みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

サンプドリア × インテル

2007年02月03日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第21節: サンプドリア 0-2 インテル・ミラノ
(2007/1/28)

■ マテラッツィへの頭突き再び・・・
引き続きインテルの試合です。格下相手との対戦ですが、何と言ってもインテルは次節、今季のセリエAにとってはもう最後の大一番になるかも知れない2位ローマとの直接対決が控えており、その直前予習は欠かせません。連勝記録の行方にも注目です。
対するサンプドリアは、高い充実度の戦力の刷新でもって変貌を遂げ、昨季の低迷からの脱出が大いに期待されていましたが、結局は何とか中位に踏みとどまっているという悲しい現状。イージーな失点が絶えない守備陣に批判が集中しているそうです。唯一の光明は、華麗なプレーとゴールを数多く披露するFWクアリアレッラの輝きだけとなっています。

ちなみにこの試合の前後にコッパ・イタリアの準決勝があり、偶然にもインテル対サンプドリアの組み合わせとなっていました。すなわち、一週間で両者は3回も戦うわけです。準決勝第1戦は、この日と同じくアウェーだったインテルが3-0と快勝しています。

サンプドリアは、ノベッリーノ監督が誰に何と言われようとも頑なまでに通す4-4-2のシステム。
GKはルカ・カステラッツィ。DFは左からバストリーニ、ファルコーネ、サーラ、ゼノーニ。MFは左からフランチェスキーニ、デルベッキオ、バロンボ、マッジョ。FWはフラーキとクアリアレッラのツートップです。
12月頃から重用され続けてきたDFアッカルディが出場停止で出られません。他では、本職はサイドバックのマッジョがサイドハーフとして起用されています。

インテルはもう完成の域に達している4-3-1-2。
GKはジュリオ・セーザル。DFは左からマクスウェル、マテラッツィ、ブルディッソ、マイコン。MFは左にサネッティ、中央にカンビアッソ、右にビエラ、トップ下にスタンコビッチ。FWはアドリアーノとイブラヒモビッチ。
キーパー以外はフィオレンティーナ戦と変わりがありません。ミッドウィークのコッパ・イタリアで途中交代による復帰出場を果たしたFWクルスが、この日も控えに入りました。

開始からわずか5分ほどで、いきなり試合に波乱が生じます。
サンプドリアの血気盛んなデルベッキオが、ジュリオ・セーザルとの接触の直後に蹴りを入れるような乱暴な仕草を見せます。これに対して頭に来たマテラッツィが猛然とデルベッキオに詰め寄り、マテラッツィが何か二言三言叫んだ瞬間、デルベッキオのヘディングがマテラッツィの口元を直撃していました。よもやの暴力行為で倒れ込むマテラッツィ。血の滲むそのマテラッツィの唇。騒然とする会場。そして当然のごとく提示されるデルベッキオへのレッドカード(マテラッツィにはイエロー)。しばらく大きな話題として続いた、ワールドカップでのジダンの「頭突き退場」を彷彿とさせます。
デルベッキオには全く言い訳の余地のない退場処分ですが、よほどマテラッツィの罵声は人を怒り狂わせるほどのものがあるのでしょうね・・・。このお騒がせ男の異質な存在感には陰りが見えません。

結構サンプドリアが押し気味で面白い展開だったのに、これで試合がぶち壊しになったかなと思っていたら、意外にも10人になった後もサンプドリアが引き続き主導権を握っていました。効率的に攻めているのは圧倒的にサンプドリアの方です。序盤のインテルはサンプドリアのカステラッツィのファンブルから、アドリアーノがオフサイドの判定とされたゴールシーンしか見どころがありませんでした。

ようやくインテルがペースを掴んだのは前半30分あたりから。好調なFWにボールが集うようになってきました。以降、サンプドリアは防戦を強いられ続けます。
ビエラのラストパスを受けたアドリアーノが、ペナルティエリア内でDFと競り合いながらも力強いキープから強引にフィニッシュ。直後には勢いの良いシュートも吹っ飛ばしています。
前半38分には、今度はイブラヒモビッチが躍動。左サイドで二人をかわしたサネッティのクロスに、ダイビングボレーで合わせにいきました。これは空振りで流れましたが、こぼれ球を拾った右のマイコンのアーリークロスは確実にヘディングでゴールへと沈めました。インテルが先制。左右に思いっきり大きく振られるかたちとなったサンプドリアはなすすべがありませんでした。イブラヒモビッチは2試合連続のヘッドによる得点です。

後半からインテルはスタンコビッチに代わってフィーゴが出場。スタンコビッチのそれとはまた性質の異なる、抜群のキープ力からのチャンスメイクを度々見せてくれました。
後半23分にはアドリアーノとクレスポが交代。アドリアーノはこの日も献身的で、味方へパスを出すための働きが目立ち、決して悪い出来ではありませんでした。ローマ戦でも間違いなく先発で用いられることでしょう。

クレスポがセンターフォワードとなると、それまでその役割だったイブラヒモビッチが得点の演出係として精力的に奔走し始めました。左右どちらにでもワイドに開き、最前線の起点となります。
その彼の動きの一つが見事にゴールへつながりました。後半30分、マイコンがオーバーラップから中央へ切れ込むようなドリブル走破できっかけを作ります。そこから大きく右に開いていたイブラヒモビッチにボールが預けられ、イブラヒモビッチはバストリーニのタックルを問題なくかわしてフリーに。そして中に折り返した際には、もうサンプドリアの守備陣は総崩れの状態でした。そのまま駆け上がったマイコンが難なく決めて、インテルは追加点を獲得。この時点で勝敗がほぼ決まりました。

サンプドリアに追いすがる余力は残されておらず、2-0でインテルの順当勝ちという結果に終わりました。インテルは驚異の14連勝達成です。

■ 要の中盤がまるで冴えなかったインテル
インテルの方は、この日もFW二人に文句をつけることができません。中でもイブラヒモビッチが光っていました。センターフォワードとしてポストプレーに得点にと要求されることを高いレベルでこなしてみせて、クレスポ登場後は切れることのないスタミナでウイング的に走って攻撃を促します。万能型ストライカーとしての本領を存分に発揮しました。そして1ゴール1アシストという見た目にも明らかな結果で、満点の内容だったと言えることでしょう。

右サイドバックのマイコンも忘れてはならない存在です。この試合、こちらのサイドは彼のものでした。再三攻め上がってはサンプドリアの脅威となり、結果として彼もまた1ゴール1アシストの殊勲者となりました。

さて、このインテルの敵なしといった感じの連勝街道。これには様々な要因が取り上げられていますが、私は個人的に中盤のパフォーマンスこそが最も評価されるべきだと思っています。今のインテルの強さを一言で表現するならば、何よりも良い意味でインテルらしからぬ「安定感」でしょう。マンチェスター・ユナイテッドやバルセロナのようなド迫力もなければ、ローマやアーセナルのようなスペクタクルもありません。しかし地味ながらも淡々とした危険度の少ない内容で、着実に勝利を得る能力はトップクラスです。これを根底から支え、その象徴となっているのがインテルの中盤の選手たちだと申し上げたいのです。
そもそも攻撃を司るトップ下のスタンコビッチからして、ボランチもこなせるという守備力の所有者です。前線にいようが守備で手抜きをすることはありません。サネッティの安定度は今さら言及するまでもないことでしょう。新加入のビエラも一年目から問題なくフィットして攻守で高い身体能力を発揮。ダクールとカンビアッソも巧みな守備やフィードを持ち、絶大な中央でのバランサーとして君臨します。
その彼らのプレーが精密で、実にエラーが少ないのです。保持しては容易に相手に渡さず、保持されては最終ラインへ及ばないように中盤の時点で吸収してしまいます。オーバーラップが顕著なサイドバックにも高い評価が与えられていますが、私はこの鉄壁な中盤の存在があるからこそ思い切った行動を続けられているのだと思うのです。
全員が中盤なら複数のポジションを担当できるほどの攻撃能力と守備能力を併せ持っていて、穴がありません。その上、バランスよく共存しています。誰よりもレアルのカペッロ監督が羨んでいそうな欧州一の堅実さが、インテルの中盤にはあります。そしてそれの積み重ねが、文字通り「負けない」サッカーに大きく影響しているのだと主張したいのです。

