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バーネット「秘密の花園」

2023年07月18日 | 海外の作家


訳・土屋京子
光文社古典新訳文庫
解説・松本朗
476頁


映画を観て原作にも興味を持ちました
バーネットは「小公子」「小公女」は子どもの頃読みましたが本作は未読(のはず)

インドでコレラにより両親を亡くしたメアリは英国ヨークシャーの大きな屋敷に住む叔父に引き取られ、そこで病弱な従兄弟のコリン、動物と話ができるディコンに出会います
3人は長い間、誰も足を踏み入れたことのなかった「秘密の庭」を見つけ、その再生に熱中していくのでした



主人公のメアリは母親からも父親からも愛された記憶がなく、いつも不機嫌な仏頂面をしていて、性格は横柄で我儘、気の強さだけが取り柄といえば取り柄、という最悪のお嬢様

もうひとりの主人公コリンも親の愛情を知らぬまま屋敷の奥に引き籠って暮らし、自分は病気でもうすぐ死ぬのだと思い込んでいて、ことあるごとに激しい癇癪を起して使用人たちを困らせます

誰からも愛情を注がれず痛ましいほど歪んで育った二人の子どもたち
大きなテーマは「傷ついた心が自然の中で癒され生気を取り戻していく」
メアリとコリンが秘密の花園にこっそり通って自然との触れ合いを重ねながら次第に笑顔と健康を取り戻していく姿は感動的です
二人の『恢復』に大きな役割を果たすのは、メアリの世話役のマーサ、マーサの弟ディコン、マーサとディコンの母親スーザン
気難しい家政婦長のメドロック夫人も映画ほど堅物ではなくてホッとしました

束の間、別世界をのぞかせてもらえる幸せな読書時間でした
映画との違いも、どちらが良いなどはなく興味深かったです

光文社古典新訳文庫は大人に名作読み直しのチャンスをくれるシリーズですね




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3 コメント

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「秘密の花園」 (紫陽花)
2024-08-26 00:31:42
メアリもコリンも我儘いっぱいに育った嫌な子供で、同じバーネットの「小公子」のセドリックや「小公女」のセーラとは大違いですね。

自分以外の人間との付き合い方すらろくに知らず、自分の意思が通らなければ癇癪を起こすしかないような子供たちです。

しかし、彼らもまた、自分たちでそうとは知らなかっただけで、身勝手な大人たちの被害者だったんですね。

メアリがヨークシャーらしい率直さを持ったメイドのマーサや、メアリと同じように不機嫌な顔をした庭師のベン・ウェザスタッフや可愛いコマドリと出会い、動物や植物と心を通わせるディコンと知り合って、少しずつ変わっていくと、そんなメアリと出会ったコリンもまた、少しずつ変わっていきます。

そして、2人の子供たちの変化は、大人や屋敷全体をも変える力を持っていたのです。
この小説は、とても大きな「生きる力」を描いた物語だったんですね。

子供の頃読んだ時は、ムーアや広大な屋敷の情景に憧れ、庭、特に秘密の花園の情景にドキドキしたものですが、今回再読して、とても印象的だったのがディコン。

やはり動物や植物といった生きているものと心を通わせる人間に悪い人間はいないですね。
そして、マーサやディコンの母親スーザン・サワビーの包み込むような愛情の温かいこと。

子供の頃に読んだ時ほど、メアリが嫌な子に感じられず、逆にその生い立ちにしては、しっかりしているのに驚かされました。
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narkejpさん (こに)
2023-07-19 08:06:56
このシリーズや講談社文芸文庫なんか単行本より高かったりしますものねぇ。
若い人にこそ読んで欲しいのですが紙の本では難しいのかなぁ。

メアリが屋敷に着いた季節から花が咲き乱れる季節へ移り変わる様子は、なるほど、北国にお住まいの方のほうが実感出来ることでしょう。
かなり遅まきですけど読めて良かったです。
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古典新訳文庫のありがたさ (narkejp)
2023-07-18 17:25:35
バーネット『秘密の花園』いいですね〜。季節が変わり春が到来すると、一斉に花が咲き花園が活気づく場面など、北国の実感として理解できます。ところで、古典新訳文庫のありがたさ。子供の頃に読んだ名作を大人になって新鮮な気持ちで読み返すとき、別の角度からの気づきがあり、嬉しく興味深いものです。ちょいと値段が高いけれど、出版業界の構造変化で翻訳者も翻訳だけでは生活できずたいへんなのだそうで、仕方がないのかも。
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