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南英世の 「くろねこ日記」

徒然なるままに、思いついたことを投稿します。

ノーベル物理学賞

2014年10月07日 | 日常の風景
ノーベル物理学賞の一人に中村修二氏が選ばれた。
今から12年前に、彼の発見についてエッセーを書いていたのを思い出し、再掲載する。


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中村修二訴訟に寄せて (2002年2月11日)

 青色発光ダイオードの発明者である中村修二氏(現カリフォルニア大学教授)が、もとの勤務先である日亜化学工業(本社・徳島県)を相手取って訴訟を起こした(2001年)。中村氏はこの訴訟で、青色発光ダイオードの特許権が自分に帰属することの確認と、開発に対する相当の対価として20億円の支払いを求めている。中村氏はまた、開発者には基本的な製法にかかわる特許権の千分の1の帰属権があると主張している。


 中村氏は1979年に徳島大学大学院を修了して日亜に入社。その後89年から青色発光ダイオードの開発を手掛け、年に360日は出社して実験に没頭した末、ようやく開発に成功し、1993年に商品化された。それまでの赤と緑の発光ダイオードとあわせて光の三原色が揃ったことにより、あらゆる色の光を作りだすことが可能になった。

 携帯電話がフルカラーになったのも、中村教授の発明のおかげである。赤色発光ダイオードは例えば車のブレーキランプや、電気製品のスイッチがオンになっていることを示すランプなどに広く使われている。今後、青色が加わったことで、日本の信号機なども、発光ダイオードに切り換えられていくことは間違いない。そうすれば、信号機の電球を毎年取り替える費用もかからなくてすむし、それに何よりも、エネルギーの節約になって、地球温暖化を防止する意味でも貢献度は大きい。

 ところで、中村教授が訴訟を起こした理由は何か。
一言でいうなら、技術者に対する待遇改善である。中村氏によれば、日本の技術者はあまりに冷遇されすぎているという。日本の技術者の年収は高くてもせいぜい1千万円から2千万円。どんなに会社に貢献しても、報奨金はたかだか100万円程度である。中村氏自身も、青色発光ダイオードの開発によって会社からもらった報奨金はたったの2万円だったという。青色発光ダイオードは日亜化学に年間500億円の売上増をもたらしている((2001年12月期)。発明によって日亜が手にした利益と比べて、いかに低いか。


 技術立国日本が、これからも世界のフロントランナーであり続けるためには、個人の成果に報いる風土作りが不可欠と中村教授は説く。これまでは、企業の中で発明した特許は、当然に会社のものとされてきた。会社は、発明者を「出世」という報奨で報いてきた。発明者もそれで納得させられてきた。

 しかし、こうした日本の企業風土に多くの技術者が不満を持つようになってきている。終身雇用制度が崩れていく中で、優秀な技術者はますますヘッドハンティングされていくことになろう。優秀な人材がアメリカに流れていくようでは将来の日本はない。中村教授の造反は、こうした日本の企業風土に対する建設的な批判でもある。

 もちろん、お金だけがすべてではない。しかし、努力したものも努力しなかったものも同じ報酬というのでは合点がいかない。同じことが日本の教育界でもおきてはいないだろうか。

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この思いは今も変わらない。
先日の新聞で、

「政府は、社員が仕事で発明した特許を「社員のもの」とする特許法の規定を改め、無条件で「会社のもの」とする方針を固めた。これまでは、十分な報償金を社員に支払うことを条件にする方向だったが、経済界の強い要望を踏まえ、こうした条件もなくす。企業に有利な制度に改まることになり、研究職の社員や労働団体は反発しそうだ。」(朝日新聞9月3日)

とあって、びっくりした。
こんなことをすれば、日本の技術者はみんな海外に流れてしまう。
中村修二訴訟の意義を改めて思った。


かつて、中村修二氏が語っていた。
外国の研究者と話をしていると、
「そんなに仕事をして、会社からもらっている報酬はたったのそれだけか "Slave Nakamura"」

その後中村氏は、カリフォルニア大学教授に引き抜かれてしまった。







                         
 

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