ですが、その要の中盤の出来が、どうしたことかこの試合ではサッパリといった感じでした。
終始安定していたのはサネッティただ一人。そのサネッティにしても、自身のサイドをいいようにやられていた責任は間違いなくあったと思います。
カンビアッソも褒められたものではありません。してはいけないポジションながら軽率なパスミスを犯し、好守と呼べた活動も一度もありませんでした。
日によってパフォーマンスの波が一番大きいビエラは、90分の試合の中だけでも波の激しい選手でした。絶妙なパスや守備を繰り返せば、その一方ではとんでもないパスミスやキープミスを連発し、「安定」には程遠いプレーぶりです。
そして特にひどかったのがスタンコビッチです。結構攻撃を任されてはいましたが、そこから何をやっても全然うまくいきませんでした。ミスと言うか集中力が大幅に欠如していた感じで、何度もチームの流れを止めては期待を相当に裏切りました。累積警告や休養のためなどとの解説が入りましたが、あの後半開始からの途中交代は単に全く機能していなかったからだと思います(※追記: 公式サイトによると、実際にはこの交代は当初からの予定通りだったそうです)。
結局、攻撃の切り札となったのはサネッティとマイコンによる何回かのサイドアタックのみ。これでは攻めに厚みがもたらされようもありません。守備時にも中盤でドリブルやパスを、自由に幾度も通させてしまいました。完勝してしかるべき一人少ない格下のサンプドリアを、なかなか決定的に引き離せなかったのは間違いなく中盤の停滞です。スタンコビッチを中心として、次のローマ戦までには奮起して高次元の中盤を蘇らせてくれることを強く願っています。

■ 数的不利が悔やまれるサンプドリアの健闘
サンプドリアの実情はよく知らないのですが、負けたとはいえ印象に残る選手が数多くいました。振り回されてつききれなかった先制の場面だけは悔やまれましたが、ファルコーネはかなり判断のいい守備を見せ続けました。これまで非難されることが少なくなかったそうなのですが、この日はそれに全然至らない貢献量です。若手のバストリーニも10代とは感じさせない落ち着きぶりで、マイコンの侵入を許さずに左サイドの奥底を固めました。右サイドのマッジョとゼノーニも印象的です。両者の活発な躍進がそのまま表面化され、サンプドリアはほとんど右サイドを起点にして攻めていました。

またMFを一枚欠いた後も、FWを削ることなくツートップのまま4-3-2で、攻撃的な姿勢を崩さずに戦い抜いたことも好印象でした。これが出来たのも、わざわざ大きく下がってまで中盤とのリンクを断ち切らなかったフラーキとクアリアレッラの両FWの豊富な活動量があったからこそです。二人とも単なる懸命さだけではなく、質の高いドリブルやキープなどのスキルも披露してくれました。どうにか1点だけでも取らせてあげたいとさえ思わされる活躍でした。

ただし、そんなサンプドリアも後半の半ばからは運動量が激減。まずは、あれほどあった右サイドアタックが復活することなく沈黙し、とうとうツートップが孤立してしまいました。
また、先に挙げた選手たちも直接失点に関わってしまいます。インテルの2点目は、実はオフサイドトラップのミスというサンプドリア自身の致命的なエラーが崩された最大の要因だったのですが、それの元凶は反応悪く一人だけ後方に残っていたゼノーニの存在でした。さらに左サイドへ展開された際に、かなり甘い対応で軽くイブラヒモビッチに振り切られてアシストを許したのはバストリーニでした。それぞれ、それまでが嘘であったかのような集中力の欠如です。
しかしながら、これには同情の余地があります。一人少ない状況の中、たった三人となった中盤の選手たちの負担の大きさは語るまでもありません。両サイドバックも、時として一人で二人を相手にせねばなりませんでした。疲労困憊はやむなしでしょう。全体的に考えれば、インテルという強大なチームを相手に、サンプドリアはよく頑張った方だと私は思いました。
やはりデルベッキオ、あなたの退場がとてつもない痛手として確実にサンプドリアを蝕むことになっていました。この日のサンプドリアが予想以上の健闘だったが故に、余計に悔やまれるところです。大げさでなく、インテルの連勝記録を止める引き分けは十分に可能なことでした。どこかで聞いたようなフレーズですが、それこそ「10人の勇者と1人の愚か者」です。デルベッキオは疲れ果てるまでに戦った全選手に深く詫びるべきだと思います。なお後日、デルベッキオには3試合出場停止の裁定が下されました。

今節、2位のローマはシエナに1-0で勝利し、広がっていたインテルとの勝ち点差を何とか11のままで食い止めました。そして冒頭でも記述したとおり、次節はいよいよインテル対ローマの最終決戦です。好調を維持するインテルが制して優勝を決定づけるのか、あるいはローマが見事にインテルへ初黒星を与えて大逆転の契機とするのか。非常に楽しみな一戦です。


※追記: この試合の後に行われたコッパ・イタリアの準決勝第2戦、インテル対サンプドリアは0-0の引き分けに終わりました。2戦合計の結果でインテルが決勝進出。決勝は3年連続でインテル対ローマとなりました。

※追記2: 2月2日に行われたカターニャ対パレルモ戦で、パレルモサポーターが騒ぎだして暴動に発展。警官1人が死亡、警官1人が重傷、その他にも100人以上の負傷者を出す痛ましい事件にまでなってしまいました。イタリアサッカー協会は事態を重く見て、国内で開催されるサッカーの試合の全面的休止を示唆。まずは今週末のセリエAの中止を発表しました。残念なことにインテル対ローマの大一番もお流れです。

インテル × フィオレンティーナ

2007年02月03日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第20節: インテル・ミラノ 3-1 フィオレンティーナ
(2007/1/21)

■ インテル13連勝 簡易レポート
記載は久々となるセリエAです。ご存知の通り、現在のイタリアの主役は何と言ってもインテルです。いやあ、本当に強いですね。このチームこそ「一体どこが止められるの?」という言葉がふさわしい独走気味の状態です。
勝ち点のペナルティがなければ4位の成績だった、好調のこのフィオレンティーナとの一戦は要注目でしたが、私は個人的な事情で観戦が今週にずれ込んでしまいました。よって今更なのですが、簡素にレポートを残しておきます。

インテルの布陣は4-3-1-2。
GKはトルド。DFは左からマクスウェル、マテラッツィ、ブルディッソ、マイコン。MFは左にサネッティ、中央にカンビアッソ、右にビエラ、トップ下にスタンコビッチ。FWはアドリアーノとイブラヒモビッチです。
正キーパーのジュリオ・セーザルが朝方に腰痛発症との公式発表。急遽、元イタリア代表のトルドが開幕戦(フィオレンティーナ戦)以来の先発となりました。何の因果なのか、今季のトルドは古巣のフィオレンティーナとの2試合だけに出場です。

フィオレンティーナは、この日は4-5-1。
GKはフレイ。DFは左からパスカル、ダイネッリ、ガンベリーニ、ポテンツァ。MFは左からヨルゲンセン、ゴッビ、リベラーニ、ドナデル、ブラージ。FWはトーニのワントップです。
この大事な試合で二人の主力選手が出場停止。軽率さの絶えない右サイドバックのウイファルシはまだしも、再びプランデッリ監督の下で輝きを放っているセカンドトップのムトゥの欠場は大きな痛手です。現在のフィオレンティーナの看板である、国内屈指の破壊力を誇るトーニとムトゥのコンビを残念ながら見れません。

その主力抜きのフィオレンティーナがあっさりと前半5分に先制してしまいました。セットプレーからです。左サイドの相手ペナルティエリア付近でフリーキックを獲得すると、これをリベラーニが中央へ放り込み。リベラーニのクロスがかなり高精度だったのは確かですが、マーキングで混乱したインテルにも責任があると思います。マイコンがあわてて対処に行きましたが、マークにつききれずにトーニのヘディングが炸裂。トーニが今季10得点の大台に乗せました。

当たり前のように支配しながらも失点、ミス続きと、いい流れを作れないインテルでしたが、その嫌な雰囲気を一人で吹き飛ばしたのがスタンコビッチでした。
前半19分、スタンコビッチが敵陣で猛然とカットする見事な守備を披露し、拾ったイブラヒモビッチが左のアドリアーノへ。アドリアーノは打開が難しいと見るや、ここで溜めに溜める好判断の末、中央へラストパスを送ります。その先には守備から即座に一転して爽快に駆け込んできたスタンコビッチがいて、フリーの状態から鮮やかに強烈なシュートを突き刺しました。同点となります。

さらに5分後の前半24分、今度はやられたフリーキックでフィオレンティーナにお返しをします。ビエラが深く攻め入るキープからファールをもらいました。このチャンスに三人のキッカーが並んだインテルはちょっとした工夫を見せたのです。
イブラヒモビッチが蹴ると見せかけてフェイントでボールの上を通り過ぎると、すぐさまスタンコビッチがちょこんとボールをずらします。これをフルパワーの左足で、アドリアーノがグラウンダーのシュートをゴール枠内隅に沈めました。壁の選手の横を過ぎる一直線の軌道で、防御側としてはどうしようもない失点でした。
開始直後の被リードなど、まるで意に介さないかのようなインテルの逆転劇です。

その後もインテルの優位は変わらず、お得意の淡々とした試合運びです。ほとんどフィオレンティーナにシュートを打たせませんでした。
そしてインテルは後半26分に、またもフリーキックから得点しました。スタンコビッチの上げたアーリークロスに、イブラヒモビッチがきちんとついていた相手DFのマークをもろともしない高い打点のヘッド。フレイは何とか横っ飛びのファインセーブでこれを防ぎましたが、こぼれ球が再度イブラヒモビッチへ渡ってしまいました。このイブラヒモビッチの押し込みもフレイは弾きましたが、ゴール内でのプレーであり、判定はゴールインです。インテルが駄目押しとなる追加点を挙げました。

