secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

トランスポーター(V)

2010-01-01 17:07:19 | 映画(た)
評価点:63点/2002年/フランス

監督: ルイ・レテリエ/コリー・ユン

その運び屋は、まるでルパン三世。

フランスの南部の街ニースで「運び屋」をしているフランクは、仕事に厳しい男だった。
きっちりとルールを守り、契約を遵守した。
そんな彼はある日50キロの荷物を運ぶように指示された。
荷物の内容を絶対に知ろうとしないという自分の掟を破り、中をあけてしまう。
なぜなら明らかに人間のようなものだったからだ。
中には女が入っており、隙を見せたため逃げられてしまう。
何とか見つけて届けたが、その帰り、愛車のBMWを爆破されてしまう。
再び依頼主の元へ戻ったフランクだったが、思わぬトラブルに発展してしまう。

リュック・ベッソンが制作を担当するフランス発のクライムアクションである。
言わずもがな、という印象がある。
すでにシリーズ化されており、「3」まで公開された。
僕の周りの人に、さんざん勧められたので、とりあえず観ることにした。
「むやみに人を信用してはいけない。こと映画に関しては。」
という母親の言葉を痛烈に思い出させる映画であった。(嘘)

とにかく、この映画を観ていない人で、この手の映画に特に惹かれたりしない人は、観なくて良いだろう。
もし、観てしまって絶賛される方は、僕とは違う感性の持ち主だということだろう。
僕は、残念ながら、あまり楽しめなかった。
ジェイソン・ステイサムはけっこう好きなのだけれども、この映画でなぜシリーズ化を図ろうとしたのか、ちょっとわからない。

それなりに楽しめる、けれども、これがおもしろいなら「96時間」では心臓が止まるだろう。
う~ん。残念な作品ではある。

▼以下はネタバレあり▼

この映画はシリーズ化には向かない。
なぜなら、シリーズ化するにはあまりにもキャラクター性がはっきりしないからだ。
この映画がおもしろくないと感じた理由もそこにある。
話の流れは痛快だが、どこに感情移入して良いのか判らない映画になってしまっている。
リュック・ベッソン、だからやめとけばいいのに、という典型的な映画である。

まず、主人公のキャラクター性が甘い。
甘すぎる。
彼が大切にしているものがいったい何なのか、全くつかめない。
自分自身にルールを課している割には、そのルールを次の仕事ではあっさり破ってしまう。
映画の冒頭で「ガソリンが足りなくなるから、一人降りろ」とまで言い放つ冷酷な仕事人だったはずが、中身が袋詰めの人間だと判ると急にしおらしく人間的な感情を見せ始める。
しかもそれが無粋な男であればそうも思わなかったが、中に詰められていたのはちょっとかわいらしい童顔の女の子。
このあとラブシーンを演じることになる彼女(スー・チー)は、ちょっと、低年齢過ぎない? というくらいの女の子である。
だから、女には優しくするけれど、男には冷徹な軟派な男なのかと疑ってしまう。
手のひらを返したような彼の変貌ぶりには閉口する。
契約遵守、名前を聞かない、荷物あけないという三つとものルールを破ってしまう彼はもはや仕事人というキャラクター性は一切なくなる。

しかもニースにある大豪邸の設定も甘すぎる。
警察に睨まれながらなぜ言い逃れできるのか、理解できない。
単純なナンバー操作によって逃げおおせてしまうフランス警察はもはや木偶としか言いようがない。
すべて現金で持ち歩いているような説明をしておきながら、家を焼かれても全然うろたえない彼の素性はますます知れなくなっていく。

もちろん、彼だけが不安定な人物描写に揺れ動いているわけではない。
対する敵も、その娘であるという「荷物」も、全くキャラクター性が見えてこない。
特に敵が巨大組織であることは派手な武装からも理解できるが、彼らが本当に非合法的な商売をしているかどうかの確信が最後まで得られない。
ラストで救出される中国人たちを見て初めて、あ、やっぱりそうだったんだ、と納得する。
それまではライ(荷物だった女性)が嘘(ライ)をついているのかもしれないと疑ってしまっていた。
(もちろん、そんな展開はあり得ない訳だが)
そんな状況の中で、敵を憎むなど到底できない。
よって物語に感情移入できるはずもない。

もちろん、敵がどれだけ悪党であろうと、仕事をしっかりこなすという意味においてはフランクは文句を言わないはずだった。
それが、どんどんライにのめり込んでしまい、大きな悪を倒すまでに成長してしまう。
もはや感情移入どころの騒ぎではない。
中国の組織たちがどれだけ悪いかも判らないのに、ライに言われるがまま言いなりになっていくフランクは、単なる人の良い屈強なにいさんだ。
フランス版必殺仕事人です、と紹介されても違和感はない。
どこが運び屋なのか、説明してほしいくらいだ。

しかも、トラックを追うのにセスナまで「徴用」すると、もはや僕にはルパン三世にしか見えない。
後ろから銭形のとっつぁんも追いかけてくるし、結局はその美人と成就することもない展開を想像すると、ますますルパンに見えてくる。

これだけ人気のあるシリーズなのに、これだけキャラクターが甘いとはちょっとびっくりだ。
びっくりついでに、次作もみてやろうかと破れかぶれなことを考えている…。

さすがリュック・ベッソン。
フランスのヒットメーカーにして、駄作の王である。

※ ファンの人はすみません。けんかを売る気はありませんので、あしからず。

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