世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

海外出稼ぎと最低賃金

2008年09月23日 | その他世界の移民政策
海外出稼ぎ労働者の賃金体系は受入国の定めるところによるのだが、受入国の国民と差別のなく同水準に、というのが移住労働者の権利条約の定めるところだ。最低賃金厳守はもちろん外国人労働者にも当てはまる。

しかしながら、労働者の主要受入国が(中東やASEAN諸国)がこの国際条約を批准しておらず、労働者の最低賃金の設定も行っていない。出稼ぎ労働者の独占市場である家事手伝いとなると、インフォーマルセクター扱いとなりほとんどの国で最低賃金設定がおこなわれていないのが現状だ。

アジアからの出稼ぎ労働者市場の抱える最大の課題が「労働者買い叩き現象」。出稼ぎをしたい労働者(供給)が働き口(需要)に対して無限に近い形で存在するため、給与水準の減少に歯止めがかからない。ブローカーの暗躍から生まれる情報の非対称性の問題も背景にある。中東で働く家事労働者の中には月給50ドルというようなあまりにも残酷な例もすくなくない。また給与未払いのケースもあとを絶たない。

業を煮やした送り出し国がその対策として近年はじめたのが、送り出し国みずからが最低賃金を設定するというもの。最低賃金以下の給与を設定する労働契約書に基づいた海外就労には許可を出さないというものだ。これは特に問題となっている家事労働者に限って現在適応されている。フィリピンでは月400ドル、スリランカでは190ドル、インドは250ドルを目指していたが断念したようだ。送り出し国は受入国でこの最低賃金水準の厳守を徹底することはもちろんできないので、あくまで目安としての設定だ。

日本の研修制度はどうであろうか。以前の投稿で、アジアの送りだし国が研修制度を「研修」とは捕らえておらず、あくまで労働者を送り出すというスタンスをとっていることに触れたが、研修生も最初の1年は最低賃金が払われない。日本の賃金水準が中東やアジア諸国のなかでも突出して高いので、黙っているというのが実情か。


経済連携協定(EPA)に基づいてインドネシアからやってきた看護師・介護士。現在は研修中だが、数ヵ月後には受け入れ先の医療・介護施設で働き始める。彼らに支払われる給与は最低賃金以上という合意の下で個別に設定する、との説明だが、実際には最低賃金を下回っているケースもあるらしい。これでは研修制度の二の舞となってしまう。最低ラインとして、少なくとも、最低賃金遵守だけは徹底してほしい。


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4 コメント

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最低賃金 (xtc4241)
2008-09-25 17:07:16
migrant_akさん
こんにちは(いま25日pm5:00頃です)

最低賃金の問題、理想と現実の乖離が激しいですね。

特に日本の場合、理想論といおうか、建前と本音のところがミエミエです。
僕は思うのですが、日本の賃金水準が高いのであれば、
日本の正社員をベースにして、それよりも15%くらい安くする。
それは言葉のハンディや居住などの世話をするわけだから、それはコストとしてみるということがあってもいいような気がします。
そのかわり、使い捨てではない、労働環境を受け入れ側もつくる。そうすることで定着率も高めていく。
といったような、ほんとうに相互のことを思って取り組むといった方法があるんじゃないかと思います。
これも理想論でしょうか?
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Unknown (ブログ管理者)
2008-09-26 22:36:03
コメントありがとうございます。

ご指摘のとおり、この問題はもっと議論が必要ですね。つまり①安く雇えるというのが外国人労働者を雇うというメリットであるということは明らか、②ではどこまで安く雇えるのか、最低時給を守ればいいのか、賄い分は差し引いてもいいのか、他のコストを差し引いていいのか、超過勤務などどこまできちんと徹底させるのか③「安さ」を売りにする外国人労働者に脅威を覚える国内労働者をどのように守っていくか、共存していくか。問題は山積しています。

労働者のもつ技術によってストーリーも大分異なりますよね。ご提案の15%は非熟練労働者にあてはまるということでしょうか? 浮かせた15%福利厚生や外国人の子女教育などに充てるというのはよい案ですね。地方自治体がそういう基金を持つというのもよいとおもいます。

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やはり「賃金格差」ですか (kouma)
2008-09-28 02:05:04
こんにちは。移民問題を勉強しています。

今春の「移民庁」設立騒ぎ以降、考えていました。

つまるところ、少子高齢化という「脅し文句」によって、安い労働力(美名のものでの医療・介護職とはいえ)の導入を図ろう、という現実ですね。

送り出す側は、案外、そういう現実をわきまえているみたいですね。

さて、本当に少子高齢化の日本が、その解決策として、外国人労働者を積極的に受け入れるメリット、デメリットの勘案、その上での政策判断がなされていないようです。

欧米各国では、社会的デメリットばかりが目立ちますが。

低賃金労働者を外国から引き入れて、コストを下げる経営手法は、やはり社会的(自国民にも、外国人にも)に恨みを買うばかりだと思っています。
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Unknown (ブログ管理者)
2008-09-28 23:27:56
コメントありがとうございます。

少子化もそうですが、介護人材不足というのも具体的な不安材料ですね。

もうすでに外国人を受け入れ始めた日本は鎖国論のような話にはならないでしょう。ただ、欧米のように孤立マイノリティー化する移民集団を作らないためにも、どういう人をどれだけ受けれるのか、そしてどのような社会サービスを提供するのか、そのような点を議論していかなければなりませんね。

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