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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

エクスペンダブルズ

2010-10-18 22:31:03 | 映画(あ)
評価点:63点/2010年/アメリカ

監督・脚本・主演:シルベスター・スタローン

豪華アクションスターによる一方的な虐殺映画。

政府や軍隊が手を出せない事件や紛争を見事に解決する傭兵集団「エクスペンダブルズ」。
彼らは特殊部隊を経験したことがある猛者ばかりだった。
そんな彼らの元に、一つの仕事がはいる。
ウィード島という島の独裁政権を崩壊させるために、偵察に向かったリーダーのバーニー(シルベスター・スタローン)とリー(ジェイソン・ステイサム)だったが…。

シルベスター・スタローンに、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、ドルフ・ラングレン、ブルース・ウィリス、そしてなんとアーノルド・シュワルツェエネッガー。
これだけのアクションスターが一同に集結した作品が出ると聞いたときは、小躍りするどころか、失笑した。
しかし、見ざるを得まい。
これまでCGに頼らずに映画制作を心がけてきたスタローンの極地とも言えるこの作品に応えるには、当然劇場しかない。
ということで、公開当日に見にいった。

「ロッキー」「ランボー」シリーズを終わらせたスタローンが、果たして新シリーズを打ち出せるのか。

上のキャスティングに心が惹かれないなら、きっとおもしろみの半分も味わえないだろう。
つまり、年齢層は高めのはずだ。
現在公開中の洋画があまりいいものが少ないので、候補に入れてみればどうだろうか。
ちなみに、僕はポイントで見たのでロハだった。
お金を出して、忙しい時間を割いてまで見るか、う~ん、悩みどころ。

▼以下はネタバレあり▼

冒頭の人質救出のシークエンスでこの映画が駄作であり、しかも超B級映画であることは理解できただろう。
いや、見る前からわかっていたのだ。
きっと、見る人間すべてが理解していたはずだ。
そもそも、往年の大スターたちを一同に集めてしまうと、こうなってしまうことは、誰もがわかっていたはずなのだ。

簡単な構図だ。
味方であるエクスペンダブルズのメンバーは7人(戦うのは6人)、すべて名の通ったスター。
シリーズ化をもくろむなら、当然だれも「殺せない」。
そうなると、この映画は名もない敵をひたすらに殺しまくるというナチスも真っ青な虐殺映画二ならざるを得ない。
誰1人欠けることはできないのだから、やられるのは相手に違いないのだ。
そんな単純な構図が、この映画を破壊的に退屈にしてしまった。
それどころか、コメディへと昇華させることによってタランティーノの「イングロリアス・バスターズ」も顔負けの残酷映画へと進化した。

各キャラクターの登場シーンでこれだけ笑える映画も少ない。
スタローンは早撃ちの名手で、殆ど抵抗できない犯人に向けて自慢の早撃ちを披露し、ドルフ・ラングレンはヤク中で引退勧告。
ジェット・リーはベトナム系という設定のわりには今の中国人のように守銭奴キャラ。
唯一の期待のジェイソン・ステイサムは行きずりの女にうつつを抜かすという今までの作品に立脚したかのような違和感がなさ過ぎる男。
シュワちゃんが登場したと思ったら、もう帰って行く。
傑作なのが、そのシーンはあきらかに別撮りしたのではないかというくらい、映像に違和感がある。
殆どカメオ出演なのに、出演依頼の時に断られたと言うから、いつまでも「お高く」とまっているのだろう。

特にドルフ・ラングレンのキャラは、もうネタとしか言いようのないくらい実生活を彷彿とさせてしまう。
(いや、彼が実生活で麻薬をやっているとかそういうことではなく、映画界からの干されかたを考えるとね)
ここにジャン・クロードバンダムが出てくれば、僕は声を上げて笑ったかもしれない。
いや、出てこなくても爆笑していたが。

ミッキー・ロークが仕事の斡旋をするマネジメント(ドラッカー真っ青)をしているのに、「俺は戦えなかった」と告白すれば観ている観客は「そうやったんや」とちょっと笑える。
無駄にスタント無しで撮ったという「死の飛行」もリアリティのかけらもない。
燃料をばらまいて爆破!という小学生のようなチープなアクションに、抱腹絶倒だ。

