secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ウィンド・トーカーズ

2008-07-02 19:57:40 | 映画(あ)
評価点:31点/2001年/アメリカ

監督:ジョン・ウー

「フェイス/オフ」「MI:2」などを手がける監督の戦争映画。

第二次世界大戦。エンバース(ニコラス・ケイジ)は命令を守るために撤退せずに部下を全員殺してしまう。
負傷して戻った彼は、日本人を殺すことに執念を燃やし、暗号士を守る重要な任務を任される。
ナバホ出身で、優秀な暗号士となったヤージーが彼と組む事になった。
サイパン島の制圧に向けて彼らの部隊は最前線に赴く。

アクション映画を撮らせたら右に出るものなしのジョン・ウー監督がドキュメンタリータッチの戦争映画を撮る。
しかも「フェイス/オフ」でタッグを組んだニコラス・ケイジ主演。
否が応でも高まる期待だったが、一抹の不安もあった。
その不安が的中した格好だ。

▼以下はネタバレあり▼

僕は基本的に戦争映画が日本相手であろうが、ベトナム相手だろうが、それほどこだわって観ない。
もちろん、日本人の描き方はどうしても注目してしまうが、日本人相手でも所詮は映画なので、それ以上のリアルさは求めない。
けれど戦争映画は戦争映画なりの撮り方というものがあるはずだ。
この「ウインド・トーカーズ」はそれを満たしていない。

アクション映画ならば、まだ許されたかもしれない。
しかしこれは戦争映画だ。
戦争映画には戦争の怖さを見せなければ、観客にリアル感を与えることはできない。
その表し方はいくつかある。
「ランボー」のように主人公が精神的に追い込まれ、悲惨さを伝える方法。
「プライベート・ライアン」のように、ずっと淡々と戦闘シーンを描き戦場の臨場感を出す方法。など。

期待していた戦闘シーンは、アクション映画バリに敵(日本人)を殺しまくる。
2、3メートルしか敵と距離がないのに、エンバースの弾は命中しても、敵の弾は命中しない。
効力射撃の映像は明らかにどっかから持ってきた使い古された発射シーン。
戦闘シーンにはドラマティックな音楽。
目的が感覚的に捉えにくい作戦目標。
作戦の進行を地図で表すが、そこに全く戦略性がない。
日本地図を代用しても、アメリカ人はあるいは気づかないのでは?
と思えるくらいだ。

しかしそうした戦闘シーンより問題なのは、全く主人公の心に感情移入できないことだ。
なぜなら、この映画のテーマは、主人公の苦悩にあると言えるからだ。
エンバースは部下を失って極限状態にあるのは理解できる。
しかし何がしたいのかわからない。
志願して入隊したのに、暗号士とは一切交流を断つ。
そして暗号士を守るどころか、率先して日本人を皆殺し。
ヤージーに過去を話し意思疎通ができたと思ったら、「俺には任務を遂行することはできない」と辞退を申し出る。
しかも献身的なヒロインにも全く取り合わない。

精神的に参っているのは理解できるが、これほど行動が二転三転されては感情移入などできるはずがない。
かと言って暗号士であるヤージーも、中途半端な描き方なので、その対象にはなれない。
そもそもナバホがどこにあるかもわからない始末。
なぜナバホ語が暗号に使われるに至ったかもよくわからない。

どうせならヤージーに感情移入させるようにして物語の中盤あたりでエンバースの過去を明かすようにすれば
まだ観やすかったのではないだろうか。
さきにも書いたように、「戦争」がきちんと描けていないため、なおのことつらい。
重さのない戦争で、内面の見えない理不尽な主人公像。
これは完全にミスマッチだ。

ちなみにニックの日本語は、彼が昔日本に来ていたときに習得したものだろう。
「horyoda」の日本語では日本人は騙せないと思うが…。
それでも、日本の描き方は「パール・ハーバー」よりもましだったのでまだ許せる。吹き替えではなかったし。

友情は、戦場において唯一の勲章! とか言うCFが流れていたがぜんぜん友情を結んでいない。
むしろ大半は険悪なムードだったじゃないですか。

(2002/09/30執筆)

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