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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

レインマン(V)

2010-02-14 22:57:47 | 映画(ら)
評価点:86点/1988年/アメリカ

監督:バリー・レヴィンソン

自閉症の兄とのこころの交流を描いた名作。

車の輸入業を営む小さな会社の社長チャーリー(トム・クルーズ)は、休暇中に疎遠になっていた父の訃報を聞く。
父の財産を受け取ろうという魂胆で葬儀に出席、遺言書の内容を弁護士に聞かされてが愕然とする。
彼には財産の殆んどが分配されず、他のものにわたることになっていたのだ。
彼は誰が受け取るのかをどうしても知りたいと思い、受取人の代理人の医師が勤める病院にその足で向かった。
医師はその重い口を一向に開こうとしなかった。
しかし、
父親の乗っていた車を見て「乗ったことがある」と言う中年の男性が現れる。
そのことを医師に問いただすと、その中年の男性は、チャーリーの実の兄・レイモンド(ダスティン・ホフマン)だと知らされる。
自閉症で施設に入れられたレイモンドに大金が入るというのだ。
自身の会社の不振もあり、チャーリーは金のためにレイモンドを引き取ろうと裁判を起こすことを考え、兄を連れ出す。

少年時代、自らが難読症であることを告白したトム。
そのトムがどうしても出演したいとして出た映画がこの「レインマン」であるという。

▼以下はネタバレあり▼

簡単なストーリーは上のとおりだけれど、難しい映画だ。
考えさせられる映画は数多いがこの映画もそのひとつだといえるだろう。
僕は自閉症にあまり詳しくはないが、自閉症には様々な症状があるみたいで、どういう病気であるかを一概に言うのは難しいようだ。

ダスティン・ホフマン演じるレイモンドは、抜群の記憶力をもつが、一方で、自分の生活習慣を狂わされることを極端に嫌う。
また相手の言うことをきちんと理解することが困難である。
こうした症状をもつレイモンドに対し、はじめは疑いの目で接していたチャーリーだが、子どもの頃口ずさんでいた歌が、レイモンドとともに歌ったことのある歌であることを知り態度を軟化させて、兄弟であることを強く意識する。
この心の交流がとても丁寧に描かれているために非常に感情移入しやすく、重たいテーマをうまくみせている。

裁判のために兄を連れ出し、会社に戻ろうとするチャーリーはやがて父の真意を知ることになる。
かつて兄と同居していたが、チャーリーに危害を加える恐れがあると父親は思い、レイモンドを施設に入れることを決めた。
チャーリーは幼く、その存在を完全に忘れていたが、子どもの頃不安なことがあるとずっと話し相手にしていた、「レインマン(雨男)」という男が、空想ではなく、「レイモンド」という兄の名前を上手く発音できなかったから間違えて覚えていたことを知る。
そして、なぜ父親がレイモンドに殆んど全ての財産を与えようと思っていたのか、という疑問に対する答えが、チャーリーへの配慮によって一方的に施設に入れてしまったという、罪悪感からだったということがわかる。
ずっと病院にお金を振り込み続けた理由もそのためだったのである。
この隠されていた事実を、チャーリーは知り、父親と兄と自分という関係を捉えなおすことになる。
この展開が時間をかけて、丁寧に描かれている。

ただ単に「親子の絆は大事だ」とか「自閉症をもつ人だって同じ人間なんだ」みたいな、聖人のような安くありきたりで一般的な「回答」を与えなかったことが
この映画の成功の要因だと思う。
その証拠に、この映画はただ単なるハッピー・エンドを持たない。
心のつながりを知ったチャーリーは、兄と別れてしまわないといけないのだ。
おそらく兄弟で暮らすことは現実的にも不可能だっただろう。
この「回答」がこの映画をより重たく感じさせる。

アカデミー賞をとるのも無理はない。
兄弟の演技力は、いうまでもなくすばらしい。

(2003/10/8執筆)

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