講師:渡邊浩史 先生(日本大学非常勤講師)
日時:3月17日14:00~16:00
講演場所:練馬区立石神井公園ふるさと文化館
目的推定(私が感じた):
本講座は、「日本史史料研究会」が、一般市民向けに初めて企画した公開講座とのことである。普段正統と言うか真面目ではあるが、敷居が高い研究会・勉強会を行ってきた同会にとっては、比較的入りやすい漫画の世界に、実は正確な歴史研究の成果が含まれていることを紹介したかったということのようである。
内容概略:
どろろを題材に①~④の「歴史的」内容を御紹介いただいた。
①四十八の魔物
どろろに出てくる主人公「百鬼丸」は、父親醍醐景光が四十八の魔神にかけた願と引き換えに、体に四十八か所の欠損を得るが、この四十八という数字は、いまでこそAKBとかよくつかわれているが、元来阿弥陀如来がたてた「四十八の願い」であるとか。
②中世の武士の居館と城
どろろの醍醐景光の館として描かれているのは、「一遍聖絵」に描かれている鎌倉時代の武家の屋敷と酷似している。恐らく手塚治は「一遍聖絵」を参考にして描いた可能性がある。しかし、実際室町時代の武士の館は、朝倉氏の一乗谷館にみるような(あるいは、忍城や石神井城に見る)形状で、間違っているものと。
③中世の民衆と一揆
朝倉氏の一乗谷に見るように、城主は普段は城下町に住んでいるが、敵攻め込まれれば山上の「要害」に籠る。室町末期の民衆も武装しており、要害に籠った。これは、城主と一緒ということに限らず、民衆も独自の城を持っていて、それに籠ることもあった。
民衆の「自力救済」が、「一揆」(ひとつの道)であり、みんなで共同して自分たちのことは守るということである。一揆の例としては、民が大名の小部隊を殲滅する例もあった。民衆は弱いものではなく、大名は支持を得る必要があった。
④ばんもん
「どろろ」に出てくる国境のしるしである「高い板塀」は、「ばんもん」と呼ばれていたが、これは、南北朝鮮を分ける「板門店」の比喩である。
【2013/3/27追記】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
木造民家
木造建築は、やはり余り持たないので、古い建物は残っていないといったお話が
あった。お寺は、香の煙などで持つが、民家はそうも行かず、日本最古の木造民
家は、1500年頃のものであるとか。
↓最古と思われる箱木家(私が調べたもの)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%B1%E6%9C%A8%E5%AE%B6%E4%BD%8F%E5%AE%85
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感想:
「どろろ」の中に、かなり専門的な歴史の要素が含まれていたということは、これを読んだことはあるが、そう感じていなかったものとして、ここと良いショックがあった。しかし、同じプロダクションである、「カムイ外伝」が描いた関東内海(香取海)に、衝撃的な印象を受けたことはあるので、漫画が歴史的に正確な要素を含んでいたりするのは、薄々感じなくは無かった。
講師渡邊先生の視点に、大変魅力的なものを感じる。また、朝倉氏の一乗谷遺跡の紹介があった。私は、遥か昔、20年以上前に、一乗谷遺跡は行ったことがあるのだが、歴史的事実に基づいた復元がされているようで、当時とは大分変ってきているように思える。また一度訪れてみたくなった。