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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

サイン

2008-07-10 23:12:23 | 映画(さ)
評価点:74点/2002年/アメリカ

監督:M・ナイト・シャマラン

シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン監督作。

牧師だったグラハム(メル・ギブソン)は、彼の妻が事故で死んでから、神が信じられなくなり牧師を辞めた。
その半年後、牧場を経営し始めた彼はある朝ふと目覚める。
トウモロコシ畑をみると、そこには規則正しく倒された、ミステリー・サークルが描かれていた。
テレビを見ると世界中でも同じような現象が同時に起こっていた。

僕の大好きな映画監督のシャマラン。
今回も、期待を裏切らずに秀作をわれわれに提供してくれた。
以下は、当然ネタバレしまくりなので気をつけてください。
この映画を観て、「ぜんぜん楽しめなかった」と、ため息を漏らした人は、相当にかわいそうだ。
こういう映画を楽しめるというのは本当に楽しいことだ。

▼以下はネタバレあり▼

ミステリー・サークル、と聞いて映画に飛びついた人は、かなり不満を漏らして帰ることになるだろう。
この映画に「X-ファイル」のようなエイリアンのウンチクは全く必要ない。
むしろ、人間が世界観をどのように描いて生きているか、ということが、映画を楽しむために問題になる。
エイリアンを凝視していたのではこの映画は見えてこない。

映画の序盤から、メル・ギブソンへのフォーカスが多用される。
それも彼が驚いているときにだ。
何かを発見した時、その対象物を写すのではなく、先に驚き、戦慄するメル・ギブソンを印象的に撮る。
それによってその対象物に対する興味が格段に沸くわけだが、それだけを狙ってそういった撮り方をしているのではない。
対象物よりも、主人公の心理状態をフォーカスしたかったのだ。
これが映画のテーマのヒントになっている。
起こっている事件や、事態によりも主人公の心理に着目しなければいけないのだ。

世界観がものすごく小さく描かれることもヒントの一つだろう。
テレビ、ラジオから入ってくる情報以外に、一家が外界につながりを持つことはない。
街に行くシーンもあるが、ほんの少ししかない。
あまりにも狭い世界で展開するので、エイリアン騒動も全部嘘なのではないかと、深読みしてしまったほどだ。
けれど一家、とくに主人公だけにフォーカスさせるためにそうした狭さがうまく働いたと言える。
ただ狭い世界をあれだけ広く見せる技術はすごい。

この映画は、ホラーのように戦くシーンを連続させている。
突然犬にほえさせたり、娘が水を嫌がったり、弟と息子がオカルトを真に受けていったり。。。
しかしそれは映画のスパイスに過ぎない。
この映画はむしろ、「サイン」とはどういうものか。
それらはどう作用するのか、ということがテーマであり、エイリアンが出てこようと、地球が支配されようと、あまり物語の軸とは関係ない。
娘と死んだ妻が意味ありげな台詞を言うが、「なぜそんなことが言えるのか」など考えてはいけない。

それらに気づけば、かなり面白く感じられるはずだ。
そして神が用意した(実際は監督が用意したのだけれど)運命や、「サイン(暗示、兆候)」という考えの大きさに十分感動できるはずだ。

シャマランという脚本家、そして監督はものすごい。
今回は衝撃的な結末ではなかったが、そうした裏切りを用いなくても十分通用する。
自分を敢えて登場させる、というのはどうかと思うけど。
もしかしたら、脚本が思いつかなくなったら、今度は俳優でがんばれるように、伏線を張っているのかも。
だとしたら、その人生の脚本はそれほどうまくない。
だって役者としてはちょっと。。。なんか違和感あるし。

あと息子役のローリー・カルキン君。
カルキン君に似てるな~と思ってたらあの弟だったなんて。
あの兄弟はいくら稼ぐつもりだ、全く。

日本でもこれくらいの映画を撮ってほしいと思った。
この映画はそんなに金かかってないだろうし。でも意外にかかってるんだろうね。
アメリカ映画は金をかけることがひとつの「売り」だからね。

(2002/09/15執筆)

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