みのる日記

サッカー観戦記のブログです。国内外で注目となる試合を主に取り扱い、勉強とその記録も兼ねて、試合内容をレポートしています。

神戸 × 横浜FC

2006年11月19日 | サッカー: Jリーグ
2006 J2リーグ 第49節: ヴィッセル神戸 1-2 横浜FC

浦和、G大阪、川崎が優勝争いを繰り広げるJ1のトップ3。C大阪、福岡、京都が残留へと必死になって接戦しているJ1のボトム3。そして、それ以上に白熱し、J1昇格に向けてひしめきあう混戦となっているのが、現在のJ2の上位3チームです。今週末は、今さらながらなのですが、この昇格レースに焦点を当てたいと思います。

今季のJ2は、降格して来てJ1返り咲きを狙う、昇格の本命の一つであった東京Vが序盤から早々に脱落。同じく降格から1年でのJ1復帰を目標とする、柏が長らく首位の座を守っていました。そこへ第10節辺りから横浜FCが肉薄し始めてきて、中期以降からは神戸も優勝争いに参戦してきます。そして終盤になると、昇格候補はほぼこの3チームに絞られました。さらにその3チームの間では、わずかな勝ち点差での競い合いが激化し、順位も度々入れ替わる状況へ。自動的にJ1昇格が与えられる2位以内(3位はJ1の16位のチームとの入れ替え戦へ)を何としても目指したい各チーム。リーグも大詰めになる中で、依然として、たった1試合の勝敗の差で地位がひっくり返るというレースの中で争っています。

ここで、この3チームが、いかにして勝ち上がってきたのかを、簡潔ながらおさらいしてみます。

・柏レイソル
J2降格を受けて明神や玉田といった、日本を代表する選手たちが去っていったチーム事情でしたが、それらを埋めるべく行った補強の中で、神戸から獲得した1.5列目の選手であるディエゴが当たりました。ほとんどフル出場し、ここまでチームトップの21得点を挙げる活躍です。チームのカラーは、何と言ってもそのディエゴを筆頭とした攻撃力。攻めるときはチーム一丸で、とのスタイルの下で、開幕から点を取り重ねて連勝をマークし、首位に立ち続けました。岡山という、DFである選手までもが現在10ゴールをマークするなど、とにかく得点力が光ります。
ですが、その頂点の座にいる柏へ、二つの不安材料が襲います。一つは、何でもないようなミスを続発するなど、不安定な守備面です。失点は試合を重ねるごとに増えていきました。また、リーグも後半戦になるところで、有望株のFWイ・チュンソンを始めとして故障者が相次いで、選手の離脱が目立つようになりました。そして39節に、ついに首位から陥落してしまいます。
調子に波が出るようになってしまいましたが、中盤の底で冷静にコントロールできるMFリカルジーニョと、その前述のディエゴは相性の良さを継続中。彼らを軸に、勝てるときは大量得点と、圧倒できる迫力さは健在で、上位に食らいついています。

・横浜FC
第1節の敗戦でいきなり監督交代という、衝撃的な幕開けだった横浜FC。代役を任された前日本代表FWの高木監督は、指揮を執るのは初めてのことで、先行きは不安視されるものでした。しかしながら、守備意識を高めさせる体制でチーム作りが着手されると、それが功を奏します。何と高木監督就任以降の15戦は、9勝6分けの無敗。しかもその間には、Jリーグでの無失点の連続時間記録を塗り替えるという快挙までつく、狙い通りの堅守ぶりを発揮しての好発進でした。小柄ながらもセービングが光り、安定性を誇るGKの菅野を守護神として、落ち着きを持ってしっかりとしたディフェンスラインを形成。その守りが、リーグにおいて全チームの中で最小の失点数という、現在の横浜FCを象徴する武器となりました。そこからカウンターで仕掛けていくのがチームのスタイルです。この戦い方が徐々に各選手へ浸透し、長きに渡るリーグ戦を粘り強い内容で消化していって、40試合以上を経過した今日まで敗戦はたったの7という、「負けない」サッカーを貫いてきました。
ここに、カズや城、山口や小村といった、かつてスターだったベテランたちが融合し、裏への飛び出しを虎視眈々と狙う動きが特徴のFWアレモンが、途中加入でありながらエースの座を勝ち取っているという陣容です。

