世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

移民国家ニッポン―1000万人の移民が日本を救う (続き)

2008年07月31日 | 移民関連の本や映画
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移民国家ニッポン―1000万人の移民が日本を救う
坂中 英徳,浅川 晃広
日本加除出版

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移民政策が「育成型」を目指すということは、日本にやってくる外国人に日本語や必要な技術・教育を習得してもらおうということだ。これは裏を返せば、育成を必要としない単純労働者の受け入れを容易に認めないという立場であり、それは本書でもある程度明確に述べられていた。現在の研修制度の下で行われているような短期還流(出稼ぎ)型の単純労働者の受け入れは「労働力」の受け入れは認めても、それを提供する「人間」の受け入れに至ず、それは経済的にみると合理的なシステムだとしても、社会的・人道的に問題が派生するリスクが高いと考えられる。

しかしながら、出稼ぎ型受け入れからの脱却はつまり受け入れコストの増大を意味することは明らかだ。そうすれば雇用主からみた外国人労働者の受け入れは
メリットは低減する。「育成」要素のない受け入れを認めないとするならば、単純労働者を抱える雇い主は質の悪い語学研修などを形骸的に導入する可能性が十分ある(研修制度自体がそうであったように)。これを阻止するためにも、何が育成要素となるのか、しっかり基準を定める必要があろう。たとえば養成の成果を確認するための試験の実施などが有効な対策として挙げられる(前掲の韓国EPS制度でも韓国語の試験が導入されており、合格しないと受け入れが認められない)。


本書で十分に触れられていない問題に家族統合の問題がある。外国人がは定住権を取得すると、新たな配偶者、両親、扶養の必要な家族の本国からの呼び寄せをはじめることはよく知られた事実である。日本でも80年代に受け入れたベトナム難民の家族呼び寄せが現在まで断続的に続いている。すこし事例は違うが、中国残留日本人の帰還の例をみてもわかるように、一人の人間の移住はその家族を巻き込み事実上数人から結果的には数十人の移住となることがある。すこしでもよい住環境を家族に提供したいとおもうしごく当然の流れから家族統合が進む。

アメリカやオーストラリアなどの移民受入国は、毎年驚くような数の移民を受け入れているが、少なくとも3-4割は家族呼び寄せのカテゴリーでやってくる。家族呼び寄せは定住移民の家族と暮らす権利であり、語学能力。年齢、学歴などの恣意的な選別は当然のことながら行われない。極端な見方をすれば彼れらには、日本語習得の意思などは問われないため、母国の文化や宗教をそのまま持ちこみ受け入れ先でまったく隔離された独自のコミュニティーを形成させてしまう恐れもある。また家族統合でやってきた移民は先進国の例をみると失業率も高い。移民を受け入れてから、定住が始まる5-10年先ごろから、この家族統合が非常に盛んになると考えられる。初期受け入れの対策とは別のコストが加算されるのである。よって、移民受け入れによってもたらされる恩恵とかかるコストを長期的な視点から十分に試算・検討することが、受け入れの是非や規模を決定する上で必要となってくる。







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