2月某日
節分なので、夕方、墨染の藤森神社の追儺祭を見に行く。
地元の有志による雅楽や舞踊が披露された後、人形(ひとがた)が焼かれ、鬼が登場して豆まきが開始される。周りは近所の子供だらけで、ぎっしりと舞台を取り囲んで楽しそうに声を上げている。こういう地元参加型の行事は楽しいけれど、魂を揺さぶられるほどではなかったな、と帰りの電車でふと思ってから、「そうか、私は今、魂を揺さぶられたいのか!」と気がついた。魂をゆさゆさと揺さぶる行事といえば・・・やっぱり奈良の東大寺のお水取りだろうか?それともフラメンコのコンサート?
2月某日
近所のガード下の猫溜まりに行って、キャットフードをあげる。
4匹ほど集まってくるが、目のつり上がった不吉な容貌の三毛猫が、エサを独り占めしてしまう。2,3箇所に分けて撒いてみたが、ミケを怖がって他の猫が食べにいけないので意味がなかった。私が近づくと、ミケがシャーッと威嚇してくるので激怒して、「ちょっとアンタ、なんで独り占めするのん?!他のヒトたちにも食べさしてあげなさい!!」と責めると、素知らぬ顔をして、後ろ足で耳の後ろを掻き始める。「あんたたちもじっとしてないで戦わんかい!」と他の猫を叱咤するが、効果はなかった。このミケをバッシャールと命名することにする(バッシャールとは、シリアの大統領の名前)。
2月某日
家の2階へ続く狭くて急な階段を、両手を付いて登りながら、「よつあし、よつあし、よ~つあし~」と即興の歌を歌う。題名は「四足で階段を上るときの歌」である。
2月某日
久しぶりに電車に乗って、京都駅に行く。
「suvaco」の食料品コーナーのお酒売り場を観光していたら、ビールや白ワインと並んで赤ワインまで冷やしてあるのに気づき、つい気色ばむ。私は冷やした赤ワインを見ると、条件反射で戦闘態勢に入ってしまうのだ。しかしよく見るとその脇には、カップ入りの日本酒や、ポケットウイスキーなども置いてある。瓶入りのウイスキーを冷蔵コーナーに置いている店を見るのは、生まれて初めてである。・・・きっと、他にスペースがなかったんだな、じゃあしょうがないか・・・と許してあげることにして、急いでその場を離れる。
2月某日
餃子の皮と挽肉とキャベツを買ってきて、餃子を作る。
つぶしたニンニクとニラも入れて具を作り、皮でてきとーに包む。1人で餃子を作るのはこれが初めてだが、大変気分が盛り上がり、「わあ、ちゃんと餃子らしくヒダが出来てる、アタシってすご~い」などと騒ぎながら作った。実際には幼稚園児の泥遊びのような、稚拙な出来なのだが、他人の目がないので全然気にならない。結局、餃子の皮32枚入りパックを使い切ってしまった。3分の1だけ晩御飯に食べ、余りは冷凍することにする。この、「作りすぎた餃子を冷凍する」という作業が、「賢い主婦」っぽくてカッコイイ!と、また気分が高揚してしまう。
2月某日
餃子を作ったときに余分につぶしたニンニクを、ビンに入れて冷蔵庫に入れておいたが、今日見たら緑色に変化していたので、ショックを受ける。まるで生まれたての宇宙人の肌のような、鮮やかな緑色だったのだ。匂いをかごうかどうしようか少しの間迷ったが、結局やめて、生ゴミ入れに廃棄する。
2月某日
ピタパンを焼いた。
ピーターパンがピタパンを焼いた・・・おやじなダジャレ。
私がパンを焼く理由は2つある。(1)ピタパンは近所のパン屋には売られていない。(2)パン類は基本的に、自分で焼いたほうが安上がり。
しかし、つい全粒粉などを買ってしまったので、コストは結局あまり安くなかった。
ドライイーストを使い、発酵させたりこねたり、計3時間半費やして作ったわりにあまり膨らまず、一見せんべいのような冴えない出来に終わった。それでもボールや台を片付けたあと、お正月のようなすがすがしい気分になった。あたりにはパンの焼ける良い匂いが、ほわほわと立ち込めている。