンによる前線への浮き球から。いつの間にかオーバーラップしていたテリーがそれを落とすと、ドログバが突っかかってきたマルケスを事も無げにワントラップでかわして、フリーの体勢を作り、土壇場で再び同点となる一撃を決めました。ドログバはほとんどこの試合、存在が消えていたわけではありましたが、最後の最後でこの決定的な仕事。さすがですね。

これでチェルシーは対ミドルスブラの敗戦以降、2ヶ月以上も黒星がなく、しかも公式戦10勝2分けという成績です。新戦力による編成の変更や、故障者の不在をものともしない、この勝負強さには目を見張るものがありますね。
さあ、一方のバルセロナですが、後がなくなりました。このホームで勝ち点3を逃してしまったのは、大きく響きますね。目下、2位争いのライバルであるブレーメンは、レフスキ・ソフィアを相手に順当勝ちを収めて勝ち点を7とし、勝ち点5のバルセロナは3位に転落する結果となってしまいました。次節、格下相手のレフスキ・ソフィア戦はもちろんのこと、最終節で直接対決するホームでのブレーメン戦では、何よりも勝利が求められます。

チェルシー × バルセロナ

2006年10月19日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第3節: チェルシー 1-0 FCバルセロナ

今年の一次リーグで最大の注目カードがやってきました。
ホームでバルセロナを迎えるチェルシーは、先のプレミアシップのレディング戦において守護神チェフが頭蓋骨骨折というアクシデントに見舞われ、さらに控えのキーパーまでもが負傷し、三番手のゴールキーパーであるイラーリオが先発出場を余儀なくされるという非常事態。果たして、この大一番をどう乗り切ったのでしょうか。

序盤は、前半10分までお互いにシュートのない慎重な立ち上がり。最初にチャンスをつかんだのはチェルシーでした。ドログバがディフェンスラインを抜け出し、放ったシュートはキーパーに弾かれます。そのこぼれ球がシェフチェンコのもとに向かいますが、後方から猛然とそれをカバーし、ギリギリのところでクリアしたのはバルセロナのマルケス。この試合にかける意気込みを感じさせます。

この日目立ったのはチェルシーの2人のセンターハーフ、エッシェンとマケレレでした。エッシェンはボールを奪うと即座に敵陣内へと切り込み、攻撃を演出します。マケレレは強靭なボディコンタクトで相手のキープをことごとく寸断。運動量も高く、終始攻守で貢献していました。
前述の、急遽今季初先発となったイラーリオも90分無難なセービングを見せる結果となりました。前半の半ばにバルセロナに訪れた2回のビッグチャンスも、最終的に彼がメッシとシャビのシュートをいずれも防いで、先制を許しません。

メッシとの攻防も見ごたえがありました。基本は同サイドで対峙するアシュリー・コールがこれでもかというくらいにマンマークにつくのですが、常にチェルシーの守備陣はコールを含む2人以上が彼をケアをしていて、いざ突破を許しても必ずすぐさまカバーリングに回り、仕事をさせません。これはこの試合で大きなポイントだったと思います。この日、裏への飛び出しも脅威なエトーに代わってセンターフォワードを務めたのは、どちらかと言えばポストプレーの方に長けるグジョンセン。縦への突破力を封じられたバルセロナは、素晴らしいパスの出し手がいるものの、なかなかディフェンスラインの背後をつく動きは見せることができませんでした。

ダイレクトパスを多用して攻め崩すという「らしい」連係プレーを作るバルセロナと、カウンターを含めてなるべくシンプルにつないでシュートまで持って行くチェルシー。前半はそれぞれの持ち味が出ていた試合でしたが、チェルシーが後半開始早々に得点に成功すると、バルセロナの様相が変わってきます。

後半2分、中央でボールを受けたドログバにDFのプジョルは怠ることなくマークについていたのですが、ドログバはトラップからちょこんとヒールキック。巧みな足さばきで横のスペースへボールを運びます。そしてゴールを背にした状態から反転するや否や、豪快なシュートをゴールネットに突き刺しました。プレミアシップのリバプール戦でのゴールを彷彿とさせるファインシュートで先制点を挙げ、今季調子の良いところを今日も発揮します。
その後もカウンターから3対2の絶好の局面や(エッシェンが潰してしまいましたが)、ドログバのキープからシェフチェンコがフリーになるなど、決定機を立て続けに生み出してバルセロナを追い詰めます。

