MVCメディカルベンチャー会議

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第40回MVC定例会in熊本

2007年06月30日 | MVC定例会
経営という視点から医療について学ぶため、株式会社日本経営の辻亘亮氏を講師にお招きして、「健全なクリニック経営」をテーマにお話頂きました。

① 私は、株式会社日本経営に在籍する経営コンサルタントです。株式会社日本経営はホールディングス会社であり、事業内容に応じて約15もの事業体に分社化しています。医療経営に関する経営顧問、税務顧問、厚生行政情報の提供、PFI事業、厚生労働省からの研究事業受託、医療システム戦略提案、電子カルテ導入支援コンサルティング、WEBコンサルティングなどが主な事業内容です。

② 最近の10年間で病院数は徐々に減少し、全国で9490あった病院が9000を切るとも言われています。逆に診療所は徐々に増加し、平成8年の87909件から平成16年には97051件と10000件増えています。平成18年の統計では、療養病床数は一年間に14235床減少しており、病院と診療所の形態が激動している最中といえます。

③ 卒後年度別の医師の就労先を分析しますと、卒後20年で診療所勤務の医師数が病院勤務の医師数を上回ります。およそ卒後10年~15年、35年~40年をピークに病院勤務から診療所勤務に移行する傾向があります。医学部定員増加政策後に医学部に入学した医師が現在50代になり、今後、高齢の診療所勤務医が増加する事が予想されます。しかし、病院外来と診療所外来のレセプト総枚数はこの10年横ばいが続いていますので、診療所同士の競争は激化する事が予想されます。

④ 2008年4月から後期高齢者医療制度、外来包括払い制度が導入される予定です。わが国始まって以来、初めての人頭制の診療報酬体系です。この外来包括払い制の背景には、外来医療費は国民医療費の41.2%を占めており、病院や診療所のサロン化が指摘されています。診療所にとっては制度導入によって、大幅な収入減となるところもあるのではないかと想定されます。

⑤ 外部環境が変化する中で、診療所の経営者に求められるのは、経営理念の重要性です。「何故、開業するのか」という問いに対する答えを、時間をかけてでも明文化する必要があります。経営者になるための自覚と覚悟、コミュニケーション能力とネットワーク能力が求められます。

⑥ 医療密度を医師以外の力を使って患者に伝える努力は重要です。インターネットを使う、紙媒体や電子媒体を使う、スタッフを使う、方法は様々ですが、院長自身の診療姿勢をスタッフに浸透させないといけません。スタッフ教育は重要です。

⑦ 競争の激化を裏づけるデータがあります。平成16年にはおよそ3000件の新規開業に対し、4200件が閉院しました。都市部では、開業して3年後には20%の医師が勤務医に戻るといわれております。これからは付加価値を付けた開業が求められます。付加価値の一例が医療モールです。診療所が集まる、という形態以外に、スポーツジムと連携した開業であったり、ネイルサロンと連携した婦人科の開業であったり、画像診断に特化したクリニックを併設したり、と試みは様々です。複合サービス以外にも、「待ち時間を少なくする」という付加価値を付けるために予約システムを導入するという手段もあります。

⑧ 全ての業種において付加価値を視覚化することは重要です。特に医療業界においては、価値の質を高めるためにユーザーすなわち患者さんとの協創性を具体的にする必要があります。専門性の高いサービス提供者である医療従事者(時には、他の病院のスタッフ)との連携等において患者さんと、ともに歩んでいくこと、そのプロセスを価値のあるものとすること。プロセスを理解いただくこと。を重点をおく必要があると考えております。具体的には、健康セミナーの開催などによる予防の重要性をともに理解するイベント開催や予防行為を実行するためのプログラムなどが挙げられます。

⑨ コンサルタントの立場からしますと、逆説的な表現になりますが、現場で起こった問題や職員教育等のノウハウが、開業された医師同士が、現場感覚のある状態で共有される事を切に願います。MVC-onlineという医療者限定のSNSは、我々のようなコンサルティング以上に非常に有意義な、一つの方法なのではないでしょうか。


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