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ab Cuore 

帰国した時ノンポリだった私が見たのは≒無政府状態の日本。
ショック、怒り、希望をこのブログに書きました。

4/6投稿 僕の恋人は60歳 9話

2025-04-06 10:10:22 | あほ


4/6  投稿

僕の恋人は60歳 9話


僕はフランスに行きたかった。

僕にフランスへの出張なんて絶対にないと思っていた。

だけどそれがあった。


僕は第二外国語にフランス語をとった。

理科系で第二外国語にフランス語を選ぶ人は少ない。

気まぐれに選んだだけなのだけど、


突然杉下部長に

君はフランス語ができたよねと言われたのだ。

できた?に返事をするのは迷った。

お世辞にもできたとは言えなかったからだ。


僕は正直に第二外国語にとっただけです

と答えた。


英語でもいいのだけど、現地語を少しでもできるのはいい。

3-4か月後にフランスに行くかもしれない。

少し、フランス語をやっておいてくれ

と言われた。


この忙しいのにフランス語か!

悲惨な気持ちになった。

フランスに行く出張を期待していたことなんかすっかり忘れていた。


金曜日、福子さんに会いに行こうと午後、考えていてハッとした。

俺って、なんてバカなんだろう?

絶交のチャンスじゃないか。


僕はケーキを持って福子さんの家に行った。

福子さんは僕を見るなり

なにかいいこと、あった?と聞いた。


僕、フランスに行きます。

と言ってから部長が行くかもしれないと言ったことを思いだした。

それで言いなおした。

福子さんは僕の企みをわかったみたいだった。

そう、じゃ毎週会えなくなるかもねと言った。

どうして?

だって、どこか学校に行くなら金曜日が落ち着くんじゃないの?

福子さん、僕にと言いかけると

福子さんは駄目と即座に言った。

そういう習い方はよくないわ。

フランス語の専門学校にはどこも速習科があるから

会社が払ってくれるはずだから速習科に行きなさい。

それは断定的だった。


次の週、僕は杉下部長にパンフレットを見せて相談してみた。

速習科は結構高く、自分で払うのは無理だった。

しかも時間も毎日3時間とか、仕事と並行させるのは

かなりハードだった。


杉下部長は相談してみると言った。

僕のパリ出張はそれから話が続かなかった。


英語でもいいけどと部長は言ったし、

僕自身あまり気にならなかった。


僕はもう30歳近くになるというのに

ちゃんとした恋人を持ったことがなかった。


ある金曜日、福子さんちで夕食を終わって

居間でコーヒーやコニャックを楽しんでいたとき

福子さんがひろちゃん、友達のお嬢さんなんだけどお見合いしてみない

と言いだした。

橋本由美子さんって言うのだけど、25歳で・・・・

と続けたので、僕はブランデーグラスを置いて福子さんを静止した。


福子さんはコーヒーのカップを置いた。

ごめんなさい、お付き合いしていた人いたの?

と言った。


僕はそんな人いませんと言ってから、いるかもしれないと呟いてから

福子さんのソファの横に座った。


その頃、僕は福子さんのことで頭がいっぱいだった。

僕はちょっと前、福子さんにひっきりなしに話しかけている自分に気がついた。

自分を冷静にするために、福子さんの何がいいんだろうと自問した。


僕はまだ福子さんの年齢は知らなかった。

でも40代かと思っていた。

ひと回りくらい違うかと考えていた。


僕がどう言い出したらいいのかちょっと口をもぞもぞさせていたら

福子さんが切り出した。


私、年下って駄目なの。

ひろちゃんの気持ちわかっていたわ。

すごくうれしい。

でも、ひろちゃん、私、もうすぐ還暦なのよ

どうやってひろちゃんと男女関係になれる?


僕は福子さんの年齢がそんなに上だったことに

思わず、福子さんを見つめてしまった。


驚いた? 妄想から冷めた?

僕は不覚にも涙が出てしまった。


それは福子さんが目の前にいるのに急に手の届かない遠くに

行ってしまった悲しみ、絶望の涙だった。


僕は福子さんに飛びついた。

福子さんをぎゅーと抱きしめたままワンワン泣いた。


福子さんは僕に抱きしめられたままになっていてくれた。


あの時、福子さんは持ったことのない大きな息子が

母親に失恋でも打ち明け、母親の前だけで泣くことができる息子を見守る、

そんな気持ちでいたのかもしれない。


少し僕が落ち着くとティッシュペーパーを数枚よこした。


僕は鼻をかみながら、まだ流れる涙のまま

僕、もう福子さんに会えないのと聞いた。


会えるわよ、いつでもいらっしゃい


帰り道、僕はなんて子どもなんだと思った。

帰宅すると誰もいないアパートの暗い部屋に座りこんだ。

そして万年床に横になるとスーツのまま寝込んでしまった。


翌週、僕は部長にフランス出張を言いつかった。


僕は出発の前日に福子さんに電話した。

そして福子さんにフランスに出張で行きます。

帰国したら伺いますと話した。



僕は直行便でシャルル・ド・ゴール飛行場に着いた。

会社は僕のために土曜日の朝着く便を用意してくれた。

土日で時差の調整ができるよと部長に言われた。


初めての外国。

僕は日曜日にシャンティイに行った。

シャンティイの城に行く観光バスがあった。

僕は城に着くと、日本人のガイドに行ってグループをさった。


僕は福子さんのダニエルの住まいを探した。

地元の観光ガイドのオフィスに行った。

ダニエルの城はわりと簡単に見つかった。

幸運にもタクシーがあった。

僕はシャトードカミラールと言って、

30分もたたず到着した。

タクシーは待っていてくれなかった。


城の門は開いていた。

高い鉄の門だった。

中に入ってみた。

さっきのシャトーほど大きくなかったけど

三角の塔がいくつか立っている立派な城だった。


建物に行く砂利道を歩いて行った。

人影はなかった。


中をみられるとガイドセンターは言ったけど

どこにキップ売り場があるのだろうとキョロキョロしていた。

突然、後ろからムッシューと声がした。


振り返ると栗色の髪の男性がいた。










































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