このまま試合は終了。結局はインテルの危なげない勝利でした。

インテルは特に攻撃陣が冴え渡りました。
コンスタントに躍進を続けるイブラヒモビッチはもちろんのこと、相方のアドリアーノがこの日の紛れもないMVPです。1ゴール1アシストに、3得点目となるフリーキックも獲得しました。いずれも称賛されるべき質のプレーです。また、ただ直接得点に絡むだけではなく、随所で抜群のキープも見せました。あれほど「ワーストプレイヤー」として叩かれたことを見返しているかのように、力強いアドリアーノが戻ってきています。
チーム一の気分屋ゆえに、ここ最近の自身の好調に気をよくしているのか、驚くほどに守備でも貢献していました。問題児とまで評されたあのアドリアーノが、チームプレーに最後まで徹していたことが一番に印象に残った試合でした。

もう一人、スタンコビッチを殊勲者として選ばねばなりません。こちらは1ゴールに、実質2アシストです。
この試合のインテルは、唯一流れの中で取れた同点弾こそが全てだったと思います。これで相当に落ち着き、バタバタ感が一気に治ったためです。そして、この同点シーンでのスタンコビッチの一連のプレーは返す返すも素晴らしいものでした。

まるでフィオレンティーナに決定機を生じさせず、一見すると磐石だったインテル。フリーキックから2点を奪いましたが、自身も相手のセットプレーなどからのハイボールへの対処には難がありました。序盤の失点は言うに及ばず、後に訪れたフィオレンティーナの二度のフリーキックのいずれの場面でも、守備陣の慌しさは否めず満足にクリアができません。総合的に、クロスには脆さを見せ続けました。
さらに、マテラッツィが最終ラインのリーダーにあるまじき軽率なエラーをまたも連発。その申し分のない身体能力は誰もが認めるところなのですが、国内外で頂点を目指すチームの守備の柱として、これはいただけないものです。
攻守に全く隙が見られないとされるインテルですが、その評と比較すれば信じられないほどの甘さを覗かせる、ここ一番という守備面での最後尾の集中力に弱点が潜んでいる感じがします。

フィオレンティーナは全体的にかなり引き気味でカウンターを狙う、お手本のような4-5-1で挑んでいました。そこからセットプレーでの一発という理想的な展開に持ち込みましたが、不幸なことにそれが早すぎる時間帯での得点で、余裕を持って自力で勝るインテルにむなしくも即座に逆転されてしまいました。以降もしばらくは守備偏重、ロングボール頼みの傾向に変わりがなく、ゲームになっていませんでした。
その中でもただ一人、組み立て役としてヨルゲンセンは結構奮闘していたと思います。左サイドを効果的に攻略し、フィオレンティーナはここが起点となることが多かったものです。ただし、いかんせん核となるトーニとの距離が遠く、トーニの周りで衛星のように活動するムトゥの不在がやはり大きく影響していたのかな、とは思いました。
後半の途中からはようやくショートパスをメインとして、しっかりとした攻撃でもって逆襲を図りましたが、中盤はインテルの方が圧倒的に上手で、ことごとくカットされてはシュートチャンスさえろくに作ることができませんでした。全くもって、インテルの貫録勝ちです。

先週にセリエAで12連勝という新記録を打ち立てたインテルは、この日も勝利して13連勝とその記録を伸ばしました。フィオレンティーナでさえあっけなく一蹴された現在、あと彼らを止められるのはローマなのかパレルモなのか、あるいは復調してきたミランなのか。優勝争い自体よりも、誰がこのインテルに黒星をつけられるかに、より話題が集中されることになりました。

ローマ × パレルモ

2006年12月20日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第16節: ASローマ 4-0 パレルモ
(2006/12/17)

■ インテルを追う2位と3位の直接対決
今季、インテルに続く優勝候補のローマ。序盤こそ勝ちきれない試合が度々ありましたが、エースのトッティの調子がぐんぐん上向きになるのと歩調を合わせるように攻撃力が爆発してきて、もう11月以降はどこも止められない有様といった感じで連勝数を伸ばしてきました。
しかし、そんな中での前節におけるラツィオとのローマ・ダービーです。私はこの試合を観ることができなかったのですが、それまでの快進撃がパタッと止まる、何と0-3という惨敗を喫してしまったのです。自慢の攻撃陣による連続得点試合数も8でストップする完封負け。首位のインテルとの勝ち点差はさらに3点広がり、食い下がるためにも、いくら相手が上位とはいえこのホーム戦を落とすわけにはいきません。

その対戦相手となるのがパレルモです。何回か記載してきましたが、今シーズンのセリエAで立派な活躍を見せてくれているチームです。
失礼な表現ですが、選手層はほとんどB級クラスながら、ここまで15試合で10勝という予想以上の成績を収めています。その原動力は、何と言っても猪突猛進型な攻撃です。ここまで2強のインテルとローマにひけを取らない、30得点(インテルとローマは32得点)というのは大した数字でしょう。「攻撃力」「台風の目」という2点だけで見れば、Jリーグで準優勝した川崎フロンターレと共通するところがありますね。

現在セリエAは、1位インテルの勝ち点が39、2位ローマが32、3位パレルモが31、4位カターニャが23と、優勝争いはほぼ上位3チームに絞られている状況です。
今回はそんなトップ3の中の、ローマとパレルモの直接対決の試合です。

ローマは一貫して変わらない4-2-3-1。頂点にトッティを置き、1.5列目には左からマンシーニ、ペロッタ、タッディと入ります。ボランチはデロッシとピサーロです。
対照的に、決まった布陣を定めていないのがパレルモで、この日はローマと同じく4-2-3-1としてきました。エースストライカーのアマウーリの1トップは変わりませんが、そのすぐ下にはブレシアーノ、シンプリシオというおなじみのメンバーに、カラッチョロを加えてきました。中盤の底で頑張りやさんの、主将コリーニとグアーナももちろん先発です。

■ 絶好調対絶不調
開幕から相手のミスをついて、ローマのペロッタがシュート。さらに左サイドからシュート2本。中盤でよくつなぐことのできるローマは、2、3回のパスだけでもって迅速にシュートまでもっていきます。サイドチェンジあり、両サイドのMFおよびサイドバックの攻め上がりありと、左右からも圧倒していました。
フリーキックからは、DFメクセスのヘッドがポストに当たり、また、DFパヌッチにも自身のファールによりノーゴールとされたゴールインもありました。乱発されるシュートに、際どいところで防いでいるパレルモという図式です。

ただし、ローマのピサーロが致命的なミスを犯してしまいます。そこから、シンプリシオの絶妙なグラウンダークロスにアマウーリが合わせてゴールとしましたが、何とオフサイドの判定で無効に。アマウーリ自身は決してオフサイドではありませんでした。このシーン、確かに手前のカラッチョロが明らかにオフサイドポジションにいましたが、彼は攻撃の意思も見せておらず、関与もしていなかったため、極めて微妙なカラッチョロに対するオフサイドの判定と言えるでしょう。パレルモから絶好の機会が逃れていってしまいました。

圧倒しながらゴールを割れないローマでしたが、意外な一発が前半の最後の最後で決まりました。発端は左サイドのスローインからでした。これを単純にトッティがマンシーニへとつなげ、マンシーニが目の覚めるようなミドルからのファインシュート!ローマにようやく先制点が入りました。なかなか崩しても決めきれずにいましたが、もう仕舞いには強引に得点を奪ってしまったという印象です。リードして前半を折り返すことが出来ました。
前半のシュート本数は実に14対2。この日、サッパリの出来であったパレルモには大きくのしかかる1点となりました。

後半はやや引き気味となったローマに、アマウーリが驚異的な反転シュートで襲い掛かるなど、パレルモのペースとなってきました。
ですが、ローマのコーナーキックの流れから、DFピザーノがローマのタッディを倒してPKを献上してしまうと、このPKをトッティに確実に決められて追加点を取られてしまいます。後半11分のことで、これは事実上のとどめとなる出来事でした。これ以降、パレルモはがっくりと意気消沈。単発でのチャンスしか作れなくなってしまいました。
一方のローマも、すっかりとテンションを落としました。両チーム攻撃に迫力がなく、パスミスも相次ぐ、ダラダラとした展開が続いていくことになります。

パレルモは、後半38分にマンシーニとタッディの2人だけに崩されて、マンシーニのゴールによって3点差となる失点。続く4分後に、シンプリシオが2枚目のイエローで退場処分。終了直前には、トッティの可能性の低いループシュートを、DFビアーバがヘッドで自軍ゴールに押し込んでしまい、極めてオウンゴールに近い4失点目。
踏んだり蹴ったりとなる終盤を迎え、4-0と惨敗してしまいました。

好不調に波があるチーム同士の対戦でしたが、この日は絶不調であったパレルモが絶好調のローマに飲み込まれるという、両極端なパフォーマンスの差がモロに出る試合となりました。前節の敗戦のショックをまるで感じさせなかったローマが、勝ち点1差に迫っていたパレルモを強烈に突き放しました。

