★ネタバレなし★
荒木飛呂彦だったか、誰かが勧めていたので即購入を決めて、アマゾンのカートにつっこんだ。
そのまま本棚の隅で横たわって積ん読になっていたのが、この「掏摸」だ。
中村文則は、ほとんど知らない。
どこかで聞いたことがあったのは、きっと芥川賞を受賞したからだろう。
ほとんど予備知識無しで読み進め、ほとんど一日で読み終わった。
私にしては珍しい。
読み始めたタイミングが良かったのかもしれない。
また、この作家のスタイルが読みやすかったのかもしれない。
語り手「僕」は、タイトルにあるように、スリを生業にしている。
人の物を盗るスリ特有のスリリングな様子が上手く表現されている。
人の物を盗る違和感と、大きな物語を作り出す木崎という男とのやりとりが話題の中心だ。
描かれていないものと、描かれているものとの叙述されている分量があまりにも違い、その落差がユニークだ。
「普通」の小説のような、安定感や安心感がないのは、「僕」がスリをしているという設定にあるのではないだろう。
むしろ、描かれる叙述がどこか不釣り合いで、どこか欠落している。
その感じが作品のスタイルと、雰囲気を作り上げている。
「王国」というもう一つの中編小説と「姉妹」関係にあると作者も書いているのでできるだけ早いタイミングで読もうと思う。
芥川賞作家を「新しい」なんていう評価はおもしろくない。
もっと追求して世界の切り取り型のおもしろさを読んでみたい気がする。
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