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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ジュラシック・パーク

2020-04-16 12:51:38 | 映画(さ)
評価点:90点/1993年/アメリカ/127分

監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:マイクル・クライトン

映画史に残る、最高傑作。

ブラント博士(サム・ニール)は著名な考古学博士で、恐竜の化石から鳥類への進化を先進的に唱えていた。
そんな彼の元へ、一人の実業家が訪れる。
3年間の研究費を出資するから、新たに作るテーマパークの視察をしてほしい、とのことだった。
意味もわからず、コスタリカの離島に連れてこられた博士は、そこに巨大な恐竜たちが闊歩する信じられない姿を目の当たりにする。

このパークに訪れた方は、きっと驚くほどの感動とスリルを味わうことができます。
このパーク以前と以後で、全く人生を変えてしまうほどの体験です。
私はこの映画を鑑賞したとき、まだ幼い年齢でしたが、はじめて映画館で「早く立ち上がりたい、もう帰りたい」と思いました。
あまりのスリルに、私は怖くて仕方がありませんでした。

登場人物たちと同じ目線で物語を楽しめる映画は、実はそう多くありません。
この映画はその体験をさせてくれる、希有なものです。
この映画を見終わったとき、もうもはや元に戻ることはできません。
それくらいの衝撃的で、決定的な映画であると断言できます。

CGやシナリオ、科学的な見地などこの映画は映画史に残る「スタンダード」を作り出しました。
スピルバーグ監督が成し遂げた、大きな業績の一つといっても過言ではありません。
これほど映画が好きになったのは、この映画がきっかけなのかもしれない、そう思わせる私を育てた映画の一つです。
個人的にも歴史的にも、大切にしたい映画ですね。

見ていない方は、さあ、是非体験してみましょう!

▼以下はネタバレあり▼

さて、皆さん、当パークはあらゆる感動を与えてくれる作品になっています。
今から少しだけ当パークの魅力と、巧みな仕組みを少しだけ確認していきましょう。

この映画がすばらしいのは、何といっても原作にある「恐竜に対する畏怖と尊敬」がしっかりと描かれていることです。
これ以降の作品、とくに最近のシリーズ「~ワールド」にはそうした恐竜に対するリスペクトが全く感じられません。
ただ、怖いだけの、人間を襲うだけのモンスターとして描かれてしまっています。
そのモンスターをコントロールするという恐れ多い描写もあります。

しかし、この映画には、「ひたすら恐竜が好きなんだ」という愛情が随所に見られます。
単なる見世物や金儲けの道具としてみている人間は、速やかに画面から退場していきます。
しかも、結構残酷な描写で。

草食恐竜も、肉食恐竜も、ただ怖がらせたり、スリルを味わわせたりするために置かれません。
もし恐竜が現実に復活したらどんなにうれしい、心躍る出来事だろうと、そういう想像力をかき立てられるように仕組まれています。
だからこそ、考古学者のブラントも植物学者のエミリーも、常にまなざしは「畏怖」なのです。

ただ、怖いだけではありません。
しっかりとその怖さを、倫理観に基づいて描いているということも、この映画がすばらしい点です。
だから、先ほども指摘したように、恐竜に対してよからぬことを考えている登場人物は恐竜のえさになってしまいます。
子どもも、大人も楽しめるような、パークに仕上がったのです。

恐竜の琥珀からの復活とテーマパーク。
この組み合わせを考えたのは、言うまでもなく、マイクル・クライトンです。
そのアイデアと、正しい映像化によって、映画として昇華したといえるでしょう。
私はSF作家としてもっとマイクル・クライトンが評価されてもいいのではないかと、生前から考えていました。
みなさん、原作も読みましょう!

さて、この映画のすばらしいのは、それだけではありません。
監督のスピルバーグの倫理観は、映画制作の教科書にされるほど、緻密に計算されています。
この映画は、必ず伏線を張っているということです。
TREXが登場する前に、必ず振動を水で伝えます。
これによって「今から登場するよ」という期待とスリルを与えます。
毒をもつディロフォサウルスも、最初のツアーの時は登場しないのに、ネドリーを殺すときにはその説明が効果的な解説となります。
もちろんヴェロキラプトルの知能の高さや狩りの説明も、違和感なく挿入されています。
こういうような伏線が、物語の安定性を高めて、「怖いけれどおもしろい。有り得ないけど、本当に起こりそう。」というような印象を与えてくれます。

大人にも子どもにも楽しめる作品になっているのは、こうした「意識されることがないけれどもうまい」仕組みがあるからです。

現在では古く感じてしまう映像も見受けられますが、いつまでも色あせることのない、教科書のような作品です。
これがユニバーサル・スタジオの目玉アトラクションであることも、その汎用性、完成度、人気の高さがうかがえると思います。

残念ながら「2」以降は原作の思いが失われて、単なる人間を襲うクリーチャーとして扱われてしまうのが残念です。
もう一度いいましょう。
私は、この映画が、大好きです!

(2020/04/21補足)

冒頭、ブラント博士が必死にヘリコプターの風から化石を守ろうとするシーンがある。
その対比として、ヴェロキラプトルから逃げるとき、パークの中央にある化石を足場にして粉粉にしてしまう。
こういう伏線との呼応が物語のリズムと安定感を作る。

当然これは、ブラント博士の、往来の物語(パークに行く前と帰るとき)であることを観客に印象づける。
登場人物の変化が明示されることで、物語の始まりと終わりが提示されるわけだ。
当たり前のことを積み上げることが、良作につながることを示す、好例だ。

ちなみに、アマゾンプライムで見直してから上の記事は書いた。
だが、子どもの頃に一度映画館で鑑賞した経験があるので、タイトルに(V)は入れていない。
ま、誰も気にしないだろうが。

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