■ ローマの「攻撃的な4-5-1」
ローマの攻撃陣は、左右中央とどこからでも圧倒していて、全選手に高い評価を与えることのできる快活な働きぶりでした。そして、その中でも直接得点に関わった右MFタッディ、左MFマンシーニ、そしてトッティの3人が殊勲の選手でしょう。
タッディは鋭い動きで何度も右サイドを圧迫し、90分間キープレイヤーとなっていました。一番チャンスには絡んでいた選手で、パレルモも彼をなかなか制止しきれていませんでした。PKで倒されたのもタッディですし、3点目のアシストとなるマンシーニへのスルーパスも見事なものでした。
マンシーニは前半終了間際で先制点となる、鮮やかなシュートで決まりでしょう。攻めても攻めても点にならない、多少イライラ気味であったチームの雰囲気を払拭させて後半に入ることのできた、ローマにとっては大きな一撃でした。後半にもだめ押しとなる追加点で、この日2得点。MVP級の活躍でした。
同じくMVPとされてもおかしくはないと思っているのがトッティです。確かに、突破力やゲームコントロール自体はさほど見られず、控えめな存在感ではありました。しかし、結果的にマンシーニの先制点のアシストとなったのはトッティの横パスであり、PKに至るコーナーキックを生じさせた流れの起点となったのも、中央を縦断する彼のきれいなパスからでした。結局、要所においてのプレーは光っていたという印象だったためです。

ただローマは、失点につながりそうなものを含む、パスミスが目立ったのは反省すべきことでしょう。あまりにもパレルモがふがいなさすぎて、この試合での課題は全体的に薄れがちになりましたが、こういった軽率なエラーは見過ごしてはならない修正箇所だと思います。

しかしまあ、ローマのこの4-2-3-1はよくぞ見事に機能していますね。もともとは昨シーズンに核となるFWが不足したことから、どうしようもなく試してみた布陣でしたが、スパレッティ監督がこれを急激に成長させてここまで作りあげてきました。
このローマのワントップというフォーメーションは、決して守備的な構えというわけではなく、中盤で分厚くつないで支配率を高めようとする目的でもありません。「超攻撃的な4-5-1」なのです。

大抵こういう布陣でのワントップの目的とは、どっしりとそのトップを最前線に固定させて起点とし、1.5列目の選手たちの強襲をうながすポストプレー的な役割を与えて、攻撃のきっかけを生じさせるものです。しかし、ローマの4-2-3-1はそれとは異質です。
そもそもワントップのトッティ自身が屈強というわけでもなく、本来はトップ下もできるストライカータイプの選手です。ポスト役にはなりきれません。彼は左右に中央に、あるいは下がり目にと自由に敵陣で流れながら、パス、キープ、シュートと、その万能的な能力を発揮するのです。
これを捕らえきれない相手守備陣に襲い掛かるのが、すぐ後方に控える3人の攻撃的MFです。マンシーニは勢いよくスペースへ飛び込み、ドリブルなどで主に左サイドを打開。ペロッタは豊富な運動量でどこへでも顔を出し、つなぎ役に。タッディは機敏な動きから巧みなパスを通して、チャンスメイキング。トッティを軸として彼らが流動的に組み合わさる、いわば「4トップ」とも呼べる攻撃隊形なのです。
さらに、その背後のセンターハーフの2人の攻撃参加も顕著です。デロッシは強力なシュート力と突進力でもって、新加入のピサーロはファンタジックな展開力で、それぞれ前線を後押しします。この日も、この2人を含めた合計6人もの選手たちでもって、パレルモ側に詰め掛けていた局面が何度かありましたね。そして、両サイドバックのトネットとパヌッチまでもが頻繁にオーバーラップをかけていきます。
こうして四方八方から繰り出す鋭敏なアタックが、実に快調に炸裂中なのです。連動性も高いためにパスの標的は必ず存在し、そこから少ないタッチ数でフィニッシュまでもっていけるのが爽快です。ディフェンダーを含めた様々な選手がゴールをマークしている事実が物語るように、どこからでも得点機を作り出すことができているのです。

各選手の技術も高く、この波状的な攻撃を展開するローマは、現在のセリエAの中では最もスペクタクルで「楽しい」サッカーを見せてくれていることに異論はないと思います。

それにしても、一体なぜラツィオ戦だけはこれが不発に終わってしまったのでしょうか・・・。私は、結局この試合は観れずじまいだったのです。どなたか教えてくださいませんでしょうかね。

しかしながら、もちろんローマにも欠点はあります。
まずは、精神面や試合展開において不安定な感じがあることです。大体から、ローマの出来を左右させるトッティからして気分屋の性格ですし、必ずしも全員が毎回安定したパフォーマンスを見せるとは限りません。
今日などのようにパスミスも少なくはなく、最終ラインもマーキングが甘いどころか丸っきりズレてしまうなど、集中力に欠く場面もしばしばあります。
これらに加えて、前線の4人は攻撃に偏重気味で守備意識が薄く、サイドバックも出ていってしまうために、かなり危険なサイドアタックやカウンターも結構浴びてしまうのが冷や冷やさせられるところです。
それでも、失点数をリーグの中ではトップクラスに少ない14にまで抑えられているのは、センターハーフのデロッシによる懸命なカバーリングや、守備陣の個々の身体能力や反応速度によるところが大きいでしょう。決して堅実的な攻撃阻止であるとは言い切れないと思っています。
これらから生ずる波を、少しでも安定させたいところですね。きっとラツィオ戦でもその悪い方ばかりが出てしまったのでしょう。

そして何より、選手層の薄いことが明らかに問題です。
期待されて加入したFWヴチニッチは度重なるけがで、現在トップで有力な控えとなるのはモンテッラしかいない状況です。中盤でも先発メンバーに見劣りしないのはアクイラーニくらいのものでしょうか(しかも彼もまた故障中という・・・)。チャンピオンズリーグを含めた厳しい日程の中で主力選手のローテーションが出来ず、今後息切れしていってしまうのではないだろうかと心配してしまいます。
この試合でも中心選手の一人であるペロッタが負傷。幸いにも捻挫という軽傷で、年内までの休養だけで済みそうとのことですが、とにかくバックアッパーの不足は大きな不安材料でしょう。

優勝への最大のライバルであるインテルは今季、この「安定度」と「選手層」の2点に関しては、ローマとは極端なほど対照的に充実しており、その差は終盤に近づくにつれて多大な影響を及ぼしてくるかも知れません。

■ あの勢いは一体どこへ・・・パレルモ
さて、パレルモは一体どうしてしまったのでしょうか・・・。というか、このチームはローマ以上に出来の波が激しすぎます。快勝か完敗しかありません。せっかく前節に3-0と勝利して復活したかと思えば、この日における試合です。いくらアウェーでローマが相手とはいえ、あまりにひどい低調さでした。ミラン戦で深く私に好印象を与えてくれた姿は、果たしてどこへ飛んで行ってしまったのでしょう。

相変わらず中央攻撃に固執するのは許容範囲です。それが彼らの持ち味なのですから。しかし、トップのアマウーリにチャンスを与えるべき、1.5列目の選手たちに全く元気がありませんでした。特にブレシアーノは、これまでの勢いは何だったのかと言うほどに存在感が消えていました。
アマウーリはよくやったと思います。数少ない好機において、連係が期待できないものだから一人で打破しようとしていました。頑強さを備えるキープ、振り向きざまの強烈シュート、ジャストミートするバイシクルキック。さすがの個人技です。しかしながらサポートには恵まれず、孤軍奮闘という言葉がまさにふさわしい、哀しい活躍でした。ローマ側も彼一人を注意していればいいのですから、さぞ楽だったことでしょう。

他にも、狙っていた引き分けに出来なかった大きな要因としては、オフサイドとされてしまったアマウーリのゴールが幻になったことと、あれだけ耐えながら結局はラストに失点をして、前半を無失点で終えられなかったことが挙げられるでしょう。
両サイドバックの不注意も指摘せざるを得ません。左のピザーノは試合開幕から自陣で大失態のミスを犯し、後半にはマークする選手につききれずに倒してしまい、PKを与えました。右のザッカルドも痛恨の被先制の場面において、相手のスローインだったものだから気を緩めてしまったのでしょうか、非常に低い守備意識でした。

