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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

プラチナデータ(P)

2013-08-19 22:55:18 | 映画(は)
評価点:36点/2013年/日本/133分

監督:大友啓史

どこまでも陳腐。

近未来の日本、DNAのデータを蓄積することにより犯罪捜査のあらたな手法が開発されていた。
そこではあらゆるほうほうから入手されたDNAデータをもとに、犯罪者を特定していくというDNAプロファイリングが行われていた。
そんなある日、そのシステムの開発者である二人の科学者が殺されているのが発見される。
容疑者として浮かび上がってきたのはなんと、開発者のもう一人である神楽龍平(二宮和也)だった。
自覚症状のない神楽は、真相を確かめるために逃亡してしまう。
よき理解者であった水上江利子(鈴木保奈美)の元に訪れようとするが……。

飛行機の中でやっていた作品で、日本語字幕、もしくは日本語吹き替えの作品があまり多くなかったこともあり、東野圭吾原作のこの作品を見ることにした。
映画公開当初は、すこしは興味を持っていただけに、残念な出来で悲しい。
すぐにレンタル作品になるだろうから、気になっていた人は見ると良い。
豪華なキャスティングのわりには、話題先行で、あまりシナリオが映画向けに練られていない印象を受ける。

日本映画なのだから仕方がないか。
と思ってしまうことがまた悲しい。

▼以下はネタバレあり▼

映画館で見たわけではないし、集中力がぞんぶんにあったわけでもない。
その点では制作陣には申し訳ないが、二度と見ることはないだろうからざっくりと批評めいたものを書いておく。

DNAからすべてを見通すことができるシステム、というのはとてもおもしろい。
いや、それほど新しいテーマでもモティーフでもないので、驚きは少ない。
けれども、「人は遺伝子なのか環境なのか」といった問題はいつになってもおもしろいテーマではある。

その開発者が容疑者として浮上する、その逃亡劇を描くというのは日本映画としてはおもしろい試みだろう。
だが、その謎の方向性が既にいただけない。
方向性が「二重人格」というとてもありきたりで、非日常的なものにしてしまった。
その時点でおもしろくない。
容疑者が自分であっても、真犯人は自分ではないことは映画としては確定的なことなのに、そこになんとも陳腐な二重人格とは。
そこで一気に見る気が失せてしまう。

プラチナデータという呼称の真意にも正直がっくりだ。
すべてのDNAデータを集合したデータという意味ではなく、特定の人間だけがそのデータから除外されるという特別なデータ、それがプラチナデータだった。
小説ではどのような扱いになっているのか確認していない。
けれども、これを映画の中で実写にしてしまうと、これほどチープなものはない。
これだけ政府高官や警察内の人間が検挙されている時代に、その関係者だけ除外されるというのはいかにもナンセンスで、いかにも時代錯誤だ。
近未来の話であるはずなのに、一昔も、二昔も前の時代感覚で描かれているようにさえ思える。
要は、その設定(真相)に説得力がないのだ。

しかも、開発者は世界でも特殊な数学的な天才である。
それなのに、その彼女を差し置いて、それを開発し、なおかつその彼女にデータを見抜かれてしまうというザル計画である。
だれが、どのように、そのシステムを開発し、書き換えたのか、という点がまったく見えてこない。

もし、この真相が明るみに出ずに、そのまますんなり神楽が捕まったとしよう。
そうすればこのDNAによる捜査が法案で通るとは思えない。
結局、それを意図しようとした人々はみなその恩恵にあずかることができずに終わってしまう。

この計画がどうしても穴だらけにみえてしまう。

もっといただけないのは、この作品のテーマだ。
DNAではなく、個人がその「意志」をしっかりともつことだ、というメッセージが残される。
家族が自殺したことを受け止められずに、二重人格になったのだから、逃げずに生きなさい、というのである。
おいおいおい、DNAですべてがわかるんじゃあなかったのか。
その対立項となるのが、「意志」という超非科学的なファクターをもっていくるとは。
きれいにみえるかもしれないが、どこまでも陳腐だ。
それなら東野圭吾でなくても思いつくに違いない。

原作は読んでいない。
おそらく原作だともっと説得力あるように描かれているのだろう。
もう言い飽きたけれども、もう一度書いておこう。

「だから日本映画はだめなんだよ」


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