世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

ワイルド・ソウル 垣根 涼介

2009年06月30日 | 移民関連の本や映画
ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)
垣根 涼介
幻冬舎

このアイテムの詳細を見る


日本人のブラジル移住を題材としたサスペンス小説。ブログの読者から紹介をいただいた。

外務省や移住斡旋団体によってほぼ「騙された」というに等しい状態で南米に移住をし、未開地で家族をなくし、文明とはかけ離れた生活を強いられた移民たちの世代を超えた怒りと怨念が大きな事件を引き起こすといもの。

以前に「移民の譜 東京・サンパウロ殺人交点 」という小説についてコメントを書いたが、この本と同様、日本政府の現在までの誠意に欠ける対応と補償が移民の憤りを増発させ、抗議の行動に走らせるというストーリ展開。何千人何万人という移民がさらされた苦境を思えば、そこに明らかな理由があるかぎり、どんなに大規模な事件を起こしても、彼らの思いを十分に晴らすことはできないようにも思えた。

本書は、「サルになる」とまで描写された、未開地に送られた移住者コミュニティーが没落過程をかなり残酷に描いている。以前に移民小説をいくつか紹介したが、その中でもおそらくもっとも困窮した移民の状態を描いているように思える。未開というより、原始時代の生活を強いられたことがわかる。

日本で戦中、戦後に起きた移住をめぐる惨事が、時代を超えて現在多くの途上国で繰り返されていることも忘れて欲しくない。何千何百万という人々が毎年より豊かな国を目指して移住している。多くの人々が斡旋業者に騙されたり、移動の途中で命を失ったり、目的地で過酷な労働を強いられたりしているのだ。同じ経験をしてきた国として、これを他人事として黙殺することはできない。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。