あと、私はこの「策士」と呼ばれるグイドリン監督の考えがまるで読めません。ここまで上位に台頭させたのだから、その手腕たるや相当なものがあるのでしょうが、到底私などには理解できないことがままあります。
コロコロと変わるフォーメーションもその一つなのですが、この日でも4-2-3-1というのはどのような意図によるものだったのでしょうか。結局、ローマの分厚い攻めは、ボランチのコリーニとグアーナがかなりの奮闘を見せてこれに対抗していたのですが、とても彼ら2人だけで抑えきれるものではありませんでした。やはりここはシンプリシオを下げ、得意の4-3-2-1として、前方の3人だけにカウンターを託す戦い方が適当なのではないかと感じられたものです。
また、スターティングオーダーを見て驚きました。この大一番で1.5列目に、ディ・ミケーレを控えとして代わりにカラッチョロを起用してきたのです。前にも申し上げているとおり、私はアマウーリのベストパートナーとは、これまで突破力と得点力で相手を脅かしてきた、ディ・ミケーレであることに間違いないとの感想を持っています。
そしてカラッチョロは、残念ながら、パレルモにおいて期待を裏切った「ワーストプレイヤー」として認定されてしまっている人物です。私はパレルモの試合は何回か観るだけにとどまっていて、この真偽を断定することはできません。でも、この試合だけにおいても彼は、それを拭い去るような働きを見せられなかったのは事実です。どこにいるのだかわからず、何を狙っているのか不明瞭な動きで、まるで攻撃に関与してきません。たまにフリーでのビッグチャンスが来たかと思えば、罰金もののとんでもないシュートでこれを潰します。アマウーリの幻と消えたゴールにおけるシーンで、オフサイドを取られた彼の存在は、酷なことですが非常に邪魔でした。10番を背負わされているわけでもありますし、彼の潜在能力は十分にあると伝え聞いています。もちろん、私もその才能が開花されることを望んでいます。それでも、この不調と不運に見舞われ続けている彼を、ローマ戦という試合で先発させるのは、いかがなものなのでしょうか・・・。
グイドリン監督は、カラッチョロのまだ発揮されていない能力を見抜いてよほどこれに期待していたのか、ディ・ミケーレにどこかしら身体や健康にでも不具合があったために使わなかったのか。真相はわかりません。

リーグ戦が順調なために、あまり乗り気ではなかったUEFAカップの方も狙い通り(?)に敗退が決定しました。これでリーグ一本に絞れるはずです。爆発するときには拍手を送りたくなるほどの試合を見せてくれるため、どうにかこの先も集中して大崩れがないよう、躍進を続けていってほしいと切に願っています。

最後にもう一つだけ、パレルモにお願いがあります。
スキンヘッドの選手が多すぎです!コリーニ、グアーナ、ブレシアーノと、3人が3人ともそろって同じような体型で同じスキンヘッドです。観ていて結構区別がつかないことも多く、「あれ、このファインプレーは誰だっただろう?」などと、戸惑うことがままあるのです。ブレシアーノは前方の選手だからまだしも、問題なのはともにボランチであるコリーニとグアーナです。2人とも相互にカバーリングも優秀なものですから、ごっちゃになると全くどっちだかわかりません。かろうじて背番号とコリーニのキャプテンマークで判別しているのが現状です。毛穴とかに先天性の欠陥でもない限り、うっすらとでもいいですから、どうか頭髪を生やしてほしいのです・・・。

■ 小笠原が久々に登場!
気になる首位インテルはと言えば、メッシーナとの対戦でした。
そして、そこで何と小笠原が久々に先発していました。その小笠原ですが、解説の原さんの言葉がまさにその通りという内容でした。
「いい入り方をして、この機会においてのアピールする意欲も高く見られ、プレー自体も十分な出来だった。ただ、いかんせんチームが彼を使うことに慣れていなく、なかなかボールを回してくれないために、決定的な仕事までは絡んでいけなかった」
インテルという相手にも物怖じせず、試合感覚も鈍ってはいないようでしたが、結局満足に働けないままに小笠原は後半で交代させられてしまいました。

試合ではマテラッツィが、DFとは思えぬ驚愕のオーバーヘッドで先制し、小笠原の強烈なシュートを股間に受けては悶絶し、メッシーナの監督と一悶着を起こして監督を退席処分に追いやるなど、相変わらずの特質な存在感を放っていました。

インテルは2-0で勝利し、ローマとの勝ち点差は7のままです。

パレルモ × インテル

2006年11月28日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第13節: パレルモ 1-2 インテル・ミラノ

イングランドにおいて首位攻防戦が行われたわずか1時間半後、イタリアのセリエAでも1位と2位の直接対決の試合が行われました。

今シーズン、イタリア国内で驚きの活躍を続けているのは現在2位のパレルモです。3シーズン前にセリエAへと昇格すると、そこから残留争いはおろか中位以上へ台頭してくる成績を残してきて、ついにこのシーズンでは上位の優勝戦線まで上り詰めてくるようになったのです。
1ヶ月前に、あのミランと対戦した試合では、生き生きとしたサッカーで、アウェー戦をもろともしない快勝をして私に好印象を与えてくれました。その後もチームは勢いに乗り、勝ち点を重ねていきました。私もそれから1、2試合ほど軽く観ましたが、個人技の弱さを運動量でもって相当にカバーする、快活な内容でした。前節は敗れてしまい、首位のインテルとは1勝差で離れてしまいましたが、それまではインテルと勝ち点で並び続けていたという躍進ぶりです。

そんなパレルモというチームを軽くご紹介します。
色々なフォーメーションを持っていて、試合ごとに布陣がよく変更されるのですが、変わらないのが攻撃力です。これを武器として、チームはのし上がってきました。その前線では、今季好調なブラジル人FWのアマウーリをトップにドンと置いて、そのやや後方から、ディ・ミケーレやブレシアーノといった2人のシャドーストライカーが襲うというパターンを多用しています。これはワイドに開く3トップ気味というわけではなく、3人ともが敵陣中央に勢い良く突っ込んでいってかく乱し、ゴールに結びつけるという、やや強引ともいえる戦法が特徴的です。チーム全体もそれを支援すべく、豊富な活動量で中央から押し上げます。直線的で突貫型な、例えるなら猪のような突進力を持ったチームです。
ですが、欠点もあります。失点も多いのです。攻撃陣を筆頭として、余りに中へと集中して突入してしまうので、サイドアタックやカウンターなどから、あっさりと守備を破られてしまうのです。開幕戦から4-3というスコアが物語るように、得点も失点も重ねる、まさにやるかやられるかという派手な試合を勝ちきることで制してきて、ここまでの成績となっています。

そのパレルモに乗り込むアウェー戦で、現在の首位の地位を固めたいインテルです。当初はまさかのチャンピオンズリーグ2連敗という発進で、一体どうなることかとも思われましたが、その後はそれまでの不振が嘘のような安定感を取り戻して勝ちまくりました。現在公式戦は何と7連勝中。水曜日に行われたそのチャンピオンズリーグの第5節でも勝利し、結局は最終節を待たずして突破を決めてしまいました。故障などで選手の離脱が続く中、残された人材をうまくやりくりしてパフォーマンスを保ち、リーグ戦では12試合を終えていまだ無敗という文句なしの1位に立っています。

ホームで、インテルに対してはどんな内容で立ち向かってくれるのか。期待のパレルモは、3-3-2-2と、普段とは少し異なるフォーメーションで臨みます。
インテル側では何と言っても注目なのが、「お騒がせ男」のFWアドリアーノが、ついにイタリアに戻ってからは初となる先発での出場ということです。2戦連続ゴールを決めたクレスポをベンチに追いやって、この重要な一戦に起用されました。

満員に埋まるスタジアムの中で、試合は開始されました。
前半7分、インテルは何でもない後方からのロングボールを、アドリアーノが胸で落とします。それを受けたFWイブラヒモビッチ、30メートル以上はあろうかというところから果敢に強烈なシュートを放ちました。これをキーパーのフォンターナ、まさかそこから撃ってくるとはと虚を突かれたか、セーブすることができません。わきの下をボールがくぐりぬけてゴールインし、この意外な一撃によってインテルが先制です。

今日のパレルモは、どうも右サイドからの攻撃が軸となっていました。得意の中央では、前線へのパスがうまくつながらずに、受けてからもボールのコントロールが定まりません。何より相手陣内での競り合いでことごとくファールを受けてしまい、攻めが寸断されがちです。エースのアマウーリになかなかボールを収められません。それで、唯一元気だった2列目の右にいるディアーナ。彼にボールが集まるようになり、攻めはここのエリアを起点としたものばかりでした。
よって、これまでの突進するような勢いが見られません。一方のインテルも幸先良くリードしてしまったものだから、あまり無理に攻めることはせずに淡々と時間を進めていきます。双方決定的なシーンにまで至らず、予想以上に盛り上がりの欠ける試合となってしまっていました。

ほとんどいいかたちを作れなかったパレルモ。このまま前半終了かと思われたロスタイムです。左のピザーノのクロスを、ブレシアーノが難しい態勢ながら見事なヘッドで真横に落とします。これをアマウーリがワンタッチのアウトサイドキックでゴール右隅に決めるという、難易度の高いシュートで同点に追いついたのです。この一連の過程だけは、素晴らしいものがありました。パレルモにとっては、前半でタイスコアに戻せたという、大きな得点です。

