みかえる族の漫遊記 ~小林直生ブログ~

イスラム教とキリスト教

 今回、ヨルダンを旅してイスラム教の多彩な文化に触れる事が出来た。9.11以降、何かと誤解されているのが、アラブであり、イスラム教である。アメリカが世界中に蔓延させた、イスラム即テロリスムのイメージを払拭するにはあと一体何年かかるのだろうか。

       

 ヨルダンの首都アンマンのホテルの天井。メッカの方向を示すステッカーが貼ってあった。敬虔なムスリム(イスラム教徒)は日に五回メッカへ向けて祈りを捧げる。


 イスラエルと違って、ヨルダンは平和で温厚な人々の国だ。エルサレムを歩くときは常にスリを意識していなければ、必ず何かを奪われるし、しつこい土産売りから逃げるのも大変だ。極貧のパレスチナ人と裕福なユダヤ人が常に対立しているイスラエル。その緊張から目を背けることは出来ない。

 しかし、ヨルダン王国では、泥棒やスリ、そして、しつこい土産売りから身を守る必要はない。元パレスチナ難民であるヨルダン人ガイドは、我々は「誇りと名誉」を重んじるから、安全な国になった、と云っていたが、何処かにドロボーやスリはいるのだろうが、一度も身の危険を感じることはなかった。

       

 ヨルダンでは本当に子どもらしい子どもにたくさん出逢った。ここは古城カラック、少年グループが見学に来ていた。ピースなどというバカなことをしないのが良い。ペトラでは、駐車している車の中から、17歳の少女に「ハロー」と声をかけられ、しばらく英語で話しをした。「ヨルダンは素晴らしい国だね」というと、自分が褒められたかのように大感激して喜び、目を輝かせていた。こんな17歳の少女はもう日本にもドイツにもいないだろう。


 イスラム教には多くの戒律がある。ユダヤ教と共通のものもあるが、ユダヤ教が常にイスラム教を見下ろしているように、ユダヤ教徒は、ムスリムの作った料理を食べてはいけない、と云うタブーがある。しかし、イスラムにはそんなタブーはないので、「兄弟」であるユダヤ人の作った料理を食べることが出来る。ユダヤの祖先はイサク、アラブの先祖はイスマエル、二人ともアブラハムの子だ。しかし、イサクは正妻サラの子、イスマエルは妾ハガルの子である。ここに問題の原点があるような気がする。

 イスラム教のタブーを少しだけ紹介しよう。他人に自分の靴底を見せることは、その人を侮辱することである。だからアメリカ人のように机の上に足を載せて向かいに座っている人と話をすると云うことは絶対にあり得ない。だから、後ろ足を上げて小便をする犬は「不浄」の動物として嫌われている。犬としての存在が認められているのは、羊の番犬だけだ。だから犬をペットとして飼うことはあり得ない。

 男同士は握手してキスをして挨拶するが、女性と握手してはいけない。女性の前では、敬意を表すために右手を胸に当てる。人間は弱いものである、だからモスクで礼拝中、隣に女性がいると意識を神に集中出来ない、だから、モスクでは男女分かれて礼拝をする。

       

 カラックに来たサウジアラビアの妻達。滅茶苦茶に暑いサウジアラビアから、「そんなに暑くはない」ヨルダンに避暑観光に来ているサウジアラビア人を多く見かけた。ヨルダンはかなりリベラルなイスラム国だが、サウジアラビアは超厳格だ。


 人間は弱いものだ、だから人妻に邪な思いを抱かぬように、既婚女性は顔と身体を覆うべきである。アンマンの街で女性下着の店を多く見たが、ど派手で凄くセクシーな下着ばかり売っていた。黒装束の下は凄いことになっているようだ。

 イエスは預言者としてムスリムから尊敬されている。「福音書」はイスラムの「準」聖典でもある。しかし、イエスが折角頑張ったのに、人類は良くならなかった。だから、神は新しい預言者ムハマンドを選び、最も新しい啓示を授けた。これが「コーラン」でありイスラム教である。だから啓示宗教の中でイスラム教が一番新しく、人類にマッチしていると、ムスリム達は考えている。

 イエスはムハマンド同様に「神の僕」(アブダラー)である。決して「神の子」ではない。だから「三位一体」はない。

 偉大なイエスが十字架に架かって死ぬはずがない。神はイエスを守って、エリアやムハマンドのように、生きたまま昇天させたに違いない。十字架で死んだのはイエスの弟子か兄弟の一人に違いない。だから復活もあり得ない。

 ムスリムは議論好きだから、以上のようなキリスト教の根本問題について、永遠と議論することが出来るが、いつまで経っても平行線で終わるだろう。しかし、宗教の違いを乗り越えて、ムスリムと「友」になる事は出来る。イスラムは本来、寛容を非常に重んずるからだ。ムスリムが最も嫌うのは、「無神論者」である。しかし、それが何であれ、宗教心があれば、彼らと親友になることも可能だろう。キリスト教徒の多くが寛容を再び持つようになれば、世界平和は夢ではないのに、と思った。
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