外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

うちの猫の出産(2) 誕生編

2013-06-17 22:27:53 | ヨルダン(猫中心)


果てしなく続くように思われた地味な陣痛の末、猫は沈黙を破って鋭く鳴き出し、頭をなでる私の手を噛もうとした。
どうやら、次の段階に入ったようだ。
猫がひとりになりたがっているように見えたので、私はソファーから立ち上がり、少し離れて様子を観察した。

まもなく、猫は痛みに耐えながら、懸命にいきみ出した。
そのお尻の穴から、何か赤黒いものが出てこようとしている。
私は慌てて新聞紙を取ってきて、猫の下に無理やり敷いた。
いつも座るソファーが血液や胎盤やまみれになるのは、ちょっとイヤですもの・・・。

いきみだしてから第一子が誕生するまでにも、相当な時間がかかった。
登場したのは、血まみれのタコのゼリー寄せのような赤黒いゲル状の塊だったが、猫がベロベロと舐めてやると、毛深いエイリアンの赤ん坊程度に落ち着いた。
黒と茶色の毛が生えたエイリアンの赤ん坊は、ピンク色のプラスチックっぽい手足をピクピク動かしている。
どうやら死産ではなかったようだ。
おお、まさか無事に生まれるとは!
私が驚いている間にも、猫は次の出産の態勢に入っている。

私の予想では、猫の出産は長い便秘のあとの排便(失礼)よりも楽なはずだった。
横たわった瞬間、自動的に赤ん坊がスルスル出てきて、お母さんの仕事は生まれてきた子を舐めてあげるだけ、というイメージ。
それゆえ私は、
「人間の子供は妊娠期間も長いし(猫の妊娠期間は約2ヶ月)、出産も大変そうだけど、猫なら楽そうだから生んでもいいわ。小さくて可愛いし~」
などと考えていたのだが、現実は全然違って、猫といえどもお産はやはり重労働なのだった。

なにしろ、生まれた子の全身を舐めてあげ、さっそく授乳しながら、次の子を出産するのである。
しかも、子供と一緒に出てきた胎盤(血まみれの内臓にしか見えなかったけど)をむしゃむしゃ食べたりするのだ。
猫のお母さんって、スゴイ。
もう私は、ただただ驚愕するばかりである。

第一子の誕生後、第二子の誕生までまたそれなりに時間がかかる。
これは長期戦である。
気分転換にとテレビをつけたら、アルジャジーラではシリアのニュースをやっていた。
とたんに、部屋中に銃声が響き渡る。
いかん。
アルジャジーラはいかん。
母猫にも、生まれたばかりの赤ちゃんにも、精神衛生上よろしくないに違いない。
私はリモコンを手に取り、子供向け番組をやっているチャンネルに変えて、様子を伺った。
猫はラジオのときと同様、テレビの音はなど全然耳に入っていないかのように、出産に専念していた。


コメント (2)
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