これに対抗して逆襲を図るライカールト監督は、左サイドバックのファン・ブロンクホルストに代えてMFのイニエスタを投入し、何と3バックに。さらにグジョンセンをジュリと交代させロナウジーニョをセンターフォワードに持っていきますが、これが当たりませんでした。
ガランと空いたサイドスペースをチェルシーに徹底的に攻略され、プジョルが幾度も釣り出されます。攻めては中央に人が集まりすぎてボールの出し所がなく、攻守ともにバランスを崩して自らリズムを失ってしまいました。そのまま何の指示もなくペースの上がらぬまま、逆に、またしてもドログバに決定的チャンスを与える始末。ジュリが多少の存在感を見せ、デコが何とかバランスを取ろうと奮闘しますが、ロナウジーニョを始めとして前線のポジションもコロコロと変わり、組織的に全く機能しなくなってしまいます。
結局このまま何も出来ず、今シーズン初の完封負けを喫してしまいました。疑問の残る結果となってしまった采配でしたね。

最後はバラバラになってしまったバルセロナとは対照的に、勝利後に皆で一致団結したかたちで歓喜を表したチェルシーの姿が印象的でした。正ゴールキーパー不在という事故に、チームで一体感を持って危機を乗り越えた末の勝ち点3は非常に大きなものだったでしょう。これで3連勝という結果にもなり、リーグ突破に王手をかけました。
しかし、課題も残ります。チェフの長期離脱もそうですが、チャンピオンズリーグ奪取のために獲得したはずの2人の新戦力、シェフチェンコとバラックの調子が上がらないのです。この試合のシェフチェンコはまるで周りとの息が合わず、決定的な場面でも見せ場を作ることができません。バラックは相変わらず存在感がなく、彼を経由した攻撃や得意のミドルシュートも見られません。今日もこの2人が本来の力を発揮できれば、多少混乱気味となったバルセロナ相手に、もっと大差をつけられた結果になっていたのでは、とも思います。モウリーニョ監督は辛抱強くなじませる意向であるとのことですが、早くこのビッグネームが連ねる攻撃陣の競演が見たいですね。

両者は次節、カンプ・ノウに舞台を移して再び激突します。ブレーメンと勝ち点で並び、2位を争うこととなったバルセロナは、ホームでこの雪辱を果たすことができるのでしょうか。楽しみです。

ブレーメン × バルセロナ

2006年09月28日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第2節: ヴェルダー・ブレーメン 1-1 FCバルセロナ

キックオフ直後のことでした。中盤からのスルーパスに、抜け出たハントがフリーとなりシュート!得点にはなりませんでしたが、オープニングから先手を取って勢いがついたのか、ブレーメンはもの凄い運動量でプレスをかけて試合を運びます。個々にタイトなマークを次から次へとしかけ、全くバルセロナの選手たちをフリーにさせません。ブレーメンのペースでした。
しかし、そんなハイテンションなサッカーもずっと続く訳がなく、20分を過ぎたあたりからプレッシャーがゆるくなっていくと、徐々にバルセロナが地力を発揮してボールをキープしていきます。ちょっと息切れしてしまったんでしょうかね、今度はブレーメンがゴール前に進むことができなくなり、支配率の時間帯がくっきり分かれた前半でした。

バルセロナは選手を多く入れ替えて臨んだのが影響したのか、今日はあまり連携がうまくかみ合いません。前線でのラストパスが、なかなか受け手の意図する方向へと入らないのです。また、中央のモッタは攻守にどん詰まりの感があり、主役のロナウジーニョも今日はパスやキープがことごとく相手に取られてしまうなど、何人かの選手が不調であったことも、苦戦を強いられる要因となっていました。
一方のブレーメンはFWのハントが好調で、生き生きとしていました。飛び出しが良く、鋭い動きでチームの攻撃を引っ張ります。後半11分、そのハントからのクロスボールがバルセロナを襲います。ゴール前で競っていたDFのプジョルがこれをクリアしようと試みるものの、ゴールへと蹴りこんでしまい無念のオウンゴール。ブレーメンが先制します。

追いつくために猛攻をしかけたいバルセロナですが、後半は一進一退の展開です。相変わらずつなぎがうまくいかず、エトーは負傷して交代、しまいにはボロフスキにあわや追加点とされそうなフリーのシュートを撃たれるなど、暗雲が立ちこめてきます。
それを救ったのは、途中出場のメッシでした。後半30分に個人技でシュートまで持っていくと、試合終了間際に同じように中央へと切れ込んで行きます。預けたデコからの絶妙なスルーパスを、再度受けたメッシが相手DFを抜け出てシュート。これが土壇場での同点ゴールとなりました。最後の最後になって、ようやく見事に決まりましたね。