これで後半からは俄然勢いを取り戻してくれるかと思われたパレルモですが、残念ながらそうでもありませんでした。
どんな事情だったのかわかりませんでしたが、後半早々にエースのアマウーリを退ける交代がありました。この代わりに投入されたFWのカラッチョロですが、これがまた全くの期待外れで、前線はむしろ弱体化されてしまいました。謎の采配です。
自陣内でもパスミスを連発。右サイドアタックも見られなくなり、チーム全体が中央でだんご状態となる詰まった展開で、リズムは生まれそうにありませんでした。
そして、依然として冷静な立ち回りのインテルに勝ち越し点を与えてしまいます。アドリアーノのドリブルでの駆け上がりを許し、そこからフリーだったMFビエラに豪快な一発を決められて、再びリードされてしまったのです。

何とか反撃したいパレルモは、選手交代を経て大幅にフォーメーションを変更させ、中盤でもスペースを見つけることができるようになりましたが、結局はゴール前へ効果的なボールを配給するまでには至りませんでした。
これの最大の要因の一つは、インテルの選手たちの落ち着いた対応だったでしょう。特に中盤のサネッティ、ビエラ、そして今日はボランチに入ったスタンコビッチです。彼らが要所となるところで確実にボールの出し所を抑え、奪取しては巧みに捌き、パレルモの支配を阻害する大きな障害として存在していたのです。
こうしてホームでありながら、畳み掛けるような攻めを一度も炸裂させることができなかったパレルモ。コーナーキックというセットプレーでのチャンスでも、カラッチョロのヘッドがポストを叩くという運のなさで、とうとう追いつくことはできず。1-2で、元気なく敗戦という結果となりました。

パレルモは調子に波があって、出来不出来が定まらないということは承知していたのですが、残念なことにこの試合では、その悪い方を観ることとなってしまいました。強敵が相手だった事実もありますが、アグレッシブかつ爽快な動きで爆発してきたパレルモのサッカーを、今回は披露してくれませんでした。
今日の試合のためにいくらかメンバーを落として惨敗したUEFAカップは仕方ないにしても、それを含めて公式戦は3連敗となり、チームは下降線をたどり始めています。自慢の得点力も、その3戦でわずか1点と陰りが見えてきました。
思うに、そこにはディ・ミケーレの不在というのも少なからず影響があるのではないでしょうか。故障なのか、コンディション不良なのか。医師に通いつめているとも伝えられている彼は、今日を含めたこの3試合に出場していません。今季エースとして才能を開花させたアマウーリの活躍の陰には、その立役者となっていたディ・ミケーレの存在があったことは事実です。小柄ながらもドリブルで敵を引き寄せ、自身も決定力を秘めているという、チームをけん引してきた選手でした。その彼がいなくなったことと、チームが失速してきたことは、決して関連がないとは言い切れないと考えています。

これで、さらにインテルとの差は広がってしまいました。しかしながら、依然として3位です。ここ数年の急成長で過熱するパレルモの報道に対し、グイドリン監督は「優勝などとんでもない。まだUEFAカップ圏内を狙うチーム」と控えめですが、この連敗にもめげずに盛り返し、その爽快なサッカーで、見事チャンピオンズリーグ出場になるまでの大躍進を遂げてほしいですね。

さて、インテルはまたも白星を挙げました。この最近の好調さを一言で表すと、「安定感」でしょうか。パレルモとは、本当に対照的な流れですね。今日の試合でもそうでしたが、特に中盤の選手たちが落ち着いて取り乱すことがなく、相手の火消しに、自軍のキープにと、持っている高い能力で地味ながらもチームへ多大に貢献しています。この崩れることのない土台で、日替わりに発揮するFW陣の選手たちの決定力でもたらされたリードを守り、連勝という結果につなげてきました。豪華な顔ぶれに比べて、手堅く冷静な試合運びが、今のインテルの支えとなっています。

この日話題の一つであったFWアドリアーノも、意外と言っては失礼ですが、自分から切れ込んで行くという序盤にはまるでなかった積極性が見られ、及第点の出来でした。結果的に2アシストですものね。選手の負傷退場が相次いで交代枠がなくなり、思わぬフル出場となって、体力の無さから最後はバテバテになってしまったのはご愛嬌です。「怪物」と呼ばれていた彼の復調は、インテルにとって朗報でしょう。

今節の結果、インテルは頭一つ抜け出す勝ち点33に。それを追う2位ローマは勝ち点29、3位パレルモは勝ち点27のままとなっています。

ミラン × ローマ

2006年11月13日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第11節: ACミラン 1-2 ASローマ

今節のセリエAでは、ミラン対ローマという興味深いカードが組まれました。好ゲームになることを期待したいところですが、最近のミランがガクッと調子を落としているのが心配です。鉄壁を誇ったディフェンスにも穴が見え始めて、リーグ戦では連敗中です。3位と好位置につけているローマが相手とはいえ、ホームでこれ以上黒星を重ねるわけにはいきません。

お互いに緻密なパスワークで相手をかいくぐって行く、期待に反しない展開で試合の立ち上がりは動いて行きました。
前半7分、ローマはパヌッチのアーリークロスから、ペナルティエリア内で3人対3人の局面を作ります。このクロスに対し、DFのネスタは苦しい体勢であったために中途半端なクリアしかできません。これを拾ったタッディが中央へ送ると、フリーとなったトッティはダイレクトのボレーで、それを爽快にゴールへと沈めました。個々につききれなかったミランの守備陣、序盤からアウェーのローマへ大きな先制点を与えてしまいました。

中盤の前方でじっくりとパスを回しながら窺い、時折オリベイラの個人技や突破が炸裂し、ジワリジワリと攻め立てるミランでしたが、リードを得て守備的に進める相手を崩すのは容易なことではありませんでした。ローマは中央をガッチリと固め、中盤の底に位置するピサロやデ・ロッシと連動しながら人数をかけて、個々が位置に捕らわれずにペナルティエリア前までのスペースを総力で潰していきました。
カフーも不在のミランは、サイドアタックでも幾度か左サイドからの突破を果たすにとどまり、手こずります。こうなるともう、ローマの守備ゾーンの前からミドルレンジでのシュートを放つしか手がありませんでした。

しかし、このミドルシュートが、今日の試合の主役の一つとなっていました。華麗なシュートが両チームのゴールへ飛び交い、長距離砲の競演を見ることが出来ました。
前半21分に放ったミランのセードルフの強烈なミドルの一撃は、ゴールバーの内側を弾きます。また37分にも、オリベイラからバーを直撃するミドルシュートが出ます。
ローマもよく多人数ながら効率よく配置され、ゾーンごとにラストパスの出し所をふさぐ守備の体制はよかったのですが、そこからもう一歩、このミドルの続発を放置せずに、中距離のあたりで自由にボールを持つ相手には厳しくプレッシャーにあたってほしかったですね。
結果として、ローマは外からの一発にやられました。後半11分、長距離ながらフリーなミランMFのブロッキ。前が詰まっていて、自身がノーマークであったことから、果敢にシュートを撃っていきます。これが豪快なスピードで、ややアウト回転をかけながらゴール右に突き刺さる、素晴らしい同点弾となりました。キーパー側からしても反応に限界があるロングシュートという、見事な一撃でした。

対するローマもペナルティエリア外から魅せます。トッティがゴール端のギリギリへ、キーパーがかろうじて弾くミドルシュートを放てば、途中出場のアクイラーニも強烈な中距離弾で脅かします。再びミランを襲ったトッティのミドルは、低く直線的で綺麗にゴールへ向かいますが、惜しくもポストに当たってしまい、得点には至りませんでした。

その後は共に、流動的なパス交換で進入してチャンスまで持って行こうとする、緊迫した展開で拮抗します。が、試合終盤のとあるプレーで唐突に均衡が破られました。
ミランは自陣内でボールを取り戻すと、セードルフへと渡します。そこへ、瞬く間に詰め寄るローマのトネットに、背を向けていたセードルフは気づきません。キープする間もなく奪われ、途端に残っていたローマ選手たちによる攻撃が再開されてしまいます。そこからアクイラーニ、左のマンシーニ、ゴール前中央のトッティへと一瞬のうちにボールは移り、最後はそのトッティがヘッドで勝ち越し点をもぎ取りました。奪取してから全てワンタッチでつなぐという、スピーディーで鮮やかな得点劇でした。
それにしてもセードルフ、ならびに簡単にクリアを選択しなかったミラン守備陣、少し不注意だったでしょうか。痛い失点です。

残された時間の少ないミラン、猛反撃に出ますが、ミスなども多くてそれが実りません。終了間際にセットプレーから、ゴールへ入ったインザーギのヘディングシュートも、インザーギ自身がわずかなところでオフサイドという判定を受け、これは得点には認められませんでした。

そして試合は終了。徐々に輝きを取り戻してきていた大黒柱のトッティが、ついに大きく躍動するというかたちで、ローマは強敵相手に大きな大きな勝利を挙げ、上位をキープしました。
一方のミランは一体どうしてしまったのでしょうか・・・。力なく、ついにリーグ3連敗。今日もジラルディーノは、積極的だったオリベイラとは対照的に、倒れてばかりいるような感じで元気が無く、現在のチームを象徴するような存在でした。もちろん復活には期待したいですが、もはや、しばらくは見限る時期に来てるのではないかな、そんな思いさえあります。何とか集中力をチーム全体で取り戻し、巻き返しを図ってほしいところです。

