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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

タイムマシン

2008-08-11 11:11:53 | 映画(た)
評価点:52点/2002年/アメリカ

監督:サイモン・ウェルズ

最新映像技術を駆使し、タイムトラベルを描いたSF。

1899年物理学者アレクサンダー(ガイ・ピアーズ)は強盗に恋人を殺された。
彼は四年後過去を変えようとタイムマシンを完成させ、恋人を助けようとするが、恋人は事故に遭い再び命を落とす。
アレクサンダーは過去を変えられないという謎を解決すべく更なる未来に旅立つ事を決心する。

▼以下はネタバレあり▼

281兆色という脅威のSFXを用いた作品であるが、完成度は高くない。
むしろ6億年までも時空を旅した割には、世界観が描けている時代が少ない。
映像技術に頼りすぎて人間の歴史が蔑ろにされてしまった感がある。
全体の雰囲気は「A.I」に似ている。

この映画の最大の欠点は、場面展開が速すぎることだと僕は分析する。
先に述べたようにどんどん時代が変って世界についていけない。
各時代には必要な事柄以外全く描かれずに進むため、時間旅行している感動はおろか、主人公の冒険にもついていけない。
物語の動線が一本なので深みを感じない。
これでは壮大と感じるはずもない。
それは名前のある登場人物が少なすぎることにも象徴されているだろう。

主人公の行動動機が利己的過ぎるためにそうなるのかもしれない。
過去はなぜ変えられないのか、という答えを得るためだけの時間旅行なので、感情移入しにくい。
もっとタイム・マシン完成までの苦悩を描くなり、次の時代に行く動機を明確にするなりすればよかった。
なんか無理やりに彼につき合わされている印象をもった。

また、タイム・マシンについての科学的うんちくもほしい。
厳密にはありえないタイムマシンでも、何とか電子と電磁波がどうとかと言われると
なんとなく説得力があるように感じて現実味をおびる。
マシンの形やシステムの説明にもなるし、そうなると最後のシーンにも伏線が張れる。
ただ、主人公の努力でタイムマシンができました、では今の観客は納得しないだろう。
それが成功しているのはもちろん、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズである。

そして主人公があまりに肉体派であるのも疑問だ。
未開拓民族の未来に行った後でもあれだけ、躍動的に動かれては、科学者であった事さえ忘れる。
肉体派でもいいが、それとなくそういう場面がほしい。
前向きに「戦わないといけない時もある」などと言われては、途中でタイトルが変ったのかと思ってしまう。
本当にアメリカは、こういう戦いがすきだなあ。

一週間後に会う約束をした友人と、あっさり決別してしまうのも少し違和感がある。

そしてやはり落ち。
タイム・パラドックス(恋人が死ななければタイムマシンは完成しない)が、原因だという「答え」はあまりにも、ありきたりだ。
今時、小学生でも知っている。
タイム・マシンを作った人が気づかないとは思えない。
ありきたりの回答を用意するならもっと展開で意外性が必要だ。
そうでないと、偉大な冒険譚もかすんでしまう。

まだまだ細かい部分での整合性も取れていないところがある。
絵はすごい。
けれどそれ以上にすごいところはなにもない。
どれだけすぐれたCGでも、絵だけでは世界観は作れない。
いい見本になりそうだ。

それにしてもガイ・ピアーズ、恋人失いすぎ。

(2002/07/28執筆)

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