試合内容があまり良くないながらも何とか勝ち点1を拾ったバルセロナに対し、ブレーメンは勝てた試合を落としてしまった、そんな感じがあります。勢いに乗って追加点を奪いにいくのか、この1点を守りきるのか、はたまた前半同様のプレスで支配率を高めるのか。もっとはっきりとした意思で戦い終えることができていたら、また違った結果になっていたかも知れません。交代も意図的なものはなく、ロスタイムにあっただけでしたね。バルセロナの不調もあって、何となく試合を運べているぞという流れに任せたままだったのかな、という感想です。

両チームにとって、もう一つの大きな敵であるチェルシーは今節も勝って2連勝。勝ち点を6に伸ばしています。今期最大の激戦区で混戦も予想されるこのA組では次節、そのイングランド王者のチェルシーと、スペイン王者のバルセロナが激突します。ブレーメンもこれ以上離されないためにも、格下相手にホームで勝ち点を落とせないところです。進出に向けて、正念場を迎える各チーム。頑張ってほしいですね。

Rマドリード × ディナモ・キエフ

2006年09月27日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第2節: レアル・マドリード 5-1 ディナモ・キエフ

お互いに初戦をまさかの完敗で落とし、負けられない戦いとなった両チーム。試合の序盤は、中央突破で切り崩そうと試みるレアルを相手にディナモ・キエフがよく守り、ミドルからのシュートしか許さない展開となります。前半のディナモ・キエフは、その守りからのカウンターアタックもかたちが良く、決定機を何度か作っていました。しかし今日のレアルの攻撃には、なすすべのない結果に終わってしまいます。ファンニステルローイの先制点を皮切りに、レアルは攻撃陣が爆発。ディアラが決定的なパスを繰り返せば、レジェスは前半だけの出場で1アシスト1ゴールの活躍です。ラウルの2得点のおまけつきで、終わってみれば5点を奪う大勝。勝ち点3を得て、国内リーグで次節のマドリードダービーを前に大きな弾みをつけました。

ディナモ・キエフも彼らなりに精一杯やっていた感じでしたが、チーム力の差がまともに出てしまった感じでした。ミスも目立つようになり、決定機もカシージャスにことごとく防がれてしまいます。後半に1点を返すのがやっとで、キーパーが退場してしまうなど、散々な結果で連敗ということになりました。ちょっと苦しくなってしまいましたが、残り4試合に全力を尽くして逆転進出を狙ってほしいところですね。

マンチェスターU × セルティック

2006年09月15日 | サッカー: 欧州CL
UEFA チャンピオンズリーグ 06/07 第1節: マンチェスター・ユナイテッド 3-2 セルティック

ユナイテッドはサハが絶好調ですね!
2得点以外にも際どいボレーなどシュートを随所に見せ、出場停止明けで勘が鈍っていた(?)ルーニーの穴を十分に埋める活躍を見せてくれました。
ファンニステルローイが抜け、FW陣の層の薄さも懸念されていたわけですが、このままのパフォーマンスでトップを張り、そんな心配など吹き飛ばすようなシーズン結果にしてもらいたいと思っています。

試合は前半から点を取り合い、得点の多い派手な展開になりました。
しかしそのいずれもがミス絡みの失点ということで、大舞台の試合の割には、と少し残念な感じがします。
特にファーディナンドやグラベセンといった、それぞれのチームで中核と期待されている選手が決定的なミスを犯し、失点につながったということは今後気がかりです。
後半になるとセルティックの守備陣は運動量が激減したのか、ずるずる下がり、ろくにマークにもつけない形でユナイテッドに猛攻をうけ、圧倒されるという結果になりました。
負傷交代してしまったリーグで好調なギグスや、欠場していたロナウドの存在があれば、もっと大きな点差がついてしまっていたかも知れません。

そしてなんといっても中村俊輔の直接フリーキック!!!!日本人の我々にとってはこの第1節、最大のハイライトシーンとなりました。
直接FKが与えられたポイントは、ゴールに向かってやや右よりの22メートル手前。左利きのキッカーにとっては申し分のない位置です。
そしてボールの軌道は、壁の中で唯一跳ばなかったサハの頭上をかすめ、低く速く、GKファンデルサールも身動きできない曲線を描き、ゴールに吸い込まれました!
決めたときの俊輔、とても嬉しそうでしたね。
チャンピオンズリーグ初出場で初得点、素晴らしいことです。これでチームからの信頼感も、これまで以上に引き寄せたのではないでしょうか。

ともにリーグでは好調で首位を走る両チーム。次節はそれぞれにとって格下と見られるチームとの対戦です。
ユナイテッドは着実に勝ち点を稼ぎF組トップのポジションを、セルティックはホーム開催で反撃となる結果を求めたいところですね。
期待しています。