ミラン × インテル

2006年10月29日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第9節: ACミラン 3-4 インテル・ミラノ

重要なダービーの一戦を前に、FWの起用で頭を悩ませる両チームの監督。ミランのアンチェロッティ監督は、とうとう絶不調男・ジラルディーノをスタメンから外して、インザーギのワントップに攻撃を託す決断を下します。
インテルでは、自身の不調および起用方法で不満を募らせていたアドリアーノが、チームと本人双方の了承による、シーズン中での帰国という異例の措置で、ブラジルへ行ってしまいました。再合流時期は不明です。まあ、インテルにとっていま最大の悩みの種といえる存在であっただけに、これでかえってスッキリとして、チームがまとまってしまうかもしれませんけれどね・・・。シーズン途中から先発起用されて、それに応えるパフォーマンスを見せてきたレコバは、前の試合で肉離れの負傷です。このダービー戦は先発も有力視されていましたが、無念の欠場となってしまいました。2トップは結局クレスポとイブラヒモビッチ。結果を残してきたクルスもベンチスタートです。

そのワントップのミランですが、FWが1人な分、普段より中盤の選手の攻撃意識は高く見られましたが、決してバランスは良くはありませんでした。2列目に備えるセードルフとカカは、ともに縦への意識が強すぎて、中盤から多角的な組み立ては出来ず、ことごとくインテルの最終ラインに吸収されていってしまいます。結局はセードルフとカカによる何本かのミドルシュートと、試合開始直後に来たフリーキックからのカラーゼのビッグチャンス(これが決まっていたら、また試合展開はガラっと変わっていたのでしょうが)しか、攻撃機会を生み出すことが出来ていませんでした。

先制点はインテルです。前半17分、右後方からのフリーキック。ゴール前は守備をするミランの選手が乱立していましたが、それらをかいくぐって上がってきたボールにヘッドで合わせて叩き込んだのはクレスポでした。対角線上に位置するゴール右サイドネットに突き刺さる、見事なヘディングシュートでした。ミランはそのクレスポの前に重なっていた選手が実に3人。人数の多さをいいことに、少しマークが甘かったでしょうか。
さらに22分、今度は流れの中からスタンコビッチが鮮やかなミドルシュートを沈めて追加点を獲得します。シュート自体も秀逸でしたが、これに至るインテルのパスワークがまた素晴らしいものでした。シーズン序盤には出ていたぎこちなさが一切見られず、ワンタッチ、ツータッチで相手を全く寄せ付けないボール運びからペナルティエリア前まで進入に成功し、スタンコビッチがフリーで飛び込んでこれるというシーンを演出させました。
ミランから2度もゴールをこじ開けるという、最高のかたちでインテルは充実の前半を終えます。

後半が開始されると、普段は慎重派であるアンチェロッティ監督が思い切った作戦に出ます。ジラルディーノ、オリベイラ、マルディーニと3選手を一気に投入し(OUTはインザーギ、アンブロジーニ、ヤンクロフスキ)、2トップに戻して劣勢をひっくり返しに行きます。
ところが攻勢に出た矢先の後半1分でした。インテルにカウンターを許し、スタンコビッチが独走のドリブル。ラストパスを受けたイブラヒモビッチの突入に、ネスタのタックルも及ばず突破され、そのまま失点してしまいました。非常に痛い3失点目でしたね。今日のスタンコビッチ、90分運動量も高く決定機によく絡み、目覚しい活躍を披露してくれました。
しかしながら、このミランの交代は成功していました。前線に起点が見つかると、サイドからの攻撃も復活し、以降は圧倒的にミランのペースとなってきます。
失点直後の後半5分、左サイドの攻撃からこぼれてきたところをセードルフがミドルシュート。これが相手の選手に当たってゴールに吸い込まれ、追撃の1点となりました。これを皮切りに、ビエラからボールを奪取して最後にはジラルディーノが、コーナーキックのチャンスからはマルディーニがシュートを放つなど、攻撃が活発になってきます。
後半10分にはジラルディーノがヘディングでついに今季待望の初ゴール、かと思われましたが惜しくもオフサイドの判定で得点には至らず。ミランの猛攻は続きます。

しかし!数少ないチャンスをフリーキックというかたちで得たインテルが、またもそれをモノにしてしまいました。右サイドからファーへ放り込まれたボールが、前線に上がってきていたマテラッツィの頭のもとへ。これを豪快なヘディングで決めて、何と4点目。再びゲームを3点差とします。この時のマテラッツィは、いわゆるドフリーの状態でした。今日のミラン、セットプレーでの集中力が問われる、悔しい失点が続いてしまいます。
これで喜びに沸いたマテラッツィですが、問題児ぶりを発揮してしまいました。すでに警告を受けていたにも関わらず、得点のパフォーマンスでユニフォームをたくし上げて、禁止されているメッセージ付きのアンダーシャツを見せて回り、非紳士的行為として2回目の警告を受けました。ゴールもつかの間、そのまま退場です。唖然としてしまいました。退場の際には3点差の余裕からか、笑顔ものぞかせる始末。チームの主力としての自覚が足りないのでしょうか、開いた点差のなかでも、ミランの流れのままに残される10人のことをもっと考えてほしいところですね。確かに守備に得点にと個人技の高さが出ていましたが、それらを帳消しにして有り余る行為で、サポーターからも非難がなされるべきでしょう。
結果的に、数的不利となったインテルはミランに猛追されることになってしまいます。

左サイドバックのグロッソに代わって途中出場したブルディッソが、その空いた中央の守りを緊急的に担当します。そしてサネッティが引き出されるように、中盤も後方もその左サイドを駆けずりまわされる羽目になりました。その弱点をミランが徹底的に攻めます。カフーの攻め上がりが格段に増し、決定的なチャンスが再三ここから作られるようになってきます。
そのカフーからのクロスを、コルドバは懸命に競り合いますが、ジラルディーノが一歩勝ってヘディングしてゴール。今度こそ正真正銘の自身初得点を挙げ、試合を2-4とします。

10人になってからのインテルは、こうした事態に、何か手を打たなければならないことは明確でしたが、交代枠を1つ残しているマンチーニ監督はその行使に対して迷いに迷います。クルスが、ソラリが、スタンバイを終えて準備に入っていましたが、展開を慎重に様子見て、なかなか決断を下せません。ピッチではカフーが暴れまくっていて、キーパーのジュリオ・セザールの出番が頻発しています。また、どうもワンボランチで耐えていたビエラが負傷した模様で、足を引きずるようになっていました。クレスポも、もう疲労感一杯。どうするのでしょうか。
そしてようやく後半38分に実現した交代は、イブラヒモビッチを下げてDFのサムエルを入れるというものでした。もちろん守りきるという意図でのものですが、あまりにも遅かったですね。またビエラの状態は予想以上に芳しくなくて、全く動けずに、実質9人で戦っているような状態でもありました。結果的に何とか耐え忍んでいましたが、もしこの猛反撃を受けている時間帯にミランが追いつくことにもなっていれば、この対応のまずさは、マテラッツィと同格になるほどの戦犯扱いを受ける可能性があったのではないでしょうか。

結局カフーのサイド侵攻は最後まで食い止めることは出来ず、後半ロスタイム、彼に右サイドから上げられたクロスをキーパーが飛び出してパンチング。このこぼれ球を拾ったカカが、柔らかくキーパー不在のゴールへと流し込みます。懸命にかき出そうとしたスタンコビッチのダイビングも間に合わず、ついに1点差と迫るゴールになりました。ですが、わずかであった残り時間は無情にも流れていき、試合終了のホイッスル。インテルがこの激戦を逃げ切って制しました。

いや、色々とあった試合でしたね。観終わった後には疲労感が残りました。
派手な内容ではありましたが、両チームとも課題は結構残ったのではないでしょうか。布陣において入り方にどうも失敗していた感じのミランは、大きな武器である守備も大一番で脆さを見せて大崩れしてしまいました。インテルも後半からの相手の変化についていけず、大量得点差だけを頼みに、移り変わる試合展開を流されるままに過ごして、うまく対応することができませんでした。試合後にコーチのミハイロビッチへと突っかかるビエラが映し出されていたのも、今後心配ですね(何で負傷の俺を早く代えなかったんだ、ということなのでしょうか)。
全力を尽くした両チームには、休む間もなくチャンピオンズリーグが、週末の国内リーグ戦が待っています。ミランにとっては早くも2敗目を喫した国内リーグが、インテルにとっては1勝2敗でもう後のないチャンピオンズリーグが正念場となるでしょうか。

ミラン × パレルモ

2006年10月24日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第7節: ACミラン 0-2 パレルモ

ご存知の通り、今シーズンのセリエAは不正問題の処分により、4チームが勝ち点を減点されるというペナルティを受けて開始されています。ミランもそのチームの一つであり、マイナス8ポイントを背負って、前節まで3勝3分けながらわずか勝ち点4。本来ならば今回対戦する3位パレルモと同じ、勝ち点12同士のチームという上位対決の試合でありました。

