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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

パッセンジャー

2017-04-03 11:59:13 | 映画(は)
評価点:58点/2016年/アメリカ/116分

監督:モルテン・ティルドゥム

宇宙よりも、到着まで90年よりも、ジェニファー・ローレンスの〈  〉。

近未来、宇宙船「アヴァロン」は、第二の故郷となるコロニーへ向けて130年間の旅を続けていた。
あるとき、冬眠ポッドの故障で、乗客で、エンジニアのジム(クリス・プラット)だけ目覚めてしまう。
混乱するジムだったが、コロニーまでは90年の時間があった。
なんとか冬眠に戻ろうと考えるが、方法がない。
地球に向けてメールを送ったが、すでに30年の歳月が経っており、55年後しか返信はこない。
途方に暮れるジムだったが、ある女性(ジェニファー・ローレンス)と出会う。

CMや映画の上映前に予告編が流れ、フェイスブックでも予告編が流れ、全然興味が無かったが、例によって時間の関係上、みることにした。
Yahoo!のレビューでもそこそこだったので、「もしかしたら、ひょっとしたら、万が一」と期待して見にいった。
平日昼間なのに、お客さんは大入り。
期待(人気)の高さを垣間見た。

映像や音楽はやはり映画館でなければ楽しめないだろう。
ゼロ・グラビティ」のような、迫力の映像、というほどではないが。
ラヴ・ロマンスが好きなら、楽しめるかもしれない。
ちなみに、アン・ハサウェイの「パッセンジャーズ」とは何の関係もない。

▼以下はネタバレあり▼

SFではない。
ラヴ・ロマンスの映画である。
ここがかなり重要なポイントで、それを間違えると、頼んでいた料理と出てきた料理が違う、と批判することになる。
私はそのことにかなり早い段階で気づいたので、それほどストレスに感じることはなかった。
いや、むしろ、この監督の性向がかなりゆがんでいるのではないかということが気になってしかたがなかった。

予告編ではかなりうまく「ネタバレ」しないようにしてある。
それは昨今の映画では珍しいくらい、良心的な予告編だろう。
そのネタバレとは、オーロラ(ジェニファー・ローレンス)は事故で起きたのではなく、ジムが起こしたということだ。
90年の歳月を一人で待つ。
いや、待てるわけがないので、ただ余生を死ぬまで過ごしていく。
何も残らない、何もないこの宇宙空間でたった一人。
その孤独に耐えられないと感じたとき、ジムは一人の女性を起こすことで、その孤独から逃れたいと考えるようになった。
その選ばれた女性がオーロラだった。

「二人」が事故に遭ったのではなかったのだ。
この映画の最大のドラマはここにある。
後半でどかーんとか、ふんわりとか、びゅーんとかなるが、その辺りのSF的要素はあまりどうでもよい。
説得力を出すための一つのレトリックだ。
演出といってもいい。
ジムがオーロラを選び、その選ばれたことをオーロラが知ったとき、どのような振る舞いができるか、ということがこの映画の重要な部分になっている。

だが、物語としての見せ場はこれで終了してしまう。
これ以上の面白さはどこにもない。
「私なら」という要素はそこで終了してしまう。
それ以降は「確かにそうなるわな」と思わせるための伏線が次々引かれていくだけだ。

その一つが衝突事故によるエンジン・コアの故障だ。
この事故によって、二人はつながるしかないという特殊な状況に陥るのだ。
そしてゴールイン。
二人は余生を仲良く過ごしましたとさ。ちゃんちゃん。

私は、後半この映画がかなり楽観的で、無邪気で、無垢な映画に成り下がってしまったとおもった。
そして、そうなるように仕向けていたことに気づいた。
アーサーが「二人にウソはない」という言葉を聞いて、オーロラに全てを明かしてしまったシークエンス以降は、全く面白みに欠けてしまった。
それが監督も分かっていたのだろう。
このまま筋書き通りに、何の工夫もなく勧めていては、「観客は結末を納得することはできない」と。

だから、あらゆるシチュエーションを利用して、ある描写を執拗に描く。
それは、ジェニファー・ローレンスの乳だ。
谷間を強調した服を着せて、あらゆる服装でその谷間を強調する。
プールに入っているときに無重力、なんていうとんでもない見せ場まで用意する。
宇宙空間で浮遊する二人が、全然見せ場にならずに、そして面白みも迫力も緊張感も感動も呼ばないのに、わざわざ薄着でコアの修理に向かう。
ジムが倒れて必死に担ごうとするシーンをわざわざ入れる。
その他、「ああ、こんなに素晴らしい女性なのだったら二人で余生を過ごしてもしかたがないな」とサブリミナル的に観客に訴え続ける。

私は二人が小説を完成させて、二人だけの世界を満足して「旅」を終えたという結末を知らされたとき、「そんなわけあるか!」と思った。
年老いて、互いに魅力がなくなり、子どもも産めない(産んでも新しい地は踏めない)二人だけの世界で、60年も生きられるだろうか。
そんなわけあるかい。

だが、この映画はラヴ・ロマンスだ。
だから、女性が魅力的であれば、それもまた成立するのだ。

はいはい、ジェニファー・ローレンス、かわいいよ。
というのが、この映画の最大の見所なのである。

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