とにかく全てが笑いのネタなのかと疑うくらい、自虐あり、皮肉ありのオンパレードだ。
しかも、アンチCGを掲げているわりには、肉体美を一切さらさないし、早送りされまくって何をしているのかいまいちわからない。
ラストの将軍宅を攻略するシークエンスでは、あらゆる種類の攻撃と爆破を見せて、殺しまくり。
トロピック・サンダー」級の残酷さだ。
自慢のマシンガンを持ったヘイル・シーザーのシーンは「セントアンナの奇跡」で観た虐殺シーンそっくりだ。
そして、ラストでドルフ・ラングレンが生きていたというのは、本当にお約束を理解していてくれて嬉しい限りだ。

そのわりには無駄に熱くみせようとしている。
「何かと戦わなければならない」というテーゼはまさにスタローンの今の姿を匂わせるが、完全な空回りだ。

完全に期待はずれな作品になってしまったが、僕としてはまさに期待通りの作品だった。
新シリーズとしてやっていくなら、ヒットしなくてもどんどん作って欲しい。
勿論、この一作目のノリを踏襲してもらわないと困る。

次に誰をキャスティングするのか、それがとても気になる。
とりあえずブルース・ウィリスとシュワちゃんは、常にカメオ出演で笑いを取るとして、スティーブン・セガール、ミラ・ジョヴォビッチ、ジャン・レノ、ヴィン・ディーゼル、メル・ギブソンあたりが候補となるだろうか。
セガールが敵役で、瞬殺されるシーンなど、観たいと思わないか。
ザ・ロック(ドゥエイン・ジョンソン)や、トム・クルーズも捨てがたい。
これからの成長性を感じる映画であった。

最後に邦題の候補がパンフレットに載っていた。
結局原題と同じ「エクスペンダブルズ」におさまったのだが、一つの映画の邦題にこんなにいろいろなタイトルを考えているんだと、ちょっと感動した。
目についたものは以下の通り。

「マッスルブリケード」
「七人の傭兵」
「ブラック・エンジェルス」
「地獄のプロフェッショナル」
「出口のない筋肉」
…こりゃヒットしないわな。

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2 コメント

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ジェット・リーの映画「海洋天堂」 (まっぴ)
2010-11-19 19:10:16
menfithさん、はじめまして。突然の紹介で失礼します。


ジェット・リーがアクションを封印して自閉症の息子との情愛を演じる映画「海洋天堂」(原題)が今年中国・香港・台湾などで公開されたのをご存じでしょうか。

ジェット・リーは脚本に感動し、ほぼノーギャラでこの映画への出演を決めたそうです。

この映画の音楽担当は、久石譲さんです。医学監修には日本人も関わっているそうです。


しかし、この映画は娯楽作ではないので興行的に不安があるのか、日本での公開はまだ決まっていません。

そこで、この映画の日本公開を目指して『ジェット・リーの「海洋天堂」を日本で観たい!』という活動を以下URLのサイトで行っていて、ネットで賛同メッセージを募っているそうです。
http://oceanheaven.amaterasuan.com/
もしよろしければ、ご協力お願いいたします。

(注…私はこの日本公開活動の運営者ではありません)


映画「海洋天堂」のストーリーです

水族館に勤める王心誠(ジェット・リー)は、妻を亡くして以来、自閉症の息子の大福を男手ひとつで育ててきました。
大福は海で泳いだり、水中の生物と触れ合うのが好きでした。
大福が22歳になり、心誠は将来の息子の自立について考えていました。
そんな中、心誠が末期がんに侵されていることがわかり…


予告編動画(英語字幕付き)
http://www.youtube.com/watch?v=F6MGxP2_oi8
返信する
コメントを書けばいいですか? (menfith)
2010-11-21 17:39:19
管理人のmenfithです。
年末だからなのか、ちょっと慌ただしくなっています。
更新が滞っていて申し訳ありません。
とにかくマラソンを終えるまでは身動きがとれそうもありません。
(といいながら、本業が忙しくそちらの練習もままならないのですが)

焦らずやっていきますので、ちょこちょこと覗いてやってください。

>まっぴさん
コメントありがとうございます。
返信が遅くなり申し訳ありません。

紹介していただいたブログの方へ書き込みにいけばいいですか?
僕も見てみたいですが、こういう活動をしたことがないので……。

近々書きに行きます。
返信する

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