前半のミランは、相変わらずの鉄壁なディフェンスラインの先に、献身的な守備をこなすガットゥーゾ、確かな技術でゲームをコントロールするピルロを軸に、危なげのない試合運びです。終始優位に立ちますが、最近の懸念材料である攻撃が今日も物足りません。シュートチャンスにからむのがインザーギだけで、中盤およびサイドバックの選手たちのダイナミックな攻撃参加は見られません。不完全燃焼のまま45分を終えます。

後半になると突然、自慢の堅守にほころびが生じてしまいました。パレルモが単純につないでスルーパスを放つと、出した先のブレシアーノのマークについていたネスタが、どうしたことかボールから離れていってしまい、やすやすとブレシアーノをフリーにさせてしまいます。これを簡単に決められ失点。連携ミスとのことだそうですが、思わぬかたちでパレルモが先制しました。
直後のシンブリチオの強烈ミドルがゴールポストを叩くほか、またも守備陣にミスが出て、ミランはピンチが続きます。

このパレルモの勢いの前にいよいよ尻に火がついたミラン、ようやく重い腰を上げるように全選手が攻撃意識を持つ感じになったさなか、監督が選んだ采配は左サイドバックの交代(ヤンクロフスキ→マルディーニ)でした。なんで攻撃的な選手の投入じゃないの!とツッコミを入れたくなりますが、これが功を奏したのかどうか、左に張るようになったカカを中心として左サイドからの攻撃が活発になってきます。
今日の見どころの一つのシーンも、そのカカから生まれました。カカが左45度より、豪快なミドルシュートを放つと、ボールは左ゴールポストを直撃。そのはね返ったボールを拾ったピルロもまたミドルを撃ちますが、今度は右ポストに当たって弾き返されます。珍しい現象ではありました。ミラン、運にも見放されます。

その後もカカが2度ほど決定機に関わるも得点は出来ず、後半の半ばになってガットゥーゾを交代で退けた(この交代の意図もよくわかりませんでしたが)直後のことでした。そのガットゥーゾの抜けた穴を突くようにして進入してきたブレシアーノが、強力なミドルシュート!これをキーパーのジダが弾いた後に、アマウーリが無人のゴールへと押し込んで、パレルモに大きな大きな追加点が入りました。
いま、攻撃力の低いミランにとっては致命的でした。後半ロスタイム、フリーキックのチャンスから、この試合まるで存在が消えていたジラルディーノがヘッドでゴールに叩きつけて、ようやく1点かとも思われましたが、直前のジラルディーノ本人によるプッシングのファールで無念のノーゴール判定。何とホームで2試合連続無得点と言う結果で、今季公式戦で初の敗戦となってしまいました。ちょっと今後が心配ですね。

不調なミランの前線も要因の一つですが、パレルモは全選手、特に中盤の5人が皆で懸命に相手を追いかけ、足がつる選手が続出するなどの気迫ある運動量が無失点につながったのではないでしょうか。最終ラインは体を張ってボールをブロックし続け、MF陣は自軍近くでのポジショニングもよく、シンプルで直線的な攻めを支えます。好印象のチームでした。このまま好調を維持して、ぜひUEFAカップも勝ち上がっていって欲しいですね。
ちなみにこの結果、インテルと並んでパレルモは1位に立つことになりました。

ローマ × インテル

2006年09月21日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第3節: ASローマ 0-1 インテル・ミラノ

昨シーズン、不正疑惑に関連したチームの勝ち点が剥奪されたことにより、結果的に1位になったインテルと2位になったローマ。今期は両者とも優勝候補と目されていますが、その直接対決が早くも実現しました。ライバルに対し先手を取るためにも大事な一戦です。

試合は、お互いが細かいパスをつないで相手陣内に攻め入る展開に。ローマのアクイラーニが自陣でボールを渡してしまった以外は、ミスらしいミスも少なく、集中力を感じさせるサッカーでした。
サネッティやビエラが豊富な運動量で引っ張ったインテルの中盤に比べ、ローマのMF陣はどこかルーズで、スペースを与えがちです。アウェーであるにも関わらず、ある程度自由に組み立てられたインテルの方がゴール前に迫るシーンを増やしていきます。
前半も残りわずかのところで、そのインテルが先制します。左サイドから見事に2人を抜いて切れ込んだクレスポが、角度の狭いところから強襲のシュートを決めました。今日のクレスポは勢いが良く、突破力を見せます。
後半にはゴールキックからのボールに、ゴール前へ走りこんだクレスポが倒され、インテルがPKを獲得します。ですがイブラヒモビッチの蹴ったコースは甘く、セービングされてしまい、この追加点のチャンスは逃しました。
後半36分にサネッティが放ったロングシュートは、キーパーも動けない豪快な一撃でしたが、惜しくもポストを直撃します。
90分ローマに決定的チャンスを与えなかったインテル、今期初の完封勝利でこの一戦を制しました。

ローマは前半途中出場したモンテッラがスムーズにゲームに入り、小気味良い動きでチームの流れを変えていたのですがね・・・。相方となった大黒柱のトッティはなかなかゲームに絡めず、今ひとつ迫力に欠けた攻撃となってしまいました。
インテルの各選手は、守備陣も攻撃陣もそれぞれが個人技をいかんなく発揮していましたね。イブラヒモビッチもPKを外してしまったとはいえ、良さそうなコンディションでした。
これで調子を上向けていきたいインテルですが、試合終了直前に2枚目のイエローを受け、退場処分となったビエラが次節出場停止です。またやっちゃいましたね。

インテル × サンプドリア

2006年09月17日 | サッカー: セリエA
06/07 セリエA 第2節: インテル・ミラノ 1-1 サンプドリア

カルチョスキャンダルによるライバルの脱落、および選手の大量流入で、一躍優勝候補の筆頭に立つこととなったインテル。今期ホームでの初試合です。
チャンピオンズリーグでは格下のスポルティングにまさかの敗戦を喫してしまいました。リーグ序盤の流れを悪くさせないためにも確実に勝っておきたいところですね。
今節もアドリアーノは控え。フィーゴ、トルドといった実力者も先発から外してのスタートです。

インテルの前半は右サイドからの攻撃が効果的でした。右サイドバックのマイコンは、後半は消えてしまっていたものの、フリーランニングで攻めをサポート。良い動きをしていました。
インテルは前半に2度の決定機を迎えます。しかし、それに対していずれも立ちはだかったのがサンプドリアGKのカステラッツィでした。
前半21分、マイコンによる中央の切り崩しからのイブラヒモビッチのシュートを一度セーブ、はじいた所に突っ込んできたマイコンへ臆することなく飛び出し、気迫のセービングをみせました。
38分にはイブラヒモビッチの落としをクレスポが至近距離からの右足シュート。これも体で食い止め、先制することを許しません。
一方、サンプドリアはさすがに戦力差が開いていて、アウェーの地でもあることから、なかなか崩すことはできません。可能性の低い、外からのミドルシュートを何本か撃つにとどまりました。

ですが後半開始直後、試合は思わぬ事態を迎えます。ロングボールから抜け出たフラーキをペナルティエリアでコルドバが倒してしまい、インテルは痛恨のPKを与えることとなりました。これをフラーキが思い切りよく真ん中に決め、何とサンプドリアが先制点を得る展開です。
これに対し、インテルはイブラヒモビッチや途中投入されたフィーゴがヘディングシュート。しかし、いずれもわずかに枠を外します。後半26分にゴールかと思われたビエラのシュートも、無念のオフサイドの判定でした。
負けることの許されないインテルは、前線の2人を残したままアドリアーノが出場します。イブラヒモビッチ、クレスポ、アドリアーノ。この3トップは迫力がありますね!
その直後のコーナーキックでした。サンプドリアはその重圧に押されたのか、オウンゴールで失点してしまいます。残り10分程度でしたが、耐え切れませんでしたね。
こうなると押せ押せなのはインテルですが、決定機を活かせずこのままタイムアップ。ドローという形で終わりました。

この試合、とにかくインテルで印象的だったのは、昨季から大幅に選手が入れ替わっているせいか、連携不足に見えるところなのです。パスやセンタリングが、出し手と受け手とでうまくかみ合わない。微妙なズレが生じてしまって相手に奪われ、結果的に支配するものの攻めあぐねているといった感じです。中盤でのパスミスも目立ちましたね。
イブラヒモビッチは良いコンディションでした。高い打点のヘッドにキープ力を併せ持ち、よくくさびのボールが入り、起点になっていたと思います。そこからのラストパスがもっと高い確率で成功するよう、周りの連動が効果的に働けば、さらに得点チャンスは増えていたのではないかな、そんな感想を持ちます。
タレントは十分揃っていますし、全員が力を出し切れる展開になれば、爆発も期待できるチームだと思います。試行錯誤を繰り返しながらチームのベストを見出し、イタリアサッカーを牽引していってもらいたいですね。