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奥田英朗「東京物語」

2021年08月15日 | あ行の作家


集英社
2001年10月 第1刷発行
2004年7月 第3刷発行
342頁

オリンピックを描いた作品を集めたアンソロジー「作家たちのオリンピック」の投稿記事で奥田英朗「名古屋オリンピック」が収録されていることを知り、読んだことがない、と思っていたのが初出が「東京物語」で、な!なんと!家の本棚にあるではありませんか!!
というわけで再読いたしました
「春本番」以外綺麗すっかり忘れていたので初読といってもよいでしょう…

主人公は
大学受験にことごとく失敗し、東京の予備校に通うため上京した1960年生まれ、名古屋市守山区出身の田村久雄
彼が初めて東京の地を踏んでから30歳を前にするまで
時系列はバラバラの6つの物語が収録されています

「あの日、聴いた歌」1980/12/9
ようやく入学した大学を中退
21歳の田村が働くのは社長を含め社員5人の零細広告代理店
理不尽な扱いにも耐え、俺はデキるんだ、と走り回る日々を送っています
そんな中で飛び込んできたのはジョン・レノン殺害のニュースでした

「春本番」1978/4/4
予備校に通うため上京した田村、18歳
付き添いの母親を早々に帰し、一人を満喫するはずが…
この広い空の下、自分には知り合いが誰もいないことに愕然とし、同じように進学で上京している友人の下宿を訪ねようとしますが、住所を頼りに電車を降りるもその街の規模に圧倒され迷うばかり
ようやく捜し当てた一人と一緒に後楽園球場の外でキャンディーズ解散コンサートの歌声を聞きます

「レモン」1979/6/2
一浪後、無事大学入学を果たした田村は演劇部に入部
ろくに勉強もせず部の仲間たちと飲み歩いてばかりです
驚きの方法で巨人軍に入団した江川卓初登板の日
泣かせてしまった女子部員に謝るため走り回る羽目に陥ります
ICカードも無い時代、いちいち切符を買ってJR(当時は国鉄)や地下鉄を乗り換えて大変だったことでしょう

「名古屋オリンピック」1981/9/30
父親の経営する会社が倒産の危機に直面
名古屋にオリンピックがくれば仕事が増え持ち直せると期待する実家の両親でしたが…
実際、ソウルに負けました
田村の家族同様、名古屋に決まっていると思っていましたので「どうして?」と思ったのを覚えています
ロビー活動で負けていたのと、国の後押しが無かったのが原因とか
そりゃ無理でしょ(笑)
アスリートの大切なメダルを噛んだバカ市長もいるし…ってこれは2021年の話
笑ったのは名古屋弁のイントネーションについて
「なにィ」は『お爺』と同じで
「なにがァ」は『チョコバー』と同じで
確かに(*´▽`*)

名古屋オリンピックは来なかったけれど父親の会社は何とかなりそうです

「彼女のハイヒール」1985/1/15
1983年に独立しフリーランスのコピーライターとして働く田村
母親の計略に騙され同じく名古屋出身で東京で働いている女性と見合いをすることになります
相手の女性も無理やり見合いをさせられて我慢ならないという空気をまき散らしていて最悪な雰囲気にもかかわらず母親が去った後、2人で時間を過ごすことになります
今日は家でラグビー日本選手権の決勝を見る予定だったのに何てことだ!
彼女に振り回されながらも同郷の女性も悪くないか、と思うのでした

「バチェラー・パーティー」1989/11/10
1987年、事務所を構えて2年が経ち、30歳目前の田村
バブル真っただ中、得意先の郷田のお陰でルノーを乗り回せるような暮らしをしています
仕事仲間が明日結婚式を挙げるので、前夜に男だけのパーティーを開く予定でいるのですが、郷田から無理な電話が入りパーティーに間に合いそうにありません
さらに恋人がどうしも今晩会って欲しいと言ってきます
そして、パーティーの主役である花婿が姿を現さないというのです

テレビでベルリンの壁崩壊のニュースを見ながら「青春が終わり、人生は始まる」と呟く仲間に三十男の顔をみるのでした



単行本なので多分2004年に読んだのだと思います
田村と自分はほぼ同年代なので「あの頃はそんな時代だったかな」と思うところはあるのですが何せ東京で独り暮らしをしたことも無く、大いなる田舎・名古屋を出て東京で暮らしたいという気持ちが分かる以外は遠巻きにみている感じで読み終わりました
当時も同じ印象を持ったのでしょう
読んだことをすっかり忘れている原因は多分そこだろうと思います
そしてまた何年か経って「読んだっけ?」となるのではないかしら
定期的に本棚を整理していますがこれを残していた理由は?
それすら分かりません( ゚Д゚)



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4 コメント

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Unknown (todo23)
2021-08-15 15:54:08
私の感想を見ると
「下手に気取ったり、斜めに見たりせず、ストレートに頑張る人々を気持ちよく描いた青春グラフィティです。」
と、ほぼ絶賛です。
http://todo23.g1.xrea.com/book/keyword.html?key=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E7%89%A9%E8%AA%9E
しかし、読書は時を選びますよね。
もう一度読んだらどんな感想なのか?
こにさんもそうなのかもしれませんね。
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todo23さん (こに)
2021-08-16 14:26:28
奥田英朗作品は大体好きなのですが、これは入り込めませんでした。
中学の同級生で大学から東京に行った男子がいて、彼が帰郷の折、東京は都会だ、名古屋は田舎だ、と本作の主人公が言うのと同じ言葉を聞かされていたのも要因かも(*_*)
その子は就職で地元に戻ったのですが海外勤務が長く、またもや日本は狭い云々を聞かされる羽目に…
返信する
いますよね~ (todo23)
2021-08-16 16:18:16
いますよね~、そういう人。
私が勤めていたMazdaの最寄り駅は広島駅から2駅離れた渡線橋も錆び付いたような古い駅です。
「そもそも駅からしてこういうのだからダメなんだ」なんて言う人も居ました。でも天下のToyotaの人と話をすると「うちは田舎の会社ですから」と笑っておられました。
環境のせいにしても詰まらないと思うのですがねぇ。
返信する
todo23さん (こに)
2021-08-17 14:09:27
そうですよね~。
Mazdaさんがダメなんて思いませんけど!
OL時代、取引先の三菱重工業名古屋航空機(今は名前が変わってるはず)の担当者さんがやってきて「こんな綺麗なビルで働きたかった~」なんて笑ってらっしゃいました。
あの頃、大手製造会社はどこも移動は自転車とかお昼は食堂に走るとか、大きいけれど古くさい感じがしましたけど日本を牽引している、みたいな自負があったかと。
何だかんだいっても自分が属している組織や地域を愛してるんですよね^^
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