・ヴィッセル神戸
序盤は黒星が先行する日々を送り、低迷を続けていた神戸。しかし、チームは少しずつそのかたちを変化させていきながらベストを見出し始め、自分たちの持つ本来の実力を発揮していきます。最大の発見は、途中から起用されたMFの田中でした。一定の技術力を持ちながら、相当な運動量を誇って好守に幅広く貢献。中盤の底から自軍を支えて、チームの調子を急上昇させる立役者の一人となり、今では欠かせない存在です。
また、J2に降格しても神戸に留まった、主将のMF三浦の存在感が抜群です。果敢な攻撃参加でチームを勢いづけると、自身も直接フリーキックなどから驚愕のファインゴールを次々と決めていきます。間違いなく神戸のキープレイヤーで、上位浮上の原動力となりました。
フォーメーションは、Jリーグの中でも数少ない4-3-3。ワイドに開く展開で、積極的なプレスから素早い攻撃へつなげるという戦術が特徴的です。多方面からシュートを続発させる、前向きのサッカーを続けてきました。9月にはバクスター監督が突如として退任するというアクシデントもありましたが、スタイルの確立したチームは失速することなく、ついに39節で首位を奪うことに成功。以降も白星を重ねています。

さあ、三つ巴の様相が続くままに突入した、そのJ2の終盤戦です。ここに、最後の上位陣同士の直接対決が連続して待っていました。
1位神戸、2位横浜FC、3位柏という順位であった第47節には、柏対横浜FCが(3-3の引き分け)。続く第48節には神戸対柏(3-4で柏の勝利)が行われ、いずれも激戦という内容でぶつかり終えました。この2試合で、結果として順位は変わりませんでしたが、1位から3位までの勝ち点差はわずか2に縮まることに。
そしてさらに今節では、首位の神戸と、2位の横浜FCが対戦するというカードが組まれていました。

試合開始から、個々のマークを怠らずに神戸の良さを潰していく、守備の積極性が高い横浜FC。慎重にゲームを進めていく中、この日豊富な活動量を見せたMFの滝澤が敵陣でボールを奪うと、最終的に右サイドの小野に渡ってクロスボールが上がります。これを城がDFと競りながらもゴールへ押し込み、得点につながりました。前線での奪取からそのまま速攻という、神戸のスタイルのお株を奪う、貴重な先制点でした。

後半からは次第に、狙い通りのサイドに開くサッカーが出来始めた神戸は、その流れから左サイドにてファールを受け、フリーキックのチャンスを得ます。角度のないところでしたが、これを名手の三浦、相手ディフェンスやキーパーの頭上を鮮やかに抜ける、見事と言うほかにない会心のシュートを直接決めました!明らかにJ2クラスではないスーパーゴールを今日も披露してみせた三浦。一振りでチームを同点へと導きました。

重要な一戦ということもあって、運動量が途切れずに互角の両チーム。これを決着させたのは、またも横浜FCの右サイドからの攻撃でした。横浜FCのMF内田が上げたクロスは、ピンポイントでアレモンのところへ。そしてアレモンのヘディングは、一度はキーパーに弾かれるものの、こぼれ球を再びアレモンが蹴り込んで決勝弾とします。前節の不調もあってスタメンから外されたアレモン、途中出場の悔しさを振り払う一撃でした。

神戸の方こそやりたかったであろうサイドアタックから、2本の正確なクロスで勝負を決めた横浜FCは、得意の守備でも集中力を切らしませんでした。相手を苛立たせるほどのタイトなマークで、90分間、相手FWのパクや2列目の突破を防ぎ、中央の近藤へボールを入れさせません。そしてついには、前節の敗戦を払拭する、大きな価値のある勝利を呼び込みました。

この日も中盤が相手によって封じられて機能せず、武器であるトップのウイングにボールを託せずに、戦術を全うできぬまま終わってしまった神戸。ここに来て、柏、横浜FCとの直接対決に連敗するという痛い結果になってしまいました。サイドチェンジなども繰り出されることはなく、ダイナミックさに欠け、標榜するグラウンド全体を使ったサッカーは散発するだけに止まりました。敗北した柏戦同様、頼みは三浦のプレースキックだけだったというのも寂しいですね。引きずることなく残り試合、ここまで培ってきたスタイルは崩さず貫き通し、そして結果を出してほしいと思います。

この第49節、柏が勝利したことで、首位だった神戸は3位まで転落しました。しかしながら、1位に立った横浜FCは勝ち点86、2位柏は85、そして3位神戸は84と、まだまだお互い僅差で肉薄し、得失点差でも拮抗しています。残りたったの3試合、念願のJ1昇格が100%決まる2位以内に向けて、一つも取りこぼすことが許されない3チーム。果たして脱落してしまうのはどこなのでしょうか。J1同様に、目の離せない最終局面となっています。


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